その後もちゃんと部活に出て練習をしていた。


      「あ、愛華、わたしちょっと水あびてくるね」


      「うん、わかった。」


      わたしが体育館うらの水道に行くとそこで佐藤先輩も


      水をあびていた。


      「・・・どうも・・。」


      「あ、愛華ちゃんの友だちの・・・・・えっと・・・」


      「藍川歌織です。」


      「歌織ちゃんかー、どうしたの?歌織ちゃんも水あび?」


      「はい」


      「そっか。ここの水道いいよね。冷たい水が出てくるからさ。」


      「そうなんですか?」


      「うん。ここ体育館が陰になってあんまり日があたらないから


      すずしいんだ」


      「なるほど・・・くわしいんですね。」


      「うん、ここ休憩のときによく来るんだ。おれの秘密の情報」


      「秘密って・・・・もう私に話しちゃってますから秘密に


      なりませんよ」


      「あっ、そうか~。じゃあ2人だけの秘密ってことで」


      そう言ってニカっと笑った顔はすごくまぶしかった。


      表裏ない人懐っこい先輩。そこが先輩のいいところであり


      わるいところだとわたしは思う。


      「2人・・・・・・・・ですか?」


      「うん、そう。迷惑だった?」


      「いえ、そういうんじゃないんで・・・」


      「そっか。あっ!もうこんなに休憩しちゃってる。あ、じゃあもう行くね」


      「ありがとうございました・・・・。」


      そういうと先輩は遠くから大きく手をふってくれた。


      (犬みたい・・・・・)


      バシャッバシャッ


      「つめたっ・・・・!」


      先輩の言ったとおり、たしかに冷たくて気持ちがいい。


      「佐藤先輩・・・・・・・か・・・・」


      ぜったいに好きになってはいけない相手。


      (わたしは愛華を応援するってきめたんだから・・・・・・・!!)


      そう心に言いきかせながら、体育館に戻った。


      体育館にもどると愛華がイスに座っていた。


      愛華の膝には新しいアザがあった。


      「愛華!膝・・・・アザができてるけど、どうしたの?!」


      「あ、ちょっとさっきころんでぶつけちゃって・・・・・あははは・・・」


      「・・・・・・先輩・・・・?」


      「ち、ちがうよ!これはただの愛華のドジだよ。」


      「・・・・・・・・気をつけなよ」


      「うん・・・・・ごめん」


      「じゃあ練習もどるから」


      「うん、がんばって!!」


      「あたりまえじゃん!あ、帰りはどこか寄って帰ろ」


      「うん!!!」


      「じゃ」


      たぶん、あのアザは先輩がボールをぶつけたんだと思う。


      (愛華・・・・)


      愛華には先輩と幸せになってほしい。そう思っていた。


 

      練習も終り、帰る時


      「ねえ、歌織」


      「ん?なに?」


      「話があるんだけど・・・・」


      「・・・・・・・・じゃあ、ドーナツでもたべながら話そ」


      「うん。すごっく大事な話なの。」


      「うん。・・・・・行こっか」


      わたしたちはならんで歩き始めた。



      愛華が話してくれたのは夜、電話でだった。


     「歌織、わたしもう我慢できないよ・・・・・。」


     「愛華、明日も一応部活に顔だしとこう。


     もしかしたらいじめが終わってるかもしれないし.......。」


     「で、でも怖いよ・・・・・」


     「大丈夫。わたしが守ってあげるから。」


     「・・・・・・・・・・・・・う・・・うん。」


     「じゃあ・・・・おやすみ・・・。」


     「うん・・・おやすみ・・・・。」


     しかし、わたしはその夜眠れなかった。


     (いじめが終わってるかもなんて言っちゃったけど、


     たぶん終わってないな・・・。わたしが愛華を守らなきゃ・・・!!)



