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投資は自己責任で

〜 中長期保有前提で成長株中心の”ゆるい投資”を行っています。
  目先の株価を予測したり占ったりすることには、興味がありません。

2021/1/7付の日本経済新聞に、SBIホールディングスがSMBCクラウドサインのクラウド型電子契約サービスを導入するとの記事が出ました。
■SBI、電子契約を傘下330社に導入(日本経済新聞,2021/1/7)
SBIホールディングス(HD)は2月末にもクラウド型の電子契約サービスをグループ全社に導入する。傘下に抱える330社のグループ間取引に使うほか、社外との契約にも活用する。三井住友フィナンシャルグループ系のサービスで、2020年4月に結んだ戦略提携の一環だ。政府も推進する「脱ハンコ」の取り組みを進め、業務に必要な手続きの効率化につなげる。
導入するのは三井住友FGが弁護士ドットコムと共同出資するSMBCクラウドサイン(東京・港)のクラウド型の電子契約サービス。これまでSBIではグループ会社間での取引に紙の書類にハンコを押す必要があった。社外との取引でも相手の企業が承諾すれば電子契約を活用する方針だ。
SBIは20年4月に三井住友FGと戦略的提携を結んでおり、顧客の相互送客などに取り組んでいる。今回の電子契約サービスの導入も提携の一環と位置づける。今後はSBIが手を組む地域金融機関などにもSBIが導入を支援する。

記事にもあるように、三井住友FGとSBIとの戦略的提携の一貫とのこと。SMBCクラウドサインは2019/10/1に弁護士ドットコムと三井住友FGが設立した企業。三井住友FGの企業ネットワークと信用力を用いて、クラウドサインの普及を目指すことを目的につくられた、戦略的な会社です。

「三井住友FGの企業ネットワークと信用力を用いて普及を目指す」というやり方は、電子決済ビジネスのGMOペイメントゲートウェイが先んじて行っています。三井住友FGとGMOペイメントゲートウェイが2015年に設立した、SMBC GMO PAYMENTは、三井住友FGの企業ネットワークを利用して電子決済サービスの普及を進め、大きな成果を上げています。
現在、立会人型電子署名(クラウド型電子署名、事業者署名型電子署名)に強力な追い風が吹いており、今後、SMBCクラウドサインも立会人型電子契約で大きな成果を上げることが期待されます。

ちなみに、SMBC GMO PAYMENTはSMBCクラウドサインの導入企業として、2021年3月期2Qの弁護士ドットコムの決算説明資料で紹介されています。GMO電子印鑑AGREEではなく、SMBCクラウドサインというのがポイントですw。
三井住友FGはGMOインターネットとも提携関係にあり、GMOペイメントゲートウェイにも出資しているので、GMO電子印鑑AGREEを採用しても良さそうに思う向きもあるかもしれません。熊谷さんがクラウドサインに対して、現在、あれほど対抗意識むき出しであることを鑑みれば、三井住友FGがGMOのAGREEを採用しなかったことになにか違和感を感じる人もいそう。


おそらくこれは、ちょっと前までGMOインターネットグループが電子署名ビジネスにまったくといっていいほど力を入れていなかったことにも一因があるのではないかと推測しています。
以前のエントリでも書きましたが、自分が弁護士ドットコムとかDocusignに投資を始めた頃からいろいろな電子署名サービスを調べていますが、2020年春頃までGMOの当事者型電子署名サービスであるAGREEの情報は、ネット上にほとんど存在しないような状況でしたから。(GMOのAGREEは2015年にスタートしたものの、自然消滅状態になっていると、個人的には勘違いしていたほどですw。)
SMBC GMO PAYMENTの電子署名サービスの採用決定時は、SMBCクラウドサイン一択だったのかもしれません。あくまでも想像ですがw。

 

そもそも熊谷さんは、去年の夏ぐらいまでは「立会人型電子署名は三文判の類。利用するリスクは高い」みたいなことを吹聴していましたから。熊谷さん、最近は「立会人型は三文判」という小馬鹿にしたような物言いはやめて、「立会人型は契約印」とか言いだしたみたい。当事者型に固執していて「立会人型は契約印だけど、実印はあくまでも当事者型」とか、言っていることがよくわからなくなってきていますw。立会人型が一般的になりつつあるなか、過去の自身の言説とのつじつま合わせが苦しくなってきた感がありますね。

 

【追加】

■38歳、SMBCグループ最年少社長が語る「電子契約の勝負はあと1年で決まる」理由(BUSINESS INSIDER 2021/1/12)
https://www.businessinsider.jp/post-227484
「コロナによって電子契約の普及は、確実に2、3年は早まった。コロナの影響が出始めた(2020年)2月に比べると、12月時点の契約アカウント数は17倍。実際にサービスが利用されているかの指標になる“契約書の送信数”で見てみると、件数は130倍に増えている」
「これまでは法務部が消極的だった大企業でも、国のお墨付きを得たことで契約が相次ぐようになった。今でも前月比で売上20%増を更新しているが、通常の企業であれば1年で20%増の成長ができれば成功。それが“月に20%増の成長”は、コロナ前には予想できなかったスピードです」
・SMBCクラウドサインは、創業後11カ月の2020年9月、単月での黒字化を達成。通期でも黒字化達成を見込んでいる。

2020年12月19日号の週刊東洋経済は「製薬大リストラ」の特集。この中で、エムスリーのMR君を始めとするビジネスが紹介されています。
製薬会社はこれまで、医療機関に通って医師に面会して営業を行うMRを減らしてきていましたが、コロナ禍をきっかけに加速的にリストラが進んでいる、またコロナ禍でMRの病院の出入りが厳しく制限されたことで、製薬会社はMR君を活用した営業に急速にシフトしている、といったような内容です。
内容的には、これまでのエントリで指摘してきたことと、ほぼ一致。
■市場急拡大の可能性(2020/07/06)
https://ameblo.jp/2sc372/entry-12609172300.html?frm=theme
エムスリーに投資する理由(2020/08/30)
https://ameblo.jp/2sc372/entry-12621310475.html?frm=theme
■コロナ禍による市場急拡大への対応(2020/12/05)
https://ameblo.jp/2sc372/entry-12642150841.html?frm=theme

 

注目すべきは、以下のところ。
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MR君の長期的な成長余地は大きい。製薬会社がマーケティングにかける費用は総額2兆円弱とみられる。そのうち9割以上がMR関連とされる。「将来的には生産性が改善され全体のコストは1兆円まで縮小し、そのうち2~3割がデジタル関連に使われるようになる」(谷村社長)。つまりは、製薬企業が従来のやり方のMRにかける費用はそれだけ縮小していく。
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谷村さんは、デジタル関連に1兆円の2~3割、つまり2~3千億円が使われると予想しているということです。現状は、4~5百億円程度でしょうから、5、6倍の市場規模になると見ている、ということでしょう。前述のエントリでは「インターネット関連に1割シフトするとして2千億円程度」としたけど、数字的にはこの辺のレベルの市場規模を睨んでいる、ということでしょう。

