スカイリム(SkyrimSE) VIGILANT 編 第4章 その4 奇跡の奴隷達 | TES&fallout forever

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 俺達の旅はまだまだ続く。デイドラを殺したり、虚ろな九大騎士を返り討ちにして聖騎士の装備を入手したり、壊れたレバーを修理し手先を進んだりコールドハーバーとはいえ悠々自適な旅を続けていたのだ。

 その後、俺達はサラシアン薬局と呼ばれる薬局を見つけた。これからスラム街に入るためにも回復薬等は完備しておいた方がいいと思ったので入店した。そこにはサブリナという名前の女性が薬局を営んでいた。随分変わった装備だな。鳥みたいだ。まぁ俺も人の事は言えないけど。

 それとディベラ像があったのでサブリナさんに許可を貰って見させてもらった。グレゴルー卿の書置きで、スラムの下水道は疫病ヒルが出てくるので、松明や火系統の付呪が付いた武器を持って行く事をアドバイスしていた。

 しかし、気になる記述があった。下層にはどうやらヒルの女神とやらがいるらしい。スラムの住民がそれを崇め、自分の脳をヒルに食わせているのだとか。うへぇ...、狂信的というか何というか...。吸血鬼の俺が突っ込めた筋合いじゃないのは分かってはいるけど、何だかねぇ...。

 俺はサラシアン病について聞いてみた。専門家の意見もしっかり確認すべきだと考えたからだ。

 発症すれば全身の倦怠感からの寒気、高熱にうなされ、悪化すれば全身の血が腐り、体に黒い斑点が出るそうだ。そこまで来ればもう手遅れで、疫病ヒルはサラシアン病を媒介しており、腐った血肉が大好物らしい。

 宿主をじわじわ腐らせて食べて、最終的に宿主の額を食い破って次の宿主を探すようだ。故に寄生された宿主に無暗に近付くべきではないと警告された。まぁ俺とセラーナは吸血鬼だから安全ではあるだろうが注意は必要だろう。ミラークやセラーナが感染するのなんて見たくないしな...。

 俺は疾病退散の薬を10本ほど買ってサラシアン薬局を後にするのだった。

 

 サブリナ「くれぐれも気を付けるのよ。本当にサラシアン病は恐ろしいんだから」

 パーマー「分かりました。警告感謝します」

 セラーナ(貴方と私は吸血鬼故に問題ないでしょうに...)

 ミラーク(奴らしい不器用な気遣いかもしれぬな)

 

 

貧民窟と物乞い通りを攻略せよ!

 貧民窟に入ると、魂亡き者を返り討ちにして進むとマーラ像があった。マーラと言えばグレゴルー卿の書置きに出てきたメアリーだが、ヒルの女神が彼女ということだろうか?まぁ最深部に行けば分かるだろう。

 この時セラーナはかなり愚痴を零していた。狭くて暗いし、怪物の唸り声が聞こえてくるので人が住むような場所ではないのだと。気持ちは分かるけどね。

 今度は物乞い通りと呼ばれる場所に進むと、ジャザーンが書いた本を見つけた。カジートは言ってやったという題名の本で、アレッシア会の調和を全否定し、悲しみや苦しみが贖われるなければならない事への嫌悪感が綴られていた。文中で「アルコシュちゃま」だとか「スレンダールちゃま」だとか出てきたが九大神のカジート版の名称なのだろうか?

 それにしたって馬鹿にしている気がするが、ジャザーンは神が嫌いなのかもしれない。まぁ人それぞれ、カジートもそれぞれ...という感じなのだろうなぁ。

 それはそれとして先に進むと異様な魂なき者が現れた。大貧民という名前らしいが特筆すべきは丈夫な丸太をブンブン振り回しながら攻撃するという事だ。あまりの異様さに俺達は呆れ、セラーナは面倒くさかったようでアイススパイクを猛連打していた。

