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投資は自己責任で

〜 中長期保有前提で成長株中心の”ゆるい投資”を行っています。
  目先の株価を予測したり占ったりすることには、興味がありません。

電子契約、電子署名サービスにはクラウドサインを始め、Docusign、みんなの電子署名、NINJASIGN、GMOサイン等々、多くのサービスが存在します。
現在はクラウドサインがトップシェアであると言われていますが、立会人型電子署名の機能面だけを考えると、その差別化は困難なため、将来的に競争激化、価格競争が起きるのではないかと懸念する声もあります。

結論から言うと、企業が電子契約を開始するには、システム導入以外に業務フローの整理や社内規程の改定などが必須であり、大企業ではそういったノウハウの提供も含めて総合的に判断するので「機能面の差別化が困難だから価格競争が起きる」と考えるのはちょっと安直だと思います。


電子契約の導入は、単純なシステム増強で済む話ではないので、社内のシステム部門や出入りのシステム会社から勧めれたものを導入しておけばよいといった案件とは次元が違います。総務部門や法務部門が関与せず、システム部門が安直に判断して導入サービスを決めてしまうと、使う場面で混乱するリスクが高くなります。


さて、電子契約サービスで先行しているアメリカでは、最大手はDocusignで60~70%程度のシェアと言われています。電子署名のシェアの概念はかなり曖昧(送信件数や導入企業数の多寡だけで判断できるビジネスではないため)ですが、最新データではトータル顧客数82万、従業員10人以上の顧客11.3万、年間契約額30万ドル以上の顧客が542社と、実数で他社を大きく引き離している模様です。多くの大手企業がDocusignを採用しており、Google、Microsoft、Salesforce、SAP等、名だたる大手IT企業はDocusignの顧客とのことです。

 

ちなみにDocusignは、従業員10人以上の顧客11.3万からの売上が総売上の87%を占めているとのこと。これは電子契約サービスは、ある程度の規模の会社が採用することが売上増かつ安定的な売上のカギ、ということ。大手企業の採用を増やしているクラウドサインの戦略は、理に適っているわけです。


アメリカには他にもAdobeSignやHelloSignなど、数十以上の電子契約サービスが存在しており、その中でDocusignがトップですが、熾烈な価格競争を勝ち抜いてDocusignがトップシェアをとったというわけではありません。また、Docusignの牙城を崩すための価格競争とかも起きていません。

電子契約サービスで派手な競争が起きないのは、BtoB中心のビジネスであって低価格化や広告宣伝だけで顧客を増やせるようなビジネスでないことを各社理解しているから、と考えます。逆に顧客企業も、電子契約サービスはトップシェアのサービスに寄せなくても、自社の使いやすいサービスを是々非々で選んで導入すればよいことを理解しているように思います。現代はSNSとかで評判が調査できるし、「うちがナンバーワン」といくら喧伝しても、ネット検索でほとんど導入企業が出てこないようなサービスだと、却って怪しまれて信用をなくすことにもなりかねない世の中ですしねw。

Docusignの優位性は、グループウェア等の企業のシステムとの連携が容易なことに加え、特定のネット企業グループに属さない中立性、健全性が強みと言われていますが、このことはクラウドサインの強み、競争優位性と重なる部分もあります。

クラウドサインの競争優位性としてはまず、日本の企業が使うメジャーな顧客管理システムやグループウェア等とのシステム連携が容易で、既存のシステムへに迅速な導入が可能なことが挙げられます。これはDocusignと同様の特長です。
ただし、電子契約サービスの導入は、社内システムを整備すればうまく切り替えられるような単純なものではありません。
電子契約サービスの導入には、業務フローの抜本的な見直しや社内規程(契約管理規程とか業務分掌規程等)の改定、社員への研修など、多くの付随的な業務が発生します。クラウドサインには電子契約サービス導入のための知見が蓄積されており、企業に適切なアドバイスをできることが大きな強みとなっています。
例えば日本では、上司が部下に通常の決裁で使うハンコを預けていたり、緊急時には総務部に預けてある鍵を借りて社長の机の引き出しを開け、ハンコを出して押印したりする会社も実際に存在するのが実情。ある意味ハンコは「便利な存在」ですが、いきなりシステムが電子署名に置き換わって、こうした実務的にやむを得ないと目を瞑ってきた無権代理的な行為が突然できなくなれば、決裁実務が混乱するだけです。どのように移行させるのか、すでに電子署名を行っている会社の実務的ノウハウや経験が貴重、ということです。この点は、クラウドサインに一日の長があります。

また現在、電子署名、電子契約の利用促進を図るため、法律改正や法解釈の変更が頻繁に起きています。導入企業は、自社の電子契約の仕組みに法的な問題はないのか、将来的に問題となる可能性を孕んでいないのか、といった点が気になるところですが、法律が流動的ななかでは自社の顧問弁護士に照会しても的確な回答が得られないことも考えられます。
クラウドサインの運営母体は弁護士ドットコムであり、法改正等の情報収集に長けていて「サインのリデザイン」などの自社サイトに電子署名にかかわる法律の解説記事を出すなど、情報発信を積極的に行っていることも、導入企業から信頼されるポイントです。
Docusignも世界的に使われている安心感はありますが、もともとアメリカのサービスですし、日本の法律にかかる情報提供等のサービスが未知数なところもあります。利用料の支払いがドル建てという点だけみても、ドメスティックな日本企業は一抹の不安を覚えるかもしれませんw。

クラウドサインは、契約ファイルから、契約先企業名、契約開始日、終了日、取引金額等々を自動的に判別して管理する機能「クラウドサインAI」など、電子契約にかかる管理機能を有しています。Docusignはアメリカでは契約全般を管理する、契約ライフサイクル管理のシステム"Agreement Cloud"の販売に力を入れていて、クラウドサインよりはるかに充実した機能を持っています。しかしながら、アメリカと日本ではそもそも言語が違うし、契約の作り方や構成がまったく違うので、契約内容を自動的に判別するような機能があったとしても、日本語版に簡単に移植できるのかは、ちょっと疑問です。

