哲人
あなたは承認欲求にからめとられている。どうすれば他者から愛されるのか、どうすれば他者から認められるのかばかりを考えて生きている。自分で選んだはずの教育者という道でさえ、もしかすると「他者から認められること」を目的とした、「他者ののぞむわたし」の人生かもしれないのです。
(中略)
哲人
就職によって自立が成しえるわけでないことはたしかです。われわれは多かれ少なかれ、親の愛に支配されて生きている。親から愛されることを希求せざるをえない時代に、自らのライフスタイルを選択している。しかもその「愛されるライフスタイル」を強化しながら年齢を重ね、大人になっていく。
与えられる愛の支配から抜け出すには、自らの愛を持つ以外にありません。愛すること。愛されるのを待つのではなく、運命を待つのではなく、自らの意思で誰かを愛すること。それしかないのです。
(中略)
哲人
フロムは言います。「人は意識の上では愛されないことを恐れているが、ほんとうは、無意識のなかで、愛することを恐れているのである」と。そして、こう続けるのです。「愛するとは、なんの保証もないのに行動を起こすことであり、こちらが愛せばきっと相手の心に愛が生まれるだろうという希望に、全面的に自分をゆだねることである」と。
たとえば、相手の好意をなんとなく察知した瞬間、その人のことが気になり、やがて好きになっていく。こういうことはよくありますね?
青年
ええ、あります。ほとんどの恋愛はそうだと言っても過言ではないほどです。
哲人
これは、たとえ自分の勘違いだったとしても、なんとなく「愛される保証」が確保できた状態です。「あの人は、きっと自分のことが好きなのだ」「自分の好意を拒絶したりしないはずだ」という担保のようなものを感じている。そしてわれわれは、その担保を頼りに、より深く愛していくことができるわけです。
一方、フロムの語る「愛すること」はそのような担保をいっさい設けません。相手が自分のことをどう思っているかなど関係なしに、ただ愛するのです。愛に身を投げるのです。
青年
……愛に担保を求めてはいけない。
哲人
そう。どうして人は、愛に担保を求めるのか。おわかりになりますか?
青年
傷つきたくない、みじめな思いをしたくない。そういうことでしょう。
哲人
いえ、そうではなく、「傷つくに違いない」と思い、「みじめな思いをするに違いない」と、半ば確信しているのです。
青年
なんですって⁉
哲人
あなたはまだ、自分のことを愛せていない。自分のことを尊敬できていないし、信頼できていない。だから愛の関係において「傷つくに違いない」「みじめな思いをするに違いない」と決めつけてしまう。こんな自分を愛してくれる人など、いるはずがないのだと。
青年
……でも、でも、それが事実じゃありませんか!
哲人
わたしは、なんら優れたところのない人間である。だから誰とも愛の関係を築くことができない。担保のない愛には踏み出せない。……これは典型的な劣等コンプレックスの発想です。自らの劣等感を、課題を解決しない言い訳に使っているのですから。
青年
し、しかし……。
哲人
課題を分離するのです。愛することは、あなたの課題です。しかし、相手があなたの愛にどう応えるか。これは他者の課題であって、あなたにコントロールできるものではありません。あなたにできることは、課題を分離し
ただ自分から先に愛すること、それだけです。
(中略)
哲人
結局あなたは、「この人はわたしを愛してくれるのか?」しか見ていないわけです。相手のことを見ているようで、自分のことしか見ていない。そんな態度で待ち構えているあなたを誰が愛してくれるでしょうか?
……もしもそんな自己中心的な欲求に応えてくれる人がいるとすれば、それは両親だけでしょう。両親の愛、ことに母親の愛は無条件ですから。
(中略)
哲人
やるべきことはひとつでしょう。そばにいる人の手を取り、いまの自分にできる精いっぱいのダンスを踊ってみる。運命は、そこからはじまるのです。
哲人
……あなたの願いは「幸せになりたい」ではなく、もっと安直な「楽になりたい」だったのではありませんか?
(中略)
哲人
フロムは言います。「愛とは信念の行為であり、わずかな信念しか持っていない人は、わずかにしか愛することができない」と。……アドラーならこの「信念」を、「勇気」と言い換えるでしょう。あなたはわずかな勇気しか持っていなかった。だから、わずかにしか愛することができなかった。愛する勇気を持てず、子ども時代の、愛されるライフスタイルにとどまろうとした。それだけなのです。
青年
愛する勇気があれば、わたしは彼女と……。
哲人
……ええ。愛する勇気、すなわちそれは、「幸せになる勇気」です。
岸見一郎・古賀史健
『幸せになる勇気』
ダイヤモンド社
人の幸せを願うと、幸せになれる
1000倍返しのルール
「ありがとう」というと、
「ありがとう」が
1000倍になって帰ってきます。
「幸せになれ」
1000倍!幸せが返ってきます。
これが地球のルールです。
このルールを知ってしまったら
もう悪い言葉は言えなくなります。
1000個、帰ってきて欲しいことしか、
言えなくなります。
いっぷくからのありがとう
「地球の最も大切なルール」
23/10/26
あたまのなかで整理するため改行色づけ・一部略
黒太字は原文どおり