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石田陽子のブログ

本を読んだり、映画を観たり。Loveをテーマにしたブログです。恋愛に役立つ楽しい情報もどんどんお伝えしていきます。

6月11日(金)公開の映画『ブラックバード 家族が家族であるうちに』を観ました。主人公リリーを演じるスーザン・サランドン、長女ジェニファーのケイト・ウィンスレットと次女のアンナを演じるミア・ワシコウスカのやりとり、演技が見どころになっていますが、母の死を看取るという覚悟や母の人生と向き合うことでそれぞれの抱えている問題や人生を振り返るという普遍的な物語。

 

リリーが住むのは海辺の立派な邸宅で、夫は医師。どうにか治療で延命を考えそうなシチュエーションであるにも関わらず、彼女は安楽死を決意しています。そして週末、家族と最後の時間を一緒に過ごそうと集まり、ギクシャクしたり、揉めたりしながら、自分や家族について思いを巡らし、普段は言えないような思いを打ち明けたり……。ジェニファーの息子のジョナサン(アンソン・ブーン)も最初は事情をよく知らされないまま久しぶりに祖父母に会いに来たら重大な秘密を共有することになり、15歳なりに人生の重さに触れることになります。

 

コロナ禍では家族が入院してもお見舞いに行けなかったり、かといって在宅医療に切り替えるのも難しかったりします。高齢者でもワクチン接種の予約がなかなか出来ないなど、不安なことがたくさんあります。リリーのように自分の体が自由に動けなくなる前に安楽死を選択するという決断は極端な例ではあるけれど、死は誰にでも避けることが出来ないし、家族と向き合うということは結局自分の問題とも向き合うことになるんですよね。

 

自分がリリーだったら、自分が家族の立場だったらどんな選択をするのか。正解がないぶん、自分なりの答えを見つけようと逃げずに向き合うことで人生はより豊かになっていくのかもしれません。

 

 

 

 

 

■作品情報『ブラックバード 家族が家族であるうちに』

監督:ロジャー・ミッチェル

脚本:クリスチャン・トーブ

出演:スーザン・サランドン、ケイト・ウィンスレット、ミア・ワシコウスカ、サム・ニール、

リンジー・ダンカン、レイン・ウィルソン、ベックス・テイラー=クラウス、アンソン・ブーン

配給:プレシディオ、彩プロ

公式HP:blackbird.ayapro.ne.jp

NHKでもアニメが放送されていたジュディス・カーの絵本『おちゃのじかんにきたとら』。世界的な絵本作家であるジュディス・カーが自らの体験をもとに描いた自伝的小説『ヒトラーにぬすまれたももいろうさぎ』をカロリーヌ・リンクが監督し、映画化。2019にドイツで大ヒットした『ヒトラーに盗られたうさぎ』が11月に公開になります。

 

 

 

 

1933年3月5日ドイツ帝国議会選挙によってナチスが政権を握ることになりますが、その直前のベルリン。9歳のアンナの父はアドルフ・ヒトラーを新聞やラジオで批判する著名な批評家で、ヒトラー台頭による恐怖政治から逃れるため、故郷のドイツを離れる計画を立てます。家からは限られたものしか持ち出すことができず、幼い頃から大事にしていたうさぎのぬいぐるみさえも旅行かばんには入れられず。両親と兄のマックスとアンナはチューリッヒ、パリ、ロンドンと亡命。家族で旅を続けることになります。

 

現在公開中の映画『ある画家の数奇な運命』もナチ政権下のドイツを舞台に、激動の時代を生き抜いた芸術家の数奇な運命を描いた作品です。こちらも実在の人物、現代美術界の巨匠、ゲルハルト・リヒターの半生をもとに、『善き人のためのソナタ』のフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督がドイツの歴史の深い闇と芸術の素晴らしさを映し出しています。

 

 

 

 