クラウドサインはDocusign同様、大手ネット企業のグループ企業ではない弁護士ドットコムが運営している安心感があります。クラウドサインの責任者の橘さんは弁護士資格を有していますし、中立性、健全性に関する法的リスクは低いのではと感じる人も多そうです。
立会人型電子署名の場合、認証局と呼ばれる企業に電子証明書を発行してもらいますが、GMOサインの場合、もともと電子証明書を発行する立場の認証局であり、認証局を運営している企業が電子署名サービスも行うかたちです。
自社の電子署名サービスには自社の認証局は使えない(自己署名証明書の禁止)ので、他社の認証局を使っているとは思いますが、認証局自ら行う電子署名サービスは、健全性という点で海外の企業等からネガティブな評価を受けるリスクはあるように思います。(無論、GMOサインが自己署名証明、いわゆるオレオレ証明みたいなことを行うとは思いませんが。)

電子契約はようやく端緒についたばかり。未だに導入を検討している段階の大企業も数多く存在するし、政府機関や地方公共団体、学校などはまだほとんど手つかずの状況ですから、電子契約市場はこれから何十倍にも拡大していくと思われます。
電子契約サービスは、高いシェアを持つ会社の1社総取りになるようなビジネスではないので、クラウドサインが将来的にも安泰というわけではありませんが、それでもクラウドサインは上述したような競争優位性を持っていますから、さほど容易にクラウドサインを脅かすような企業は出てこないと思います。

導入検討企業の担当がクラウドサインにしておけば安心と感じるのは、上述したような理由からで、電子契約サービスに「1社総取り」的なことは起きないことを理解していれば、現在の導入企業数の多さは、自社の導入決定にはあまり重要な要素ではないことはわかります。日本ではまだ普及期ですから、クラウドサインからみても確かに導入企業数の多さや送信件数の多さは重要とは思いますが。

実際の売上につながるのは大きな企業や自治体ですから、こうした大口顧客にいかに評価されるかが最も重要なポイント。大口顧客をどれだけ増やせるかがこの事業の成功のカギですから。

クラウドサインのような立会人型電子署名は、利用者が増えれば増えるほど更に利用者が増える、いわゆるネットワーク外部性が働くと考える人が多いようですが、ある程度、そうした傾向はあるものの、例えばビジネスソフトのエクセルやワードのように1社総取り状態が狙えるわけではないと考えます。

例えば、取引先と契約ドラフトのやり取りをするような場合、相手がワードではなく一太郎を使っているとするとファイルの変換が必要になるなど、いろいろ面倒が生じます。ワードを使う会社が増えたことで、更にワードを使う会社が増えていって、ほぼ独占状態となっていますが、これがいわゆるネットワーク外部性です。

一方、立会人型電子署名の場合、自社がクラウドサインで相手先がDocusignを使っているようなケースでも、さほど不都合は生じません。電子署名付きpdfファイルを使う限り、上述のワードと一太郎のような煩わしさは生じません。
自社で電子契約管理システムを作り、契約締結後のpdfファイルを保管できれば特に問題ないわけですから。クラウドサインでもDocusignでもみんなの電子署名でも、同列に扱うことができるはずです。(当事者型電子署名は?ですが、少なくとも立会人型電子署名は大丈夫でしょう)

そもそも契約行為には相手先が存在します。自社がクラウドサイン、相手先がDocusignを使っていることも普通に有り得えます。従って、電子契約管理用のシステムは、あらゆる立会人型電子署名に対応しなければなりません。自社がクラウドサインだからといって「クラウドサインじゃなきゃ、うちは電子契約できない」などということはありません。弁護士ドットコムにみんなの電子署名で契約の締結をリクエストしても、DocusignにAdobeSignでリクエストしても、普通に契約できるはず。自社のサービスに強引に切り替えを求められたり、文句を言わたりすることは、普通はないでしょう。

 

日本より電子契約サービスが進んでいるアメリカでは、最大手のDocusignのシェアが60~70%と言われますが、AdobeのAdobeSign、DropBoxのHelloSignなど、電子署名サービスは数十以上あるとのことです。「自社が利用する電子契約サービス以外は受け入れない」なんて言っていたらビジネスにならないでしょうし、シェアが高い企業Docusignに変えないと不便が生じるわけでもないんでしょうね。

 

このように電子契約サービスは、1社総取りが可能な強いネットワーク外部性があるわけではありません。ですから、契約件数や導入企業数がトップかどうかとか、あまりこだわる必要はないはずです。

 

ただ、クラウドサインを見ていると、多くの企業が導入しているので、企業が実際に電子契約を導入・利用する際の留意点や、トラブルへの対応ノウハウなどがかなり蓄積されています。こうした知見やノウハウに法的な解釈等の付加価値を加えて、企業に提供できることがクラウドサインの強みとなり、そのことがますます導入企業の増加につながる好循環が生まれています。

一般的なネットワーク外部性とは違いますが、電子契約サービスも利用者が増えるほど知見・ノウハウが貯まることを通じて、その電子契約サービスを採用する企業が増えていく特徴がある、ということです。

さて、電子契約や電子署名の注目度が高まり、いろんなメディアで取り上げられるようになりましたが「電子契約を行う場合、クラウドサインのような電子署名のついた(pdf)ファイルで行わなければならないのか?」という点について、説明された記事をほとんど見たことがありません。

結論から言うと、電子契約を結ぶ場合に電子署名は必須ではありません。
ただし将来、契約の有効性を裁判で争うようなことになった場合、その電子契約に電子署名法に準拠する電子署名が付されていれば、その契約の有効性や真正性が担保されるということです(必ずしも担保されるわけではなく、担保される可能性が高くなる、ということですが)。

そもそも契約行為には「契約自由の原則」というものがあり、近代私法の基本原則と言われています。
契約当事者が合意している限り、以下の自由があるということです。
①契約を締結するかしないかの自由
②契約相手を選択する自由
③契約の内容決定の自由
④契約の方式の自由

