大阪大学理系数学2013年度第1問について | 21vertexのブログ

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読売オンラインの大学入試速報、二次・私大試験 から、阪大理系の数学第1問を取り上げます。なお、この記事は「お宝(?)資料より」シリーズの伏線です。

第1問 三角関数の極限に関する公式
lim_{x→0} sin x/x =1
を示すことにより、sin x の導関数がcos x であることを証明せよ。(配点率20%)

これを読んで、うーん、ここまで踏み込んだか、と私は思いました。そもそも定理の証明と言うのは何を定義とし、何を公理とするかを明らかにしなければできません。高校数学の体系(と言えるものが存在するとすれば)はきわめていい加減なもので、定理そのものの証明を試験に出すのは相当勇気がいるはずです。10年くらい(?)前に東大で三角関数の加法定理の証明が出題され、しかも結構点差のつくよい問題であったということがありましたが、その問題にしてもまず(1)でcos x とsin x を定義させ、その上で(2)で加法定理を証明させているので、何を根拠に証明すべきかが明白になっています。

また、問題文中の三角関数の極限に関する公式ですが、この公式の証明法に関してはいろいろと論争があります。高校数学の教科書では、面積を用いてはさみうちの原理を使うのですが、これが循環論法になっているのではないかと言う古くて新しい問題です。図が書けないので言葉で説明します。POAを半径1、中心角 x(0<x<π/2)の扇形、PからOAに下ろした垂線をPH、OPの延長線上に点Bを、OA⊥ABとみたすようにとる。このとき、弧AP=x, PH=sin x, AB=tan xである。そして、0<x<π/2のとき、sin x<x<tan xを示すことができれば、はさみうちの原理(とsin x, x, tan xが奇関数であることと合せて)により上の公式が示されます。

日本の高校の教科書(アメリカの大学初年級の微積分の代表的な教科書・ラング「解析入門」も)では、面積に関して、△OAP<扇形OAP<△OABが成り立つことから、

(1/2)sin x<(1/2)x<(1/2)tan x

としています。ただし、円あるいは扇形の面積をどのように導出するかによっては、循環論法になり得ます。つまり、もし扇形の面積が(1/2)xであることを出す際に、

lim_{x→0} sin x/x =1

を用いているとしたら、証明になっていないのです。高校数学はこの辺を明らかにしていないので、証明になっているのか循環論法なのかがはっきりしていません。

これとは別に、PH<弧AP<ABを証明することで、0<x<π/2のとき、sin x<x<tan xを示す流儀もあります。左の不等式の方は、PH<AP<弧APなので明らかですが、右の不等式の方はそれほど明らかではありません。いずれにせよ弧AP(一般に曲線)の長さとは何かに関する考察が必要になります。

これに関して、「不思議な数πの伝記より」 と言う記事で、高木貞治の「解析概論」の中で弧AP<ABを証明していると書いたのですが。よく読み直すと、方針はその通りなのですが、きちんとは証明は書いていません。一松信「解析学序説」上巻などにきちんと証明されていました。思い込みと言うのは怖いものです。以下、「お宝(?)資料より」シリーズに続く。

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