その時まだ母親は現役のエホバの証人で、4つ年上の姉も停滞気味ながらも惰性的に証人としての生活を続けていた。
僕はエホバの証人の欺瞞を知り猛烈に怒っていた。積年のフラストレーションを母親にぶちまけた。
『エホバの証人』の教理の間違いを論理的に、真摯に、徹底的にそして熱く語った。
何故だか母親も拒絶することなくその話に耳を傾けた。息子の勢いに圧倒されたこともあるだろう。
しかし長年エホバの証人を続けてきた彼女自身もその頃、エホバの証人について漠然とした疑問を持ち始めていたようだ。期せずして親子のタイミングはあの時ちょうどリンクしたのだろう。
息子は自分で調べた知識を母親に語り、母親は息子の言葉を途中で遮ることなく最後まで聞いた。
そんな親子のやり取りが2か月くらい続いただろうか。息子は子供時代の辛かった思い出(特に母親には隠していた)、絶望感に充ち満ちたそれまでの人生を語った。
母親は驚いた。息子はけっこう楽しんでエホバの証人ライフを生きてると思っていた。同年代の友達もいたし。そんな葛藤や苦しみを抱いて生きていたとは知らなかった。「子の心、親知らず」とはよく言ったものだ。
『今は証人から離れてしまったけど、社会人としてはそれで良かったのかもしれない。孫の顔も見れて正直嬉しいし、ちゃんと家庭も持って正直ホッとしている。』
『お母さんはサークルに参加してるようなつもりでエホバの証人してるよ』
偽らざる母親の無責任なホンネだった。



おばあちゃんの死と葬式の顛末をきっかけに、それまで逃げてきた自分の過去とヤミに向き合う勇気が湧いた。自分なりに聖書というものを調べてみる気力が湧いてきた。
聖書とはどういう歴史の文脈の中で書かれたものなのか?細かな内容ではなく、全体像を知りたかった。
所詮付け焼き刃ではあるが、ネット、書籍、テレビ、ラジオ…時間の許す限り貪欲に手を伸ばした。
(定番本の『良心の危機』も言わずもがな)
多少の(⁈)恣意があったにせよ。客観的に見れば『エホバの証人』の間違いは火を見るよりも明らか…
と言ったところか?

驚きと喜びとが入り混じった感情。脚に掛けられた『鎖』は実はどこにも繋がっていなかった。

…しかし『鎖』は確かに僕の脚に掛けられていた。『鎖』は僕が成長するにつれ皮膚に食い込み、痛みを伴って血が流れた。
いつしかその痛みにも慣れ、『鎖』が食い込んだ皮膚は硬く分厚くなり。痛みもそれほど感じなくなっていた。
身体に取り込まれた異物は拒否反応も起こさず、ただそこにあった。むしろある意味身体の一部として認識されていたのかもしれない。
今思えば、それも時限があったのだろう。身体の中の眠っていた異物はあのタイミングでモゾモゾと目を醒まし、今まで感じなかった強烈な臭気を伴って、僕の中で暴れはじめた。


6月はいつも すべてイヤになってしまうの 心の場所がなくなってしまう
アーメン あなたのそのヤサシサも ナメクジみたいで ゾッとしちゃうし

6月はいつも 私 おかしくなってしまうの 体中 血が止まってしまうみたい
ねえ いま この気持ちをバカにしたでしょう?
めんどくさい奴だって 人に言うでしょう?

破壊してよ ねえ ファンカゲリヲン ムカンシンもヤサシサも全部
破壊してよ あとかたもなく 6月におきたこと全部

6月はずっと 雨ばかり降り続いて あなたも会いに来てくれないし
ねえ昨日 もしかしたら電話した?
どうしてずっと一人にさせるの?

焼きつくしてよ ねえ ファンカゲリヲン センター街も ヒルズも全部
焼きつくしてよ 夜に産まれし 想像上の破壊兵器

破壊してよ ねえ ファンカゲリヲン 6月の この世界全部
破壊してよ ニヤニヤしてる テレビに映ってるもの全部

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スガマニアトムの独断偏見解説
震災後この歌詞は言葉狩りの対象になりそうだが、字面の表面だけ眺めていても本質には近づけない。
村上春樹氏がスガ作品には『カタストロフ憧憬(破滅への憧れ…と要約しておこうか)がある』と書いていたが、まさにその空気が詰め込まれた一作だろう。
歌詞前半部分、本ブログではワザと『アーメン』と書いてみた。CDを聴くとあきらかに『アーメン』と発音しているように聴こえる。歌詞カードには『半面』と表記されているが…。「ファンク」と「エヴァンゲリオン」を足した造語である『ファンカゲリヲン』…『半面=アーメン』も単純なコトバ遊びと流して良いものか…?
この破壊的な不健全な気分、何となく分かる気がする。そんな気分を思い出す。
『ハルマゲドンは怖いけど、いったいいつになったら来るんだ?どうせ自分も滅ぶけど、だったらクソみたいなこの世界をはやく滅ぼしてくれればいいのに…。もう証言だって永遠にしなくて済むし…。僕をバカにしたあいつだって滅びるんだ…。』
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…福音 Evangealion エヴァンゲリオン とはギリシャ語εὐαγγέλιον, euangelion で、「良い(euエウ- 、"good")知らせ(-angelion アンゲリオン、"message".)」という意味で、英語に直訳すると、good newsとなる。…