 弱った所を俺の黒檀の刀剣で斬り殺し、乞食の鍵と乞食の丸太を入手した。門番だったのだろうが、あの細さで良く持てたものだな。まぁオブリビオンだしそういう奴もいるのだろう。知らんけど...。その他には炎の禁書:古き炎の女王召喚という題名の本を見つけた。とりあえずこれも入手して先に進むのだった。

 少し進むとまたしてもジャザーンの著作本を見つけた。落下する猫という題名で、暗い話の題材の中でも殊更に重い題材の内容だった。それは従兄弟の飛び降り自殺の話だった。葬儀に出るのはジャザーンは嫌だったのだが出ざるを得なかったようだ。

 従兄弟の死顔や血を見るのが嫌なジャザーン。埋葬業者によって顔を整えられて幾分マシになった従兄弟の顔を何とか見ることは出来たのだが、その従兄弟の顔は諦観の様相だったらしい。まるで鏡を見るようだと内心思っており、触るのが嫌で仕方なかったとある。

 そもそも自殺した場所は仕事場の塔だったらしい。職場内の不和が原因だったかは定かではないが、「無能な主人」と表現する位毛嫌いしているのは伺えたし、同僚は死んだ目をして俯いたままであり薄情だったように書き綴ってある。

 結局は従兄弟の覚悟の自殺も職場のカジート達には何も響かなかった無情さをジャザーンは痛感したとある。

 かわいい奥さんも新居を得てこれからだった従兄弟。限界だったかもしれないしそうではなかったかもしれない。妄信的に生きることが出来たかもしれないのにそれをしなかったのは「人生は生きるに値しない」という答えを周囲の連中に叩き付け、足早にこの世を去ったと締めくくってあった。

 ...辛いな。無情かつ悲惨な内容だ。俺はジャザーンの従兄弟の人となりは知らないが、来世では幸せになってほしいと祈って読むのを終えた。

 しばらく先に進むとおかしな格好の老人を見かけた。カドウェルという名前らしい。気が触れたようにも見えたが吟遊詩人のような事もここでしているらしく、ジャザーンの本で気分が沈んでいたので景気づけにお願いしてみた。その歌はシェザールの歌だった。

 

 カドウェル「シェザールは帰ってくる。凍てつくアトモラの裂け目から、産声を上げて」

        「シェザールは帰ってくる。イスミールの咆哮と共に、密林を狩り尽くす嵐を携えて」

        「シェザールは帰ってくる。蛇を血湖に沈めるために、失われた座に戻るために」

 パーマー「何だか意味深な歌だったな。アトモーラにイスミール、それにシェザール...」

 セラーナ「気分転換どころではなくなりましたわね」

 ミラーク「そもそも内容が不穏な感じがするから気になってしょうがないな」

 

 その後、カドウェルの部屋に審判という題名の本があったので彼に断って読んでみた。それはサラシアン病を疾病した少年を治療したマーラ教徒を火刑に処し、助かった少年は絞首刑になったという内容だ。メアリーの事か?何でそんな理不尽な事をするのかというと、アレッシア会の許可なく行われた事だったからだそうだ。許可が無ければその奇跡は邪法でしかないらしい。

 対する大魔導士シラベインはウォーロックの指輪という聖アレッシアの聖遺物を使用してサラシアン病の治療を行ったのでそれは不問とされたようだった。

 許可が無いばかりにマーラ教徒は火刑になった訳だが、そのための薪をくべるのは大衆達が我先にとくべていき、絞首刑となった少年には石を投げたとあった。

 これが正道か?合法か?殺人鬼ではなかったはずなのにこの仕打ち。アレッシア会も大衆達も俺から言わせれば奇跡の奴隷達にしか言いようがない。何となくジャザーンの気持ちが分かった気がするよ。

 

監獄塔下水道を攻略せよ!

