「白石簡易型EMDR」

 

Cabinet de Medico-Psy Φ

 

白石潔

 

今回は、カリフォルニアのパロ・アルトの研究所で、「トラウマ治療」の研究を続けたシャピロ女史が、発見したEMDRである治療的次元の大発見を、小生が、故崎尾英子女史に、学会の懇親会までの短い時間に、私の友人であった、故五十嵐義夫先生を対象者にして、デモンストレーションをして下さった後に、個人的に、「EMDRの要素の根源的原理」を徹底的に模索し、「REM睡眠下の眼球運動と脳梁を介してのラテラリゼーション(=大脳皮質の側性化)」を中心にした、極短時間の「PTSD型トラウマの治療」の治療を、35年前に、実践し始めて、今日に、至っていることを報告することにした。

 

この技法は、極めて簡単で、「言語的次元の媒体性は、‟トラウマ場面の想起”と‟治療状況でのトラウマ場面の変容様相の評価”」のみで、「眼球運動」と「脳梁機能を活かした‟左右両側へのタッピング”による‟刺激の入力”」に限っている。

 

フロイトの「脳神経学的次元の‟夢の科学(=無意識)”及び、‟トラウマ患者”から、発掘・理論化された‟死の欲動”」とも、繋がりを持ち得る技法で、<‟睡眠下”に於ける‟夢現象”と‟眼球運動”>の相関性にも繋がる。

 

さらに、<‟夢”と‟夢内容”と‟夢現象”の‟構造的相関的要素”>が、ラカンの「シニフィアンの科学」による、<‟数学的次元”にある‟言語次元の解析”>とも繋がりがあることが理解できる。

 

Kyoは、アメリカのカリフォルニアのパロ・アルト・メンタル研究所の研究者であったフランシーニュ・シャピロ女史が、“眼球運動”に糸口を見出し、発見した“PTSDの治療法EMDR”(1987年)の実践を、日本にEMDRを紹介・導入した故崎尾英子女史と彼女の友人でもあり私の友人であった故五十嵐義雄と学会の懇親会で出会い、EMDRの要点を教えてもらった直後から、個人的に、‟シャピロ女史が見出した技法の根幹にある要素をREM睡眠時の眼球の動きと脳梁の次元(大脳皮質の側性化と辺縁系の機能)”を中心にした徹底的な探究をして、35年程前に、極めて短時間で実践できる“白石簡易型EMDR(=言語に関しては、脱感作に対する当事者評価(=トラウマ場面の強度を10段階に設定し、トラウマ場面の消去状況を0に至るまで確認して行く聴取)のみで、眼球運動の様相の観察とタッピングに限定した技法:詐病及び疾病利得を特定しやすい)”を、“PTSDを中心にしたトラウマの臨床的治療”に役立てながら、今日に、至っています。

 

[臨床的事例の所見と経過]

 

ここで一つの思春期の事例を紹介してみます。

 

初回の面談では、母親の発言を控えてもらい、本人から、「不安及び緊張を抱えた状態で、若干、聞き取り難い言語表現であった」が、<何に?困って?何が?起きているのか?>を傾聴しました。

 

その内容は、①「“何か、やろうとして、やり始める”と、“何か?の刺激”で、“●●●で転落した”ことが残っているので、安心感を持てずに、不安が高く、いつも緊張して、“思っていることが、思ったように出来ていない”」②「特に、女の人を信じられない」③「女の人の声が聴こえると“恐怖を感じる”」が、“母親や安心できる女性”に関しては、“恐怖反応”はない。④「●●●で、転落したことを“いつも思い出して、怖いし、怒りの感情を抑えられない”」⑤「“転落や女の先生”が出てくる怖い“悪夢”を、いつも見ていて、“眠るのが怖い”」⑥「しっかり集中して、考えがまとまらないし、考えが浮かばない」⑦「外出するのが怖い」等の内容として臨床的次元にある表現と認識し、<PTSD特有の“原始的な退行反射回避型防衛”のメカニズムが、優位に作用している>との結論に至りました。

 

さらに、精神的には、<不安を抱えた抑うつ状態>が、軽微であるが、明らかに顕在しており、特に、<食事・睡眠・行動面>に影響が起きていることが、臨床的次元で無視できないと思われた。一応、本人が好きな「Xの曲を聴いて“英語の歌詞を完璧に聴き取る”ことができている」ことも、<貴重な能力>として評価もしておきました。

 

乳幼児期に処置を受けている循環器系の異常(=数回の手術が施行され思春期以降に再手術が必要)による“低酸素型の呼吸状態”及び“おそらく二度の脳血管障害による右側下肢と左手の複合型麻痺”を基礎疾患に抱えていることから、<“事故”を代表とする“外傷体験”は、“原始的反応”が、“悪性刺激”に対して、“過剰型過敏反応状態”を引き起こしやすい“特徴・特性”があることに留意しなければならない>との見解に立ち、<本人にとって、安心感を保証できる“保護的環境”が必要である>ことが了解できました。

