撮影日   2024.5.14

撮影場所  JR西日本山陽本線 岡山駅

      ※現地での案内に従い、点字ブロック内の安全な

      場所で撮影

 

今年4月6日に新型車273系が導入され、置換が進んだ「やくも」

用381系ですが、いよいよ定期運用の終了が迫って来ました。

1982年に「やくも」電車化によって導入されて以来40年にわたる

活躍に間もなく終止符が打たれると共に、国鉄時代に導入された

特急形電車の定期運用がこれで全て終了する事になります。

1958年に登場した初の電車特急20系(→151系)以来続いた国鉄型

電車特急の終焉です。

 

先月岡山に立ち寄った際、たまたま国鉄色編成の381系を撮影出来た

為、今回紹介します。

尚以前も紹介していますのでご参照下さい(2023.8.9)。

2022.4 山陰旅行(国鉄復刻色やくも 外観編1) | 303-101のブログ 

(ameblo.jp)

 

(一枚目)

「やくも」8号として出雲市駅から到着した国鉄色編成です。

(カメラの時刻はずれています)。

この車両は1号車クロ381-141で、1-2列リクライニングシートと

なっています。

元は非貫通スタイルの普通車クハ381形100番台のクハ381-141を

グリーン車に格上げしたもので、1982年日立製作所製です。

 

前面は485系300番台以降などと同じく高運転台で非貫通スタイルで、

185系を除いた国鉄型電車特急の最終形態で完成形と言えます。

今では数少なくなったイラスト入りヘッドマークを使用しており、

前面にはエンブレムが輝き、運転台の側面には「JNR」のロゴが

復刻されています。

(二枚目)

2号車モハ380-71です。

1982年日本車輛製で、モハ380形はパンタグラフとCP付きの

中間電動車です。

 

381系は国鉄初の営業用振り子式電車(自然振り子式)で、1973年の

「しなの」を皮切りに「くろしお」「やくも」に投入されました。

カーブが多い路線の曲線部での速度向上や乗り心地向上を図ったもの

で、「やくも」では中国山地を貫く伯備線で性能を発揮しました。

民営化後は電車・気動車特急で振り子式を含む多様な車体傾斜装置を

持つ車両が登場しましたが、その嚆矢となります。

(三枚目)

相方の3号車モハ381-71です。

モハ381形はモハ380形とユニットを組み、制御装置を搭載

します。便洗面所は設置されていません。

 

381系は軽量化の為国鉄では営業用車両では301系に続いて

アルミ車体を採用しており、国鉄の電車特急では唯一の存在

です。

又低重心化を推進する為車体下部が膨らみ上部がすぼまった

形状になっていて、183系や485系等の標準的な電車特急の

車体とは異なったスタイルになっています。

(四枚目)

4号車サハ381-231です。

381系には元々サハは存在せず、全てサロの格下げです。

この車両は1982年日立製作所製のサロ381-31で、「ゆったり

やくも」としてリニューアルされた際にグリーン車の連結位置を

パノラマグリーン車と合わせて1号車をグリーン車に改造、

中間のサロを普通車に格下げしました。

その際にサハ381形200番台に改造され、クロ381形100番台が

同時に誕生しています。

 

車内は普通車標準の2-2列回転リクライニングシートです。

行先表示器部分に専務車掌室も設置されています。

サロ381形200番台は初期の改造分は喫煙室が設置されており、

この車両では車端部に窓が増設されていますが、後の改造分では

全面禁煙となった為喫煙室は設置されなくなり、小窓の増設も

行われていません。

(五枚目)

この車両だけは窓が2連窓になっているのが特徴です。

381系オリジナルのグリーン車・サロ381形は普通車と違い2連

窓で製造されており、普通車格下げ後も元の姿を残しています。

製造時はベネシャンブラインドでしたが、現在は通常の横引き

カーテンです。

 

車内は「ゆったりやくも」仕様の赤系モケットのリクライニング

シートが並び、内装や仕切り扉もリニューアルされています。

しかし改造車故座席と窓割が有っていないのが分かります。

(六枚目)

5号車モハ380-66です。1981年川崎重工製です。

「やくも」用381系は民営化後、まず速達列車の「スーパーやくも」

運行開始に伴い同列車用としてリニューアル・塗色変更された編成が

登場し一部はパノラマグリーン車が組み込まれました。

その後一般の「やくも」もリニューアルが進み塗色変更され、旧国鉄

色編成は消滅しました。

 

「スーパーやくも」は2006年に廃止され、2007年から「ゆったり

やくも」として再度リニューアルが開始され、塗色変更や行先表示器

LED改造、車内の再リニューアル・簡易バリアフリー改造が行われ

「ゆったりやくも」色へ統一されました。

尚後年元「くろしお」用車が転入し「ゆったりやくも」改造が実施

されていますが、幕式方向幕のままで車内改造も簡略化されました。

(七枚目)

