――――――カランカラン


     店員の「いらっしゃいませ」という声が聞こえる。


     この店はケーキ屋の中にカフェがあるため、ケーキを買ったあと


     そこに座って食べることができる。


     「どれにする?」


     「わたしは、チーズケーキとガトーショコラとイチゴのケーキにします!!」


     「おぉ・・・すげぇ。じゃ、おれは生チョコタルトにしよーっと」


     そう言っている間に店に実果が入ってきた。


     2人はそれに気づいていない。


     「じゃ、どこに座る?」


     「あそこがいいです。」


     選んだ場所は奥の目立たない席だ。


     歌織は先輩といるところを誰かに見られたくないのだ。


     「いいよ、座ろっか」


     と言い先輩はケーキの乗ったトレイを運ぼうとする。


     「あっ、いいですよ!わたしがはこびます。」


     「いいって。それに歌織ちゃんお持ち帰り用のケーキ持ってるし」


     歌織はここで食べるケーキの他に、5つほどケーキを買ったのだ。

   

     「すみません......。」


     「いいって いいって。」


     先輩が奥のほうに座り、歌織は店の中に同じ学校の人がいたら


     あぶないと思い、店の客からは顔が見えない位置に座った。


     「あ、飲み物何にする?」


     「じゃあオレンジで・・・」


     「おれはグレープフルーツにしよ」


     そう言うと先輩は立ち上がった。


     「あ、いいですよ!わたしがやります。」


     「いいの いいの。おれが誘ったんだし」


     「あ、ありがとうございます。」

 

     先輩が立ち上がった時に実果が歌織と背中合わせになるように


     座った。


     歌織はそれに気づいていない。


     (誰かにみられてませんように・・・・・!!)


     そう思いながら待っていた。


     「お待たせ。はい、オレンジジュース」


     「あ、ありがとうございます・・・」


     「さ、食べよ食べよ」


     「....................おいしい!!!」


     「(かわいいなぁ)おれのもおいしいよ、たべる?」


     「いいんですか?!いただきます!!!!」


     そう言ってタルトを一口もらった。


     「おいしい!!やばい!!!」


     「だろ?チーズケーキもおいしそう」


     「一・口・食べます?」


     「いるいる!!いただきまーす♪」


     「先輩一口なのに大きすぎますよ!!半分もないじゃないですか・・・」


     「一口で食べたから大丈夫!!チーズケーキは持ち帰りするじゃん」


     「・・・・・・ぅぅ」


     「はははッ!!わかったよ。ハイ」


     と言ってグレープフルーツジュースをさしだした。


     「え?」


     「さっきこれとオレンジで迷ってただろ?」


     「あ・・・・でも」


     「大丈夫だよ。まだ、飲んでないから」


     「いや・・・・その・・・・・いただきます!!」


     「うん。どうぞ。」


     「・・・・・・・おいしい!!」


     「オレンジ少しちょうだい」


     「え・・・・」


     先輩はオレンジを飲み干した。


     「飲みすぎです!!」


     「おかわりは無料ですよ~~~~」


     「おかわりしてきます・・・!」


     そう言って立ち上がると同時に実果も立ち上がった。




     「あ、歌織ちゃん。愛華ちゃんいないけど、どうしたの?」


     「あ、先輩。実はわたしもよくわからなくて・・・・。」


     (もしかして先輩と顔合わせるのいやだったんじゃ・・・・・・)


     そう考えていると先輩が口火を切った。

  

     「愛華ちゃんのことはフッたよ」


     「えっ!?あ、いや・・・」


     「じつは他に好きなコいるんだ」


     「そうなんですか・・・・って、えええぇぇぇ!!!!!」


     「おどろきすぎだろ」


     「す、すみませ・・・」


     「歌織ちゃんはいないの?好きなヤツ」


     「いませんよ!!勉強中です。」


     「ハハッ モテそうなのになぁ」


     「こんな可愛くないやつなんてモテるわけないじゃないですか」


     「いや、結構可愛いよ、歌織ちゃん。


     入学して来たときから上級生ではけっこう噂が」


     「・・・愛華のほうが可愛いと思いますけど・・・。」


     「うーん。おれは歌織ちゃんのほうが好みだけど」


     「・・・・・・」


     「あ、もう練習もどるね、じゃ」


     と言うと先輩はそそくさと戻って行った。


     (・・・・・・やめてよ・・・)


     先輩はやっぱり変だ。普通、女子に可愛いとか言わない。


     「ハァ・・・・・」


     「ねえねえ、歌織ちゃん。」


     「はいぃ!!あ、実果か・・」


     「・・・・・歌織ちゃんって佐藤先輩と仲いいんだね。」


     「あ、うん。ちょっとね」


     「佐藤先輩の事すきなの?」


     「んなわけないじゃん!!!ちがうよ」


     「ふぅ~ん。うちは佐藤先輩のことネラってるけどネ♪」


     「え・・・・・・マジ?」


     「マジだよ♪歌織ちゃん、佐藤先輩と仲いいみたいだし


     協力してほしいんだけど」


     「え・・・・でも」


     (わたしは愛華を応援してるし・・・)


