【秋分の日・おはぎ】
「暑さ寒さも彼岸まで」と昔から言われておりますが、早朝や夕方は、少しだけ気温も落ち着き、過ごしやすい日も多くなってまいりましたね。
お彼岸は、「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ」日として、日本独特の風習で、その歴史は古く、平安時代から存在していた様です。
仏教の世界では、先祖のいる悟りの世界を「彼岸」、今私たちが生きている世界を「此岸（しがん）」と表すそうです。
秋分の日は昼と夜の長さがほぼ等しくになることから、この日は「彼岸」と「此岸」の距離が最も近い日と考えられ、先祖への感謝の気持ちを表しやすい日だと考えられるようになった事が、「お彼岸の由来」と言われております。
こうしてお彼岸である秋分の日前後は、先祖を敬い、感謝を伝えることができる日として、お墓参りに行ったり仏壇に手を合わせたりするなど、先祖の供養をする日となりました。
「おはぎ」に使われる小豆の赤には、邪気を払う効果があるとして先祖に供えられ、砂糖は、かつて大変貴重な為、江戸時代の庶民にとっては、おはぎは贅沢な一品でありました。
小豆は、縄文時代から食べられている日本人に非常に馴染み深い食材の為、おはぎは先祖にお供えする上等な品として用いられ、邪気を払い健康を祈願する意味でも、お彼岸の行事食として、広まっていきました。
秋の植物である萩が「おはぎ」の名前に由来していると言われています。
萩の花が、小豆の粒によく似ている様子から「御萩餅」と呼ばれ、時がたつうちに、餅が取り払われ、「おはぎ」とひらがなで表現されるようになりました。
春分の日に食べられる「ぼたもち」は、「おはぎ」と大変よく似ていますが、この違いは、何でしょうか？
「ぼたもち」は漢字で書くと､｢牡丹餅｣と呼ばれ、春に咲く牡丹の花が、小豆と形がよく似ていることが起源だとされていますが、季節で呼び方が異なる事や、餅の大きさが異なるくらいで、「ぼたもち」のほうが大きいようで、牡丹の花の大きさを「ぼたもち」で表現しているといわれているので、同じものと考えてよいと思います。
「おはぎ」の呼び名は、夏は「夜船（よふね）」、冬は「北窓（きたまど）」と呼ばれ、「おはぎ」は餅をつかずに作れることから、「いつ餅をついたかわからない＝つき知らず」といわれ､「夜は船がいつ着いたかわからない」ことから「つき知らず」＝「着き知らず」と掛けて､｢夜船｣が夏の呼び方となりました。
冬は、北向きの窓からは月が見えないことから、｢つき知らず＝月知らず｣と掛けて､｢北窓｣と呼ばれる様になりました。
日本語ならではの言葉遊びが、江戸っ子の粋を感じられますね。
今日は、仏壇に「おはぎ」をお供えして、お線香たいて、ご先祖様に感謝いたしましょう。