ちなみにエムスリーは、現在のデジタル関連の医薬品営業をほぼ完全に掌握している状況ですし、営業体制の強化は2年前に実施済み、クラウド移行によるシステム増強もかなり進んでいるようですから、マーケットの急拡大に十分対応できるはず。楽しみなところです。


 

 

アメリカの電子署名・電子契約サービス大手、Docusignが12/3に3Q決算を発表しました。売上高は$3.83億と前年比53%増、前回決算でのガイダンス(予想)を上回り、絶好調です。
顧客数は82.2万社と同42%増。その中で、売上の87%を占める、従業員10名以上の企業顧客(Enterprise & commercial customers、以下、大口顧客)は11.3万社と同46%増とのことで、売上貢献度が高い大口顧客も確実に増えています。
またアメリカのみならず、海外でも好調で海外売上は同77%増。
自分はDocusignの株主でもありますが、今回の決算発表は期待以上でしたw。

さて、DocuSignは、カナダ、英国、フランス、ドイツ、オーストラリア、ニュージーランド、ブラジル、日本に焦点を当て今後、営業を強化していくとのことです。日本ではブランドの認知度を上げるための投資を行う予定とのことです。
クラウドサインの今期の売上が20億円程度と思われますが、これはDocusignとの間に事業規模で100倍ぐらいの差があるということです。
Docusignの発言から、何か「黒船が来る」「クラウドサインとの競争激化」みたいに感じている人もいるようですねw。実際のところはどうなんでしょう?

1年ほど前に以下のエントリを書きました。
■Docusignとの競合について(2019/12/16)
https://ameblo.jp/2sc372/entry-12560071761.html
このエントリを書いたのはコロナ禍の直前。日本ですぐに電子契約・電子署名の注目度が高まるとは思っていませんでしたが、基本的には今でも、ここで書いたように「当面は心配不要」と考えています。

Docusignが日本法人を作ったのは、クラウドサインのサービススタートとほぼ同じ2015年の秋。ついでに付け加えておくと、GMOの電子印鑑Agreeのスタートもほぼ同時期です。3社スタートラインは同じでしたが、クラウドサインが図抜けている状態です。

Docusignの日本法人はこれまで、あまり活発に営業活動を行っているようには見えませんでした。ある意味、受動的と言うか、積極的にDocusignを日本企業に広めようというよりは、米系企業の日本法人等がDocusignを導入するケースへの対応を中心に行ってきた、単なる代理店のような印象。弁護士ドットコムのように、積極的にクラウド型電子署名を広めるために活動してきたような印象はありません。

クラウドサインが「鳴かぬなら鳴かせてみせようホトトギス」なら、Docusignは「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス」といった感じでしたw。もちろん、ホトトギスはクラウド型電子署名のことです。
ちなみにGMOは「鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」だったけど、自身の当事者型電子署名の優位性を誇示するためにクラウド型を否定して回っていたのに、ホトトギス(クラウド型)が自分(当事者型)より強くなって立場が逆転しそうになり、慌ててホトトギスにすり寄ってきた印象ww。
ちなみに、GMOグローバルサインは「Docusignと提携した」とさかんにアピールしていましたが、これはあくまでも電子認証技術の話であって、電子署名ビジネスで提携したわけではありません。まぁ、将来的にどうなるかはわかりませんが、GMOが「クラウド型電子署名は、あくまでも当事者型電子署名を広めるための手段である」という立場を崩さない限り、Docusignとの電子署名での提携は難しいかもしれませんね。

Docusignのホームページを見ると相変わらず料金支払いはドル建てだし、クラウドサインのように導入に際しての問題点や法的解釈など、顧客に対する積極的な情報提供も行ってきていません。日本でクラウド型が使われ始めた情報を得て米本社で「日本では来年から本気出す」となったのかもしれないけど、どこまでやれるのか?です。
先日、Docusign Japanが、電子署名の入ったpdfに付ける印影画像を自由に傾けられるようにして「日本人にも馴染めるようにした」みたいなニュースがありましたが、なんだかいろいろ勘違いしている印象を受けました。Docusign Japanはマネジメントレベルから大きく刷新して、大きなテコ入れをする必要があるかもしれませんw。

日本では、電子契約や電子文書管理が全般的に立ち遅れており、ようやく取り組み始めた企業が多いのが現実。大きな企業でも契約や決裁文書は紙ベースで作成してハンコを押す、みたいなことを未だにやっている企業が多い。
こうした日本企業が電子契約、電子文書管理を導入しようとすれば、押印のための立案持ち回りみたいな業務フローの見直しや、押印が絡む社内規程の改正、法律上の問題の有無のチェック等、システム以外の導入ノウハウが必要となります。単に社内システムに電子署名システムを使えるようにするだけでは済みません。
こうした導入検討企業の課題についてDocusignがどこまでノウハウ提供できるのか、あるいはしてくれるのか、ちょっと疑問です。こうした点は、日本の商習慣や法律に詳しく、顧客に対して積極的に情報提供を行うクラウドサインが有利なように思います。ビジネスで使うものだから、お金をかけて宣伝したり、ディスカウントで価格攻勢をかけても、電子契約ビジネスの利益を生み出す中堅以上の企業が簡単になびくとは思えないしw。

これは想像ですが、欧米の場合、既にネットワークで決裁する仕組みは整っているのに、単にサインの画像ファイルを貼り付けただけで電子署名がないpdfを使う状況の改善が多いでしょうから、電子署名の導入は日本ほど複雑ではなく、Docusignも導入しやすいんじゃないかな?