④契約の方式の自由というのは、どんな形式でも契約は成り立つということです。印鑑の押されていない契約でも、電子メールでも、口約束でも契約は成立しうる、ということです。
たとえ契約の証拠がなかったとしても、契約が無効になるわけではありません。トラブったときにその契約行為を法律に守ってもらいたいから、証拠を残すためにその契約の内容を紙に書いてハンコをついたり、クラウドサインのような電子署名付きのpdfで残したりするわけです。

つまり電子署名のないpdfファイルでも、契約はちゃんと成立するということです。
トラブルが生じる可能性が極めて低かったり、少額で裁判沙汰になりえないようなケースであれば、わざわざ電子署名を付したpdfファイルを取り交わす必要はありません。

これまでも実態として、大きな企業でも、簡易な契約については電子署名のない普通のpdfファイルで交わしているケースが多いはずです。例えば、出入り業者と繰り返し取り交わす請書(発注請負契約書)を普通のpdfで済まして収入印紙代を浮かせるようなことは、普通に行われているんじゃないでしょうか?こうした電子署名なしのpdfファイルによる契約は、電子署名法でカバーされませんが、だからといって法的に問題があるということではありません。

デジタルトランスフォーメーションで、電子契約、電子署名が注目されていますが、闇雲に電子署名を付ける必要性はありません。紙の契約よりは低コストですが、電子署名なしpdfよりはコストがかかりますから。
クラウドサインやDocusignのビジネスターゲットである、ある程度の規模以上の会社は、コンプライアンスやガバナンスの問題もあるし、これら企業は今後は社内規程等で原則、電子契約には電子署名を付すことになると思われます。国や地方公共団体が使うような場合もおそらく、電子署名付きのpdfが用いられることになるでしょう。

一方、ある程度融通が効く中小零細企業の場合は、トラブルが生じるリスクがある契約や金額がある程度大きい契約などに、ある程度絞って電子署名を付すような方向になっていくと思われます。

大企業と中小零細企業の間の契約の場合、大企業側の電子契約システムで電子署名を付したpdfを、中小零細企業側に送付するケースが多くなるでしょうから、中小零細企業側が大企業との契約のために、電子署名や電子契約のシステムをわざわざ整備する必要はないでしょう。

契約の少ない中小零細企業であれば、ベクターの「みんなの電子署名」みたいなものを使えるようにしておけば十分なのかもしれません。中小零細企業で個人事業主との間の秘密保持契約(NDA)とかが年間数件ある程度なら、みんなの電子署名みたいなシンプルなものを準備しておけば、事足りるのではないでしょうか。

ベクターから、月額固定料金不要、送信料金不要の電子署名サービス「みんなの電子署名」を開始したというプレスリリースがありました。
■月額固定料金0円の電子署名サービス 「みんなの電子署名」提供開始のお知らせ
https://newsrelea.se/w5ygqd
1年以上、文書をサーバーに保管する際の保管料金には50文書単位で月額500円必要とのことですが、他社に比べて廉価で利用できる、クラウド型(立会人型、事業者型)電子署名です。個人事業主とか中小企業の利用を見込んでいるとのことです。

みんなの電子署名のプレスリリースやHPを見ても、顧客管理システム等、既存の業務システムとのAPI連携の機能はなさそう。ある程度の規模の会社であれば、電子署名サービスを既存の業務システム等と連携させる必要があることを考えれば、みんなの電子署名はクラウドサインやDocusignとの競合となるサービスではないですね。システム連携が不要な、個人事業主とか中小企業(というか零細企業)には、そうした機能は不要ですから問題ありませんが。
 

クラウドサインやDocusignがビジネスのターゲット、つまり大きな売上を期待している相手は、業務システムと連携させて使うような、ある程度以上の規模の企業です。
ある程度の規模の会社だと、電子署名の価格だけが採用の決定要因とはならず、社内規程等に基づく契約権限の付与や無権代理決裁の防止の機能、締結後の契約の体系的保管、なりすまし防止等のセキュリティ等々、電子契約業務全体のコストを考慮して、できるだけ効果的な低コストの仕組みを構築する必要があります。
たとえ電子署名部分が無料であっても、他の業務との連携が悪くて余計なコストがかかったり、システム改修が滞ったりするリスクがあるのであれば、採用すべきではありません。また使い勝手が悪くて、電子契約の社内利用が一向に進まない、といった状況が生じては、せっかく導入した意味がありません。

さて、みんなの電子署名は"1年以上、文書をサーバーに保管する際の保管料金"で利益を出す計画のようですが、電子署名とタイムスタンプが付されたpdfファイルは、文書サーバーに入れておかなくても、ダウンロードして保存することは可能だから、このビジネスがどうして成り立つのか、ちょっと??です。マネタイズの方法、つまりどうやって収益を上げるのか不明、ということです。

みんなの電子署名に限ったことではありませんが、何らかの理由でサービスが終了しても、長期署名の期限の問題はあるものの、サーバーからダウンロードしたpdfファイルが無効になることはないですから。
ベクターは今後、サーバになにか文書管理用の付加価値を付けることで、サーバー利用を促進していくことを計画しているのかもしれませんね。

そもそも個人事業主や零細企業の場合、下請け業務の契約とかだと、発注元が作成する雛形的な契約書が、発注元の利用する電子署名サービスで送付されてくるケースが多く、自身の電子署名システムはあまり使わなさそう(この場合は発注元の電子契約サービスを使って契約することになりますから、無料で発注元のサービスを利用することになります。)
また、同じような小さな企業間の契約でも、大して重要でなく改ざんの可能性が極めて低い形式的な契約であれば、電子署名のない普通のpdfで作成して提携したほうが、何かと勝手が良いでしょう。実際、現在は大きな企業でも、メールのやりとりで(電子署名などを付けない)普通のpdfを使って、簡易な契約や注文請書とかを取り交わしているようなケースが、今でもかなり多いです。

