風が強く吹いている
三浦しをん
「これから1年弱、きみたちの協力を願いたい」
寛政大に入学する走(かける)はアパートの契約金を麻雀でスッてしまい、大学の隅で野宿をしながら、パンを万引きして食いついないでいた。
ある日、パンを万引きして逃走すると自転車で追ってくる人がいる。
それが4回生のハイジとの出会いだった。
ハイジは走の状況を聞いて、自分の住む青竹荘を紹介する。
「これで10人揃った」
走の歓迎会で青竹荘のメンバーが全員揃ったところでハイジが冒頭の言葉を放つ。
青竹荘のメンバーは…
一卵性双子のジョージとジョータ。
高校まで陸上をやっていたニコちゃん。在学中に司法書士試験に合格したユキ。
留学生のムサ。
山深い田舎からやってきた神童。
クイズ番組に部屋から参加して正解をたたき出すキング。
マンガが好きな王子。
走ることしか知らない走。
4年間、この時をじっと待っていたハイジ。
現役の陸上部員は誰一人いない10人。
ここから、青竹荘のメンバーは箱根駅伝に向けて予選会を通過するところからスタートする。
もう、なんでもっと早く読まなかったんだろう…私のバカ‼︎
今年初めてじっくりと箱根駅伝を見た事もあって手に取ったこの本。
前半は私が20歳前後に入り浸っていた、大阪工業大学の学生達が住むアパート「ミヤマ荘」がそのまま再現されたようで、当時を思い出しながら読んだ。
後半は10人の一人ひとりの背景が、各区間を走ると共に自分に向き合う様に書かれていてのめり込んだ。
みんなが箱根駅伝の前に再読せずにはいられないのが読んでいてわかった。
魂が揺さぶられる1冊だ。
今も書評をスマホで書きながら興奮が冷めない…。
風が強く吹いている (新潮文庫)
961円
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