また、クラウドサインもDocusignも、AIを用いた契約書解析みたいなことを始めていますが、もしDocusignのAI(Docusign Analyzer)が優れたものであっても、日本語へのローカライズは難しいはず。(そもそも欧米の契約書と日本の契約書では言語が大きく異るのはもちろん、構成や書き方なんかも随分違います。"欧米"と一括するのはちょっと横着ですが、言語が似通っていれば類似性は高いから横展開は比較的容易そうです。)

日本でも海外との取引が多い企業のDocusignの利用は、今後も安定的に増えていくとは思いますが、ドメスティックな企業や国や地方自治体などに広く受け入れられるようにビジネスを展開するのは困難だと考えます。

コロナ禍により、製薬会社のマーケティングは、フィールドMRが病院に赴き医師に面談する形態から、エムスリーの医療情報サイト「MR君」や、フィールドMR向け業務支援ツール「my MR君」など、インターネットを活用するかたちに急激にシフトしています。

ちなみに2020年3月期3Q決算以前のエムスリーの会社説明資料に繰り返し掲載されていた調査によれば、製薬会社の総営業コストは年間1兆6400億円。そのうちフィールドMR関連費用は1兆5000億円と約91%を占めますが、インターネットにかける費用はわずか400億円で約2%。
一方、医師の情報収集時間を見ると、フィールドMRからは17%、インターネットからは39%、その他学会や医学誌等からは44%。製薬会社の営業コストが、MR関連(≒人件費)に偏重しすぎていたことは明らか。

これは今後、エムスリーのビジネスが急拡大する可能性を意味します。1兆5,000億円もあるMR関連費用が一部でも、これまで400億円ぽっちだったインターネットマーケティングに流れ込んでくれば、エムスリーなどのインターネットマーケティング企業には大きなインパクトがあるということです。

ちなみに2Qの会社説明資料によれば、上半期のマーケティング支援の受注は前年比2.5倍以上とのことで、急激なインターネットマーケティングの需要増が生じていることが伺えます。

さて、こうした状況下では「急激な需要増にエムスリーが対応できるのか?」がポイントです。
いくら顧客が増えても営業チームの担当者が少なくて対応できず他社に流れてしまったり、人手不足や営業体制の不備が原因で、エムスリーに不利な契約を結ばざるを得ない状況が生じれば、この機に大きく利益を伸ばすことは困難でしょう。
また、インターネット企業ですから、需要増に対応できるシステムの存在もマストです。急激なアクセスでシステムの動作が不安定になったり、負荷の増大で動作が遅くなってしまうことは収益機会を失うと同時に、顧客の信頼も失いかねない大きな問題です。

まず営業体制について。
エムスリーは2年前の2019年3月期、さらなる成長のために一時的に成長が鈍ることを覚悟の上で、メディカルプラットフォーム事業を中心に業務改革を断行、営業チームの強化等の先行投資を行っています。
MR君についてもこのとき、MR君を中心とした総合的なソリューションを製薬会社に提供できる体制に強化しています。当時は一時的な成長鈍化や、それに起因すると思われるヘッジファンドの売り等で株価が大幅に落ち込みヒヤッとしたけど、この営業チームの強化策は、大きく寄与することになりそうですw。
■2019年3月期決算について【エムスリー】(2019/4/25)
https://ameblo.jp/2sc372/entry-12456748271.html?frm=theme

次にシステムの対応です。
2Qの会社説明資料には、上半期のm3.comのアクセス数が前年比で1.5倍となったとの記述があります。これはシステムへの負荷が急に増大したことを意味します。
エムスリーは昨秋から、自社のシステムをオンプレミス(自社でサーバ等のハードウェアを管理する仕組み)からクラウドに移行することに取り組んでおり、結果的にコロナ禍による急激なアクセス増大でシステムがパンクするのを防いだみたいです。
 

2020/12/3、YOUTUBEのエムスリー公式テックチャンネルに「2000年創業エムスリーが挑む 大規模クラウド移行の舞台裏 #2」というライブ配信がありました。
https://www.youtube.com/watch?v=m1UUPkSCj5Q
以下、クラウド移行によるシステムへの負荷軽減に関する、配信担当者のコメント内容。
「コロナにより、感覚的にはアクセス数が2倍ぐらいに増えた。クラウド化していなければ保たなかったぐらいのリクエスト数になっている。去年からクラウド移行を進めていなかったら、危なかった。」
「普段でもイベントでトラフィックが増えると重くなる状況だったが、現在は常時、イベントをやっているような状況。クラウド移行しておいて良かった。」
「エムスリーは、リクエストが増えると売上が上がる収益構造だが、クラウド化により全社への利益貢献で年間50億円ぐらいの価値は出していると思う。」
「クラウド化以前は、負荷が大きくなるとサーキットブレーカーにより広告を出さないように制限するとも結構起きていた。リクエストが増えたときに一部のユーザーに500エラー(サーバーが処理しきれない場合のエラー)が出てしまい、広告収入を儲け損ねることもあった。クラウド移行により、そうしたケースが大きく減った結果、ユーザー単価は上がった。」
「大きな講演会だと昨年末は1万人の参加で結構厳しかったが、今や5万人ぐらい来てもなんとかなるようになり、最大稼げる数が5倍近くになっている。営業が頑張って5倍の参加者を獲得してくれれば、だけど。」
もし、半年遅れたとしたらおそらく、エムスリーのシステム社員も出社に制限がかかるなどしてクラウド移行が迅速に進められなかったでしょうから、まさに絶妙のタイミングでクラウド移行ができたということだと思います。

エムスリーはコロナ禍になる直前に、営業面もシステム面も増強していたということで、当面の急激な需要増に答えられるだけの事業基盤を持っていると推測されます。

たまたまといえばたまたま、僥倖といえば僥倖ですが、強い企業は引きも強いですねw。

「自社がクラウドサインを採用しているとして、契約を結ぶ相手がDocusignなど他の電子署名を使っている場合はどうなるの?」という素朴な疑問を見かけます。

結論から言うと、契約をクラウドサインで結ぼうがDocusignで結ぼうが、契約のPDFファイルが標準的な仕様で作られている限り、統合的な管理は可能。つまり、保存する電子契約管理システムや文書管理システムにクラウドサインで締結したものとDocusignやHelloSignで締結したものが混在しても、管理上の問題は生じないということです。

立会人型電子署名(クラウド型、事業者署名型とも呼ばれる)の場合、基本的に、相手がDocusignで作成したものを送信してきたら、決裁して返信するだけです。ある程度の規模の会社だと、電子契約管理のシステムでその契約書を回覧して社内決裁を取って、最終的な決裁を得て返信すればよいでしょう。会社によって仕組みは異なっても、自社がクラウドサインを採用しているからといって、クラウドサイン以外は受け付けないなんてシステムにする企業はないでしょう。おそらく、弁護士ドットコムにDocusignやAdobeSignの契約書を送っても、普通に返してくれるはずですw。逆にそうしたシステムにしておかないと、将来的に困るでしょうね。
無論、標準的な仕様のファイルであっても、二要素認証がなされない電子署名とか、怪しい認証局を採用しているとか、自社の基準に合わない場合は、電子契約をしないという判断はありえますが、有名どころの電子署名で比較的ライトな契約を結ぶケースで問題になることはないでしょう。

