手紙を読み終えたセンターは、本当の真実を知ることになった。
紗理奈が言っていた恨みの根源というのは、愛する妹に一緒にいたくないという言葉が原因で両親が離婚し、家族が離れ離れになったことだと感じた。
それは愛する者たちからの裏切りだと、紗理奈が感じたとしてもおかしくない。
中学時代にセンターが刺したキッカケを作りながらも、センターが両親の血液型からは生まれるはずのないB型だと知った紗理奈は登に話を聞きに行き、そこで登から全ての真実を聞いたはずだ。
その瞬間、怪物は目覚めて紗理奈は登を殺めたのではないかとセンターは感じていた。
紗理奈にとってセンターが本当の姉妹じゃなかったという真実は、どうでもいい事だったのかもしれない。
その答えを知る者は紗理奈しか、あるいは誰にもわからない事なのかもしれない。
この手紙を読み終え、紗理奈への恐怖が無くなった訳ではない。この悲しい真実から、少しだけ紗理奈を知ることができた。
そして、母親に捨てられたとずっと想い続けたり、父親に微かな殺意を持った自分が恥ずかしく感じたセンター。
センターの表情が和らいだようだと警部補と若田は感じた。
警部補「それでは我々は、捜査がありますので失礼します」
警部補が頭を下げた直後、若田も頭を下げた。
センター「……高橋さん」頭を上げる警部補と若田。「……もし紗理奈が……いや、なんでもありません」
警部補「……そうですか」
警部補はもう一度会釈をし、病室を去って行った。
そして、扉の横にあったソファーにネズミが座り、病室から出た警部補の姿を確認するなり、軽く会釈をしてから病室へ入った。
病室に入ったネズミは、センターの表情の変化に気付いた。
ネズミ「お前、さっきよりなんかいい顔してるな」
センター「まあ、いろいろあったんだ」
顔を合わせた2人の表情には、笑顔があった。
少なからず、今なら紗理奈と向き合えるような気がしたセンターだった。
警部補と若田が病院の出入り口へ向かう際、病院の待合室を通ったときだった。
?「黒崎は捕まりそうですか?」
警部補はこの声を聞いた瞬間、あの日非通知で警部補にタレコミをしてきた男の声と同じで、そして声の正体も誰か察した。
2人は声の方向へ視線を向けた。
視線の先にはソファーに深々と座り、顔を隠すように新聞を広げる人物がいた。