秋の夜長の岡田彩花 | 2コ下のブログ

 

相変わらず店は繁盛していて予約困難、告知は遅い、自分の都合も合わなかったりして、彩花に会うのは困難を極める…なんて言ってみるが、実際にはほぼ毎週会えているのだから、現役の頃以上である。いつまでもこんな幸せが続かないのはわかっているが、刹那を即時消化するのはサバイバルの基本であるし、アイドルの原則ともいえる。明日をも知れぬ世の中なのだから、明日後悔せぬよう、遠慮なく楽しむことにする。

火曜の17:00に予約の電話を入れた。金曜は未姫ちゃんと彩花だから人気がありそうだと思って早めに電話をしたのだが、なんと貸し切りという。13期&14期DVDの発売日だから、おそらく未姫ちゃんつながりで店を占拠しやがったな、と思ったがお店も経済が大事なので仕方がない。文句があるならお前も彩花の来る日に店を貸し切ればいいだろう、ということである。握手券を買い占めるより、IWAを貸し切って18時から23時まで5時間彩花を独占するほうがきっと安いよな…なんて計算をしてしまうあたり病んでる。もちろんそんな金はないので机上の空論だけれど。ついでに、前日の木曜日(19日)は空いているかどうかを確認すると、まだ大丈夫だという。当日何時に行けるかわからないので、予約はしないでおく。



当日10月19日になり、16:45頃に京都駅ホームから電話する。電話に出てくれたのはママ。


自分:今日19時30分すぎに一人って入れますか?
内田:えーっとね、申し訳ないけど今日はいっぱいね。早い時間なら空いているんだけどねー。ごめんなさいね。


軽くショックだったが、仕方がない。座れなくても、差し入れだけでも彩花に渡せればいいやという気持ちでダメ元で店まで行くことに決める。新幹線の席は、20分を節約して3列の真ん中で妥協した。車内でビール1.5リットルとカツサンドを2セット平らげて、まあまあいい気分になってお店へ。

19:50入店。受付でみると、この時間帯はほとんどガラガラである。店はまあまあ混んでいるので、みんな予約なしの飛び込みなのかもしれない。今までの経験だと、20時の予約がある場合、18時30分では客を入れないので、LOを次の予約の60分前くらいに設定しているようだ。すると、17時30分か18時の入店でないと断られてしまう。


店員:21時には次の予約があるけど、大丈夫です。
自分:あ、それはよかった。じゃあ、お願いします。
 

ほぼ20時入店で、21時からの予約が入っている席に通してくれるなんて神対応といえる。電話予約の場合は来店が遅れることもあるし、LOにしてから出てゆくまでに時間がかかるケースもあるが、店頭で顔を見て受付すれば若干リスクは減る。しかし、次の客をレジ前に待たせておいて慌てて片付けなければならないケースも十分想定されるため、普通は「ちょっと嫌だな」と思ってしまう場面である。最大限感謝して、お行儀良く迷惑をかけないように食事をしようと誓う。

 

さっと見回したところ彩花は見当たらないが(厨房の奥にいるか、まだ店にいないか)、1時間強しか食べる時間はないから、慌て気味で最初の注文をする。
オーダーと提供はカワイイ店員さん。名前がわからないのは結構不便である。この店はOGだけでなく、店員さんのレベルは高い。単に顔がいいというだけでなく、よく躾けられているし、表面上のことだけでなくホスピタリティーに溢れている。人材不足の昨今、こういう質の高い日本人の店員さんを揃えていることは相当な努力が必要だろうなと思う。ひとりの客としては、名前と顔が一致しなくても店員さんのクオリティは高いに越したことがない。

公演をなんとなく眺めながら、そんなことを考えていたら、左後ろの死角から突如彩花が現れる。視界が開けている真左から近付いてきたら気がついているはずなので、おそらくテーブルの向こうを回った時に「あ、いるな」とチェックして、小上がりのお客さんにサービスをして壁があって死角になっている右側から私の後ろを回り込んだのだろう。壁のせいで近づいてくる人も見えないが、右から声を掛けるのも位置関係から難しいのである。