 陰鬱な気分を抱えたまま先に進むとペペ司祭が先に待っていた。コールドハーバーに道草を食うような場所はあるはずもないのに余程ののろまと揶揄われた。こ、この~!まぁ遅れて来たのは事実。抑えるのだ俺よ。

 この貧民窟の下水道を超えるとどこに出るのか尋ねると、監獄塔に辿り着くとペペ司祭は教えてくれた。アレッシア会に刃向かった者達を収監するための場所だそうだ。それとヒルの怪物に注意するように警告された。貧民窟の住人よりも見境がないので性質が悪いそうだ。

 なぜそれほど危険なのかというと、ヒルに寄生された者達の成れの果てが群れで潜んでいるからだ。メアリーの子供達とも呼ばれており、火刑に処されたメアリーがモラグ・バルと交わって生まれたという説もあるらしい。

 やはりあの本のマーラ教徒はメアリーで間違いないようだ。グレゴルー卿の書置きとも合致する。死後までこんな目に遭わされるのは不憫でしょうがない。そのメアリーはマーラとも呼ばれていたらしい。エイドラのマーラに?それを不愉快そうにペペ司祭は罵るのだった。かつて面識があったのだろうか?

 

 ペペ「大衆はあの女をマーラと呼んでいたな。マーラ......、アヌイ=エルに連なる忌まわしき簒奪者の一人の名だ」

 パーマー(この言い草からして過去に面識でもあったのか?)

 

 気を取り直してここの場所について尋ねた。この船付場は罪人や物資の運搬に使われ、日雇い労働者や乞食が住み着き、次第に大きな町になったそうだ。疫病を恐れたアレッシア会は何度も街を焼いたそうだが、何度も消し炭にされてもその次の日には家を建てられていたそうだ。遂に根負けした彼等はある程度の自治を許可したのだ。しかし、翌年にサラシアン病が流行した。

 流石に疫病に勝てなかった様子で死体が下水に詰まらせ、ルマレ湖を血と腐肉で埋め尽くされてしまったらしい。その死体を焼却処理していたのはペペ司祭本人だそうで、昨日のことのように覚えているようだ。余程想像を絶する光景だったのだろう。

 次にどうしてサラシアン病が流行したのか尋ねると、一匹のスロードと呼ばれる種族の青年がばら撒いたのだという。スロードとはナメクジ型の亜人だそうで、容姿が醜い事で有名らしい。俺は一度もあった事がないのでそれ以上の言及はしなかった。

 そのスロードの青年は気立てがいい人だったが、容姿が醜過ぎたためにアレッシア会に殺されてしまった。死の直前にそのスロードは得体の知れぬ液体を周囲の者に吐き付けたのがサラシアン病流行という悲劇の発端だったそうだ。何とも悲惨な話だ。そのスロードの青年の来世に幸あれと願わざるを得ない。

 そして、俺達はボートに乗って先に進んだ。その先には黒い大山羊や魂なき者が襲い掛かってきた。それをセラーナとミラークが先んじて返り討ちしてくれた。実にありがたい。その後、渡し守である魂なき者から鍵を取って監獄塔下水道に向かうのだった。 

 監獄塔下水道に向かうと、飛び交う黒小山羊や黒大山羊、肉塊等が襲い掛かってきた。入り組んでいるうえにそこから脱出出来たとしても足場の悪い道を下って行かねばならなかった。

 それを攻略したら、封印された魂なき者がいたのを見つけた。例によって近づくと封印が解け、黄金の聖騎士が現れた。

 巨大なハンマーのような武器を巧みに使うので苦戦したが、振り下ろした後の隙を突いて足を斬りつけて動きを封じてから首を切り落とした。失敬して調べるとステンダールの聖騎士である黄金のセオドールという名前の聖騎士だったようだ。装備と武器一式は戦利品として貰う事にした。無論赤い石の方もだ。

 最深部に近づくと、焚火をしている騎士と黒い小山羊がいるのを見かけた。その騎士はカイウス卿と名乗り、九大騎士の1人だと分かった。こんな所にいるとは思わなかったが。

 何故焚火をしているか尋ねると、ヒルは火を恐れるからこれなら襲われる事がないとのこと。しかし、同席している黒い小山羊のアティーマという名前の少女は恐れる事がないらしいが、大体は問題ないらしい。

