徴収納付一元化は出来るか?社会保険料と源泉所得税の一元徴収納付について | 西村治彦の日記

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徴収納付一元化は出来るのか? 社会保険料と源泉所得税の一元徴収納付ついて

現在、社会保険料と源泉所得税の一元徴収納付について 国会の委員会で検討されています。超党派議員で検討されているそうです。この問題については 10年も以前から 話題に上り、長い間 社会保険料と源泉所得税の一元徴収について、有識者を含め 可能性があるのかどうか 研究を続けてきております。

私も 以前から 同様に 可能性について 考えてまいりました。何度 考えても「社会保険料と源泉所得税の一元徴収納付について」は不可能であります。

 なぜなら:①社会保険にも種類があり、長い歴史があり、過去を無視して 新規の発足は無理なのです。特に給付について考慮がありません。②それぞれの社会保険には その根拠となる法律があり 法律を無視して、社会保険料と源泉所得税の一元徴収について は、無理なのです。③各種社会保険料の計算方法が異なります。④各種社会保険の申告月が異なります。⑤徴収のみならず、給付が歴史的に決まっていて、給付方法を変えることは データー上 無理なのです。⑥源泉所得税納付者100人に対して 健康保険と厚生年金保険に加入している人の割合は 65人ほどなのです。このことは 社会保険に加入していない人々は 所得税を引かれた後の手取りの所得収入が低く、社会保険料を徴収されると 生活がなりたたないのです。
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 社会保険料と源泉所得税の一元徴収納付について考える場合、徴収の効率化以外に 日本経済への影響を考えなくてはいけません。⑥のあるように 無理に強制的に社会保険料を給与から控除すると、引かれた労働者は手取りが かなり減り 生活が成り立たなくなるので、事業主に引かれた保険料分の賃上げを要求します。そうでないと生活が出来ないからです。賃上げが出来ない事業所は 退職者が続出し、正常の経営が 成り立ちません。廃業することになりかねません。また 賃上げの要求を呑めば 経営は赤字になり、続きません。やがて廃業するでしょう。中小企業が壊滅するのです。こうして日本経済は とんでもない不況を迎えることになります。
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 ⑥について:現在 私の事務所では 労働保険(労災、雇用保険)のみに加入している多くの事業所に対し、社会保険(健保、厚生年金)は 法人であれば 社長一人でも強制加入なので、手続きをするよう、毎日 電話で加入促進をしております。うちの事務所は 多くの事業所を抱えております。このような促進の電話を掛けても、「高い社会保険料は払えない」「給料から保険料を引いたら 従業員の手取りが減るから、従業員に聞いてみないと返事が出来ない」「儲かっていないから 法律では強制でも国民保険と国民年金に自分で入ってもらうしかない」と ほぼ100パーセント、同じような答えが返ってきます。余裕のある事業所は うちが始めに手続きをする段階で すべての社会保険に加入致します。時間を掛けて 未加入の事業所を追跡指導していますが 加入には かなりの時間が掛かり、加入は無理の事業所が大半なのが 現実なのです。
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仮に 1ヶ月100万円の給料支払いがあれば 労災保険料は3,000円、雇用保険料は15,500円、社会保険料(健保、厚生年金)は東京の場合 259,000円となります。

1年間では それぞれ 労災36,000円、雇用保険186,000円、社会保険(健保、厚生年金)3,108,000円となります。(労使合計額)中小企業は社会保険料(健保、厚生年金)の支払いが 大変なのです。

このことは 統計的に 源泉所得税支払い者100人にたいし、社会保険(健保、厚生年金)加入者が65人であることを裏付けています。ですから 中小企業の現実と日本経済への影響を考えた場合、社会保険料と源泉所得税の一元徴収納付は、無理なのです。
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②労災、雇用保険、健保、厚生年金について、それぞれを規定する法律があります。労災保険法、雇用保険法、健康保険法、厚生年金保険法。これらの法律を無視して 保険料だけを徴収出来ないのです。保険料の支払い月は 労働保険(労災、雇用)は 源泉所得税と社会保険(健保、厚生年金)のように毎月ではありません。労働保険(労災と雇用保険)は 分割支払いをした場合 年3回です。労働保険料は社会保険料にくらべ 金額が低いので毎月の納付は、事業所により月数百円からであり、非効率的です。

また 保険料の計算方法が異なります。労働保険は 年間支払い給与合計額に料率を掛けて出します。社会保険は「標準報酬」と言って「いくらからいくらまでは中間の一定値」に保険料率を掛けて出します。源泉所得時を算出する「税額表」と 合体することは困難です。
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 徴収ばかり考えないで 給付についても考えないといけません。厚生年金は過去の「標準報酬」を元に計算し給付します。過去の一人一人の「標準報酬」のデーターが大型のコンピューターに入力されています。また既に 大勢の人たちに年金は支給されてきています。いまさら「標準報酬」を無視することは出来ないのです。

 一方 労災保険の給付は労働基準法に定める「平均賃金」を元に算出します。これは「事故を起こした給与支払い月前3ヶ月の給与を暦月の日数で割ったもの」です。税務署に徴収を一元化させる案が言われていますが、給付は うまく行きません。社会保険に関して素人の税務署は大混乱。役所の人数の削減にもならないでしょう。第一、国家資格の「労働基準監督官」が 承知しないでしょう。
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以上 ざっと「社会保険料と源泉所得税の一元徴収納付について」書いてみました。今まで 徴収一元化について 何度も俎上にあげられましたが 一度も 良い案が出たことはありません。観念論だけで 今日に至りました。
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各種社会保険の発生、根拠となる法律、保険料の計算方法、納期、給付の支給計算方法、源泉所得税納付者と社会保険加入者との人数の相違、担当役所のセクションの減少は無理、などの理由により、「社会保険料と源泉所得税の一元徴収納付については とうてい 不可能であるというのが結論であります」

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