近年は大人も子ども本を読む人が少なくなっているようです。
スマホという便利な道具ができてから、そちらの方が手軽で便利で面白いと思うのは当然です。
時によっては、スマホで楽しい時間を過ごすことだけが命綱になることも理解できます。
ただ、私は紙媒体の絵本や読書の大切さは、こんな時代だからこそお伝えしたいのです。
人の体験は本当に限られています。
その体験不足や世界の多様性を感じて、想像力や感情の豊かさを疑似体験し、
心の多様性や深さを育むには、絵本や本がとても大きな役割を果たすのだと私は思うのです。
ということで、このブログでも時々絵本の紹介をさせていただいているのですが、
今日はこの一冊の紹介と私の体験を書かせていただきます。
「ローラとわたし」
キアラ・ヴァレンティーナ・セグレ 文 /パオロ・ドメニコーニ 絵/杉本あり 訳

【内容紹介】
ローラはわたしの親友で、いっしょに暮らしている。
はじめて出会ったとき、ローラはひとりで苦しんでいた。わたしは、ローラの力になろうと決めた。
毎日の散歩や、はじめて行った海…。
女の子と盲導犬がともにすごす日々を美しく描いた感動の絵本。
IBBY障害をもつ子どもたちへの推薦図書選定。
【著者について】
キアラ・ヴァレンティーナ・セグレ
1982年ミラノに生まれる。分子腫瘍学で学位をとり、サイエンス・コミュニェーションで働いている。イタリアの出版社から子ども向けの絵本や読み物を出版している。
パオロ・ドメニコーニ
イタリアのモデナに生まれる。絵画を学んだ後、広告会社に勤務した。現在は子どもの本のイラストの仕事で活躍している。
杉本あり
大学卒業後、出版社勤務を経てイタリアへ留学。インテリアデザインを学ぶ。エコ・デザインなど「暮らし」と「デザイン」をテーマに取材・執筆をしている。著書に 「 イタリア一人歩きノート 」「 イタリア一人暮らしノート 」(大和書房) 「 フィレンツェ 四季を彩る食卓 」(東京書籍)など。
視覚に障害を持つ人達と、社協職員としての仕事の中で出会ったことがあります。
先天性の全盲の人から(一人は生まれつき眼球がなかった)、色々な原因で途中で視力を失った人もいました。
盲導犬と一緒に暮らしている人とは、親しくはなかったけれど時々会っていたので
その都度盲導犬の能力に感動もしました。
犬というものは、訓練されているとはいえ、人間の仲間で理解者なのだなと感心するばかりでした。
同時に、視力を失った人たちの聴力や周囲の雰囲気を感じ取る凄さにも驚くばかりでした。
かつて、全盲の大学の講師に講演をお願いしたことがあり、その時に会場のドアの前で
「随分大勢の人が来てくださっているのですね」と言われてビックリしました。
その人には、私が昼食の時などにお手伝いをしたのですが、
最初に昼食の内容を、教えられたとおりに時計の針の方向などで示してお伝えしたら、
その後は何も説明の必要はなく、指で位置を確かめながら見えているかのように食べつつ、私達との会話が続いたのです。
さらに、一度自己紹介をしたなら、声でその人のことを記憶するのでしょう、
不都合なく会話も続きその人が全盲ということも忘れてしまいました。
その人はもともと能力が高い人でもあったのでしょうが、もう「恐れ入りました!」という感じでした。
もう一人、点字図書館で働いていた男性と久しぶりに会った時に、
私は懐かしさから自分の名前を名乗らず「Sさん、お久しぶりです」と話しかけた時、
すぐに「あ、Kさん、お久しぶりです!」と返事をされた時はビックリしました。
私の声はそれほど特徴的なのでしょうか?
いえ、そうではなくて、彼は私達が顔を覚えるように、声と人を覚えているのだと思います。
彼はほとんど見えていないと言っていましたが、(ぼんやりと影が見えるような感じらしい)
白杖も使わずにあまり不自由なく歩いている感じでした。
その時は、夜の支笏湖の氷濤まつりの会場で会ったのですが、彼は私たち以上に不自由なく動き回っていました。
もう一人の鍼灸師の男性は、彼の言葉によれば「朝起きたら、何も見えなくなっていた」そうで、
それから視覚障碍者として生きていくために鍼灸師の勉強をしたようでした。
まだ目が見えないことに慣れていなかった頃(彼の言葉)、
横断歩道を渡れずに一時間くらいそこで立ち止まって逡巡していたといます。
「その時が一番怖かったなあ」と笑いながら言ってましたが、
本当に不安で恐怖の時が何度も何度もあったことでしょう。
色々な障害があり、どれもが大変な不便があると思いますが、私は目が見えなくなるのは一番怖いと思いました。
何よりも、私の楽しみは「本を読むこと」で、これができなくなるのはとても怖いのです。
当時は30代後半だったので、点字ボランティアにチャレンジしようかとも思ったこともありましたが、
仕事や育児に忙しすぎて体験だけで終わってしまいました。
その時に点字図書にも触れてみたのですが、私の鈍感な指先ではただの凸凹にしか感じられず、
白杖体験もしてみましたが、アイマスクをつけて傍らには介助者もいるのにもかかわらず、
一歩足を運ぶのにもとても不安でした。
ためしに、アイマスクをしてまっすぐ歩いてみたらどうなるのか、機会があったら試してみてください。
スイカ割をしたことがあれば、目の見えない状態でまっすぐ目的の方向に歩くのが難しいことはわかると思います。
まあ、そんな私でも本当に視力を失ったなら必死に頑張るのでしょうが、
私にそれができるのだろうかと、障害を持った人たちを心の底から尊敬したものです。
絵本からはちょっとはずれた思い出話になってしまいましたが、
この絵本は中途失明者の不安や恐怖、そんな心を理解して寄り添うものの存在の大切さ。
やがて勇気を出して歩き出し、次々と新しいチャレンジをしていく姿や、
その傍らに信頼できる相棒がいることがどんなに素晴らしいことか。
そんなことを疑似体験させてくれる絵本だと思います。
最初は「ローラつてどっち?」と思いながら読んでいたけれど、
ああそうか、と思った時に静かに感動が広がりました。
犬はとても賢いし、人の言うことをよく理解するので、盲導犬だけではなく介助犬としても活躍しているはずだと、
ネットで調べたら「日本介助犬協会」があったので、そのサイトを見たら色々わかると思います。
機会があったら、ぜひお子さんと一緒に読んでみませんか?