ネットに次の記事が載っていた。
“「情熱って熱いばかりでもないですよ」。作家桜木紫乃さんの最新刊「情熱」(集英社)は、還暦前後の男女が主人公の短編集。人生経験を重ねた大人たちの日常生活での戸惑いや覚悟を丁寧に描いた6編を収める。「情熱と分別のあわい、この年齢なりの情熱がある」。背伸びせず「今だからこそ」書けた等身大の物語という。
歩幅狭くてものろくても、前に
登場するのは、早期退職後に札幌にUターンした男性カメラマンや、定年延長した音楽ディレクター、思わぬキャリアを歩むことになる裁判所職員の女性ら。片思いだった相手と40年ぶりに再会したり、成り行きである人物とビアガーデンに行ったり。作品はそれぞれの心の動きを静かにとらえていく。「ドラマのない人はいない。そこにあるものを丁寧に掘り続けたいと思っています」
いずれも50代最後の4年間に書き、2022~25年の「すばる」「小説新潮」の1月号に掲載された。執筆時の心境を「自分が出ないように書いているけれども、その時々の心持ちは1行、2行に入っている」と振り返り、読み返して「(この間は)充実していた」と気付いたという。
単行本デビュー18年。4月に還暦を迎えた。「ギラギラもガツガツもしないし、自分にそんなに大きく期待しない。ただ、今までと同じ歩幅で同じものを見て歩いても、確実に何かが変わっている。年を重ねることは良いなあとかみしめています」とほほえむ。
近年は「原点回帰」を意識し、「デビューし直したつもり」で執筆。自分に負荷をかけるため、毎回必ず「新しい試み」に挑戦している。昨年12月から週刊新潮で連載中の「異常に非ず」は実際の事件を題材に、大阪を舞台にした。
まだまだ書きたいテーマがあり、小説への「情熱」がみなぎり続ける。「続けていると見えてくる世界がある。どんなに歩幅が狭くてものろくても、前に進んでいる感じがします」”
「情熱と分別のあわい、この年齢なりの情熱がある」は、なるほどと頷いた。私の過去を振り返ってみて納得のことばだ!