この先どう行動すればいいのか、と悩む女性。
言われたように行動するのが最善の策だ、と彼女に助言した老婆だったが、そのときその背後で変化が起こった。
というのも、二体の白い生き物のうちの一体、矢印のような角の生えた生き物が光に包まれたのだ。
その生き物は謎の女性が持ってきたペンダントをかけていた。
この光はペンダントによるものなのか。
判然とせず、残る白い生き物はどうしようもできず、固まってしまっていた。
老婆と、彼女と話をしていた女性は光を放つ生き物へと近寄る。
光は最初生き物と同じ大きさだったのだが、それはどんどん伸びていき、最終的に人間の大人と同じくらいの高さになった。
そしてある程度大きくなると、その光りは弱まりはじめ、角の生えた例の生き物の姿が現れた。
今その生き物はさっきまでの黄色い光と違って、薄い黄緑色に輝いており、目をつむったままだ。
そして、その生き物の後ろに、不思議な女性が立っていた。
黄緑の長い髪を背に垂らし、白を基調とした防具を胸や手足につけている。
男らしい格好をしたその女性はどこか気品漂い、驚くべきことに背には大きな翼を持っていた。
「私は悠久の昔、魔と戦ったものの一人」
角の生えた生き物と、その後ろに立つ女性は同時に口を動かした。
その声は前に立つ生き物から発せられたようだが、その声は生き物のものとは全く違う、女性の声だった。
それにしても悠久の昔とは一体どういうことか。
そんなにも前のことを語る彼女はもう生きてはいないのだろうか。
「選ばれた戦いで私たちは勝利した。しかし、平和が訪れた後、突然私たちは敵の罠に落ちた」
彼女は語る。
しかしその言葉の中には不可解な点が多い。
選ばれたとはどういうことだろうか。
誰に、何のために選ばれたのか。
彼女の敵とは何なのか。
「それでその石ころに封印されたというわけかい」
老婆が不意に口を開いた。
その口調からして幽霊のような女性について何か知っているようだ。
「私たち、ということはあなたと同じような人がその中に?」
今度はペンダントを持ってきた例の女性が口を開く。
「えぇ、6人いた私たちの仲間とともに、私は長い月日をこの中で過ごした」
「6人!」
女性そして、白い生き物は同時に声を上げた。
それはつまり、老婆や生き物の仲間と同じ数。
最初彼女は魔と戦ったものの一人だと言ったがその辺りも彼女らが命じられたことの内容と似ている気もしなくはない。
「そんな!私は石に封じられるなどごめんだ!」
女性が目を見開き怒鳴る。
白い生き物も同じように頷いたが、老婆だけは動きがなかった。
憤る女性を見て、幽霊のような女性は、つぶやくように言った。
「繰り返させはしないさ」
その声は目の前の女性等に言う、というより、自分に言い聞かせるような声音だった。