 

ちょうど内田さんが立っている辺りに座っていた

無煙ロースターのダクトと思われる壁がある

 


岡田:わあっ(笑)
自分:おうっ! びっくりした(驚)
岡田:どうも、こんばんわー。
自分:いっ、いつの間に! 気が付かなかった! やあ、ありがとう。


彩花は最高の爽やかな笑顔だ。最近いろいろな動画を見たり、生身の彩花を眺める機会が多いからかもしれないが、ここまで完璧な笑顔はなかなか見る機会がない。また、同時にこれは彼女がONの際の笑顔だなと思った。卒業してまだ間もないので当然かもしれないが、アイドルのお仕事モードであり、良い意味で気取ってるなーと感じた。なぜ突然そんなことを感じたのかはわからないが、寧ろそれを期待して来ているのであるから嬉しいのだ。ファンの前でも常に気取っているとは限らない彩花なので、今日はいつも以上に気合が入っているなと感じたのかもしれない。本人はひょっとして体調が良いのかもしれない()



自分:事務所所属、おめでとう(笑)
岡田:ありがとうございます。

言われ飽きた話題だと思うが、発表後本人に会うのは初めてなので、やっぱりここは言っておきたい。おめでとうとか、ありがとうという言葉は幸せの証しなので、幾ら言っても言いすぎるということはない。


自分:今回の所属で、何か変わるの?
岡田:いや、今はまだ所属しただけだから、ぜんぜん。大きな事務所で芸人さんが多いから、バラエティとかお笑いとか、そういう仕事もこれから増えるかも。
自分:ああ、そうだよね。おおきな事務所だし、仕事の幅は広がりそうだし、これからの彩花に期待だね。
岡田:うん、頑張ります。
自分:あの事務所といえば、伝統芸能が柱だね。今後はそっち方面も勉強しなきゃいけないよね。
岡田:そうなんですよ。実は今まで縁がなくてあまり知らないんだけど、ひょっとするとそういう関係のお仕事も貰えるかもしれないから、勉強しなきゃ。
自分:あ、そういえば今日は京都に行ってきたんで、これお土産。

 


といって、カバンから小さな包みを取り出して手渡す。どこに出しても恥ずかしくない老舗の生粋の和菓子だが、偏食の多い彩花のことだから、果たして喜んでくれるかどうか。本人が嫌いでも、家に持って帰ってくれれば家族の誰かは喜んでくれるだろう。彩花は慣れた感じで受け取る。貰いなれているのはどうかと思わなくもないが、本人のためにと貢ぐのだから、嫌味なく受け取ってくれるのは単純に嬉しい。卒業前は基本的に食べ物は渡せなかったことを考えると、今なら電子機器だろうが、飲食物だろうが自由にプレゼントできるというのは結構嬉しい。

岡田:まあ、ありがとうございます。
自分:いいえ、どういたしまして。そういえば、事務所ってさあ、自分で門をたたくわけ? それとも向こうから声が掛かるの?
岡田:あ、私の場合はある方の紹介で所属できることになったんです。
自分:そっか、それは良かったね。第二のスタートがこんな大手だというのは幸せなことだね。
岡田:応援してくれる皆さんに報えるよう頑張ります。

 


晴れ晴れとした表情で話す彩花。大手に所属したからどうという訳ではないが、売り込む力を持っているから、チャンスも貰えるだろう。自分たちが存在するのは梨園の伝統芸能を守るためだと言って憚らないし、お笑い部門のトップは落語だし、漫才についても化石のような大物がごろごろしている。いわゆるきれいどころも一定数いるが、人間国宝とか、雲上人とか、化石とか、とにかく人数も多くて全体が把握できないような事務所に入るのはプラスに働くのかどうか、正直なところわからない。しかし、経歴だけみれば立派なものである。幾ら紹介だからと言って、どうしようもないタレントだったら引き受けないだろうから、伸び代を買ってもらったのだと理解している。なんだか彩花が少し遠くに行ってしまった気がするが、容易に会えなくなったとしても、タレントとして成長することが自分の喜びでもあるのだから、少々複雑な気持ちである。


周囲を見回して、今日の店内の状況が見えてきた。店員2名に、ママ、彩花、びかちゃん、オーナーの6名体制である。


何度目かに通り過ぎようとしたぴかちゃんに声をかける。目についた当初声をかけなかったのは、4日前に舞台を見たばかりだったが雰囲気が違っていて、人違いじゃないか慎重に見極めたため。

自分:あれ? もしかして、ぴかちゃん?
橋本:そうです!
自分:えー! 雰囲気が違うからわかんなかったよー。
橋本:そうですかー?