 

小さな企業同士で、訴訟になる可能性が低い少額の契約であれば、わざわざ電子署名のついたpdfを作る必要はないようにも思います。(ある程度の規模の企業だと、社内規程等で契約の方法が定められており、後で監査部に怒られないように遵守する必要がありますが、社内規程もない小さな企業なら、後で問題にならなさそうと判断すれば、普通のpdfを取り交わしておけば基本的に問題ない、ということです)

このように考えると、みんなの電子署名にどれほどの実需があるのか、今のところよくわかりませんね。
勘違いしている人も多いみたいだけど、電子契約には電子署名が必須ではないですし、電子署名なしで契約することは法律違反でもなんでもありませんから。(電子署名法が適用されないというだけで、どんな契約形態でも、民法上の契約の自由は保証されています。普通のpdfでも電子メールでも、はたまた口約束でも、契約は成立します。)


余談ですが、無料の電子契約サービスは、すでに存在しています。

xIDという会社が運用する「e-sign」ですが、あまり普及していません。ビジネス利用の場合、いくら無料でも自社が使いたい機能が付いていなかったり、使い勝手が悪かったりすると、なかなか利用者が増えません。

決算説明資料によると2020年10月~12月のクラウドサインの契約送信件数は715,810件で、前年同期は389,588件。一方、導入企業数は2020年12月末時点で127,183社ですが、2019年12月末時点では42,453社と決算説明資料には記されています。
契約送信件数を、導入企業数で除して「1社あたりの契約送信件数」を計算すると以下の通り。(導入企業数は四半期末なので正確な"1社あたり"ではなく、あくまでも目安)
 2019年10月~12月:  9.2件/社
 2020年10月~12月:  5.6件/社
1社あたりの契約送信件数が減っており、一見すると利用が伸び悩んでいるように見えますが、これは現在、電子署名を導入する企業が急激に増えている中で、取り敢えず試験的、限定的に開始して徐々に全社に展開していくかたちを取る企業が多いということでしょう。相手先企業の同意にも時間がかかるでしょうし。
一方、早い段階で電子署名の採用を決めた大企業は、そろそろシステム連携、業務フローの見直しや社内規程の改定などを終えて、本格的な運用が始まると思われ、今後、送信件数も急増してくるはず。1件あたり契約送信件数は導入企業数との兼ね合いではあるものの、徐々に伸びてくると思われます。 

ところでGMOサイン(旧GMO電子印鑑Agree)の決算説明資料によると、2020年10月~12月の契約送信件数は36.5万件で、前年同期は13.9万件、導入企業数は2020年12月末時点で140,048社、2019年12月末時点では3,707社とのこと。
「1社あたりの契約送信件数」は以下。
 2019年10月~12月: 37.5件/社
 2020年10月~12月:  2.6件/社
GMOサインの導入企業数は「事業者につき1アカウント」とのことで受信側も入っていそうですから、クラウドサインとは導入企業数の概念が異なり単純比較は?ですが、1社あたりの契約送信件数が1年で十分の一以下となっているのに違和感を覚える投資家もいそうです。

一昨年から、弁護士ドットコム(クラウドサイン)とDocusignに投資していますが、電子署名の動向をネットで調査していました。クラウドサイン、Docusign、Agreeはどれも2015年秋にサービスを開始していますが、1年前に「Agree+電子署名」でググっても、ツイッターで検索しても情報はほとんど出てきませんでした。

Agreeの2019年のこの37.5件/社という極端に大きな数字から推測すると、おそらく1年前まではほとんどがGMOグループ内での特定用途の利用だった、ということではないでしょうか。おそらく、GMOグループ数社で、グループ内とか出入り業者との契約とかを四半期数百件規模で利用している一方、グループ外部ではほとんど利用実績がなかったから、特にニュースになることもなく、Agreeで引っかからなかったんでしょうね。

 

GMOインターネットグループは昨年、印鑑全廃みたいなことを宣言して、グループの取引業者に半ば強制的にAgreeを使わせるようにしているみたいだし、Agreeは昨年キャンペーン的なことをいろいろやっていたし、確か総額1000万円が当たるキャンペーンみたいなこともやっていたから、とりあえず無料登録している個人事業主とかがかなり増えた結果の数字が2.6件/社なのかもしれません。Agree改めGMOサインも、今後はクラウドサインと同じように契約送信件数は伸びてくると思われます。

クラウドサインのシェアは80%超と言われていますが、これは導入企業数のシェアで、決算説明資料にも掲載されている数値です。
直近の決算説明資料P17によれば、これは「2020年3月末時点、調査機関調べ」によるもので、「電子署名法2条1項に定める電子署名を用いる電子契約サービスにおいて、有償・無償を含む発注者側ベースでの利用登録社数」のシェアが80%超ということ。

 

「電子署名法2条1項に定める電子署名を用いる電子契約サービス」というのは、クラウド型電子署名と当事者型電子署名を用いるの電子契約サービスのことだと思われます。
また「有償・無償を含む発注者側ベースでの利用登録社数」とのことです。これは複数の企業間で電子契約を締結する場合、当事者全員が当該電子契約サービスのアカウントを保有することになりますが、発注した会社は1社。受信した会社が他の電子契約で発注者となっていなければ、この調査では発注者は1社となります。
例えば、建設業者が複数の下請会社に対して工事契約を電子契約サービスで行った場合、元請け1社のみをカウントするかたちでシェアを推計したということです。
ちなみにGMOサインの導入企業数は「事業者につき1アカウント」とのことで、受信側の事業者も入っていると推察されます。よって、クラウドサインとは導入企業数の概念が異なりそうですから、比較は?ですね。

およそ1年前の調査ですから、クラウド型電子署名だけでみればクラウドサインが寡占状態だったはず。当時と比べると電子契約サービス市場は急拡大し、新規参入の事業者も増えているので、現在はもう少し導入企業数シェアは低下していると思われます。