以下の弁護士ドットコムが運営するサイト「サインのリ・デザイン」に詳しい記事があります。
□電子契約サービスを比較する際の3つのポイント
https://www.cloudsign.jp/media/20200923-hikaku-3points/

「うちは海外との取引が多いからDocusign一択」とか「電子契約はクラウドサインに統一している」とかいった意見を見かけますが、あまり詳しくない人たちの意見のように思います。
そもそも、日本より普及が進んでいるアメリカではDocusignが多いものの、AdobeのAdobeSignや、DropBoxのHelloSignなど、数十社の電子署名事業者が存在しているようです。こうした状況だと、自社で採用している電子署名とは違う署名が施された契約が送付されてくることは日常茶飯でしょうけど、自社と相手先の採用する電子署名が違ってトラブルになったという話を、自分は聞いたことがありません。

ところで、日本ではクラウドサインのシェアが80%と言われていますが、日本での導入企業が多いので、システム改修のノウハウのみならず、社内規程の変更の仕方とか、社内業務フローの見直し方とか、日本特有の商習慣への対応ノウハウが蓄積されていることが、クラウドサインの強みです。

しかしながら、日本でトップシェアだからといって、電子署名ビジネスでクラウドサインが「総取り」できるわけではありません。例えば、自社の既存のシステムがDocusignとの親和性が高い場合や、外資系で親会社がDocusignを利用している場合だと、Docusignを採用すべき企業はあるでしょう。ただ、そうした場合でも、相手から送られたクラウドサインやAdobeSignの契約書でも問題なく使える(管理できる)仕組みにしておくべきだし、そうした社内システムを構築するのは、さほど難しくないはずです。

電子署名市場は今後、急速に拡大していきます。1社総取りが困難なビジネスですから、安売り競争とかでシェアを無理に伸ばすのは無意味に思います。
どの電子署名企業も成長のチャンスは大きいと思いますが、顧客企業が導入しやすいよう、いかに自社のサービスを良いものにできるかの勝負となるでしょう。
 

7月にクラウドサインに代表される事業者署名型電子署名(立会人署名型電子署名、クラウド型電子署名ともいう。以下、事業者型)が電子署名法に準拠しているという見解が出され、私企業の事業者型の利用について法的整備がなされた状態です。しかしながら、これまでは国や地方自治体等のクラウドサイン等の利用について、方向性が示されていませんでした。
ある意味、国や地方自治体は、私企業以上にデジタルトランスフォーメーションが遅れていますが、法律の縛りにより導入できなかったり、非効率を強いられていたりするケースも少なくありません。

そんな中、11/23の日本経済新聞電子版に以下の記事が出ました。
■国と企業の電子契約、民間サービス利用可能に
政府は企業と取引する際に民間の電子署名サービスを利用できるよう年内に関連規則を改正する。現行制度では政府のシステム上でしか手続きできず、電子契約の利用が少なかった。備品調達や調査委託などの契約での利用を想定する。
国の契約に関するルール「契約事務取扱規則」は電子契約する場合は政府の電子調達システム「GEPS」を通すよう定める。利用に必要なICカード取得に数万円かかるなどの課題があった。規則改正により民間の電子署名サービスを使ってGEPSを通さずに契約できるようにする。
電子契約は紙の契約書のハンコに相当する電子署名が必要になる。民間の電子署名サービスが複数あるものの、電子署名法はどのサービスが国との契約で有効かを定めていない。政府は年内にも使用可能な民間の電子署名サービスを明確にする。

この記事の中にある、従来のGEPSを通さなければならない電子契約は、当事者署名型電子署名(以下、当事者型)によるものです。事前に電子証明書を受け取らなければならず、そこに費用負担が発生します。電子証明書の維持費として毎年1万円前後が必要になるのに加えて、5年で更新が必要で更新手数料も発生することから、利用者が増えなかったわけです。

この記事には、どのような電子署名を可能とするかは書かれていませんが、上述のように7月に事業者型)が電子署名法に準拠しているという見解が出されている以上、事業者型でも使用可能となると推察します。

さて、この記事の元ネタは11/17に開催された「第3回 デジタルガバメント ワーキング・グループ」と思われます。
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/digital/20201117/agenda.html?
議題は以下。
議題1.契約手続におけるクラウド型電子署名サービスの活用に係る要望についてのヒアリング
議題2.国の電子調達システムについてのヒアリング
議題3.契約手続におけるクラウド型電子署名サービスの活用に係る課題についてのヒアリング

議題を見ると何かもう、クラウドサインに代表される事業者型(クラウド型電子署名サービス)の導入が前提のようなWGですw。
議題2の資料1-2は総務省情報流通行政局が作成していますが、電子契約率が約1.5%(令和元年度)、今年度上半期は2倍程度にはなっているものの低調であることが報告されています。また、この資料には「システムの使い勝手に係る課題」の中に「 認証方法が限定的(入札参加企業において電子署名法に基づく電子証明書が必要)」とあり、取組内容として「• 認証方法の多様化の検討(マイナンバーカード、立会人型電子契約等)」と記載されています。
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/digital/20201117/201117digital04.pdf

この第3回 デジタルガバメント ワーキング・グループには、富士ゼロックス、東京都、茨城県が参加しており、国や地方のクラウド型電子署名の活用についてプレゼンしています。ちなみに東京都は、ヤフーの元社長で副知事の宮坂さんが出席、地方自治体で事業者型の利用が認められていない問題を指摘してます。(簡潔明瞭で非常に見やすい資料は、宮坂さん、さすがですww)

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/digital/20201117/201117digital02.pdf


おそらく早晩、関係法令等が整理され、地方自治体での事業者型の利用も可能となると思われます。
無論、セキュリティの問題で厳格な当事者確認が必要なケースもあるはずで、そうした場合は当事者型を採用することになると思いますが、重要性がさほど高くない契約、例えばコピー機のリース契約みたいなものは、事業者型で十分です。世の中の契約のほとんどが、事業者型で事足りるわけですから、事業者型を認めるのは自然な流れでしょう。
おそらく東京都などの先進的な自治体は既に、事業者型が可能となった場合に向けて業務の整理や内規の改正案の作成等を進めているはず。

 

国や地方自治体、学校等はDXが非常に遅れていますが、電子署名ビジネスはDXのカギであり、非常に大きな未開拓マーケット。アメリカでもDocusignが現在、特に力を入れているのがこの分野。

どのくらい迅速に推進できるのか、今後の展開が楽しみなところです。

今年7月、クラウドサインなどの事業者署名型電子署名(立会人署名型電子署名とも呼ばれる。以下、事業者型)が電子署名法に準拠するという見解が、法務省等により示されました。