       翌日


     「大丈夫?愛華。行ける?」


     「大丈夫!歌織がいるから心強いもん!!」


     「そっか・・・。よし!!じゃあ行こっ!」


     「うん!」


     強がっているのがよく分かる。愛華の手はふるえていた。


     わたしはその手をそっとにぎった。


     「歌織、わたしがんばるよ。」


     「うん、応援するよ・・・・・・先輩の事もネ♪」


     「も、もー歌織!!」


     愛華の笑顔はすごく可愛かった。この笑顔を守りたいと思った。


     しかし、その笑顔は長くは続かなかった。


     「え・・・・このシューズって 愛華のじゃ・・・・」


     「・・・・・・・・」


     愛華のシューズが、排水溝のところにかくされていた。


     「・・・・・・・あ・・あ、あーよかった。汚れてなくて。」


     「愛華・・・・・。」


     「行こっか」


     「・・・・・うん。」


     愛華の目には涙がたまっていた。


     しかし、涙のたまった目はどこか強い眼差しで遠くを見つめていた。


     「愛華は強いね・・・・。」


     「そ・・・そ・・・ぞん゛な゛ごどな・・な、いし。


     ・・・・グシ・・・・ひっく・・・・か、歌織の方が全然強いよ。


     だって、いつも愛華の隣にいてくれるもん」


     「そうかな・・・・・・・。」


     「そうだよ・・・・・・。それに優しいし。」


     「そんなことないよ・・・・」


     「あるの!!」


     「え、な ないよ!!」


     「ある!」


     「ない!!」


     「ある!」


     「ない!」


     「あ・・・・・アハハハ」


     「きりないね」


     「でも、こうやって何でも言いあえる友だちがいるのって、


     なんかいいね。」


     「うん・・・・そうだね。わたし、愛華がいてよかった。」


     「愛華も・・・・歌織がいてよかったよ。だって歌織がいたから


     今の愛華がいるんだもん。」


     「あ、あたしだってそうだよ!!」

  

     「歌織、ずっと友だちでいてね・・・。」


     そういって小指を出してきた。


     「・・・・・うん・・・。約束する。」


     「約束ね。」


  

          ゆびきりげんまん ウソついたら針千本のーます


          ゆびきった!!!!!



     「ずっと一緒だよ。」


     「うん。」



            ずっと友だち









       最初はやっぱり愛華がターゲットだった。


    「沙川ちゃ~んコレ片付けといてネ♪」


    「ハイ・・・」


    初めはこんな、片付けを1人でやらされるみたいな


    簡単なことだった。


    「手伝うよ愛華」


    「ありがと」


    こうしてわたしはいつもこういうことがあると愛華を


    なるべく1人にしないようにしていた。


    「歌織はいつも優しいね。」


    「はぁ?そんなことないよ。何いきなり」


    「これからもずっと友だちでいてね」


    「当たり前だよ、そんなの」


    「えへへ」


    そういうところが先輩は気に入らなかったんだと思う。


    いつしかいじめが過酷していった。


    「いたっ!!」


    「あっごめ~ん 手が滑っちゃったんだ♪」


    「も~気を付けなよ」


    「えへ♪沙川ちゃんほんとにごめんネ☆」


    「あ、い いえ。いいんです」


    先輩は練習のじかんにゲームをすることがあれば


    必ずサーブをはずす。そして愛華に当てるのだ。


    「大丈夫?愛華」


    「大丈夫大丈夫!全然気にしてないし♪」


    「ちょ、赤くなってるじゃん!!早く冷やしなよ!!はい、氷。」


    「ありがと・・・・・・冷たっ!!もう歌織!」


    「あはは」


    愛華はなにがあっても弱音を吐かなかった。


    「沙川ちゃん!沙川ちゃんもゲームやろうよ。1人足りないからさぁ」


    「え・・・でも・・・・・」


    「いいじゃん。いい経験だよ」


    「分かりました・・・」


    「じゃあこっちからサーブね☆」


    「沙川ちゃんサーブとるのがんばってね~」


    「は、はい」


    「いくよ~」


    バシッ


    「痛っ!!!」


    「ちょっと~ちゃんととってよ!勝負にならないじゃない」


    「すいません・・・」


    「じゃあもう1回ね」


    それから愛華にはあざがおさまらない。


    翌日愛華が初めて弱音を吐いた。


    「もうヤダ・・・部活辞めたいよ・・・・・・・・・」