『爆発物処理班の遭遇したスピン』佐藤究    『殲滅特区の静寂』大倉崇裕 | ミステリ好き村昌の本好き通信

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 爆発物処理班の遭遇したスピン 佐藤究

 

 「テスカトリポカ」で、ミステリ界に衝撃を与えた作者が、短編でも非凡な才能を発揮した作品集が本作である。

 

 巻頭を飾る表題作「爆発物~」をはじめ、収められている8編は、それぞれとてもユニークで恐ろしく、無気味である。

 私がそのなかで、特に気に入った作品は、「ジェリーウオーカー」「スマイルヘッズ」そして「九三式」である。

 「ジェリー」のクリーチャーを作り出す怪獣映画の専門家の話。「スマイル」のシリアルキラーのアートをコレクションする画商の恐ろしい体験記。「九三式」は太平洋戦争で辛くも生き残り、帰国した元兵士の体験した終戦後の日本の現実。当時、日本を統治していたGHQに雇われてした仕事のおぞましさ!ラストシーンの主人公の‥‥。

 その他の作品も、それぞれユニークな、ホラー的ミステリになっている。

 佐藤究は逸材の作家である。

 

 

殲滅特区の静寂  大倉崇裕

 

 「福家警部補シリーズ」「警視庁生き物係シリーズ」等で有名な、大倉崇裕氏の中編集である。

 近未来を舞台にした、その頃創設された怪獣省の予報官(怪獣の上陸地点の予測を担当する部署)岩戸正美を主人公として、日本を襲う怪獣との戦いと、その過程で起こる事件を解決していく、二重構造とも言うべきミステリである。

 怪獣映画が大好きな私は、本に関しても、怪獣物への親近感と興味は並々ならぬものがある。

 収録されている3編の作品は、それぞれたいへん面白く、よくまとまっている。

 怪獣撃退法や怪獣との戦い方も納得できるものになっている。

 作者には、今後も、このシリーズを書いてほしいと願っている。