「え、、? また お前か?」

 

 

 

深夜。

居間で作業していたり、録り溜めたTV番組を見ている時。 いつの間に部屋を訪れそれまで何処に居たのか、なぜその時なのか、いきなりブンブン音を立てて部屋を旋回し始める。 蛍光灯の明るさに魅かれてなのかバシバシと衝突を繰り返す。 やがて、カーテンでひと休みする。

 

かなぶん。

 

 

蛾であれば手のひらでそっと包み込み外へ逃がしてやれます。この案件は仕事中の事務所にてたまに発生します。驚愕されたり感謝して貰えたりです。 蛾の鱗粉に一家言お持ちの方からは「それはおよしなさい」と叱られてしまいますが、きちんと事後には念入りに手は洗ってはおります。

 

蛾は - 躊躇うことなく・失敗することなく- 手のひらで包み込めるんですが、かなぶんは正直怖い、ぼくは。 もしかしたら蛾の鱗粉アレルギーの可能性に比べたら遥かに害は無いのかもしれませんが…。 …かといって雑誌類など活用して叩き落すのも・殺虫剤を噴射するのも出来ない。ためらうではなく、それは出来ない。可哀そうだ。  動くなよ、動いてくれるなよ、、と胸の中で念じながら 3枚ほど重ねたティッシュペーパーでビクビクしながら包み込む。 念が通じるのかブンブン飛び回って居た時とは別人(別虫)で素直に包まれてくれる。 すぐさま部屋の窓を開けて外に逃がしてやる。

 

このかなぶん。

 

 

「あーーーまたかなぶん・汗」やだなぁ困るーーーと嘆く事態ふたたび。目にも留まらぬ飛翔行動の後カーテンでひと休みに入る。 「え、、? また お前か?」。…というのも、甲羅から畳み切れない翅がはみ出している。 こ、こ、これは!? つい先日逃がしてやった かなぶんと同じではないか! お前なのか? お前なのかい??  また来ちゃったの?いつ、どうやって??  その不思議・驚天動地の再会、それでもやっぱり苦手なので「動くなよ、動くなよ」と願いオドオドしながらティッシュで やわらかく包み込む。 前回は窓から解放してあげたが、「もう来るなよ」という思いから庭にまで出て、自由にしてあげた。

 

 

 

 

なんということでしょう。

 

このかなぶん、もう一回、出戻って来たのです。相変わらず甲羅にしまいきれずに翅をはみ出させて。 それを見て「えーーーーーーーーっ」でした。  うううむ。 窓から解放もダメ、庭から自由にしてやっても不可、、、 そこで3回目は、庭から家の前の道路に出て更に歩を進めそこから外界へと旅立たせました。 

 

こんな事がひと月くらいの間に続いたのです。

 

 

で、ですね、、、すみません

 

ひょっとして あの かなぶんは 父の生まれ変わりか? などと一瞬でも思ってしまったことがあります。 前世も来世も全く信じていないのに…。←矛盾に満ちています→虫に堕ちてしまったというよりも逢いに来た、という意味合いですが、これは理解も共感も到底得られませんのは重々承知であります。 

 

 

 

これが去年の夏のことでした。

 

 

なんと、昨日深夜また、、、かなぶんが現れまして(笑) 2020年夏版はちゃんと甲羅内に翅は折り畳まれていました。でもホントいきなりブンブン飛び回るものだから、すこぶるびくっとさせられ困惑します・涙。  そして、また、去年と同じく、ティッシュペーパーで包み込める迄しばし怯えていました(虫は苦手です、蛾は平気ですが)。 そのルーティン?に戸惑い 併せて思い出した感覚・心情・出来事でありました。

 

 

□解決遍□

逃がしたつもりだったけれども、二回目・庭で逃がした時は背中を向けた際にそこに張り付いたのかもしれません。※1回目の窓から逃がした時は壁にでも張り付いて再侵入しやすかったのかもしれません。 ※※包み込んだティッシュに足先が引っ掛かったままで実は放しきれず、ぼくが自ら部屋に招待しただけという間抜けな理由・真相はありませんです。※※※あるいはそもそも 三匹みな別人ということであります。

 

 

〔姉妹編〕そんな事はあるわけないし、そういう事もある

□解決遍□

風が窓に当たる音や、その他の物音を “ぼくを呼ぶ声” に変換した、というのが合理的な説明のような気がします。 

 

 

 

それらの事象を父と結び付けてしまうのは、、、いまだ不思議ではあります。が、これは文学ないし、心療内科や精神医学の領域まで引っ張り出したら説明可能と思われます。

 

 

 

 

 

「この世には不思議な事など何もないのだよ、関口君」

『姑獲鳥の夏』ほか 京極夏彦

 

 

夏ですね。

 

 

 

 

 

 

■おまけ■

ずっと浮かない顔のままでいる。 思い詰めている気持ちと声にならない言葉が痛みを伴って届いてくる。 もうこれ以上を望んではならない。こちらから終わりを告げようと思ったその時、

「ねえ」「今日ね、私のクラスでちょっとした事件があって…。聞いてくれますか?」「先週、こどもたちが一生懸命作った粘土の動物たちが教室からいなくなっちゃったの…」

元気が無い理由はそれだったのか…。

 

 

 どういう出来事なのかまだ理解できないが、“いなくなっちゃったの” という言い方に彼女らしさが溢れている。

 

こういうところに魅かれたのだ。 

安堵する自分の狡さを無理やり横に除ける。

そして視線を交わし先を促す。

「今朝ね、、、、

 

不定期連載~「アフリカへ行こう」 不倫編・不採用 であります(笑)。

アフリカへ行こう 原典