事業者型は、当事者署名型電子署名(以下、当事者型)のように、契約当事者が予め電子証明書を取得しなくてよい、世界的にも広く普及しているのが事業者型ですが、GMOグローバルサインは、事業者型では、契約当事者が電子証明書を取らないと推定効が働かない、つまり「本人が署名を行ったと裁判所は判断しないリスクがあるから、事業者型であっても身元確認が必要」との見解を表明していました。


「事業者署名型」電子契約サービスにおける電子署名法第3条の適用条件に関する見解(2020/9/18)
~「身元確認」をはじめとする必要な要件について~
https://jp.globalsign.com/info/detail.php?no=1600819665
9/22にはGMOの熊谷さんがツイッターで"(事業者型で本人確認のための電子証明書が不要という)日経の記事はミスリード"と批判し、「GMO電子印鑑のような身元確認と当人認証を組み合わせた本人確認が必要」と解説していました。
https://twitter.com/m_kumagai/status/1308260836788428802
https://twitter.com/m_kumagai/status/1308261955426086912
少しわかりにくいんですが、ハンコで考えるとこれは「実印を押印する契約の場合、本人が押しているのを確認した上で、印鑑証明を添えていなければ、無効となるリスクがある。」と言っているようなもの。「事業者型は、実印の押印よりも厳格な本人の確認が必要」と言う解釈で、常識的に考えればかなり違和感のある考え方です。無論、海外で普及している事業者型では、契約当事者の電子証明書なんて不要です。

もしこの「身元確認必要説」が正しいということになれば、事業者型はかなり使いづらいものになるはず。多くの弁護士を含む、電子署名に関わる大半の人たちはこの説に否定的でしたが、ほぼGMOの周りだけがこの「身元確認必要説」を喧伝している状況でした。

先日、11/17に開催された「第3回 デジタルガバメント ワーキング・グループ」で、総務省、法務省、経済産業省により提出された「資料3-2-1 論点に対する回答」には、以下の記載があります。
【質問】
 電子署名法第3条の適用を受けるためには、電子署名サービスを提供する事業者は署名者の実在性(「どこの誰であるのか」)を担保する「身元確認」の機能を有することが必要であるとの見解もみられる(身元確認必要説)。~ 考えを明らかにされたい。
【回答】
 第3条Q&Aでは、第3条に規定する電子署名に該当する要件として、電子署名サービスの利用者と電子文書の作成名義人の同一性の確認(いわゆる利用者の身元確認)は求めていない。しかしながら、実際の裁判において電子署名法第3条の推定効が認められるためには、電子文書の作成名義人の意思に基づき電子署名が行われたことが必要であり、これを担保する手段の1つとして身元確認がされているものと考えられる。利用者間でどの程度の身元確認を行うかはサービスを利用して締結する契約の重要性の程度等を考慮して決められるべきものと考えられる。

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/digital/20201117/201117digital06.pdf

要は「事業者がサービスとして身元確認するのは別に構わないけど、必ずしも必要なものじゃないよ」ということが、3省の見解として示されたということです。(3省からすれば「そんなの当たり前じゃん」だったんでしょうけどw。)

結局、GMOの熊谷さんが世の中をミスリードしていたわけですね。
今のところGMOグローバルサインも熊谷さんも、この見解に対してなんのコメントもしていませんが、GMOは身元確認が必要だという立場でビジネスを続けるということであれば、それは差別化であり、それはそれで問題はないとは思います。ただ、GMOは他社からクラウドサインやDocusignが送信されてきて契約を求められたら、相手が身元確認(電子証明書)を取っていない場合は、なりすましリスクがあるからと拒絶するんでしょうか? 相手から事業者型で送信されてきているにもかかわらず、電子証明書まで求められるのであれば、その電子契約に躊躇する企業も多いんじゃないかな?。

GMOが身元確認が必要と考えるのは構わないとは思いますが、身元確認が事業者型電子署名の必要条件である、と喧伝していたのは問題です。以前も書きましたが、GMOなど当事者型の電子署名ビジネスを行ってきたグループが当事者型を普及させたいがため、事業者型のリスクを吹聴、喧伝して、導入検討企業を萎縮させ、日本での電子署名普及を妨害してきた、という噂に通じるものを感じます。

事業者型にせよ、当事者型にせよ、紙ベースの契約にせよ、なりすまし等のリスクを完璧に排除することは理論的には困難。結局、契約の形態というものは、リスクと煩わしさのトレードオフの上で妥協点を見つけるしかないものです。にもかかわらず、GMOが当事者型より事業者型のリスクのほうが相対的に高いことだけに注目して、身元確認のない一般的な事業者型電子署名を否定していたのは問題です。GMOは大きな企業なんだから、そうした発言は慎重にすべきだし、GMOの信用にもかかわると、個人的には思います。

 

GMOを腐すつもりはありませんが、GMOはこの電子署名のビジネスに関しては、悪手を繰り返しているように思います。GMOの熊谷さんは今年に入って突然電子署名ビジネスに興味を持ってから、クラウドサインにライバル意識をむき出しにしていますね。(去年まで熊谷さんは、"電子印鑑"に言及することなんかなかったのにw)

電子署名は1社総取りのビジネスでもないから、他社を牽制するより自社製品のブラッシュアップにもっとエネルギーを割くべきなんじゃないかな?GMO電子印鑑が当事者型と事業者型の両方が使えるにも関わらずあまり普及しているように見えないのは、導入を検討する企業に事業者型のリスクを吹聴することで顧客がその使い分けに関する社内の仕組みづくり(社内規程の策定等)で混乱しているのに加え、両方使えることの裏返しで導入検討企業の既存システムとの連携が複雑になっているんじゃないのかな?? ビジネス系システムとの連携の話もあまり聞かないし。(ここはあくまでも想像ですので、間違っているかもしれませんが)

 

クラウドサインもDocusignもAdobe SignもHelloSignもNINJA Signも、他社の仕組みの揚げ足を取ったり、他社のシステムのリスクを喧伝して自社のアピールなんてしていませんw。

電子署名の市場規模は、これから数年で数百倍に爆発的に拡大することはほぼ確実。投資家としてクラウドサイン(とDocusign)には頑張って欲しいけど、各社とも競争相手のことを気にせず、サービスクオリティの向上による市場拡大に努めてほしいものです。

GMO電子印鑑Agreeを展開する、GMOグローバルサインホールディングス(以下、GMOGS)が決算説明資料で、「アカウント数が前年同期比16倍となり、クラウドサインを猛追している」と、かなり露骨にライバル意識をむき出しにしています。電子契約・署名市場が飽和状態ってわけでもないし、ましてや電子署名なんて、人気サービスになれば1社総取り可能なビジネスでもないし、自社のサービスレベルの向上が最優先のはず。企業相手の商売だと「うちは他社より凄い」アピールや価格の優位性だけで、顧客をなびかせることは困難です。