     「やっぱり歌織ちゃんも佐藤先輩のこと好きなんじゃん」


     「ちがうってば!!」


     「じゃあ協力してよ」


     「・・・・ごめん」


     「なんで?」


     「いえない」


     「んー・・・じゃいいや。うちはうちでがんばるし」


     「ごめんね」


     「歌織ちゃんが悪いんじゃないよ!」


     「じゃ、練習もどるね」


     「うん。うちはちょっと用があるからもう帰るね。」


     「あ、うんじゃあね!また明日。」


     「うん、また明日!」


     実果はそう言うと体育館から出て行った。


     「複雑だなぁ・・・・・・・・・・・。」


    

       部活も終り、歌織は忘れ物をとりに教室に向かっている。


     「やばい!!あれがないと勉強できないし!」


     そう言いながら教室へ入った。教室は夕日に照らされて


     オレンジ色に染まっている。その中の愛華の机の横に


     まだ愛華のカバンがかかっていた。


     「あれ・・・?愛華帰ってないのかな。」


     (保健室かも・・・)


     歌織は愛華のカバンと忘れ物を手に、保健室へ足を進めた。


     ろうかは所々夕日に染まっている。保健室まであと少しの所で


     愛華と出会った。愛華の眼は少し赤かったが、そのことに歌織は


     気付かなかった。


     「あ、愛華!これカバン・・・」


     「あ、ありがと。」


     「どうしたの?保健室に行くなんて」


     「あ、ちょっと腹痛でさ」


     「そうなの!?もう気を付けなよ?」


     「うん・・・・。」


     「あ、今日一緒に・・・」


     そう言いかけたときに愛華の声がさえぎった。


     「ごめん。今日はちょっと用があって急がなきゃいけないから」


     「そっか・・・じゃあまたね。」


     「うん。また」


     そう言って愛華はオレンジ色に染まったろうかを走っていった。


     「はぁ・・・・1人で帰るの寂しいなぁ・・・」


     「じゃあ一緒に帰る?」


     「う~ん・・・・・・って、え?!先輩なんでここにいるんですか?!」


     「ちょっとバスケでケガしたから保健室によってたんだ」


     「大丈夫ですか?」


     「大丈夫大丈夫それより一緒に帰らない?」


     「え・・・でも方向が・・・」


     「一緒」


     「わたし電車で・・・」


     「おれも電車。」


     「わたしよるとこあるんで」


     「ついてくよ。それにこの時間に女の子1人じゃ危ないよ?」


     「・・・わかりました」


     「よし!じゃあどこ行こうか。どこよるの?」


     「え・・・あ、えっと・・」


     「んーじゃあ近くのケーキやさんに行く?」


     「行きます!!・・・あ、すみません」


     「甘いもの好きなんだ?」


     「・・・・・・・・・はい。似合わないって言われるんですけど」


     「そう?おれは似合うと思うけどなぁ」


     「・・・・・・・・先輩って優しいですよね」


     「そう?別にフツーじゃね?」


     (フツーじゃないんですよ!!)


     「あ、ケーキやさん!」


     「お!今日は安いのか・・・ラッキー♪」


     そういいながら店に入った。その場面を実果にみられているとも


     知らずに・・・・。








  「歌織、愛華・・・先輩に告白しようとおもうんだ・・・」


      「えっ・・・もう?早くない?」


      「・・・・・でも結構知り合ったし、それに先輩に伝えたくて


      我慢できないんだ」


      「・・・・・そっか・・がんばれ!!応援してる。」


      「ありがと・・・歌織がいるとやっぱり心強いや」


      「そう?あ、これ美味し~!!」


      「えっ!!一口ちょうだい~」


      「ダメ」


      「なんで!!・・・・ケチ・・」


      「うそだよ。ハイ」


      「美味しい!!!」


      「でしょ~」


      「愛華も買って帰る!」


      「じゃあもう行こうか」


      「うん。あ、これもほしい!!」


      「あは、早くしてよ~」


      「あ、待って!」




        翌日


      「大丈夫?」


      「うん!!じゃあいってくる」


      「がんばれ!!」


      とうとう愛華が先輩に告白するのだ。


      (OKもらえるといいな・・・)


      「あ、歌織ちゃ~ん」


      「ん?あ、実果」


      実果はクラスメイトで今年できた友だちだ。


      「あれ?愛華ちゃんは?」


      「ちょっと用があるって」


      「じゃあ一緒に部活行こ♪」


      「う・・うん」


      「早く早く!準備して」


      「わかったよ」


      「行こ!」


      「あ、待って!!」


      その後愛華が教室に帰って来た。


      「歌織ー・・・・歌織?」


      


         体育館


      ―――――ガラガラ


      「あ、愛華!!どうだった?」


      「・・・・・もう先に来てたんだね・・。」


      「え?」


      「なんでもない・・・・」


      「あ、愛華!!」


      「どうしたの?歌織ちゃん」


      「なんでもないよ」


      「そう?じゃ練習もどろう♪」


      「うん」


      その日初めて愛華が部活を休んだ。