「ランカウイ・アート・フェスティバル」から帰ってきた俺は、相変わらずのビーチで、ミーやミーの彼女であるアティと、パパレゲエの商売を邪魔しつつ、観光客を巻き込んで歌ったりしゃべったりし、地元の男たちとビーチサッカーをしたり、泳いだりして過ごす。
ショーンは朝、
「俺も後で行くから!」
と言って出て行ったまま戻って来ない。
(あいつやたらネットカフェ行くし、何だか忙しそうだな~。)
ショーンが最近ネットカフェによく行く理由は知っている。
どうやらショーンのオヤジが、近々アジアに来るらしい。
パパの話は、ショーンが持っている「YAMAHA」のギターを自慢する時によく聞かされた。
要約すると、イギリス人だったパパも放浪癖があり、若い頃フィリピンに行ったときに出会ったのがこの「YAMAHA」のギター。
パパはそれ以来このギターを持って旅を続け、その後アメリカに行った時に、フラッと立ち寄った大学で出会った、「犬を3匹従えて裸足で歩く女性」に恋をした。
イギリスへ戻ったパパは、仕事をしつつアメリカへ通い、二人は大恋愛に落ちたが、ドラッグが見つかったパパはアメリカ入国禁止となってしまう。
「二人にとって初めての土地で生活を始めよう!」
カナダに移住した二人の間には3人の息子ができ、「YAMAHA」のギターは2番目の息子であるショーンにプレゼントされた。
っていう話。
そんな大恋愛の末「カナダ」で生活をしていた夫婦には、その後も色々あったらしく、数年前に離婚し、パパは、「夏カナダで働き、寒くなる頃に思い出の地でもあるフィリピンに行く」という生活をしている。
そして、フィリピンに特定の彼女もおり、近々結婚も考えているらしい。
一度ショーンに訊ねたコトがある。
「パパってどんな人?」
ショーンは答えた。
「パーティー・アニマルっ!!!」
まぁ、紛れも無くショーンの親父って感じだ。
アティが仕事に行き、ミーも、
「そろそろマネージャーのロイと次の仕事の打ち合わせに行こう。」
と言い出し、俺は無責任に、
「リーダーに全てを任せた!」
と言ってパパレゲエとダラダラ過ごしている時に、ショーンが戻って来た。
女の子を二人連れて。
「久しぶり~!相変わらず元気そうね、愛すべき音楽キチガイ達は♪」
クアラルンプールで一緒に住んでいたリサとヘレンだ。
ショーンは「YAMAHA」のギターを鳴らし、俺も負けずに唄い、リサは踊り、ヘレンはウイスキーを飲む。
俺は安物のギターを鳴らし、ショーンは負けずに唄い、ヘレンは踊り、リサはウイスキーを飲む。
リサが馬鹿な話をして、ヘレンが相槌を打ち、俺は笑い、ショーンがウイスキーを飲む。
へレンが馬鹿な話をして、リサが相槌を打ち、ショーンが笑い、俺がウイスキーを飲む。
パパレゲエが、
「今夜、仕事で回っている店での演奏は無しだ。
ミーとロイには、俺から言っといてやる。
俺はお前等を眺めながら酒を飲みたくなった。
楽しむ事を、楽しみ続ける事を、諦めるな。」
と言ってその場を去った。
「タリマカシー!!(ありがと~!!)」
そして、ショーンは「YAMAHA」のギターを鳴らし、俺も負けずに唄い、リサは踊り、ヘレンはウイスキーを飲む。
俺は愛着の出てきたギターを鳴らし、ショーンも負けずに唄い、ヘレンは踊り、リサはウイスキーを飲む。
リサが馬鹿な話をして、ヘレンが相槌を打ち、俺は笑い、ショーンがウイスキーを飲む。
へレンが馬鹿な話をして、リサが相槌を打ち、ショーンが笑い、俺はウイスキーを飲む。
誰が誰だかわからなくなったまま夜になり、すっかりベロンベロンになった俺達4人は、再会を祝し、明るい月明かりの下、全裸で泳いだ。
海ではしゃいでいる時に、ショーンが言った。
「もうすぐ来るぞ!」
俺は答える。
「来るって何が?」
酔っているとはいえやっぱり恥ずかしいのか、リサとヘレンはハッキリとは見えない距離を保っている。
手を振りながら何か話しかけて来るシルエットが、月明かりと踊っているみたいだ。
ショーンがつぶやく。
「会うのは4年ぶりだ…。」
誰だかわかった。
俺はヘレンを捕まえるコトにし、
「俺も会えるんならスゲー楽しみ。」
と言って泳ぎだした。
ショーンもリサに狙いを定め、一言叫んで泳ぎだす。
「俺が2代目パーティー・アニマルだ~~!!」
(はじまり、はじまり→沖縄1