 


ぴかちゃんは卒業後結構シフトチェンジして雰囲気が変わったと思う。現役の頃からそういう傾向はあったのだが、無理をして相手に合わせようとしなくなったので、テンションは低めだし、話がうまくかみ合わないと結構ツンツンしている。大人になって性格がしっかりしてきたうえ、表裏がなくなったといえる。今日はあまり声を掛ける客がいなかったのか、なぜか嬉しそうにしていて、昔を少し思い出した。


自分:千秋楽見たよ。
橋本:本当? ありがとう。
自分:まあ、正直にいうと涼花目当てだったんだけどね。
橋本:なあんだ。あ、今度配信するの。
自分:あ、あれだよね? 4人で出る、あれ。
橋本:そう、LIVESHOP。涼花目当てでもいいから、絶対に見てね。今回すごく頑張ったんだ。面白くなってるはず。


自分:わかった、見るよ。前回4人で出たやつも見たんだよ。
橋本:ありがとう、嬉しい! なかなか4人で出られることなんてないから、レアだよ。
自分:今回の舞台を見て思ったんだけどね…
橋本:うん。
自分:ぴかちゃんの役が四人の中で一番難しかったんじゃないかな。まあ、涼花は悩む役だったし、キャラ違うからそれなりに難しかったのかもしれないけど、なーにゃといい、亜衿といい、等身大のキャラクターで、全然違うってわけじゃなかったよね?
橋本:うん、そうだね。
自分:ぴかちゃんは結構下品なキャラでガキ大将みたいな感じで座り方とか、服装とか、そういう雰囲気を出さなきゃならなかったよね。それでいて、涼花に複雑な思いを持っているという…。結構演じるのが難しいキャラクターだったからこそ、4人の中で一番存在感が出てたんだよ。前に演じた天使もよかったけどね、今度は真逆のキャラで、でも物語の要になるような存在で、演じるのがうまいなあと思って見ていたんだよ。
橋本:あの服もねー(笑) 不良とか今までの人生でも接点がなかったから、どうやったら雰囲気が出るのかとか、確かに結構難しかったなあ。しっかり見てくれてありがとう(笑)

かつてのksgkを彷彿とさせる表情

そうして去ってゆくぴかちゃんの後姿を見ながら、私は物思いにふけっていた。今は涼花涼花と言っているが、実は先に好きになったのはぴかちゃんなのである。好きになった当時は典型的なksgkで、悪戯しては「しししし」と満面で笑う様子を見ていると、何ともいえず幸せな気分になったものである。もちろん個握や写メ会でも彼女の元には通った。しかし、例の問題であっという間に卒業してしまい、芸能界は続けると言っていたものの、どうなるのか、いつになったら会えるのかわからない状態がしばらく続いた。大量卒業の走りみたいな時期だったし、何より突然だったので、ショックも大きかった。ぽかんと空いてしまった心の穴を埋めるように、ksgkつながりで涼花に通うようになり、それこそ天真爛漫を画にしたような涼花にすっかり心を奪われてしまったのである。ぴかちゃんは結構反抗期が強く出たこともあって、今では天秤にかけたら涼花をとってしまうのだが、ぴかちゃんの初舞台も見に行ったし、何より昔好きだった彼女とこうして話ができる機会を得るのは私にとって非常に幸せなことである。


