封筒から出した手紙を開こうするが、手が震えてしまうセンター。
警部補「……確かにアナタのお母さまが書いた手紙ですから、中身を読むのは怖いかもしれません。ですが私のカンではありますが、その中には真実が書かれているかもしれません。だからこそアナタは読まなければいけないと思います」
警部補の言葉で手の震えは治まったが、指先はまだ微かに震えているようだ。
両親が離婚して父親に引き取られたセンター。だが本心は母親と一緒に暮らしたかった。だから、あのときセンターは母親が乗ったタクシーを追いかけた。追いつくはずもないのに、ただ1人になりたくなかっただけのために。
母親に暴力を振るう父親をセンターは許せず、小さな殺意も芽生えていた。いつかその殺意は大きくなって、センター自身いつか自分は父親を殺すのだろうと感じていた。
だが、紗理奈が父親を殺害したことでその予想はハズレたが、今回の紗理奈との戦いの中で“私の中にも紗理奈と同じ怪物が存在する”とセンターは改めて感じていた。
紗理奈に殺害される前に父親が話した事とは一体何なのだろうか。自分や母親・父親が紗理奈を裏切ったとはどういう意味なのだろうか。
もしかすると、警部補が言うように、この手紙の中に真実が書かれているのかもしれないとも感じるセンター。
センター「……もう逃げない。それが私の“マジ”だよな」
誰にも聞こえないような小声で言い、センターは手紙を開いた。
手紙を一通り読んだセンターの瞳からは再び涙が流れだした。この手紙に書かれていたことが真実だとすると、センターが今まで真実だと思っていたことは全くの勘違いということになる。
だが、この手紙に書かれていることが真実というのであれば、紗理奈が言う家族に裏切られたという意味が何となく納得できたセンター。
手紙の最初には、センターの出生の話が書かれており、ここまではセンターが知ってる通り父親の登とその愛人との間に産まれ、その愛人が亡くなったために母親である路代が産んだことにして出生届を出した。だが、ここからはセンターが思っていたことは違うことが書かれていた。
路代は最初こそ実の娘じゃないセンターを愛すことができなかった。しかし、時間と共に本当の娘である紗理奈と同じのように愛せるようになった。
路代はセンターのことを“この子は私の子なんだ”と感じていた。
だが、ある時を境にセンターが怪我や病気にかかることが多くなっていった。そして、その度に紗理奈が関わっていることを路代は悟った。
それを証拠付けるかのように、病院から帰って行くセンターは路代に“お姉ちゃんが私を傷つけてくる。お姉ちゃんと一緒にいたくないよ”と言った。
そして路代は調べるにつれて、紗理奈が代理ミュンヒハウゼン症候群ではないかと感じ、センターと紗理奈が寝静まった後にこのことを登に話した。
もちろんショックを受けた登だが、それを受け止め、2人はある決意を固めた。
その決意はセンターを守るため、2人は離婚をして紗理奈と離れさすことだった。
もっといい方法はあったかもしれない。しかし、路代と登はこの決意しかできなかった。
路代は紗理奈がここまでになったしまうまで気付いてやれなかったことを悔やみ、親権を持つことになった。
ただ離れるだけでは効果がなく、センターが紗理奈に傷つけられていたという事を忘れさせるために、登が路代に暴力を振るう狂言をした。
登自身も悲しみながら、センターに見せつけるように路代に暴力を振るったようにした。
たまにセンターが路代を庇うことが有り、恨みを紗理奈から登に向けるようにもした。登自身もセンターを守るためなら、娘に殺意すら持たれてもよいとすら感じていた。
センターもいつしか紗理奈に傷つけられたことは忘れ、恨みの対象を登に向けていた。
その後2人は離婚し、センターは殺意を持つ登と暮らしていった。
しかし、紗理奈の怪物が目覚めたあの日、路代は初めて紗理奈が自分の娘ではないような感覚にまで陥り、精神的に追い込まれたことも原因となって不治の病にかかってしまう。
紗理奈もセンターに会いたいからなのか、路代に必要に前に住んでいた町に帰ろうと言う。
路代は毎晩登と電話をかけ、渋々戻ることになった。
そして、センターが刺され、追い討ちをかけるように紗理奈は登を殺害し、ショックが重なった路代の体調はさらに崩れることになった。
これが手紙に書いてある内容である。
この手紙に書かれている文字は、終盤になるにつれて筆跡も崩れ、何と書いてあるのかもわからない部分もあった。おそらく死の間際路代はこの手紙を書き、センターに真実を話したかったのだろう。
おそらく、最後の方で手紙を書く路代の手は震えていたのだろう、手紙にはおそらく涙がこぼれたときについた水滴の跡もあった。
そして、最後に書かれている文章をセンターは呼んだ。
“珠理奈は私とお父さんの愛する娘よ”