転勤を拒んだ場合は合理的な理由として社宅から出て行ってもらうことが可能ということでよろしいでしょ | 西村治彦の日記

西村治彦の日記

日々の出来事を書いています。

●さて弊社では社宅入居者(半額自己負担)に関しては

転勤がいつでも可能という前提のもと入居を許可

しています。もし、こういった者が転勤を拒んだ場合は

合理的な理由として社宅から出て行ってもらうことが

可能ということでよろしいでしょうか。

また 転勤後の地域格差で賃金を下げることは可能ですか。


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●さて、ご質問頂きました社宅入居者の件ですが、これも特に法律で定められているものではない為、転勤拒否を理由に退居させることは出来ます。


ただし労使でのトラブルを避ける為に、入居の際の「社宅入居申請書」などにその旨を表記しておくのが得策です。

現状、特にそのような表記がない場合であっても過去の事例で全員が当然転勤しており、転勤を拒否した者がいないのであれば既成の事実として同様の扱いになると思われます。



 やはりこれも事前の準備をきちんとしていれば問題にならないですよね。

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●更に 詳しく回答させて頂きます。

転居を伴う転勤を拒んだ場合の正社員の対応について
 まず転勤拒否”→“解雇・期間雇用契約の変更が可能か?という前に転勤が有効かどうかということが問題になります。
●就業規則・雇用契約書等に転勤について「正当な理由がないかぎり転勤を拒むことはできない」というような条項があり、御社の「地域限定社員」のような勤務場所や職務についての限定特約がなければ、転勤命令は有効と考えられます。


●ただし、権利の濫用となるような特別の事情があれば無効とするのが判例法理なので、注意が必要です。とくに労使のトラブルが背景にあり、使用者側に、嫌がらせや追い出し目的があると認定されると、当然不利になります。逆に転勤命令が権利の濫用ではなくその根拠・必要性があれば問題ないということになります。
ここでいう権利の濫用については後述します。


●この転勤命令は、使用者の人事権に基づく業務命令によって行われます。
使用者の転勤命令の法的根拠これは法文にはありませんが、労働契約にあります。
●就業規則の条項は、それが合理的なものであれば、労働契約の内容となる、というのが判例の立場です。つまり従業員は御社に採用時、その労働契約(就業規則・雇用契約書等)に同意していることになり、それは労使間の労働契約において転勤命令を容認する合意が成立している、と考えられます。
 したがって、使用者は、個々の従業員の同意を得ることなく、従業員の勤務地を決定する権限を有しており、従業員は、原則として転勤命令に従わなければいけません。


●あとは会社様のご判断によりますが、労働契約法(第3条)に「労働者と使用者は、労働契約の締結や変更に当たっては、仕事と生活の調和に配慮することが重要である。」「労働者と使用者は、信義に従い誠実に行動しなければならず、権利を濫用してはならない。」と明記しています。
 ご家庭の事情等も含めて労使でよく話し合った上、結論を出されるのが一番、ということでしょうか。


転勤命令権の濫用とは・・・
使用者の配転命令権が肯定されるとしても、その命令を有効とすべきでない特別の事情があれば、転勤命令は権利の濫用として無効となります(民法13項)。
●この点について、東亜ペイント事件の判決は、「当該転勤命令につき業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき、若しくは、労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく越える不利益を負わせるものであるとき」と、権利濫用となる場合の基準を示しています(最二小判昭61714)。


●1.業務上の必要性が存しない場合。通常は高度の必要性は求められていませんが、使用者側に嫌がらせや追い出し目的があったと認定されてその必要性を否定し、転勤命令を無効とした下級審の判例があります。
2.不当な動機・目的がある場合。労働組合活動を弱体化あるいは、報復目的で組合の活動家を遠隔地へ転勤させる場合等が考えられます。
3.通常従業員が甘受しえる状況を著しく越えるような不利益がある場合。たとえば、従業員の家族の中に障害者や病人がいて、従業員自ら介護や世話をしなければならないという厳しい家庭状況にある場合です。


●転勤に関しては、判例法理は比較的企業に広い裁量権を認めています。
なお、転勤命令が有効であれば、懲戒解雇もできますが、解雇の前に、十分な説明や説得をすることも必要です。


地域限定社員との給与格差について
 こちらの質問につきましても労働基準法での定めはありません。
つまり格差をつける範囲に定めはなく低い方の賃金が最低賃金を下回ってなければ特に問題ないということになります。
●結局、会社と従業員との契約の話になるので給与の格差や再締結する雇用契約について従業員が納得してくれればよいということです。


つまり雇用契約書、就業規則等において明示または同意書をもらうというよりは従業員の合意あればよいということです。
●これについては、労働契約法第8・9・10条で次のように定めています。
1.
労働者と使用者が合意すれば、労働契約を変更できる。(第8条)
2.
使用者が一方的に就業規則を変更しても、労働者の不利益に労働条件を変更することはできない。(第9条)
3.
使用者が、就業規則の変更によって労働条件を変更する場合には、次のことが必要である。(第10条)
その変更が、以下の事情などに照らして合理的であること。
・労働者の受ける不利益の程度
・労働条件の変更の必要性
・変更後の就業規則の内容の相当性
・労働組合等との交渉の状況


労働者に変更後の就業規則を周知させること。
こういった事柄で問題になった場合は、裁判所が個々にその変更の妥当性を判断していくことになります。
 以上、ご不明な点等ございましたらご連絡下さい。


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