少しして、店内を歩いてきたオーナーを捕まえる。


自分:あれ、いたんだ?
内田:うん、実は今来た。てへ(笑)
自分:あ、やっぱり。今日はお客さん多くない?
内田:うーん、まあそうね。
自分:ベテランの店員さんが辞めちゃったりしたけど、そろそろ落ち着いてきたのかな。
内田;まあ、ぼちぼちねー。
自分:前は週1日か2日は店に出るようにしているなんて言ってたのに、この頃はほぼ毎日出てるんじゃない?
内田:それはそうね 笑
自分:いや、さすがオーナーだ、偉いよねー。ホント見直したよ。
内田:いやいや、まだまだですよ。
自分:しかし、こうしてみるとぷっすまに出たのに客層変わらないねぇ。
内田:そうなんですよ、これが(笑) まあ、みんないいお客さんだから、私は客層が大幅に変わらなくていいと思っているんですけどね。 テレビに出たことで少しは有名になればいいな、とは思いますけど。
自分:きっと既存の客が多すぎて入る余地がないんだろうな。今日もこの後の時間は一杯らしいじゃないですか
内田:そーなんですよー、ありがたいことに。
自分:早い時間じゃないと空いてないっていわれたもんなー、来ちゃったけど。
内田:平日は比較的空いているんですよ。
自分:月曜や火曜はね…、一般的に飲み屋なんかはそういうけど。
内田:まあそうですね。
自分:もっと店大きくしたら? 大人気なんだから。
内田:とーんでもない(笑)

隣席の初老の一人客は、もともとまゆゆ推しとのこと。それぞれがうっちーと話をして、それを聞いているから、どちらともなく話しかけるのはいつものパターンだ。こういう雰囲気作りもこの店の魅力である。ぼっち客なんて、基本4人席の稼働率が下がるだけだからきっとお呼びじゃないのだが、ぼっち同士が知り合って会話できれば、ぼっち焼肉というスタイルでも楽しく過ごせることができるだろう。普通の焼肉屋と違って、わざわざここに来る客は共通の趣味を持っているのである。彼は関西在住、仙台勤務で、今日は関東出張だと言っていた、なかなかハードな生活だな。色々と思い出話をしながら楽しく過ごす。彩花のことはクールビューティーだと言っていた。

先に彼のほうがラストオーダーになる。カードで席支払いだったが、店員がどことなくぞんざいなのが気になった。やっぱり年配のぼっち客は歓迎されないのか、それとも以前何かやらかしたのかもしれない。彼が店を去るとママが現れ、鬼気迫る表情であっという間に立て替える。次の予約が迫っているためだ。電話で断られたのに無理やり来店したのが少し申し訳なくなる。いつも界隈とつるんでいるわけではないし、そもそも界隈が違うので、基本的にぼっちになってしまうのである。無理してできるだけ早い時間に入店し、お店が本格的に混雑する前においとましているのだが、ぼっち客もお店に負担を掛けず楽しめるような仕組みができるといいなあと思うのだが。

そろそろ俺も上がるかと思っていた20時40分頃、部長が二人組で現れる。
結構マメに来ているんだなと思いながら、席を立つ。これから界隈の方々が集まってくるのかどうかはわからないが、ある程度は集まるんだろう。
レジで会計する。時間が短かったのと、彩花がなかなか来てくれなかったので(=来るまで予約をちょい出しするので)予想していたよりずいぶん安い。会計していると、厨房から彩花が出て来た。レジの後ろに従業員の荷物が並んでいて、手に持っていた差し入れのお菓子を自分のカバンに突っ込んだ。


自分:じゃあね、彩花。
岡田:ありがとう、また来てくださいね、待ってるよ。
 

爽やかな笑顔でクールにお見送りしてくれる。最後にやや鼻にかかった「よ」がつくあたりが、彼女の愛嬌である。私が会計していたから出てきたという訳ではなく単なる偶然だと思うが、いつも去り際に姿を見せてくれるのがとても嬉しい。彩花にしてみればこれからが接客の本番であって、23時頃まで息をつく暇もないほど忙しくなる筈である。飲食店のアルバイトなんてそんなものだと言われてしまえばその通りなのだが、遠隔の日帰り出張を終え、お腹もいっぱい、丁度良い酩酊具合で後は風呂に入って寝るだけという自分からすると、これから忙しさのピークがきて、他の店員さんより早いとはいえ深夜に帰宅するというのはタフだなあと本心から感心してしまうのである。