 

また、行動医学的見解では、「PTSDに観られる“回避型行動優位の状態”で、“外的悪性刺激に過敏反応を起こしてしまう状態”」と記述でき、精神力動次元では、「“悪性情動処理不全症候群”に属している“不安を抱えた悪性緊張処理不全の状態”」と位置付けることが可能であると思いました。

 

一応、複合型麻痺による、「右下肢・右手の神経学的刺激への反応及び左右の眼球運動様相」を確認し、本人と母親に安心感を与え、次回は、「白石簡易型EMDR」を修正した方法を施行することを伝えて面談を終えたのです。

 

その後、本人の基礎疾患を鑑みて、<”脳梁と直結している左右の指先(=末梢の低体温化が顕著)“への”軽微な両側タッピング”を、”低酸素型の血流の状態“の観察>を行いながら、<本人の”セルフモニタリング“を目安>に継続しました。

 

初期には、「不安及び緊張状態が和らぎ、”言語表現も豊かになりました“」が、「”女性の声”及び、特に、”〇・〇・〇”という’音節’を聴くと“過去の恐怖の場面”が“原始退行反射型の想起が起こる”」という状態が観られましたが、徐々に、<脱感作型の効果と思われる“レジリアンス(=大脳皮質への脳内分泌であるオキシトシンと云われる物質の向上による生命的危険な刺激への耐性の良好による適応の改善)の向上”>と<“思春期の自我機能の良好な発達”>が、観られるようになってきました。

 

そして、この時期をきっかけに、<眼球運動と斜視に変化の様相>が観られ、安定した状態が確保できてきていましたが、「もし、あの先生でなかったら?」と悔しい想いを、<社会的成熟化を備えた“思考の芽生え”>と共に表現できるようになってきた。

 

しかし、高校に進学した直後に、「Zの先生が、“女性で、喋り方や態度”で、“過去の場面が思い出される”」との表現が為されましたが、<“真正の一次的原始反射型の防衛のメカニズム”>とは評価せず、<原始的反射型防衛反応であるが、“間接的対象による二次的反応次元にある防衛メカニズム”>と判断した上で、<“脳梁”に直接的に作用させる“両手の指先へのタッピング”を施行する>ことにしました。

 

そして、安定した状況が続き、xxxx年y月1z日に、「“○○○事故の裁判”のことが、初めて、表現されたのですが、“例外的にPTSD型トラウマ反応”」は、観られなかったのです。しかし、同年a月b日に、「学校dの不注意が要因で、“原始反応型の恐怖反応”の出現>が報告されました。

 

この状況に関する本人の表現を通しての、臨床的な評価は、<防衛メカニズムの動態は、“原始退行型反射の防衛メカニズム”として認識でき、“レジリアンスの向上”が良好で、“悪性の徴候学的所見の持続性の保持”は減少している>との了解性でした。

 

この問題が、解決した後には、“心身の脆弱性”を抱えている状態を観察しながら、<“レジリアンスの向上”及び“自我機能の向上”の評価と“身体機能全般”に関しての“医学的次元の要素の理解”を深められるようなアプローチ(=本人が罹患している身体次元の理解を深められる心理教育:身体図式から身体像への確立に作用する)>に専念してながら今日に至っています。

 

用語に関しての補足:

 

①    「原始的」:精神分析に於ける極めて、新生児・小児期の精神次元の様相。

 

②    「退行反射回避型防衛」:<フロイトが、初期に取り組んでいたトラウマに対しての治療で、良好な治療経過見出された、“反復型のトラウマ場面の想起現症”>で、<神経学的には、“弓反射”といわれる“入力されたある刺激量が、一瞬にして反射型の出力反応状態”を呈する>との理解をもとに、<PTSD型の体験者には、同様のメカニズムとして作用している>という理解になります。

 

③    「悪性情動処理不全症候群」:情動とは、代表的には、「怒り・恐れ・喜び・悲しみ等の感情が急激に邪気されている状態」と認識されており、この情動量が脳機能全般で良好な処理が出来ていない場合に、<不安の亢進・強迫性の出現・短絡的行動を代表とする行動面への異常を含めた身体化された症状(=自律神経の異常による)の出現>が、臨床的次元に診られる場合のことを示唆しています。この状態に関しての脳科学の次元で、個人的に重要視しているメカニズムには、“大脳辺縁系の機能に属している要素群”が大切であると思っています。

 

④    「脱感作型」:行動医学の次元で表記されている用語です。“行動療法”と呼ばれている治療の目的は、「不快な対象や状況に対して、“強い嫌悪・不快感や不安”による、“社会・家族的次元の円滑な日常生活の困難状態の改善”」を目指しており、「症状を抱えている本人への“段階的治療プログラム”に基づいた“暴露療法(=不安・不快・恐怖への耐性の強化)”を施行し、“数値化された変化の主観的自己評価(=及び家族等の客観的評価)”を指標にしながらの“症状の改善策”」と理解します。