ただ、急拡大している市場で、クラウドサインの売上も急激に伸びていますし、シェアが多少低くなったところで、何の問題もありません。クラウドサイン1社では捌ききれないほどの需要が発生している状況ですから、他社も含めて頑張って欲しいところです。

先日、テレビ東京のカンブリア宮殿で弁護士ドットコムが特集されました。
その中で、クラウドサインについて内田さんは「今期はまだ投資フェーズであり赤字だが、来期には黒字にしたい」というような話をされていました。以前の決算説明会でも同様に、来期の黒字化について話されていましたが、個人的には黒字化はもう少し先だと考えていたので、来期黒字化見込みの話を最初に聞いたときはちょっと意外でした。
弁護士ドットコムは基本的に保守的で、業績見込や利用実績でブラフをかけるようなことはしないから、黒字化はほぼ確実に達成できると考えているから、こうした発言をしたと推察します。

ところで、電子契約サービス最大手のアメリカのDocusiginはもうすぐ決算発表ですが、2021/1期の年間売上は1500億円超ぐらいにはなりそうでクラウドサインの100倍ぐらいですが、Docusignはようやく黒字化するかしないかのレベルです。「クラウドサインもDocusignも同じ電子署名の会社。クラウドサインは売上が数倍になったところで黒字化なんて程遠いのでは?」と考える投資家もいそうです。

では何故、クラウドサインは売上が数十億円の規模で黒字化が可能なのか? 結論から言うとこれは、提供するサービスの違いによると推測します。

クラウドサインは、クラウド型電子署名の普及を最優先にビジネスを展開しています。クラウドサインは、利用企業の多いsalesforceやサイボウズといったシステムにスムーズに連携できるので、導入が比較的容易です。後述するDocusignのような大掛かりなシステム開発や先行投資は不要なのでコストは抑えられそうです。
弁護士ドットコムはAIを用いた契約の自動管理等、将来の契約周りのビジネスにも取り組んではいますが、日本は電子契約がようやく注目されてきたところ。まずはクラウド型電子署名の普及が最優先ということでしょう。

(クラウドサインのさらなる普及にむけて、来期以降も積極的に先行投資やセールス活動を行う必要があるのであれば、黒字化にこだわる必要はまったくないと個人的には考えています。結果的に黒字になるのはウェルカムですが、ここしばらくは、アクセル全開で普及を頑張るフェーズでしょうから、必要であればどんどん先行投資していってほしいところです。)


一方のDocusignは単なる電子署名のビジネスから、契約全般を管理する契約ライフサイクル管理(CLM)のプラットフォーム"Docusign Agreement Cloud"を提供するビジネスへの転換に数年前から取り組んでいます。電子署名の提供に比べて大掛かりなビジネスで競合も多いと推察されますが、先行投資やシステム開発にコストが嵩み、黒字化に時間がかかっていると思われます。コロナ禍により多くの企業で、こうした大きなシステムの導入が見送らていたこともDocusignには逆風になっているのかもしれません。
つまり、Docusignは電子署名の収益をDocusign Agreement Cloudの開発や販売費用などの先行投資に積極的に突っ込んでいるから、現在の売上規模でも利益が出ていないということではないでしょうか?敢えて利益を出さずに、積極的に先行投資を続けてきた、という見方もできます。

最終的に成功すれば、Docusign Agreement CloudのようなCLMプラットフォームの提供を行うビジネスのほうが、単なる電子署名のビジネスより大きな売上、利益につながるのは間違いありませんが、いつ収益化できるのかはちょっと不透明です。電子署名の導入を決めたばかりの日本企業が、CLMプラットフォームのようなものをいきなり導入するのは困難でしょうから、Docusignも日本でのビジネスはしばらく、電子署名が中心とならざるを得ないでしょう。

ちなみにアメリカでも電子署名は潜在市場規模のまだ数%程度の普及と言われていますが、コロナ禍によりクラウド型電子署名の利用が急速に利用が拡大、トップシェアであるDocusignの株価は現在、1年前の3倍程度の260ドル付近で取引されています(直近のEPS予想は0.22ドルですから、弁護士ドットコム同様、こちらもPERは数百倍ですw)。

昨年「Docusignは日本を将来有望な市場のひとつと考えている」との発言がCEOからありましたが、Docusignの日本での現在の年間売上はおそらく数億円程度。Docusignの会社全体の売上の1%にも満たない状況ですし、そもそも日本の現在の電子市場全体の売上ですら、Docusign1社の売上の数十分の1程度しかない状況。
一方、日本の経済規模から考えれば、電子署名ビジネスはかなり大きな潜在的需要がある有望な市場であることは間違いないですが、海外大手だからといって差別化が容易な市場ではありませんし、欧米とは商習慣もことなるので、お金をかけて一気呵成に市場を取りに行くようなことは難しいでしょうから、外資系の日本法人や商社など、Docusignにすでに馴染みのある企業を取り込んでいく作戦なのかもしれません。(「海外との取引で使うならDocusign一択だ」みたいに言う人もいますが、クラウド型電子署名の仕組みを理解していないように思います。)

弁護士ドットコムのクラウドサインはクラウド型電子署名サービスを提供しています。
クラウドサインの利用料は、料金プランごとの月額固定費用と送信1件あたり200円の送信費用。料金プランにはStandard(月額1万円~)、Standard Plus(月額2万円~)、Business(月額10万円~)の3種類があり、Businessプランには承認権限の設定やSSO機能などが実装され、利用件数が多い、比較的大きな企業の利用を想定しています。またこのほか、ユーザー数1名で月5件までであれば、お試しフリープランを無料で利用できます。

