白と黒の同窓会 ~まさかのダブルブッキング編~ 観劇レポ | 2コ下のブログ

 

半年前の大量卒業における最大勢力の大和田常務派があたかも凱旋行軍しているかのような舞台、白と黒の同窓会ダブルブッキングの千秋楽を見てきた。卒業生4人がそろい踏みして同窓会をテーマに演技するなんて面白いじゃないか。誰が白で誰が黒だというのか、肩の力を抜いて楽しんで来ようと思った。前回「絢爛とか爛漫とか」で見事な演技を見せた涼花がどの程度成長しているのも確認したかった。



狭いロビーは知り合いが溢れていて、まるでヲタクも同窓会をやっているようだった。自分はいずれの界隈にも知り合いがいないので「まるで」と言っているが、本人たちは本当に同窓会をやっているつもりだったかもしれない。とはいえ、千秋楽だというのに本番が始まったら皆おとなしく、Wカーテンコールはやったものの、客席から声が上がるでもなく、おまけがあるでもなく、私が今まで見た中で一番おとなしい終わり方だった。



主人公は大島涼花。中学時代はいじめられっこで、高校デビューして、大学では友人がいない孤独な生活を送っている。ある日中学と高校の同窓会が同日同一時間帯同一店舗で開催されるという案内が同時に届いた。主役なので一番出番が多いのだが、ほぼ等身大の役柄ということもあって、演技力が発揮されようもない感じだった。時系列上は別なのだが、高校デビューということで別人格をやらなければならないのだが、どちらかというと自信がなくて始終うつむいているような役なので、安定感はあるけれどすごさを感じる要素はない。



大和田南那は、進学校の高校でクラスのリーダー格で涼花の親友であり、今回の同窓会の幹事をやっている。輝く笑顔は健在で、きれいな服を着て中心に立って華やかな雰囲気を作り出してしまう存在感はさすがだが、これもまたもともと持っている属性そのものなので、演技力というものではない。



橋本耀は、中学校の不良グループのリーダーで、涼花を苛めて、使い走りにしていた。ワルに徹し切れていたかどうかは微妙だが、アイドルとしては躊躇するようなクズっぷりを発揮できていたし、中心の4人の中では一番演技力を発揮していたかもしれない。ただ、本来であれば周囲が委縮するような怖さがあっても良いと思うが、単に下品で厄介な人物であって、別に怖くないというのは少々物足りない。どこでもジャージを着てゆく田舎のヤンキーをイメージしたのか、だぼっとした服を着ていて、ぴかりんのぴかりんが拝めなかったことも残念だった。



横島亜衿は、同窓会会場のバイトリーダーで、店長不在時は店長代行という役。溌剌としたいい女っぷりを発揮できていて、人気のオシャレ居酒屋のバイトリーダーという役は説得力があった。店員は4人いて、リーダー、先輩、後輩、新人という構成。同窓会は先輩と後輩がそれぞれ引っ張ってきたという設定なので、この2人は途中から同窓会に参加してしまう。新人がテンパって後輩にヘルプを求め、後輩を連れて先輩のいる高校の同窓会部屋に入ったところ涼花がみつかってダブルブッキングがバレるという筋なので3人は必要なのだが、逆にバイトリーダーの存在価値が不明確だ。途中でかかってきた電話で忘年会の予約が入り、実際に次回作につながってゆくということでは重要な役割なのかもしれないが。



というわけで、正直なところ微妙なシナリオだったので4人のポテンシャルが十分に引き出せているとも思えなかったのだが、そうはいっても大和田派主要4名が揃い踏みする舞台である。一番の楽しみは4人が同じ舞台で演技しているが見られて、最近どんな様子なのか見られたことだがぴかりん以外はあまり変わった様子もない。

 


 

同じ居酒屋での同窓会という設定なので、全員女性のキャストを常に舞台上に揃えておき、じっくり見せるということが可能であった。これは逆に、できるだけ全員の露出を図るためにストーリーを考えたのではないかと思われる。掘りごたつでもない床にずっと座って演技をしていた彼女たちも大変だったに違いない。

物語のひとつのキーは、高校デビューである。私はデビューなどしたこともなく、常に低空飛行だったのでよくわからないが、日本の6・3・3・4制のメリットとして、どこかの学校で失敗しても進学先で頑張ればスクールカーストの上位に食い込むことが可能であるということはいえる。しかし、今回の舞台で見たように、それが成功したとしても、暗かった時代は黒歴史として常に意識のどこかにあって、コンプレックスになるようだ。デビューが成功してギャップが大きいほどそうなるのかもしれない。男性はあまりそんなことを意識したりしないが、変身願望がありカーストをより意識している女性には大きな問題なのかもしれない。
 

中学の仲間は不良だったという設定なので、キャバ嬢、ガールズバー店員、球場のビール売り子、ニートと散々である。一人だけセレブ妻という設定もいたが。
 

高校の仲間は進学校という設定だったので、女子アナ志望とか、女優志望とか、2浪で東大とか、やや高めではあるがそんなに飛びぬけて素晴らしいというものでもない。年齢設定がストレートの場合で大学4年生ということだから、現在の身分は大学生であり、そんなに差がついているわけではない。どうしてそういう微妙な年齢設定にしたのかは謎である。どうせなら高校で暗かった娘が大学デビューしたことにすれば面白かったのに。

 

予算とか全然違うのかもしれないが、同じ新宿村LIVEで見た「放課後戦記」は、部活でバトルロワイヤルという無茶苦茶な設定ながら、最期までハラハラして見られて一番終わりに無理やりな設定にオチがつくという妙があった。また、ぴかりんが初主演をしたアリスインプロジェクトの「魔銃ドナークロニクル」はマジすかのように、ベタベタのアイドル演劇だったが、振り切っていて逆に面白かった。「雨のち晴れ」は小劇場での低予算演劇の極致だったが、心情描写が美しく、主演となるアイドルの魅力を上手に引き出していて、泣ける作品に仕上がっていた。その点、今回の「白と黒の同窓会」は残尿感というか、終わった後にぽかーんと脱力してしまう感じで、文句をいうほどではないが、色々と残念だった。
 

放課後戦記

 

魔銃ドナークロニクル

 

雨のち晴れ

 

 

元AKB以外の若いキャストたちは頑張っていたなと思うが、四天王は頑張っていたのだろうか。この4人が同じ舞台上で動いているのを見ただけで私は至福だったが、本人達がやってよかったと思ってくれていると幸いだが。