息子の初舞台に思う | 「日々の初心」能楽師・武田祥照のブログ

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能楽師の日々をつづったblogです。
日頃縁の遠いと思われがちな能楽が少しでも身近なものになれば幸いです。

今週の土曜日、9月5日に能尚会にて、長男が3歳2か月にて初舞台を踏ませて頂きます。

 

ソーシャルディスタンスを取らねばならないなど運営がコロナ禍の困難な中で、

息子に初舞台を踏ませてあげられることは本当に”有難い”ことと、父に感謝するばかりです。

 

最初、息子の初舞台は4月の観世会春の別会にて、「鞍馬天狗」の花見の稚児役の予定でした。

お話を頂いたのは昨年(2019年)の夏、2歳になって間もないころでした。

出来るだろうか、、、とかなり不安でした。

ただちょうど4月ならば、2歳9か月。

私が初舞台した年と同じだと思い、良い巡り合わせと大変喜びました。

 

その年の11月からお稽古を開始。

来る日も来る日もお稽古をし、家族も大変楽しみにしていた矢先の、コロナ。

3月までは演能が出来ていたので、ギリギリ、延期になってしまいましたが、

それも5月で結局、中止に。

 

そこで、今回の9月の仕舞「老松」が初舞台ということになりました。

 

自分の時はどうだったのか、と父に聞きながらのお稽古。

私が稽古が好きになるように、稽古を頑張るとキャラメルをもらったそうです。

父の苦労がしのばれます。

 

息子は焼き海苔が大好きなので、焼き海苔をあげることにしました。

 

4月の舞台が延期・中止になってしまったのを、気持ちを切り替えて

6月から3か月、仕舞のお稽古を重ねました

今週に入り、母が本番用の紋付を、父が扇を用意してくれました。

 

紋付は父の祖母が、父のお宮参りのために用意した紋付。

扇は祖父・四郎が7歳の父の為に作った扇です。

 

紋付も扇も、父、私、弟、そして息子と3代が使います。

 

そのうえ、扇は我が家の社中会 謳潮会15周年記念で、祖父が作った扇です。



ただ、祖父は癌になってしまい、入院し、本人が扇を使うこともなく、幼い父が使う姿を見ることもできませんでした。

(そのまま、帰らぬ人になりました。)

 

その扇を、息子が使うのは、父にとっても私にとっても、そして祖父にとっても特別で、

おそらく空の上ですごく喜んでくれていると思います。

 

当日、無事に済むかどうか、わかりませんが。

天命を待つのみです。