多くの企業が導入してたくさん利用(送信)すれば、クラウドサインの売上があがる構造ですが、契約や注文請書等のやりとりが多い、大きな企業が利用すれば送信件数も多くなるので売上、利益への貢献が大きくなります。逆に、利用が少ない比較的小さな企業がいくらたくさん導入しても、売上、利益への貢献はあまり大きくありません。
例えば、大きな企業が1社、Businessプランでの導入を決め、500件/月の利用がある場合、少なくとも10万円+10万円で20万円の売上となります。一方、零細企業200社が導入し、5件/月の利用がある場合、すべてフリープランが採用されたと仮定すると、後者の場合は導入企業数も送信件数も前者を上回っていますが、売上はゼロです。
整理すると、
前者 導入企業数:  1社 総送信件数: 500件/月 売上:20万円
後者 導入企業数:200社 総送信件数:1000件/月 売上:ゼロ

これは極端な例ですが、電子署名ビジネスは、有料プランを利用する比較的大きな企業の利用が増えないと売上、利益が増えない仕組みということです。電子署名ビジネスは、1社総取り型ではないもののネットワーク効果が働くので、たとえフリープランでも利用する企業が増えることは重要ですが、そうした利用が利益に直接つながるわけではありません。
小規模利用の場合、電子署名サービスを自社システムに連携しないケースがほとんどでしょうから、他の電子署名サービスに乗り換えたり、複数のサービスを利用したりするようなケースも多いと思われます。

ちなみにアメリカの最大手、Docusignは四半期の決算プレスのときに、重要なKPIとして、導入企業数に加えて10人以上の組織での導入数も発表しています。比較的大きな組織の導入が利益に貢献していることから、経営に重要な指標として発表しているわけです。
ちなみにDocusignの導入企業数は80万社超、そのうち10人以上の比較的大きな組織は十数万社ぐらい。日本ではクラウドサインの導入企業数は現在15万件程度で、電子署名の本格的な利用がようやく始まったばかり。
同様の発表をすれば四半期ごとのバラツキが大きくなり、誤った情報を投資家に提供しかねないから現在、同様の発表は行っていないと推測しています。おそらくクラウドサインも、将来的には同様に比較的大きな組織の導入数を発表することになるはずです。

余談ですが、先日、GMOグローバルサインホールディングス(GMOGS)が「GMO電子印鑑Agreeの導入企業数でクラウドサインを上回った」と発表しました。GMOGSは少し前まで「アカウント数がクラウドサインの導入企業数に肉薄している」というようなことをさかんに宣伝していましたが、突然、アカウント数から導入企業数の発表に変更され、発表した途端に導入企業数を追い抜いたとのことでした。

GMOGSが以前発表していたAgreeのアカウント数の推移のグラフと、今回から発表されている導入企業数の推移のグラフはほぼ連続しているような印象。このことから推察すると、Agreeは1社1アカウントの小さな企業が大半を締めているのではないでしょうか。これがもし事実ならば、Agreeの売上にほとんど貢献しない企業を大量に抱えていることになります。
以前、このアカウント数のカラクリについて書いたエントリは以下。
■GMO電子印鑑Agreeの "アカウント数" について(2020/11/12)
https://ameblo.jp/2sc372/entry-12637638131.html

自分の周りにAgreeを利用している人はいないので、導入企業が急激に増えている印象がありませんが、GMOの出入り業者とか個人事業主なんにどんどん導入させているのかな? Agreeの導入企業の属性はGMOGSにしかわかりませんから、真相は不明です。念の為に付け加えると、クラウドサインも多くの中小企業の顧客を抱えており、一定規模以上の企業は一握りだと思います。だから、こうした導入企業数で勝った負けたと騒ぐのは、少なくとも現時点ではあまり意味はないでしょう。クラウドサインのホームページには多くの大企業が導入企業として紹介されていますが、こうした企業を増やし、いかに使ってもらうように自社の商品をブラッシュアップするかが重要ということです。

 

ところでGMO電子印鑑Agreeはまた名前を変えて「GMOサイン」になったとのこと(1年前まではGMO電子契約サービスAgree)。電子署名関連は熊谷さん主導でやっているみたいですが、電子実印とが電子契約印とか電子認印とかいろいろ種類があったり、AgreeからGMOサインに突然名前を変えたり、GMOGSは戦略が少々とっ散らかっている印象。個人的にはGMOGSはGMO-PGの決済周りのビジネスと連携していくと、いろいろ面白いことができそうだと思うんですが、そうしたニュースはないですね。

負けん気が強い熊谷さん、いつもの悪い癖が出ていなければいいんですがww。まあ、弁護士ドットコムとしては、ヘタに対抗意識を出す必要はまったくないと思いますがw。

■決算短信
https://corporate.m3.com/assets.ctfassets.net/1pwj74siywcy/6s1AEdBmX6talG3ddpbQgr/48ed65f0db28381eb46e971bc45e92a7/___21___3Q_______0128.pdf
■会社説明資料
https://corporate.m3.com/assets.ctfassets.net/1pwj74siywcy/ojbsBGw3xY2jDy4o2HuZX/f5e151dc59e5f5110f1d073368967c12/20210129_presentation_J.pdf

2Qに続き、絶好調ですね。
「Q3(3か月間)の株式の売却、評価などを除く事業面での対前年利益成長率は+87%とさらに加速」とのことです。
会社説明資料(P12)に「製薬企業の営業コスト配分とM3にとってのTAM」という資料が出ました。
「MR関連費用を含む製薬企業の営業コストの大幅縮小と同時に、インターネットの割合が拡大する見込み」とのこと。今後、製薬会社のMR関連費用は半減して約7~8000億円となるが、そのうちインターネット関連が2~3000億円つまりこれがエムスリーのマーケティング支援事業のTAM(潜在市場規模)ということです。


先日の東洋経済にもよく似た数字の内容が書かれていましたが、この会社説明資料は、マーケティング支援部分についてのものです。現在の規模は約300億円(エムスリーは8~9割の約240~270億円)ですから、7~10倍のポテンシャルがあるということ。自分が投資している理由のひとつが、この成長ポテンシャルの高さです。
□エムスリーに投資する理由【エムスリー】(2020/8/30)
https://ameblo.jp/2sc372/entry-12621310475.html