電子署名は電子契約、もっというと書類の電子管理の高度化という大きな課題の一部に過ぎず、既存の社内システムとの連携の容易さや署名前後の電子契約管理、社内規程の整備や法的なトラブル対応のノウハウ等も含めた信頼性が導入の判断基準。株主から見ると価格の安さは一見優位に見えますが、単に電子署名部分の価格が安いだけでは勝負にはならないでしょう。


GMOGSのアカウント数が7万件となったと説明するグラフで、クラウドサインの導入企業数10.7万社を引き合いに出し、Agreeが今にも電子署名の規模でクラウドサインを抜き去るかのような印象を投資家に与えています。グラフの中のクラウドサインの10.7万件というのが企業数であることは、グラフの下に非常に小さい字で書かれていますw。

さて、アカウント数と導入企業数、何が違うのでしょうか?
アカウント数の明確な定義ははっきりしませんが、電子署名を行うことができる人数、つまり電子署名で決裁する人の数です。社員数数人程度の零細企業であれば、社長がすべての決裁権限を持っているので、「企業数=アカウント数」となりますが、ある程度の規模の企業では決裁権限を持つ社員は複数いるので、「アカウント数>企業数」となるはずです。

大企業の場合、決裁権限の規程で数百人の決裁権者がいるのが普通です。企業間の大きな取引は社長決裁でしょうが、例えばある支社のある部署の清掃契約やコピー機のレンタル契約は、支社長ですらなく、部長や課長クラスで行います。つまり、ある程度の規模の企業で導入が進めば進むほど、アカウント数が加速的に増えていきますが、導入企業数は1社(相手が会社なら2社)のまま、ということです。零細企業でなければ、決裁権限規程とか業務分掌規程とかで、誰がどういう業務の決裁を行うのか、事細かに決まっているのが普通ですから、大企業が電子署名を本格導入すれば、数百のアカウントを作らざるを得ないでしょう。
さらに、例えばアルバイトとの雇用契約を個々人と電子署名で結んだり、福利厚生等の申請に電子署名を使うかたちを取るため全社員にアカウントを作らせれば、爆発的にアカウント数や契約送信件数が増えます。個人との契約に使うケースでは、導入企業数は1社、アカウント数は数百、数千ということもありえます。

また、自社が送信する電子契約をクラウドサインとしていても、顧客からAgreeでの電子署名を要求されて応じれば、Agreeのアカウントがその企業にもできます。(逆のケースで、送付された側の企業をクラウドサインが導入企業数にカウントしているのかどうかは不明ですw。ただ、企業数ベースであれば、少なくとも数字がインフレ的になることはないでしょう)
そもそも自分のまわりで誰もAgreeを使っていないのに、利用実績がクラウドサインと大して変わらないという宣伝には違和感がありますが、おそらくこうしたカラクリw。
 

Agreeの利用者が1社1アカウントの零細企業が大半を占めるということであれば、アカウント数≒導入企業数となるはずですから、クラウドサインの導入企業数と並べたグラフを作るのはあながちウソとは言い切れませんが、ちょっと引っかかります。

もし、GMOGSが「Agreeは実績ナンバーワンのサービス」と宣伝したくて、アカウント数を前面に出しているのだとすれば、ネットでなんでもバレる時代には悪手。こうした宣伝のやり方はちょっと古い手法ですねw。

 

※補足(2021/2/23)

2021年1月末、GMOGSは「企業導入数でクラウドサインを上回った」と発表しました。アカウント数の発表を取りやめましたが、これまで公表してきたアカウント数と今回の発表での導入企業数はほぼ同じ数字です。つまり「アカウント数≒導入企業数」ということですが、上述の通り、これは1社1アカウントの企業が大半、ということになります。

また、そもそもですが、GMOの数字は受信者側も導入企業数に含めているとのことで、クラウドサインの送信者側のみの導入企業数の定義と異なるので、単純比較は不可。

ここまでやっているのを見ると、何が何でも「自社がクラウドサインより優れていてNo1」と言いたくてしょうがないGMO熊谷さんの出している数字が、どこまで信用できるかすら??になってきます。GMOのスタンス、正直ちょっと気味が悪いですw。

クラウドサインは、GMOの挑発的な言動に左右されず、淡々とクラウドサインのブラッシュアップ、普及に努めてほしいところです。

 

ちょっと余談ですが、GMOが主導権を握りたいのは理解できるけど、これまで「立会人型は電子署名ではなく法的リスクも高い。電子署名法準拠の電子署名は当事者型だけ。」と企業に吹聴し、海外で一般的な立会人型電子署名の日本での普及をある意味妨害してきたののが、GMOなどの当事者型署名の会社。電子署名法以前に、契約自由の原則があるから、過去においても立会人型電子署名は有効な手段だったにもかかわらず、当事者型電子署名の会社は、立会人型に法的リスクがあるかのようなセールストークを行っていたようです。

GMOは未だに「電子印鑑」とか「電子実印(当事者型)」とか「電子認印(立会人型)」とか、いろいろなワードがあって分かりづらい。これは、過去の自分たちのセールストークで「立会人型は電子署名ではない」と散々言ってきたから、今更「立会人型電子署名」というワードは使いたくない、ということかもしれませんw。世の中が、印鑑やハンコの廃止で盛り上がっているのに、「電子実印」とか「電子認印」とかのネーミングもちょっと苦しいw。

GMOは「契約には電子実印が安心で、電子実印を普及するための手段として電子認印を格安で提供」みたいな主張をしていますが、世界的には立会人型が主流。そもそも一般的な企業だと当事者型電子契約が必要かもしれないような厳格な契約は極めて少ないだろうから、当事者型電子署名だけでは採算がとれるビジネスにするのは困難です。

電子署名がこれまで、日本で普及できなかったのは、ハンコの問題だけではなく、当事者型のみが電子署名という誤解が広まったこと。過去に立会人型電子署名の自社導入を検討したにもかかわらず、こうしたセールストークで自社の導入を潰された企業のシステム担当者や法務部門の人たちの中には「GMOは何を今更、しれっと立会人型もOKとか言っているんだ?」といった感情を抱いている人もいると聞きますw。

(これはあくまでも聞いた話ですので、こうした人たちが多いかどうかは真偽不明ですがw)

 