11月8日(水)
どうやら、IWAのシフトは前週の金曜日には本人たちに通知されている様子である(と、思っていたが必ずしもそうでもないらしいことが後ほど判明する)。そして、シフトについて呟くのは当人の責任になっていて、電話や店頭で尋ねたら教えてくれるのかどうかわからないが、お店が積極的に公表することはない。彩花は現役時代と同様に昼前に起きているようで、今回は当日昼過ぎの告知となった。先週末からずっと、一日に何度も彩花が告知していないかチェックしていたこともあり、ちょっとうざいコメントをしてしまった。
 


文句を言うからには、ちゃんと裏付けを取るのは義務だと考えている私は、彩花がIWAデビューしてから誰がどのタイミングで告知をしているのか後日遡って確認をしてみた。本当はつぶやく前にちゃんと裏を取っておくべきなのだが、この辺が歩きながらでも呟けるツイッターの罠だと思う自分のいい加減な性格が現れている。すると、彩花の告知は時折遅くなることはあるが、最近油断して告知忘れをしてしまったというわけでもないことが明確に読み取れた。仕事と家事の合間を縫うように調整して、できるだけ早く予約しておかないと、当日電話しても「いっぱい」と言われてしまうケースが最近続いていたので、カリカリしてしまったのである。



実は告知の余裕が一番少ないのはみちゃである。勿論、一番多く出勤していて、日曜日→月曜日というシフトも多いので、物理的に余裕をもって告知できないという問題もある。しかしこのところ3週連続で当日告知になっているのは、少し油断があるのかもしれない。11月第二週の告知についてみれば、全員が当日告知になっているところを見ると、実はシフトが決まるのがぎりぎりだったのではないかという疑いも出てくる。一番余裕をもって告知しているのは未姫ちゃんで、週の最終出勤日(たいてい週末)当日に翌週の告知をして、実際に入っているのが週後半になるので、結果的に余裕をもった告知になっている。彩花が明らかに告知を忘れていたんじゃないかと思われるのは、9月の第2週(これは舞台の稽古との兼ね合いを調整する必要があったのかもしれない)、10月の第2週、第3週あたりであるが、その後持ち直している。これを見る限り、告知を受ける側は日程調整とか予約とか考えながらジリジリと待ち構えているのだが、必ずしも彼女達がぼけっとしているわけではなく、一生懸命に告知してくれているのだということがわかった。恐ろしいのは印象に基づく思い込みである。

今晩、最初に彩花が来てくれたのは、2回目にオーダーした品物を持って来てくれた時だった。席は大スクリーンの前なので、背中側に壁がある小上がりになっており、上がり込まないと客の顔が見えない。



岡田:ああ。
自分:おう、彩花。最近「おめでとう」が多くてすごいね。
岡田:そうなんですよ(笑)
自分:誕生日、年末の舞台、13期DVD、事務所所属、もろもろ。こんなにおめでとうって言えることが集中することなんてなかったんじゃないかな?
岡田:そういえば、確かに今までなかったですね。


スクリーン前の小上がりには3卓あり、右側にはあまり来慣れてない感じの若いヲタク2人組、左側には若くて小食のヲタクではなさそうな2人組がいた。店内は閑散としており、もうすこしゆっくり話したかったが、最初からあまりしつこくして嫌われるのも嫌なので、おめでとうだけ言ってあっさり開放する。そうでなくてもこのところ貸切で生誕祭をやったりしておめでとうは言われ飽きているだろうから。