さて、今回の資料では海外の好調が目立ち、インド市場の成長についても記されています。
セグメント別で見ると、主力のメディカルプラットフォーム事業の利益は274億円で対前年比+95%が突出していますが、2番めにセグメント利益が大きいのは海外事業で83億円、対前年比+80%というのは注目に値します。
会社説明資料によれば海外事業は、
・アジア中心に拡大(アジア売上前年同期比2倍超)、特にインドの成長が加速
○米国治験事業が回復し、欧米も全般的に堅調に推移

インドについては、
・M3 Indiaを基盤として重層的に事業を展開。約45万人の医師(インド医師の約半分)とコンタクト可能
○ COVID-19の影響もあり、製薬マーケティング事業、調査事業、医師向けeラーニング事業の各事業が好調
○ 利益率の高いインターネット系サービスが主。利益率は米国や欧州よりも高い

インドはほぼ、中国と同程度の人口(13.5億人)を抱えていますが、医療体制は中国に比べてもかなり遅れています。医師数は中国の260万人に対してインドは100万人と半分以下、医薬品の市場規模は中国の五分の1程度とまだまだですが、人口が多く非常に成長ポテンシャルが高い市場です。
以下の資料を見ると、インド市場の伸びしろの大きさがわかります。
■医療国際展開カントリーレポート-インド編(2020/3)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou/downloadfiles/pdf/countryreport_India.pdf
■医療国際展開カントリーレポート-重点国の基礎データ比較(2017/3)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou/downloadfiles/pdf/countryreport_comparison_basicdate_JUE.pdf

エムスリーは2016年にインドで合弁事業を開始していますが、これまで収益にインパクトがありそうなプレスリリースはほとんどありませんでした。
■インドにおける合弁事業開始に関するお知らせ(2016/8)
https://corporate.m3.com/ir/release/2016/pdf/20160804_02J.pdf
■インド医師・医学生コミュニティ DailyRounds 社のグループ会社化(2019/3)
https://corporate.m3.com/ir/release/2019/pdf/20190314_02.pdf
■Manthan社のグローバル医師向け市場調査事業の買収(2020/3)
https://corporate.m3.com/ir/release/2019/pdf/2003_Mpanels-PressRelease%28J%29_cl.pdf

今回の会社説明資料では「(インドは)国別増益額は、中国を越して、アジアでは一番伸長」とあります。特殊かつ一時的な現象というような記載はないので、インド市場での今後の躍進が楽しみなところです。「増収」ではなく「増益」、「増益率」ではなく「増益額」であることは、大きなポイントです。

中国にせよインドにせよ、医療体制の整備が急務であることはかなり前から指摘されてきましたが、コロナ禍により、政治的にも急加速せざるを得ない状況になっています。
エムスリーは中国でもJVにより事業を進めていますが、中国は医薬品の横流しやニセ薬、医療従事者への賄賂、横領などが横行していることに加え、共産圏(というか一党独裁体制)でのビジネスという極めて大きなリスクが存在します。国の意向(役人の意向?)ひとつでビジネスが潰されたり、撤退させられたり、日本人社員がよくわからない理由で逮捕されたりするリスクがあるのは怖いです。その点、インドはまだ法整備が不十分な部分はあるでしょうけど、少なくともアッパー層は西側の常識が通じますからねw。

最近、株価が急落しましたが、ここ数ヶ月ちょっと過熱気味だったし、調整が入るのは仕方のないところ。ファンドや個人の利益確定売りも出やすい状況ですが、会社のビジネス環境や既存事業に対する取り組みが変わったわけではないし、長期スタンスでの保有なら特に問題ないと考えています。最近、エムスリーに投資し始めた人たちは気が気じゃないかもしれませんが、「数年後に倍ぐらいになればいい」ぐらいのスタンスなら、慌てないのがベター。成長性の高い会社の株価は、2,3割の上げ下げは仕方ないところですからw。

エムスリーの株価は、2018年10月から1月にかけても2500円台から1300円台に急落しています。
このときは、メディカルプラットフォーム事業強化のための先行投資により一時的に利益成長が鈍化する中で、2018/10/1に株式分割による需給悪化が発生、10月には外資系ファンドHarding Loevnerによる大量売却をきっかけに株価が急落、短期勝負の個人等の狼狽売りが続き株価は大きく下げました。ちなみにHarding Loevnerは12月末から年初に底値付近で大量に買い戻し、短期間でかなりの利益を上げたことが判明していますw。売り崩して大量取得した格好です。
□Harding Loevnerの変更報告書提出と最近の株価下落(201901/16)
https://ameblo.jp/2sc372/entry-12433304346.html


今回は2018年のような需給懸念や成長懸念はないけれど、投資経験が浅い個人や、株価変動を使ってギャンブルをやっている(ことを投資だと勘違いしているw)個人がかなり入り込んでいる状況。ここのところ、ツイッターで"エムスリー"を検索しても、売った買ったの話や、株価チャートやら指標がどうのこうのといったツイートばかりになっているし、そうした人たちの狼狽売りや空売りチャレンジwがいつ落ち着くかがポイントですね。
Baillie Giffordが2/2の変更報告書で、1%強を処分したことがわかりまししたが、こうした個人の振り落としを狙って、売り仕掛けをしたのかもしれません。まあ、真相は不明ですがw。

さて、どうなることやらw。

売上高         3,806百万円(対前年+27.1%)
営業利益         222百万円(対前年△ 2.3%)
四半期純利益     111百万円(対前年△21.2%)

増収減益ですが、弁護士ドットコムは今期はクラウドサイン事業に注力するための先行投資を強化する計画でしたから、減益は問題ありません。
ちなみに今期の業績予想は売上高のみ5,200百万円、利益は非公開で「黒字は確保」とのことでした。クラウドサイン事業の年初の売上予想は14.2億円でしたが、3Q累計で10.52億円なので、目標達成は確実でしょう。前期の2倍以上の売上ですが、「来期以降も2倍成長を見込む」とのことで、倍々ゲームが続く見込みということですね。
弁護士ドットコムは、クラウドサイン関連を中心に積極的に先行投資を行っている状況にあり、減益となることは全く問題ありません。クラウドサイン事業は現在、目先の損益など気にせず、アクセルベタ踏みで投資していくフェーズですw。
 