相方の1号車クモハ381-507です。

元はモハ381-66でしたが、短編成化に伴いクモハ381形0番台に

改造されクモハ381-7となりました。

オリジナルの381系には制御電動車は存在せず、分割併合の為

貫通スタイルですが、同じく貫通スタイルのクハ381形0番台と

違って簡易的な形状でエンブレムもステッカータイプです。

2016年に分割併合時の効率化の為、自動解結装置・電気連結器

が設置され+500となりました。

こちら側は国鉄電車特急スタイルとは言え、違和感が有ります。

一応国鉄時代の改造なのですが。

(八枚目)

到着後暫くして回送となり、ヘッドマークも変更されました。

イラスト入りヘッドマークが普及する前は白地に列車名が

表示されていたシンプルな形態だったので、それに近いかも

知れません。

非貫通の正統的な国鉄型電車特急スタイルを最後にして、

一度引き上げ線に回送されて行きました。

(九枚目)

その後暫くして今度は「やくも」9号となる為に再度ホームに

入線しました。

隣には鳥取へ向かうキハ187系「スーパーいなば」が並びます。

どちらも中国山地を車体傾斜装置を駆使して乗り越える特急

列車で、「戦友」と言える存在かも知れません。

(十枚目)

古レールを使ったホーム上屋の支柱と刻印が気になりますが、

国鉄色編成の全景です。

 

「ゆったりやくも」リニューアル後はパノラマグリーン車や

旧日根野車など変わった車両はいても基本的には統一されていた

「やくも」用381系でした。

しかし185系の定期運用終了後、最後の国鉄型電車特急となって

いた「やくも」にも新車導入が決定し、リバイバル企画が実施

されました。

第一弾として2022年にこの国鉄色編成が登場し、その後パノラマ

グリーン車組み込みの「スーパーやくも」編成、そして「やくも」

旧リニューアル色編成が登場し一挙に賑やかになりました。

「やくも」用381系は登場以来編成が固定化されておらず、過去

幾度となく混色編成が走っており今回のリバイバル企画でも

混色編成が走っていました。

 

しかし遂に今年4月の273系導入で殆どの381系は引退し、パノラマ

グリーン車も運用を終えました。

その後も僅かな「やくも」に381系が残っていますが、いよいよ

最後を迎えます。

(十一枚目)

クモハ381-507の運転台部分です。

銀色の「JNR」マークが誇らしいです。

381系に限らず、485系や181系等国鉄時代の電車特急の先頭

車は車端部側にドアを設置していた為(2ドアの183系等除く)、

運転台後部にドアが有るのは改造車の証です。

 

前面上部に運転台が有るスタイルは20系(→151系)以来の国鉄

電車特急の伝統で、ボンネットスタイルから変わった後も

185系以外に引き継がれました。

(十二枚目)

特徴的な形状のDT42(付随台車はTR224)台車です。

ダイレクトマウント方式の空気バネ台車で、軸箱支持方式が

板バネになっています。

自然振子装置を組み込んでいます。

モーターは本形式用のMT58Aで、出力は国鉄電車の標準・

MT54と同じ120kwながら軽量化が図られています。

(十三枚目)

モハ380-66の屋根です。

381系では低重心化を促進した結果、クーラーは床下に搭載

されました。よって屋根上にはパンタグラフや通風器が僅かに

有る程度でかなりスッキリしています。

パンタグラフを2基搭載しているのも国鉄電車特急の標準的な

スタイルです。

(十四枚目)

最後に、岡山駅コンコース内のモニターの掲示です。

電車特急「やくも」の変遷や歴代塗色の写真が掲載されて

います。

因みに381系の定期運用は明日(6月14日)にほぼ終了しますが、

運用の都合上「やくも」1号では6月15日まで運行されます。

そしてこれが国鉄電車特急の定期運用の最終運用となります。

 

「やくも」用273系は381系と比べ導入数が少なく、今後も

臨時列車に登板する可能性は有りますが、余剰になった681・

683系を転用する可能性も有りそうです。

もっとも681・683系は振り子式ではないので所要時間は

長くなりそうなので、「くろしお」の283系を転用する

可能性も…。こちらも先が長く無さそうなので可能性は

少なそうですが。

いずれにしろまだまだ波動用として細々と活躍する185系と、

381系のどちらが長く残るかは分かりません。

 

 

尚このモニターにも安全運行のお願いが掲示され、訪問時も

撮影についての放送が行われていました。

訪問時は特に大きなトラブルも見られず落ち着いていましたが、

マナーを守り周囲に迷惑を掛けないようにし、安全な運行が

保たれる様に協力して行きましょう。

 

 

以上です。

 

参考文献  JR全車両ハンドブック2004

 

参考HP   JRおでかけネット(公式HP)