一般大衆や零細企業相手のビジネスなら、利用者が多いという安心感や価格の安さに飛びつく利用者も多そうだけど、ある程度の企業相手となると、他のシステムとの連携等の導入しやすさやサポート体制、法的解釈や社内規程の改正などにかかる情報提供の豊富さなどが総合的に評価されます。価格の安さに惹かれて決めると、自社システムとの連携に苦労したり、使い勝手が悪ければ社員が使わなかったりと、結局、コストが高く付くことになりかねないことを企業は経験上、理解しています。


ところでアメリカの大手、Docusignの決算資料を見ると、重要なKPIは導入顧客数の増減であって、アカウント数は出てこない。上述したように、投資家がビジネス規模をみるのにアカウント数の増減はあまり意味がないから載せていないと思われますw。
ちなみにDocusignの場合、もっとも重要視しているのは、単なる顧客数(約75万社・人)ではなく、大企業~社員数10人以上の企業の顧客数(約10万社)の増加数です。こうした顧客を「エンタープライズ・商業顧客数」としていますが、これは、Docusignの実際の売上に貢献している企業数の目安、ということ。電子署名企業は単にアカウントを持っている顧客が多いだけで利益が出るわけではなく、ある程度の規模の企業が積極的に契約に使うようになって初めて売上、利益につながります。


では、なぜある程度の規模の企業の導入数が重要なのか? 

大手会計事務所が、数千人の顧客との顧問契約を電子署名で結ぶケースを考えてみます。会計事務所サイドが雛形にそった顧問契約書を作成し、数千人の顧客に送電子署名の送信を行います。この場合、電子契約を結ぶ顧客も「導入企業」にはなりますが、クラウドサインのような電子署名企業にお金を払うのはこの会計事務所だけです(顧客には課金されません)。
大手建設会社が下請けとの請負契約を結ぶような場合も同様に、下請け企業は「導入企業」ではあっても、無料で利用しているだけの存在になります。無論、下請け企業が孫請企業と電子契約をすれば、その下請け企業も電子署名の会社にお金を払うことになります。
要は、クラウドサインのような電子契約の企業は、中堅以上の企業がたくさん利用してくれるかどうかが重要、ということです。こうした点からもアカウント数はあまり意味があるとは思えません。

 

日本の電子署名市場はまだ始まったばかりで、クラウドサインがDocusignのようにある程度以上の規模の企業導入数を公表するのはまだ難しそうですが、決算説明会資料等で名だたる大企業のクラウドサイン導入が進んでいるのを確認できます。大きな企業ほど、自社システムとの連携、社内規程の改正・整備や社員研修、契約相手先への説明等にある程度の時間が必要ですし、段階的に導入を進める企業も多いでしょうから、本格的利用はまだまだこれからです。

クラウドサインの売上が急拡大し始めるのは、少なくとも半年~1年先でしょうね。

ちょっとGMOに批判的な内容になってしまいましたw。個人的にはGMO-PGの十年来の株主で、GMOを応援したい気持ちもありますが、電子印鑑Agreeはどうしても無理やり感やマーケティングの野暮ったさなど、いろいろ中途半端な感じが否めませんね。

 

■決算短信
https://corporate.m3.com/assets.ctfassets.net/1pwj74siywcy/4MfLB7Bnn1FjYe5SQ2WZLm/d36d1a54f63a71ce2cc5bf733608afc9/20201030_tanshin_J.pdf
■会社説明資料
https://corporate.m3.com/assets.ctfassets.net/1pwj74siywcy/6pky7gq809nwS8PUUwI1HZ/57d6a777d2d3c780d732463b71751293/20201030_Presentation_J.pdf
1Qに続き、絶好調です。
「株式の売却、評価などのインパクトを除く事業面での対前年利益成長率は、Q1:41%→ Q2:83%に倍増」とのこと。なかでもMR君などが含まれるメディカルプラットフォーム事業が+86%、海外事業が+91%と、この2事業が牽引役的な存在となっています。

主力のメディカルプラットフォーム事業では、製薬会社のDXが急速に進んだことで大幅に増加、製薬マーケティング支援のH1受注額が前年比2.5倍以上と、1Qの状況が継続しています。
以前から繰り返し書いてきた市場急拡大が、当初考えていたよりも早く現実化してきた感があります。
■市場急拡大の可能性【エムスリー】(2020/7/6)
https://ameblo.jp/2sc372/entry-12609172300.html
■エムスリーに投資する理由【エムスリー】(2020/8/30)
https://ameblo.jp/2sc372/entry-12621310475.html

2020年3月期3Q決算以前のエムスリーの会社説明資料に繰り返し掲載されていた調査によれば、製薬会社の総営業コストは年間1兆6400億円。そのうちMR関連費用は1兆5000億円と約91%を占めますが、インターネットにかける費用はわずか400億円で約2%。
一方、医師の情報収集時間を見ると、MRからは17%、インターネットからは39%、その他学会や医学誌等からは44%。

2020年3月期3Q会社説明会資料7ページ
https://corporate.m3.com/ir/release/2019/pdf/012820_02_J.pdf

製薬会社の営業コストが、MR関連(≒人件費)に偏重しすぎていたことは明らかですね。
これまでエムスリーは、この歪な状況を少しづつ改善して成長してきたわけですが、医薬品業界のこうしたMRによる対面営業を重視する業界構造を、突き崩すには至っていませんでした。医薬品会社の経営陣も、MR関連費用が営業コストの91%を占め、1兆5,000億円もかかっていることに問題があることはわかっていたはずですが、なかなか改革が進みませんでした。

そんな中、COVID-19の流行で、医師にアポを取り対面で面談するオーソドックスなMRの営業活動が制限されたことでMRの業務が変わらざるを得ない状況となりました。

今回の決算の会社説明資料によれば「現在も8~9割の病院がMR訪問自粛要請を継続」とのこと。こうした状況は一時的なものではなく、製薬・医療業界に構造変化が起きている、と考えられます。COVID-19が契機となり、岩盤だったMR中心の業界構造がついに瓦解し始めたことは、エムスリーにとって強烈な追い風です。

仮に製薬会社が、MR関連の営業費用の1割をインターネットに振っただけでも、インターネットにかける年間営業コストは、400億円から1900億円と約5倍になるわけです。2割を充てれば8倍強。
そんな単純に売上が増えるわけではないと思いますが、「製薬マーケティング支援のH1受注額が前年比2.5倍以上」という状況を考えれば、製薬会社のインターネット活用が急拡大していくことは、ほぼ間違いないでしょう。