注文した品を持って来てくれたオーナーをつかまえる。

自分:うっちー、なかなか盛況でいいねえ。
内田:いやいや、まだまだですよ。
自分:そういえば、ぷっすまに取り上げられた効果はどう?
内田:うーん、お客さんの数とか客層という意味ではいまいち変化ないですね。
自分:やっぱりそうか。テレビで放送するだけですぐに人気店になるというわけでもないんだね。でもいつもヲタクの予約で一杯でなかなか入れないよね。
内田:そうですよね、本当にありがたいことに。
自分:放送してから女子の集団が来たりしてないの?
内田:ほとんどいないと思います。でも来店までしてくれなくても、こういう店があるんだなって知ってもらって、お店の知名度が上がればという期待はあるんですよ。
自分:知名度か、そうだよね。ヲタクはテレビでやろうがやるまいが、相変わらずなんだろうけど。
内田:その前の番組のほうがインパクトはありましたね。テレビで見たよーって言ってくれるお客さんが結構いましたし。
自分:ああ、タカトシだよね? ヲタクはみんな見ているよね。結構話題になったし。
内田:ですかね。でもお陰さまでこの店知ってくれたとか、初めて来てくれたとかっていうお客さんもいて、嬉しいことです。


経営者内田眞由美として最近フィーチャーされることが増えたように思う。まだ若いのに、現役時代に培った癒しの接客はもちろんのこと、肚の座り方はさすがだと思う。筋の通った経営をしていれば、きっとうまくゆくのではないかと思うのだが、色々な外部要因もある中で安定して経営してゆくことは相当難しいに違いない。

内田眞由美の生きる道― スポニチ Sponichi Annex 芸能 https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2017/11/10/kiji/20171109s00041000176000c.html


彩花の2回目は、塩キャベツを持って来てくれた。

自分:「白と黒の忘年会」舞台のチケットとったよ。
岡田:まあ、早速ありがとうございます。
自分:前回は残念ながら取れなかったからね。

彩花は背もたれの壁角に両手を重ねるように置いて、顎を軽く載せるようにして僅かに頭を傾け、文字通り傾聴の姿勢をとった。写真がないのがとても残念だが、それは優雅な立居振舞でかつ心を開いてくれていることがしっかりと伝わってくる姿勢である。彩花は頭の中で思い描いたことがすぐに言葉や表情で出るのではなく代わりに、姿勢や行動に現れる傾向が強いと思う。アイドルは皆一様に「素直」だが、彩花は特に嫌味なく素直である。一対一で向かい合っているときにこんな素敵な、というか神々しいまでの「傾聴」を頂けるだけでもうありがたく、今日来た甲斐があったと思う。せっかく聞いてくれているのだから、最大限楽しませたいという気持ちと、軽いプレッシャーを感じるが、勿論何を話そうか考えてネタを作ってあるので、精神的重圧は跳ね除けることができる。

岡田:今回の会場は広いですから。
自分:二倍くらいかな。250席規模だから。
岡田:250なら、三倍ですね。
自分:「雨のち晴れ」はキャン待ちにチャレンジしたんだけど全部ダメでね。
岡田:キャンセルそのものが少なかったらしいですね。少ないときは2~3席とかって聞きました。今度の新宿村LIVEは大きいから、チケットもとりやくなっていると思います。
自分:そうそう、新宿村LIVEね。実は「白と黒の同窓会」は見に行ったんで、会場はばっちり把握してるよ。
岡田:おっ、そうなんですか?
自分:OG4人が揃い踏みでね。舞台楽しみだなー。あ、そうだ、13期DVD持ってきたんだよ。サインちょうだい?
岡田:いいですよ(笑)

 


カバンから、ジャケット紙を取り出してクリアファイルに挟んでいるものを取り出す。準備万端でサイン貰う気満々だったと思われているだろうか。しかし、時間的に余裕があるかどうかわからないところで、ケースからジャケット紙を慌てて引き出したりすれば失敗して破ってしまったりするだろう。どうせ見透かされているのだから、かっこはつけずにうまくやる方法だけを考えればいいのだと割り切っている。

岡田:ペン持っていますか?
自分:もちろん。これでお願い。
岡田:どこにします?
自分:どこでもいいよ、バーっと。いつもどこにするの?
岡田:こことかどうですか?


