「私たちは全力であなたたちを守り、知恵を授けよう。とは言っても、私たちには体がない。彼女に力を借りねば私たちはでてこられないが・・・・・・」
女性の声の力が徐々になくなった。
どうも彼女の体には実体がないようだ。
ペンダントに封じられた魂だけの存在、というところだろうか。
どうも彼女は例の生き物に体を借りることを悪く思っているらしい。
そこで口を開いたのが、老婆だ。
「それでいいんじゃないかい。そのことはお主たちはもう話はしたのじゃろう」
彼女はすべてを見透かしているような目つきで言った。
一体この人物はどこまで物事を知っているのだろうか。
どこまでも深い謎を持つ人物である。
その心情を推し量ることはできない。
「あぁ、もう彼女には話を付けてある」
幽霊のような女性はそんな老婆の言葉に頷いた。
けれど、女性は、しかし、とつぶやき、不安げな顔で、乗り移られた状態の仲間を見る白い生き物を見た。
「君はどう思うね?」
彼女は彼に問う。
急に話を振られたものだから、その白い生き物は困ったような顔をした。
「いや、彼女の好きなようにやらせてあげてください。僕はかまいません」
いくつか間を空けて、彼はそう答えた。
あの角の生えた生き物が想う人の答えを聞いた女性は、満足そうな顔をし、生き物は顔をわずかに赤らめた。
「そうか。では今後も少し体を借りさせてもらおう。何、今のような派手な登場の仕方は今回だけだ。何しろ今回は初めてだったからな」
勇ましい口調のその女性は少し微笑むと、かき消えるように消えた。
途端、角の生えた生き物が倒れかける。
慌ててもう一体の白い生き物が支えた。
「かりきんちゃん?」
白い生き物が呼びかけると彼女は慌てて飛び起き、「ギャ!」と返事を返した。
元気そうな声からして体の方に異変はないようだ。
「そうか、君が彼らに体を貸す人物か」
そして、ほとんど聞こえないような声で、布で表情を隠したままの女性がつぶやいた。