 ここのヒル達の事を詳しく聞いてみる事にした。それらサラシアン病とメアリーの加護。腐敗と再生を繰り返すうちに人の姿を失った存在だというのだ。

 次にメアリーについて尋ねてみた。アレッシア帝国時代のマーラの司祭で、サラシアン病を癒すほどの治癒師だったそうだが記録にはほとんど残っていないらしい。分かっているのはサラシアン病が流行した時、魔女として火あぶりにされた事だけだそうだ。ペペ司祭の話の部分だな。恐らくアレッシア会によって隠蔽されたんだろう。嫌な話だよ全く...。

 

 カイウス「メアリーと戦うのか?」

 パーマー「...そのために来ました。俺達はここで止まるわけにはいかないので」

 カイウス「...そうか。止めはせんよ」

 

 俺達はこの先に進むための鍵とサルドの聖灰を入手した後、アティーマに話し掛けた。彼女はタロスを称える歌を歌っていたが、俺達に気付くと自己紹介をしてくれた。どうやらカジートの女の子らしい。

 メアリーは火を怖がるが、アティーマは温かいから好きだと言った。そのメアリーの事は優しいから大好きなのだと彼女は言った。前の母親みたいにいじめたりしないからだと。

 一応その前の母親の事を聞いてみると、アティーマは前の母親は大嫌いだと言った。前の父親も同様らしかった。2人して彼女を「悪い子」だと言っていじめるのだそうだ。カジートだから首輪を付けたり、何度もムチで叩く等の虐待を行ったそうだ。それはジャザーンの本で読んだ事がある。その当事者がアティーマだったのだ。

 さぞ辛い目に遭ったのだろう。少しでもカイウス卿と仲良く暮らして、ここはコールドハーバーではあるが、今を幸せに生きてほしいと思う。

 話題を変えるためにアティーマはさきっきまで何をしていたのか聞いてみた。おままごとをしていたようだ。人形をメアリーが作ったらしい。

 次にタロスの事をどうして知ったのか尋ねると、カイウス卿が教えてくれたらしい。9番目の神だがどんなに数えても8までしかいないとアティーマは疑問符を浮かべて言っていた。メアリーにも分からず、前の母親は1つだけだと言っており、彼女は混乱した様子だ。それは俺にも分からない。これは神の定義が時代ごとに変わったという話なのだろうか?

 

 

 アティーマ「神様は何人いるの?」

 パーマー「...それは、神のみぞ知るって感じ?」

 セラーナ「.誰がとんちを言えと言いましたか...。疑問文を疑問文で返すのは文法上おかしいんですのよ?」

 ミラーク「.真面目にやれ、真面目に」

 

 

業魔VS黒き聖母メアリー

 さて、ふざけるのは程々にして先に進みますかね。最深部に到着すると、そこは道中見かけたハルメアス・モラに似た肉の柱が幾本もそびえ立ち、触手がうねうねと動く悍ましい空間だった。

 奥に進むとヒルに寄生された巨大な妙齢の女性が現れた。彼女がメアリーで間違いないだろう。セラーナはアイススパイクで牽制しつつ、ミラークはファイアブレスで攻撃した。ヒルは火に弱いという話はメアリーにも当てはまるものだった。俺もファイアブレスを放って着実に追い詰めていく。

 ただ俺はミラークと違いシャウトは連続で放てないので、黒檀の弓で射ながらクールタイムを縮めつつ戦った。最後はミラークのファイアブレスで挫いたところを俺の黒檀の弓矢が決め手となりメアリーを殺す事に成功した。

 すると、またしても俺の意識が遠のく現象に見舞われた。モラグ・バル絡みの戦いでは頻繁に起きつつある。対策すべきだろうか?

 気が付くとそこは牢獄だった。辺りを見渡すとそこにはモラグ・バルがいた。くそぅ、ニヤニヤしながらこっちを見てるぞアイツめ!