この辺に貰おうかな、というのは実は考えてあったが、彩花ならどこにサインするだろうかと試してみたくなった。シンプルなジャケットでブックレット等もないので、実はサインする余地があまりない。顔写真の上に字を書くというのは憚られるだろうから、そうすると書ける箇所は自ずと限られてくる。彩花が指し示したのは、裏側の右下でDVDの陰に隠れる箇所であり、クレジットの文字が多く並んでいる箇所である。無難にサインを入れるのなら、ここしかない。


自分:いいね(笑)
 

彩花は慣れた感じでサインを書いてゆく。といっても、筆記体でAyakaと書いて、後ろにハートを書くだけだから、あっという間に完成する。意匠という点ではほとんど飾りっ気のない、実に彩花らしいサインだといえる。前回はハートの中に「4」を入れていたが、今回はどういうわけかハートの中には何も書かない。それにしても、新しい事務所に所属してそろそろ公式にサインを書いたりする機会もあるのではないかと思うのだが、まだサインを作っていないのだろうか。このままでいいのなら、ずっとこのシンプルなサインを続けてほしい気持ちはあるのだが、早く安定して書くことを最重視しているAKBのサインは少々子供っぽい。主演を張れる舞台女優になった暁には、花押のような複雑なサインが必要になるだろう。サインだけ立派でも先走っているようで恰好が悪いから、自然に必要とされたときに進化すればいいのかもしれない。


自分:まだ新しいサインつくってないのか。 「4」はないけど?
岡田:そうなんですよ。…できましたよ。
自分:ありがとう。宝にする。あ、名前も書いて。2コ下です。
岡田:えーっと・・・??
自分:数字の「2」、カタカナの「コ」、漢字で「下」です。何でこの名前なんだって、握手会で四回くらい説明したけどね。
岡田:二
自分:おっと!
岡田:あれ(焦)?

 


いきなり漢数字? いや、カタカナで書き始めた彩花。説明をちゃんと聞いていなかったようだ。ついつい、突っ込みを入れてしまった私もどうかと思うが、彩花は完全に素で焦っていて、貴重なものを見てしまった。サイン会だとヲタクが書いた見本を見て書くから、口頭で伝えるのは確かに酷だったかもしれない。ただ、今まで何度も芸能人のサインをもらっていて、この伝え方でミスしたのは彩花が初めてだが。


自分:まあいいや。めんどくさくてごめん。
岡田:ニコシタ・・・ああ、これってあのコメントの?
自分:そうそう(笑)
岡田:ああ、そうか。見ましたよ!
自分:ごめんね、ぶしつけで。でも本当に試されていると思ったんだもん(笑)
岡田:そんなあ・・・ あ、できました。
自分:ああ、どうもありがとう。
岡田:じゃあまた
自分:じゃあね

このやりとりを受けて、うちに帰ってから過去の経緯を確認したのが上に記載した内容だ。少々冗談めかしているとはいえ、今回は全員が全員当日告知をしていることから、シフトの決定がぎりぎりになったのではないかと思われる。つまり、彩花のせいではない可能性が高い。また、最近ずっとぎりぎりに告知されると思い込んでいたが、よく確認してみると、「雨のち晴れ」以降、週明けの告知になっている。前週の最終出勤日または土日にはシフトがわかっているだろうに、どうして告知が遅くなるのか、といったフラストレーションが、「告知が遅くなった」という思い込みにつながっていたと想定している。集客という経済的理由であれば店から一律にシフトを発表するのだが、あくまで本人が自主的に告知し、店がリツイするという形は、ファンサービスの一環でやっていることを明示している。冗談めかしていたとはいえ、サービスに対して遅いと文句をつけるのはさすがに大人気なかったなと反省した。しかも、実際にはさほど遅いわけでもないし、たまたま遅かったときには何らかの事情で店側の調整が遅れていた可能性が高いのである。きっと彩花にも言い分があったのだろうが、今回は飲み込んでしまった。こういう理不尽な苦情が彼女たちにストレスを与えているのだから、こっちはもっと気を使わなければならない。今度会った時には謝ろう。

