【流通】デフレ時代のスーパー
■「サンマ30円」激安戦に拍車
夕方4時。鮮魚売り場で、タイムサービスを知らせる鐘の音とともに威勢のよい声が
響いた。
「58円のサンマが30円!」
客が駆けより、列をつくって次々に買っていく。別の売り場では数十本の格安しょうゆが、
瞬く間に売り切れた。商品や時間帯は異なるものの、格安スーパー「ザ・プライス
せんげん台店」で、いつも繰り広げられる光景だ。
2009年11月20日、同店は越谷市北部にオープンした。セブン&アイ・ホール
ディングスの「セブンタウンせんげん台」の核店舗で、売れ筋の食料品は、系列の
イトーヨーカ堂の店より1~3割安い。ナショナルブランドに比べ3~5割安いプライ
ベートブランド(PB)が約100品目そろう。ほかに、仙台黒毛和牛や生本マグロ
なども安く販売する。
「ザ・プライスせんげん台店」の周辺は、住宅地だ。団地もあり、もともとスーパー
などが多い地区でもある。物価下落が続くデフレの時代に、ザ・プライスの出店によって、
低価格競争に拍車がかかる。
ある主婦(53)は、最近、よく行くスーパーで「競合店価格に対抗して」という説明
書きを見ることが多くなったと思うという。「スーパーの特売で、たまご1パック78円、
というのもありました。ザ・プライスのオープンで、どこも以前より値下げ幅が広がったな、
という印象です」
この地区に限らず、スーパーなどは、どこも低価格を前面に出して客を呼び込もうと
している。しかし、県内全体では販売額が振るわない。
経済ジャーナリストの荻原博子さんによると、消費者は給料が下がっているため、安い
品を選んで必要最小限の買い物をしている状態だという。その上で、荻原さんは、こう
指摘する。
「マーケットが縮む中、大手も中堅スーパーも、PBやわけあり品など、低価格に付加
価値を付けようと競争している。デフレで怖いのは1強全弱。今後、弱いものからはじ
かれていくだろう」
スーパーの価格競争は、食品メーカーにも影響する。
県内のある企業は、数年前までスーパーへの出荷が7割を超えていた。社長(46)は
「毎月数百万円の売り上げがあったが、利益率は上がらなかった」と振り返る。
というのも、卸値はスーパーが決めており、特売用に価格を下げられても、嫌だとは
言えなかったからだ。あるスーパーには、毎月の売り上げの数%を、バックマージン
として支払ったこともあると、打ち明ける。
現在は、スーパーとの取引を減らし、別の販路を広げている。利益率が上がり、08年は
従業員に臨時のボーナスを出すこともできたという。当時に比べ、気も楽になったと話す。
そんな中、最近、耳にしたのは、同業者の不渡りやスーパーの身売りの話だった。
「度が過ぎる安売りは、決していいことばかりではない」。社長は力を込めた。