 

奇跡の奴隷達

 内心モラグ・バルに悪態を付いていると老人の司祭が近づいてきた。それは生前のペペ司祭だった。彼は俺をメアリーとして話し掛けてきた。どうやらアレッシアに似ているらしい。今までの経験通り、過去に飛ぶ際はその人物の役割で話が進むようだな。

 俺は話し掛けるべきか悩んだがそのまま黙っておく事にした。今までとは違うがその方がいいのではないかと思ったのだ。黙っているとペペ司祭は傲岸不遜に話を進めた。メアリーが話そうものなら問答無用に処刑するつもりのようだ。

 そして、ペペ司祭はどうして今頃邪魔しに来たのかと尋ねてきた。俺はそれにも黙っていると、何者であれ明日魔女として処刑すると彼は宣言した。ちょっと合図するだけで足に接吻した者達がメアリーを火に投げ入れるだろうと。無茶苦茶だなぁ。

 次にペペ司祭は宝石のような物を俺に見せつけた。それは俺が本能的に集めている赤い石にそっくりだった。それはもう魅力的な石だ。その石をパンに出来るかと彼は問うた。

 

 

 ペペ「『人はパンのみに生きるにあらず』これがお前達の答えだったのだからな...」

 パーマー(難解な問答だな。だがこれも黙って聞いた方がいいんだろう?メアリー...)

 

 俺は何故黙って聞いているのか自分でも分からなかった。それはきっとメアリーの想いが乗っているのだと思った。ジョバンニやヴァルラの時と同じなのだ。そう思ってきているとペペ司祭はシェザールの創造の如く、あるデイドラがパンの名を以て反旗を翻したと語っこの光景を眺めているモラグ・バルなのか?

 結果はというと、大衆とは現金なものでデイドラに追従したらしい。パンとは食べ物ではなく奇跡なのだろうか?やはり奇跡の奴隷ではないか。 

 

 ペペ司祭は持論を続ける。ムンダスには飢えたる人間がいるのみで、パンの後に善行を求めよと叫ぶ人々が塔を破壊してしまったと吐き捨てた。塔とはシロディールの白金の塔みたいな物だろうか?それともこれも比喩表現か?

 お前達と言っているので多分エイドラなのだろうが、新しい塔を作ろうとも無駄と言われた。運命の塔は土台さえも完成しないとペペ司祭は断言した。塔を建てる事さえしなければ人々の苦痛を和らげたかもしれないのに、そうしなかったのだと非難した。

 挙句の果てには大衆達はアレッシア会の下に集まり、シェザールの心臓を盗んでやると言った者達が嘘を吐いたと叫んだそうだ。

 俺は尚も沈黙を続けた。メアリーの意思を汲み、ペペ司祭の真意を確かめるために。

 その後、ペペ司祭はメアリーがマーラならば石を飲み込めと命令した。石の炎は終わり、忌まわしい喜劇は終わりを迎えるだろうと。赤い石はモラグ・バルと深い繋がりがあるのか?飲み込まないままでいると、そうするだろうなと彼は吐き捨てた。奇跡やエイドラを否定することになるからだと。

 人はエイドラを信じる以上に奇跡を信じたがるのだとペペ司祭は断言した。勝手に奇跡を作り、自分のような審問官が生まれるようになってしまう程に。奇跡の奴隷にせず、自由な信仰こそが大事だとエイドラ側が思っていたとしても、エイドラは人を深く愛し過ぎていると非難した。人を愛さなければ人は飢える事はなかったのだと。

 これは嘆いているのだろうか?奇跡に縋る大衆をどうにも出来ないペペ司祭の嘆きなのだろうか?俺はまだ沈黙を続けてその真意を知りたいと思った。

   ペペ司祭は良心なる決定や自由、愛でもない。ただの神秘や目の前の赤い石があればいいと言った。全ての人間がその良心に背いても、石に服従すべきだと言った。アレッシア会はその通りにし、エイドラの偉業を大きく書き換える事になり、奇跡と神秘と教権の上に島を築いたのだと。人々に限りない苦痛を齎す「自由」からの開放を果たしたと豪語した。