左側の席の若い二人組が退店した。チラ見すると、飲み物も食べ物も控えめで、私のような店員さん目当てでもなく、中継映像を見に来たわけでもなく、純粋においしい焼肉を少々食べに来たのかな、という感じ。焼肉屋さんなのだから、そういうお客さんもいていいと思った。
やがて店員さん(せいなちゃんじゃない方)が、掃除道具とお盆を持ってやってきた。慣れた手つきで片付ける。網は交換したが、赤外線を発する溶岩みたいなやつはそのままだった。横から眺めていた視線に気が付き、にこっとされたので話しかける。


自分:片付けなんかも女の子がやるんですね。誰がやるとか決まっているんですか?
店員:いえ、全員で手分けしてやっています。
自分:前は男性の店員もいたのに、今いなくなっちゃって大変ですね。
店員:ええ、女子みんなで頑張ってやっていますよ。
自分:重たかったりして大変でしょう? 本当に大変だなあと思って見ていました。代わってあげたいくらい。
店員:そうですね。でももう慣れました。ありがとう。
自分:頑張ってね。


真正面の大画面を眺めていると、ママがやってくる。団体の予約が入ったから左のやや小さなテーブルと席を替わってくれないか、ということだった。右側のテーブルは会計済みだから私の座っている真ん中のテーブルと合わせて団体を入れようということらしい。ただでさえぼっち来店で稼働率を下げている自覚があるので、ここは喜んで協力する。


彩花の3回目はレモンサワーを持って来てくれた。(店の都合で)席を移動していたので、客は私だと思っていなかったようで、あらっという表情をした。

 


自分:そういえば、年末の舞台はいつから稽古始まるの?
岡田:まだ顔合わせもしてないから、全然わからない。ビジュアルの撮影はしたけど。
自分:そうなんだ。じゃあ、稽古の日程なんてまだわからないね。
岡田:雨晴れは舞台の事なんて何にもわからないのにいきなり始まっちゃって。でも初めてだったからみんな親切に教えてくれたし、徐々にわかってゆけばよかったの。今回は2度目だから、もうそんなこと言ってられないし、完全に期間が重なってて並行なんで、どうなっちゃうんだろうって、ヤバいんですよ(笑)
自分:そうなのか。ここがひとつの関門かもね、大きくなるための。もう19なんだし、タレントなのか女優なのか、岡田彩花として一人立ちして認められるためにはまだまだ大変なんだなあ。
岡田:頑張りますよ(笑) 応援してくださいね。
自分:もちろん。楽しみにしているよ。

さっき会計した二人組はテーブルでだらだらしていて、まだ立つ様子がない。私がさっきまで座っていたテーブルはきれいにセットされていて、これ見よがしにお盆に彼らのテーブルを片付けた後にセットする一式が乗っかっているのだが、気が付いていない。店側も、まだ時間があるので追い出さずに放置している。ここは私が退けば団体のセッティングができるのではないかと思い、慌てて会計する。

店内はまだ客がまばらなのと、今座っている客は滞在時間が長くてオーダーが緩慢なので、サービスはかなり暇なタイミングになっていて、店員はみんな厨房にいる。レジはママが来てくれたので話し込む。


自分:今日は割合余裕があるんですね。盛況で何よりです。
ママ:いやいや、まだまだですよ(笑)
自分:一人だとなかなか入れなくてね。
ママ:そうですね、こんなにひとりのお客さんが多いと思わなくて。
自分:相席とか駄目なんですかねー?
ママ:そうねえ、お客さんが良ければいいんだろうけどね。
自分:まあ、嫌がる人もいるだろうし、衛生面の問題はわからないけど、いいっていう客はそれなりにいると思いますけどね。何せ入れないっていうのはさびしいですからねぇ。
外からコンビニの袋を下げた客が入ってきた。
ママ:お帰りなさーい
お客:なんかわからんから、コーラ全種類買ってきた。
自分:おおこれは! ホワイトコーラじゃないですか。


何だかわからないが、コーラを差し入れしているらしい。変わった客が多くて驚くが、自分もその一人なので特段の感想はない。レジ前のあまりの盛り上がりに、彩花もちらっと覗きにくるが、すぐに厨房にひっこんだ。

世界にその存在を轟かせてほしい