拙著204ページに記載した
「MCIスクリーニング検査」
の本当の意義を理解できている
医者自体が少ないでしょうね
HEALTHPRESSより。
あなたのアルツハイマーの
発症リスクが検査で判明できたら
……87%が将来の計画に着手
高齢ドライバーによる高速道路逆走や、アクセルとブレーキの踏み間違い事故があとを絶たない。
警視庁の分析によれば、高速道路逆走の541件(2011~2013年発生)中、65歳以上の高齢者が68%、認知症の疑いがある運転者が37%を占めた。
一方、
国立長寿医療研究センター(愛知県大府氏)の約1万人を対象にした調べでは、認知症の疑いのある高齢者のじつに「6割」が自動車運転を継続しているとの結果も出ている。
同センターが40歳以上のドライバーに行なった「運転する目的と意味について」の2007年調査でも、75歳以上の回答陣では他の年代に比べて「自分の生きがい」と答える確率が高かったそうだ。
高齢ドライバーの運転免許返上に関しては、頑なに拒んで家族の希望と対立する例が少なくない。背景には交通手段を失う現実性や、自立の象徴が奪われる不安などの精神面が考えられるが、家族の心配もいくばくか……。
では、もし、近い将来に自身がアルツハイマー症を発症するかどうか、それが判定できる検査があったとしたら(しかも無料)――。
人種も性別も超えて高い関心度
そんな認知症意識に関する興味ぶかい知見が、『Alzheimer's Researsh and Therapy』(2016年12月13日)にオンライン掲載された。
調査を行なったのは、米スタンフォード大学医学部(カリフォルニア州)のMeera Sheffrin氏らの研究チーム。
今回の調査では、65歳の高齢者(計875人)に対し、将来のアルツハイマー病リスクが正確に予測できる無料検査を「受けるか」「受けないか」の是非を尋ねた。
その回答結果は
「受けたい」層が4分の3
を占めたという。
さらに調査では「もし、自身がアルツハイマー病を発症すると判明した場合、どうするか?」という直截的な質問も投げた。
すると、
回答者の87%が「家族と医療計画について話し合う」との選択肢を選んだ。
その8割は「将来の介護計画を立てる」「生前遺言(living will)を作成する」という具体的対処や、「その両方を行なう」との回答を寄せた。
ちなみに今回のアンケート調査を受けるまでもなく、すでにそれらの老後対策を行っている割合は「15%のみだった」と、報告書は書いている。
しかし、このアルツハイマー病の予測検査に対する高齢層の関心度は総じて高いといえるだろう。
研究陣の分析によれば、各回答者が自身の発症リスクの高低を認めているか否か、その違いによる関心度の「差」も特には読み取れなかったそうだ。
また、こうした無料検査への高い関心ぶりは、健常者層と、多くの疾患を抱えている層との間でも「差」は認められず、それは性別・人種、あるいは身体や記憶力の状態の如何によっても変わらなかった。
生前遺言10万人越え時代に
「一般人の関心がこれほど高い背景としては、アルツハイマー病が頻繁にマスコミ上で取り上げられ、とりわけ重大な影響を及ぼす疾患であるという認識が人々に浸透している可能性がある」(Sheffrin氏)
日本でも、運転者がアルツハイマー型認知症の場合、「自分が今、どこを走っているか!?」という空間認識に支障が生じたり、目的地を失念して徘徊したりする例は多い。
結果、
センターラインを越えたり、
逆走したりするのだ。
あるタクシードライバーは、「定年後も頑張る同僚が多いが、ある日突然、営業所への帰路が分からなくなって、その日に引退した人もいる」と身近な認知症の事例を語る。
こうした深刻な認知症問題に国境はない。
今回の研究成果を踏まえて、Sheffrin氏は次のように述べている。
「近い将来、こうした予測検査が可能になるならば、患者に助言できたり、将来の備えに有意義な手段として、高いニーズが生じるだろう。斯界の研究陣や医師たちはそう認識すべきだ」
<将来の備え>といえば、日本では「生前遺言(living will)」の関心は高まっている。平成26年に全国で作成された「遺言公正証書」は10万件を突破(日本公証人連合会調べ)した。
昨今の相続・遺言への意識の高さを伺わせるトピックだが、老いてもハンドルを握る方々には、認知症対策への自意識も深めてほしい。