 アレッシア会の許しが得られるならば、弱き人々の情からその悪行すら大目に見ること位かまわないだろうとメアリーに投げかけた。これこそ人を愛している証拠に他ならないのではないかと。俺はそれを否定する事は難しかった。誰しもが強く生きられないからだ。縋るのが悪とは言い切れないからだ。アレッシア会がろくでもない組織だったのは分かったが、その機構はもう当時には無くてはならない存在へと昇華してしまっていたと俺は理解した。

  

 その後、改めてどうして邪魔しに来たのかと問い詰められた。俺は再び沈黙すると、エイドラの物はエイドラの物、皇帝の物は皇帝へ、そう言って赤い石をアレッシア会から遠ざけたとペペ司祭は疑念を向けた。

 赤い石は地上における権力であり、肌身離さず持ち続け、エイドラを捨ててアレッシア女王を崇めていると言った。2,000年前にイムガの預言者がコロヴィアの密林で赤い石を見出した時に運命が決まっていたと。

 アレッシア会が作ろうとする塔は完成していないが、完成したら全ての人々が最高に幸せになれるだろうとペペ司祭は言った。果たして本当に上手くいくのだろうか?

 赤い石を拒絶する必然性がない筈だとペペ司祭は詰め寄る。この石の望みを少しでも汲んでやりさえすれば、ムンダスを至福の世界に出来たのではないかと問うた。支配する者と良心を託すべき者、全てを1つにする事も出来たはずだと彼は嘆いた。

 エイドラに出来なくてもアレッシア会がそれが出来るとペペ司祭は言い、赤い石を掲げ大陸を跨ぐ大帝国を築くことでそれを成すと豪語した。アレッシア会も帝国も、シェザールの帰還を待つ必要はなくなるのだと。

 そして、もう一度先程の話を繰り返し、メアリーは火刑に処されるのだとペペ司祭は宣言した。彼が合図さえすれば薪を我先にくべるようになるのだと。そうさせたのは彼女がアレッシア会の邪魔したからだと。

 このムンダスで最も火刑に処されるのが相応しいのはメアリーだと捲し立てるようにペペ司祭は断言した。どうやら沈黙ばかりしている俺を恐れているらしい。彼女の意志を汲んで行動してみたのだが、こういう展開もあり得たのだろうか?

 メアリーは抗議したがペペ司祭は聞き入れなかったから火刑を実行したという流れか?だが今となっては過去の話でしかないな。彼も奇跡の奴隷達に辟易しているのだろう。アレッシア会のやり方に対しても疑問を持っている事も分かった。それだけでも良しとするかな。

 沈黙を貫きながらそう考えていると、ペペ司祭は沈黙を貫く俺(まぁ彼にはメアリーとしか映っていないのだが)に怯えて牢屋の鍵を開けた。ここから出て行き、2度と現れないように告げて見逃してくれたのだ。それを見ていたモラグ・バルは不愉快そうに消えていった。これで良かったと思いたいが、どうだろう?

 牢獄から脱出する際に、他の牢屋を見るとシェオゴラスがいた。何故か藁の中に埋まるように座っていたが...。そんな事はどうでもいい。きっとまた奴とは会うのだろう。会うのは億劫だけど...。

 階段を登って外に出ると、そこにはウマリかマリルがいた。どちらか分からなかったがありがたい。それと椅子の上に何故かリュートがあった。近づこうとすると俺は光に包まれた。どうやらここまでらしい。

 気が付くとセラーナとミラークセラーが駆け寄ってきた。黒い小山羊や大山羊を全部殺してくれたらしい。本当にありがとう。

 その後、失敬してメアリーを物色するといつもの赤い石の他に体力を回復させるニーアの始まりの指輪、昔のミラークの剣に似た悲痛の肉塊と呼ばれる武器があったので貰っていく事にした。

 元来た道を戻ると、俺達を見てカイウス卿はメアリーの死を察した様子だった。また死んだと言っており、何度か蘇っているかもしれない雰囲気だった。これで最後になればいいがと嘆いていた。俺もそうであってほしいと願い、監獄塔に向かうのだった。