奇しくもエムスリーは、2019年3月期にさらなる成長のために一時的に成長が鈍ることを覚悟の上で、メディカルプラットフォーム事業を中心に業務改革を断行、営業チームの強化等の先行投資を行いました。MR君についてもこのとき、MR君を中心とした総合的なソリューションを製薬会社に提供できる体制に強化しています。2019年3月期決算では、メディカルプラットフォーム事業のセグメント利益が一時的に対前年比でマイナスとなることもあり「MR君の成長に陰りが出てきた」とかいろいろ言われ株価も大きく下落しましたが、この業務改革が、今後の成長に大きく寄与することになりそうです。
■2019年3月期決算について【エムスリー】(2019/4/25)
https://ameblo.jp/2sc372/entry-12456748271.html?frm=theme

 

AIによる読影や、オンライン診療など新規事業も進捗しており、今後の成長がますます期待できそうですね。

売上高  2,435百万円(対前年+26.2%)
営業利益   108百万円(対前年△58.2%)

今期の業績予想は売上高のみ5,200百万円。決算説明では、利益は「黒字の確保」とのこと。今期の利益が対前年で減る見込みとしたのは、クラウドサイン関連を中心に積極的に先行投資を行うためですから、減益であることは特に問題なし。弁護士ドットコム事業が伸び悩んでいるのが少々気になりますが、株価はあくまでもクラウドサインの将来性で伸びていますから、まぁ問題ないでしょう。問題ない、というのはあくまでも事業成長に関してです。株価のことではありませんw。

クラウドサインの売上が伸び、それに伴って大きな増益を期待している人もいるみたいですが、そもそも、一般消費者向けにモノを販売しているわけではないですから、売上もすぐには伸びないし、利益が出るようになるには時間がかかるのは当たり前です。

ネットを見ると、短期勝負の人たちや投資初心者っぽい人たちが「広告宣伝の効果が全然ない」とか「想定外に人件費が増えているからけしからん」とか「クラウドサインは儲からないビジネスだった」とか騒いでいますが、すぐに利益がついてこないことは最初から想定されたこと。ほとんどの中長期の投資家は理解しているはずです。

今は先行投資のフェーズであり、出せる利益があるなら先行投資に回すべきときですから。もし弁護士ドットコムが非上場だったなら、キャッシュフローに支障をきたさないレベルで赤字を出しても先行投資や広告にお金を突っ込んでいたんじゃないかな?自分が経営者なら、そうしたと思いますw。


以前も書きましたが、クラウドサインの利益が出るようになるのは、中堅以上の企業がたくさん使うようになることが重要。
しかしながら、ある程度大きな企業の場合、導入を決めてもシステム改修、社内規程の改正、社員教育、契約先との調整等々、多くの準備作業が必要です。加えて、紙の契約書と電子契約の混在状態への対処も考えなければならないし、電子契約への段階的な移行スケジュールの作成も必要でしょう。
大きな企業になるほど、本格的に利用するようになるには時間がかかるのは仕方ないところです。今年度上半期に導入を決めたとしても、下半期は上述のような準備に費やし、来年度から本格利用、ぐらいのスケジュール感の大企業が多いのではないでしょうか?大きな企業が積極的に使うようになるにはもう少し時間はかかるでしょうが、使い始めればネットワーク効果で売上は指数級数的に増え、利益も出るようになるはずです。
決算説明会資料のなかで、三井住友銀行グループ(SMBC)とのJV、SMBCクラウドサインもSMBCグループや取引先企業への導入を順調に進めているとの説明もありました。クラウドサイン導入企業の中に、GMO-PGとSMBCのJVである、SMBCGMOペイメントが記載されていました。GMO電子印鑑Agreeと両方使っているのかな、というのは冗談として、SMBCGMOペイメントもSMBCグループへや取引先への事業展開を目的に作られた会社です。GMO-PGの過去の決算説明では相浦社長は「SMBCと組むことでGMO-PGへの信用度が上がった。またSMBCからの紹介で、大きな取引先も増えた」とその成果を強調していました。SMBCクラウドサインも同じような効果が期待できそうです。

クラウドサインの売上は1Qで262百万円、2Qで344百万円と、2QはQoQで+31%と急増。ちなみにYoYでは+147%と約2.5倍。通年の売上目標は1,400百万円ですが、この目標を大きく上回って推移しているとのこと。
2Qの販管費は1Qの広告宣伝費の減少を人材の積極採用で相殺し、1Qと同程度となりましたが、これはクラウドサイン事業の増員に伴うもの。下期も積極的に採用するとのことです。

今年5月にクラウドサインのような事業者署名型(立会人型、クラウド型)の電子署名が、電子署名法に準拠するものであるとの見解が出て、クラウドサインの導入を検討する企業が急増、強力な追い風が吹いている状況です。クラウドサインにとってここから数年は、事業拡大の千載一遇のチャンスですから、採算はあまり気にせず、積極的に人材採用・育成、設備投資を推進してほしいところです。

数年前の少し古い調査で電子署名市場が2023年に200億円市場となるという予測がありましたが、シェア80%のクラウドサインの売上ですら今期目標が14億円ですから、クラウドサインのシェアを考えれば数年で売上が10倍以上になるようなイメージです。
ただし、この200億円市場の予測は、コロナ禍をきっかけとしたDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の流れが出てくる以前の調査によるものです。
世界で70%のシェアを持つDocusignの調査では、電子契約周りを含めた潜在市場価値(TAM)は500億ドル、5兆円強とのこと。この規模感が正しければ、日本の市場規模が200億円ぽっちで伸び悩むことはないでしょうw。ちなみにDocusignの昨年の売上は約1,000億円程度。コロナ禍の追い風もあり今期も急増中です。


余談ですが「電子署名市場は、やがてDocusignが席巻し、クラウドサインは使われなく」などと安直に考える向きもあります。
自分はDocusignにも投資してますが、Docusignからすれば契約の仕組みや商習慣が異なり市場規模も大して大きくない日本市場で積極的に展開するインセンティブが小さいこと、本国アメリカを始め、すでにシェアを持っている欧米諸国でもまだまだ伸び代が大きく積極的に投資を行う必要があり、わざわざ日本へのローカライズに大きな経営資源を投入しないであろうことなどを考えれば、クラウドサインの驚異にはならないでしょうね。世界的なDocusignの急成長は揺るぎないと思い投資していますが、日本では外資系企業や海外との取引が多い企業を中心に成長はするでしょうけど、クラウドサインと競合するほど伸びないんじゃないかな?
そもそもDocusignもクラウドサインと同様、2015年の秋に日本でビジネスをスタートさせていますが、さほど浸透していないですしね。

 

株価は、事業内容も良く知らないで短期勝負をする人たちが買い上げてきてつり上がっている印象だし、地合いも悪いから、この2Q決算で下落するのは仕方ないところ。個人的には「成長株投資は、数年後に2倍ぐらいになれば御の字」というのが基本スタンスですが、狼狽売りで大きく下げたら買い増しのチャンスだと考えます。