『ヒトラーに盗られたうさぎ』で主人公アンナの父親役、『ある画家の数奇な運命』で苦悩する主人公クルトに影響を与える教授役は、2016年に公開された映画『帰ってきたヒトラー』でヒトラーを演じたオリバー・マスッチ。そう、ヒトラーが現代によみがえり、モノマネ芸人として(本人は大真面目で、勘違いされて)スターになっていくドイツのベストセラーを映画化。現代にタイムスリップしたヒトラーがテレビに出て、どんどん人気者になっていく過程はコメディなんだけど、ヒトラーの存在が現代によみがえったとき国民はどんな反応を示すのか、という実は笑えないお話でもあり、ナチス政権下の恐怖の物語は私たちにとって古い記憶でもなんでもなく、ごく近くに存在する他人事ではないお話なんだと思います。

 

 

■『ヒトラーに盗られたうさぎ』作品情報

監督:カロリーヌ・リンク

脚本:カロリーヌ・リンク、アナ・ブリュッグマン

出演:リーヴァ・クリマロフスキ、オリヴァー・マスッチ、カーラ・ジュリほか

配給:彩プロ

11月シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー

 

 

 

 

■『ある画家の数奇な運命』作品情報

監督・脚本・製作:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク

出演:トム・シリング、セバスチャン・コッホ、パウラ・ベーア、ザスキア・ローゼンダール、オリヴァー・マスッチ

配給:キネフィルムズ/木下グループ

10/2(金)TOHOシネマズ、シャンテほか全国ロードショー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

台湾系アメリカ人の著者がハーバード大学を卒業後、アメリカ南部のアーカンソー州の貧困地域で2年間英語を教え、パトリックと出会う。劣悪な環境で育ち、将来に希望が持てずにいる黒人の生徒たちに読書をきっかけに学ぶ喜びを教えようと試みるも、学校は廃校。

 

著者はロースクールへ進み、新しい生活へ踏み出そうとした矢先、生徒たちの中でも才能があり、学ぶ意欲を見せていたパトリックが人を殺したという知らせを受ける。『パトリックと本を読む 絶望から立ち上がるための読書会』(ミシェル・クオ/白水社)を読んだ。

 

著者は、ボランティアとして教師を務めた後、本格的に法律家としての道を歩み始めた著者はパトリックが拘束された拘置所の中で読書を通じて改めて彼と向き合うことになる。

 

 

 

本書の参考文献として、南部のアフリカ系アメリカ人に関するたくさんの資料が挙げられているが、「学校規律に関する2013年2月の報告によると、黒人生徒が校内謹慎処分を受ける頻度は白人生徒の約3倍、校外謹慎処分にいたっては5倍以上であり、黒人生徒が体罰を受ける頻度は白人生徒のほぼ2倍とのことであった」とある。

 

喧嘩が嫌いで温和な性格のパトリックは、学びたい気持ちが強かったのに退学し、喧嘩に巻き込まれて人を殺してしまった。刑務所を出ても、罪のせいで仕事がなかなか見つからないし、最愛の母も働きづめて43歳の若さで亡くなってしまう。

 

つらい現実から逃れるために考えることを止めるという方法もあるけれど、パトリックには本を読む喜びを手放してほしくないし、現実がつらいからこそ心の自由を手に入れてほしいと思う。本書の中で読書とは、「気持ちを集中し、自分の本当の願いに正直になる自由」とも書かれている。素晴らしい本に出会うことで、人生を変えていく力を手に入れることもできる。

 

著者のミシェル・クオ本人がパトリックについて語っている動画はこちら↓


ミシェル・クオ:読書が持つ癒しの力|TED

 

人は変われる……けれど、全然簡単なことじゃない。でも、自分を変えるような出会いがあったら、諦めずに、恐れることなく変化を受け入れていくしかないなと読んでいて、パトリックにはずっと詩を書き続けてほしいと願わずにはいられなかった。