2022年12月3日、大阪岸和田の杉江能楽堂にて初の自主公演を行います。
昨日10月3日で、本番まであと2ヶ月を切りました。
この話を決めたのは昨年12月のことでした。
あっという間に本番が迫ってきています。
なぜ井筒だったのか、なぜ大阪だったのか、という理由はチラシに書かせて頂きましたが、なぜ今、このタイミングだったのか、ということについては書ききれなかったので、改めてここに書いてみることにしました。
今このタイミングで自主公演をしたいと思った理由は大きく2つあります。
昨年9月に若手能楽師の登竜門ともいうべき「道成寺」を勤めて、能楽師人生として一つの区切りがつきました。
「道成寺」はやはり能楽師として歩むからには憧れの一曲。
幼い頃からリビングで、椅子を鐘に見立てて潜りこんで道成寺ごっこをしました。
その幼い頃からの念願の「道成寺」を終えて、ようやく自分の道を歩む時に来たと思いました。
2つ目は、その「道成寺」の稽古と本番を通して、何か掴まえた感覚を得たのですが、それが本物なのか、自身の力を試したいと思ったからです。
「道成寺」には乱拍子といって、長い静寂の中で時々入る小鼓の掛け声(すさまじい掛け声)と打音に合わせて、シテが爪先を上げ下げする特殊な場面があります。
↓乱拍子の場面です。
そもそも何を表現しているのか、演技者としてほとんど動きが抑制されている中で何を表現したらよいのか色々考え、稽古を通じて実践してみました。
その中で心を動かすということが大事なのではないかと気づき、そして、その感覚を少し掴んだ気がしました。
このことは動十分心・動七分身という言葉で世阿弥が述べています。
身体は7割程度の動きに抑え、その代わり心を十分に動かすようにという教えです。
「井筒」は世阿弥の名曲にして難曲で、動きが少なく上演時間も2時間も近くかかります。
自分にはとても無理と思っておりましたが、「道成寺」を経て体得した何かが「井筒」に通用するのではないかと思うようになり、初の自主公演で、自身の力を試してみることにしました。
井筒の結果、得た感覚の確証を得るのか、また芸の迷宮に入るのかは、お楽しみかなと思います。