生きる道しるべ① | PADME

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人生を豊かに

落ち着いた心で

 

 5月も下旬に入り、まもなく暑い夏を迎えようとしています。梅雨を気持ちよく迎える為にも皆様、仕事に、家事に、子育てにと、日を追うごとに忙しくしているのではないでしょうか。しかし忙しくなるとどうしても物の扱いが雑になってしまいがちです。時間がない時一度に沢山の荷物を運ぼうとし、無理して持ち上げたもののバランスを崩してしまい、かえって片付けに時間がかかってしまう、そんな経験のある人も多いのではないでしょうか。

 

 外出する際、シューズやスリッパを靴箱から出し、急いでポンと投げ落とすと裏返しになってしまい、それにイライラしてしまう事はありませんか。初めからしゃがんで丁寧にシューズを並べていればイライラする必要もないでしょう。雑な扱いをしてしまった為にシューズもそして心も整いません。そんな時私は20代、鎌倉円覚寺専門道場に掛塔(修行)していた頃を、何時も思い出す様にしています。禅では威儀即仏法、作法是宗旨と言います。

 

 修行僧(雲水)の生活は衣の着方や立ち居振る舞い、合掌礼拝の角度やお経の読み方、そして食事の仕方に至るまできっちりと形が決まっており、出来る様になるまで先輩の僧侶の方から厳しく指導されます。あらゆる場面の一つ一つを疎かにせず、いかなる時も気を抜かずに行じてゆく。半年すると丁寧に行じている事が極当たり前になって来ます。すると自身の焦りやせっかちな部分は消え、落ち着いた心で毎日を送る事が出来る様になりました。

 

 一年経つと周りを見る余裕も出来、慣れずに困っている新到(新参の人)に教える手伝い迄、出来る様になっている事に気付きました。禅は自身の身なりや所作、作法は全て仏様の御教えであり、日常生活の一つ一つを丁寧に行う事の大切さを説いています。自分の身の回りの物を大切に丁寧に扱うと自然と自分の気持ちも落ち着き心が整って来ます。自分の心が整うと、周りにも気を配って、困っている人が心を整える助けになれるかもしれません。

 

 丁寧な所作が人格を作ります。忙しい毎日でも、焦りやせっかちな気持ちを抑え、自分の身の回り一つ一つを丁寧に扱い、心を整えて行きましょう。

 

萬善寺