今年の2月の院内勉強会でも
取り上げましたが、
今後、
都市部は後期高齢者の急増に
対応できるか否かが重要になります。
日本経済新聞より。
介護・高齢化
取り組みランク
認知症、広がる初期対応
日本経済新聞社は全国815市区を対象に、介護サービスや高齢化対応に関する調査を実施した。市区の回答を点数化したランキングでは、75歳以上の後期高齢者の健康増進に力を入れる小松市(石川県)が首位となった。
認知症が疑われる人への初期対応など、福祉サービスを充実する動きが広がる一方、予防や社会参加を通じた高齢者の自立支援は途上にあることもわかった。
2025年の「いきいきシニア率」を75%に引き上げる――。小松市は高齢者の健康づくりへ、こんな旗印を掲げる。いきいきシニア率とは、要介護・要支援の認定を受けていない後期高齢者の割合を指す。14年は66%だった。
後期高齢者は要介護・要支援者になりやすく、その予防は介護負担や市の財政負担の抑制につながる。同市は公民館など189カ所で週1回以上開く、通いの場「いきいきサロン」の運営に助成する。
新型コロナウイルスの影響で一時中止したが、今では7割程度が再開し、高齢者らが茶話会や体操、手工芸・囲碁などの趣味活動を楽しんでいる。
和田慎司市長は「いきいきシニア率は20年9月に70.4%となり、目標達成が現実味を帯びてきた」と語る。
🔵見守り体制構築
小松市は今回の調査対象の「医療・介護」「生活支援・予防」「社会参加」「認知症・その他」の4つの分野別得点で、いずれもトップ5に入った。
認知症対策では、行方不明になった認知症の人の捜索に郵便局や交通機関などが協力する「こまつ認知症ほっとけんSOSネット」という見守り体制をつくった。
ランキング1位はこうした地道な活動が奏功した形だ。
2位の板橋区(東京都)は医療・介護、生活支援・予防、社会参加で高得点を得た。具体的な取り組みでも3分野に関連した施策が目立つ。例えば高齢者宅の全戸訪問。民生・児童委員が毎年、全高齢者世帯を訪ね、支援が必要なら速やかに医療機関などにつなげる。今年は9月から12月にかけ、73歳以上の6万3000世帯を訪問する。区内には老年医学研究の拠点である東京都健康長寿医療センターや大学付属病院が立地する。同区は長い時間をかけて医師会や福祉関係者らと「顔が見える関係」(介護保険課)をつくり、高齢者対策に必要な医療・介護連携事業の下地を整えてきた。「シニアの絵本読み聞かせ講座」は予防と社会参加の両方の効果を狙ったものだ。50歳以上の区民に約3カ月かけて発声練習・選書・感情移入の方法などを学んでもらい、小学校や老人ホームなどで読み聞かせのボランティアをする。対象者は認知機能に関わる健康診断も受ける。
🔵高まる認定率
一方、調査では全国的な特徴も明確になった。その一つが都市部の認定率(高齢者に占める要介護・要支援認定者の割合)の高まりだ。
回答のあった724市区のうち、過去10年間のデータがそろう559市区の動向を調べた。それによると、全国の高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)は、10年からの10年間で5.3ポイント上がり、20年は27.3%だった。認定率は16.7%から18.8%へ2.1ポイント上昇している。
これに対して、東京都区部(文京・墨田・豊島・葛飾を除く19区)と政令指定都市(札幌・新潟を除く18市)は、高齢化の進み具合は若者の流入もあって緩やかだが、認定率は上がる傾向にある。
東京都区部の高齢化率は10年間で1.5ポイント上がり、21.2%。政令市は同4.7ポイント上昇の25.3%で、いずれも全国より低い。ところが認定率はそれぞれ3.4ポイント上昇の20.1%、3.0ポイント上昇の20.2%と全国を上回る。
この要因として指摘されるのが、認定率の高い後期高齢者の増加だ。全国ではこの10年間で前期高齢者(65~74歳)が13.8%、後期高齢者が32.2%増えたのに対し、東京都区部は前期が3.5%増、後期が33.1%増だった。政令市も後期の増加率が全国を上回る。都市部は「老い」の進展に合わせた対応を迫られている。
調査の概要
全国の792市と東京23区を対象に、日経リサーチを通じて7月中旬から8月下旬にかけて実施。724市区から回答を得た(回答率は88.8%)。国の交付金の評価指標なども参考に34の質問を設け、原則として2020年4月1日時点、19年度の内容を記載してもらった。15年の前回調査は767市区が回答。今回の質問にはその後の介護保険法改正などを踏まえて内容を修正した項目がある。