弁護士ドットコム事業や税理士ドットコム事業は停滞気味ですが、弁護士ドットコムの株価がかなりハイバリューなのは、クラウドサインの将来性に対する期待からであり、決算説明資料のポイントは、あくまでもクラウドサイン事業。

今回の決算説明資料によれば、クラウドサインは優良企業数が2倍、ビジネスプランが9.4倍、契約送信件数は2.3倍、売上高は2.6倍とのこと。クラウドサイン事業が急成長を続けていることが確認できました。

さて、クラウドサインが開示しているKPI、導入企業数と契約送信件数について見てみます。
まず導入企業数ですが、2020/12末で127,183社、2021/1はすでに14万社となっているとのこと。
2Q末が107,002社だったので、10月~12月で約2万社の増加でしたが、直近は1月だけで1.3万社も増えているということです。利用企業数増えると加速的に導入企業が増えていく、いわゆるネットワーク効果で導入企業数の伸びが加速していることがわかります。
ただ、大きな企業ほど、クラウドサインを導入してから本格的に使い始めるまでにかなりの時間がかかります。これはシステムの改修はもちろん、決裁ルールの見直しや社内規程の改正、社員教育などの準備が必要なため。限定的に一部の部署で導入、そこから全社に展開するようなかたちも多いでしょう。3Qに導入した比較的大きな企業でも、本格的に使い始め、クラウドサイン事業の売上に貢献し始めるのは数カ月先になるのかもしれません。

ちなみに「GMO電子印鑑Agreeは"アカウント数"が急増しており、クラウドサインを猛追している」みたいなことをGMOの熊谷さんは盛んにアピールしていますが、クラウドサインの「導入企業数」は、Agreeの「アカウント数」と単純比較はできません。

そもそも、ある程度の規模の企業であれば多数の決裁権者がいるのが普通で、導入企業数が1社でも決裁権者の数だけアカウントが必要になります。一般的な会社だけ見ても、アカウント数は導入企業数よりかなり多くなるはず、ということ。

また、例えばスポーツクラブが入会者との契約に利用すれば、入会者の数だけアカウントができますが導入企業は1社。自社社員の福利厚生やアルバイトの雇用契約のために社員にアカウントを持たせれば、社員数分のアカウントができますが、導入企業は1社です。
GMO電子印鑑Agreeはアカウント数ではなく、導入企業数を公開すべきだと思いますw。
以下、GMOのアカウント数について書いたエントリです。
■GMO電子印鑑Agreeの "アカウント数" について(2020/11/12)
https://ameblo.jp/2sc372/entry-12637638131.html

次に、契約送信件数は715,810件ですが、こちらも加速的に増えてきています。決算説明資料には「大企業の獲得が進んでおり、契約送信件数は加速的に増加 今後も更なる増加を見込む」とあります。上述の通り、組織が大きければ大きいほど、電子契約の導入には時間がかかるので、来期初の2021年4月からの全社運用に向けて準備を進めている、みたいな企業がまだ多いのではないでしょうか。今後、加速的に増えるのは間違いないでしょう。

契約送信件数もGMOのAgreeのアカウント数同様、必ずしも事業の成長と比例するわけではありませんが、日本は電子契約の導入がようやく端緒についた時期でもあり、大企業が本格的に使い始めたかどうかの目安にはなりそうですね。

最後にアメリカの最大手Docusignの数字を比較のために掲載します。ちなみにDocusignのシェアは70%前後と言われています。
Docusignは直近の顧客数が82.8万社、うち従業員数が10人以上の法人・組織は11.3万社、年契約額が30万ドルを超える顧客は520社とのこと。Docusignは契約全体を管理するシステムの販売も強化していて一概に比較できませんが、今期(2021/1期)の売上予想は1,400億円ぐらい。Docusignもコロナ禍が強烈な追い風となり、急成長を続けていますが、クラウドサインと同様、投資が先行しているためほとんど利益を出していません。株価は1/23の終値が$255.15、EPSは3Q時点で▲$1.19、予想EPSは$1以下ですから、PERはクラウドサインと似たようなものですw。

ちなみに、Docusignは顧客数は公開しているもののアカウント数、契約送信件数を開示していません。上述したようにこれらの数字は、恣意的に増やそうと思えば増やせるような数で、経営状況の目安としてはあまり意味がない、ということなのかもしれません。アメリカはすでに大企業が導入して本格的に使っている状況ですから、日本のように導入企業数に遅行するかたちで送信件数が増加するような現象は見えないということかもしれません。

投資家が最も注目しているのは、従業員数が10人以上の法人・組織の増加。零細企業や個人事業主はネットワーク効果の点では重要であるものの、どれだけ増えても売上に直接貢献しないというのはDocusignもクラウドサインも同じ。クラウドサインが決算説明資料で大企業の導入が増えていることをアピールしているのは、ある程度の規模の企業の導入が成長、売上増のキーポイントだからです。


さて、クラウドサインの導入企業数は、Docusignの六分の一程度ですが、売上は百分の一に過ぎません。電子契約ビジネスは本格的に利用されて初めて売り上げが増える仕組み。あくまでも仮定ですが、日本でも数年前から電子契約の導入が進んでいたとすれば、Docusignの六分の一程度の売上は上がっていたということでしょう。裏を返せば、現在の導入企業だけでも本格的に導入が進めば数年以内に売上が200億円ぐらいになる可能性があるという見方もできます。今後の成長が楽しみですね。
以下、Docusignについて以前に書いたエントリ。
■米Docusignの日本展開について(2020/12/07)
https://ameblo.jp/2sc372/entry-12642531394.html