行動療法の「暴露療法」は、シャピロの「脱感作」と、ある意味、“同義の次元にある治療の目標であり効果でもある”と理解できます。

 

⑤    「レジリアンス」:この用語は、機械工学に由来しうる<“物理・化学”の“量的耐性の強化による機能の向上”>との理解が可能で、人間の精神次元に対しては、極端に単純化すれば、心理学的には“ストレスになる要素に対しての耐える力の向上”と理解できます。PTSD型の治療過程での“レジリアンスの向上(=精神的回復力)”には、2004年にボナノの、<“精神的回復力”に伴う、“脳内へのオキシトシンの分泌増加”が観られる>との研究発表もなされている。

 

⑥    「一次的原始反射型」:精神分析の創始者であるフロイトは、<“脳神経生理学者”であり、初期の研究論文に記載された“第一トピックス”に“無意識の原本である一次過程の様相”>があります。この事実は、「弓反射」と同次元の極めて原始的な神経学的な様相との理解になります。

 

⑦    「二次的反応次元」:先に述べているフロイトの”第一トピックス“には、“人間の無意識と前意識と意識”に関しての“構造的動態”で、<人間の知覚している要素と“精神装置”>のメカニズムが理論化されています。この書面では、<臨床的治療過程の様相を“神経学にも繋がりを持ちうる記述”>を採用しており、記述されている表記は、<“知覚された対象や状況”に対象に対する反応が、“前意識次元の反応”>との認識になり、“比較的に良好な治療的効果”と理解して下さい。

 

⑧    「退行反射型」:この記述は、今度は、フロイトの“第二トピックス”で理論化された<“人間の精神機能の構造”が、“本能衝動と日本語に訳されたエスと自我と超自我”となっており、“現実原則(=例えば、法に基づいた物事への共通認識での社会的共存等)”と“自我”は、向き合っての日常生活を営んでいる>との理解を前提にして下さい。

“比較的に良好な治療過程”で、「レジリアンスの向上」も見られている可能性が在り、<脆弱であった、“自我機能の向上”>が認められ始め、<“原始的反応優位な状態”から、アンナ・フロイトが分類した“自我の防衛機制”にある“退行”との認識に至ってきた>ことでの記述になりました。

 

※※※

 

・白石簡易型EMDRに関しての画像は存在しますが、大きな医療機関の専門医とのセッションですので、やむを得ませんが難しいです。しかし、文章に記述している内容の理解に、PTSD型のトラウマを抱えている患者の殆どが“トラウマに至った場面の想起”が多いという臨床的徴候学的な症状を呈しています。この事実は、<“脳神経学的次元”で考察していくと、“視覚的画像が、脳梁を中心にして両側頭葉と後頭葉と頭頂葉での伝達機能に委ねられているメカニズム”と“辺縁系に属している偏桃体機能へ作用させている”>ことが理解できます。このメカニズムを前提に治療法を考えると、シャピロ女史が発見した“左右の眼球運動”と“両側へのタッピング”の有効性が理解できます。この理解に基づいて、<想起される場面を“消去する(=脱感作)”ことで、“不安を伴っている怒りや恐怖を邪気させる情動への作用も軽減していく”>という効果が得られるのです。

私の技法の基本的な位置付けは、<シャピロ女史の大発見>の“原理の探求”にあり、その原本は、<フランスのエイのイギリスのジャクソンの研究を基礎にして“器質力動論”によるネオ・ジャクソン派の設立といえる精神医学体系>にあります。

 

・行動療法と同様の考え方で宜しいのですが、私の発案した白石簡易型EMDRは、<セッション状況での“当事者自身の体験している脱緊張と場面の消去状況過程の評価”>に為っています。家族を中心にした“第三者の評価”は、行動療法と同じく“日常生活に於ける客観的評価”に為っていますが、“数量化された評価”ではなく、“生活全般の質と量の良好な変化の有無”と云えるかも知れません。

 

・本人は、“循環器系と脳神経系”に係わる大きな基礎疾患を抱えていますので、発達・成長に伴う“病気についての理解出来る範囲での理解”が、“心理教育的アプローチ(=ニューヨークのワイルダーの医学的領域全般への応用)”によって、“治療的効果”を良好な結果に導けると思われます。

 

・事例に関しての予後については、“思春期の心身の安定度”によって変化するので、思春期の時期に「PTSD型のトラウマ場面の再燃が出現した場合の状況」での臨床的評価によります。主治医によるDSMの診断基準を満たしている思春期男子への初回のセッション状況は、主治医の診断と合致する所見で、ICD11の基準も満たしているとの見解でしたので、私の懸念の核になっている予後的徴候学的症状は、<弓反射型の“トラウマ場面の再現”と“思春期のうつ心性”の合併状態>となります。