俺は狭くてやかましいバンの中で、身を乗り出して目の前の助手席に座るパパレゲエに話しかけた。
「そのフェスティバルって、有名なの?」
パパレゲエは、
「始まったのはココ数年の話だ。俺は興味も無かったし、お前達が誘ってなければ参加する事も無かっただろう。だから…、知らん!」
と言った。
言葉は荒いけど、流れて行く景色を眺めるパパレゲエの瞳は少年のようで、僕から見てもワクワクが伝わってきた。
ハンドルを握るロイの運転は乱暴だ。
この「ロイ」というオッサンは、俺達が演奏するバーやレストランでちょくちょく見かけたオッサンで、演奏が終わった後に俺達がよく行くアイリッシュパブで声を掛けて来た。
今思えば、俺達にいつ声を掛けようかと狙ってその店を張っていたに違いない。
そのアイリッシュパブでの話とは、簡単に言えば
「マネージャーをさせてくれ!」
ってことで、正確に言うと、
「お前たちの音楽はそれなりに聴けるモンだし、人種も違って目立つから、俺のコマになってちょっと金儲けさせてくれ。」
ってことだった。
ミーは難色を示したけど、俺とショーンは
「まーなんでもいいよ。」
って感じで、ロイは晴れて俺達のマネージャーになった。
そして持ってきたのが、今から向かう「ランカウイ・アートフェスティバル」の仕事だ。
そのフェスティバルで俺達は2ステージを3日間。
報酬は1日に付き1人50リンギット。
正直、いつも通りにバーやレストランで演奏してる方が、報酬はいい。
ただ、
(フェスティバルってのが楽しそう。)
という想いも有り、俺達は、
「ロイがいくら抜いてるのかは知らないけど、手作りのアクセサリーを売っているパパレゲエも一緒にフェスに参加して、出店できるんなら乗ってやる!」
と言い、ロイはその条件を飲んだ。
会場に着くと、巨大な岩を前に
「3日間でこの岩をタカ(ランカウイ)にする!」
という彫刻家がいたり、
(風景や人物の模写をすることなく、直接憧れのピカソの絵を書き出すことにしたんだな~。)
っていう画家がいたり、色んなオリジナル芸術を持ったアーティスト達がいて、素敵に愉快な空気が漂っていた。
パパレゲエは自分が出店する場所の確認をしに行き、ミーはロイと打ち合わせ。
ショーンは早速女の子に声をかけている。
(おいおい、俺達はブラザーだろ!?抜け駆け禁止~!)
という気持ちで俺も近寄って行った。
その女の子は、フェイスペイントをするアーティストで、当然俺達はキャンバスになる事を志願した。
数分後、ショーンの顔にはキラキラしたバタフライが飛び交い、俺はリクエスト通りの超クールなパンダ顔にしてもらった。
時間になって俺達はステージに上がり、「現地に住む正統派ミュージシャンと、顔にアゲハ蝶をつけたイロモノ欧米人、日本から来た海パンのパンダ」という3人組の演奏が始まった。
すっかりパンダと化した俺は、久しぶりのシッカリとした音響に酔いながら、(キッスもアコースティックギター弾くのかな?)と思いつつ、メロディーを無視した視覚重視のギターソロを弾いた。

(そのトキのスタッフパス。今でも大事な宝物の一つ。)
(はじまり、はじまり→沖縄1