俺はソーンヴァーと言い争いをしていたアーケイの司祭の男性に話を聞く事にした。名前はヴェルラスといい、司祭ではなく修道士だったようだ。ここの死者の間が閉鎖されているようで、イグマンド首長が何とかするだろうと言ってはぐらかした。
少々イラついた俺は話してくれたら力になると言って説得した。それを聞いたヴェルラス修道士は事態を解決出来る人を雇うようにイグマンド首長に提案しようと思っていた事を明かした。
どうやら遺体が誰かに食べられた形跡があるらしく、嚙み千切られた跡や骨を割って髄を啜った跡もあるとか。食人か...。いやはや悪食(あくじき)だなぁ。だが俺も人の生き血を啜る、いや啜りまくっている吸血鬼の王、そんな台詞は言えた義理じゃないか。
真相を突き止めたらアーケイの司祭から褒美が出ると持ち掛けられた。正直それはいらないと思ったが、やると決めたからには最後までやろう。それにしても何で俺はアーケイ絡みだと腹が立つのだろうか?
屍を貪る者
早速死者の間に入ると、知らない女性の声が響き渡った。俺の中に飢餓を感じると言ったり、隠すことはないと優しく言ったりして俺に話し掛けてきた。どうやら食人を行っている女性と見るべきか?生憎俺とセラーナは吸血鬼なんだけどな。ミラークやセロはしないし、ルパートだってしないだろう。
その後物陰からブレトンの女性が現れた。エオラという名前らしい。
俺の過去を知っている風な口ぶりだったが、兄弟や姉妹が死んだ時に好奇心からその遺体を食べたのだと言われた。そもそも記憶喪失の俺に本当に食人をした事実があるのか疑わしい。両親や兄弟がどんな人物だったかも覚えていないから俄かに信じがたいな。
仲間の多くは恥ずかしいから最初の記憶は封印するが、もう隠す必要はないという。廃滅の女公と称されるナミラが、裁かれる事もなく飢えを満たせる場所を与えてくれると言った。
待て、ナミラとはデイドラ・プリンスのナミラか?ムカデやナメクジなどの不快生物や不幸な人間や不憫な人間を救うとされる神だ。邪神寄りなのだが救われる側からしたら神なので黙っておこう。オブリビオン領域は、亡霊が泣き叫ぶ砂の島であるスキャトリング・ヴォイドと呼ばれる。
禁断の宴に向けて
だが彼女達の安らぎの場所がドラウグルが目覚めたために、マルカルスにまで追いやられたらしい。その場所はリーチクリフ洞窟と呼ばれるようだ。そこでドラウグルを始末して欲しいとのこと。それを聞く道理は本来ないのだが、とりあえずやる事にした。これ以上は死者の間を荒らすことがないようにしなければならないからだ。
俺が了承すると、エオラは「マルカルスの人々にもう死者の眠りは妨げることはない」と伝えるように言われた。その後透明の薬を飲んだのか消えて出て行ってしまった。
俺達は死者の間を出た後、ヴェルラス修道士にもうここは荒らされる事はないと告げた。彼は喜び報酬としてアーケイのアミュレットをくれた。正直いらないのだが、彼の好意は無下には出来ないので貰っておくことにした。
俺達は地図を頼りにリーチクリフ洞窟に向かった。エオラさんはそこで待ち構えており、ドラウグル討伐に協力すると言った。だがドラウグルも強い個体は多いのでここで待っていてもらう事にした。
リーチクリフ洞窟内部のドラウグルを殺しつつ進み、最深部にいるドラウグル・デス・オーバーロードを殺して洞窟内部のドラウグルを全滅させた。
宴を拒む吸血鬼
エオラさんはどうやら様子を伺っていたようですぐにやって来た。ここでナミラの魔術結社による大晩餐会を催すと宣言した。メインコースの獲物を持ってくる栄誉は俺に授けると彼女は言った。単に汚れ仕事を押し付けられた気がするなぁ。
なんとその獲物はヴェルラス修道士だった!安楽な生活の味で満たされた相手をご所望のようだ。ゴールドを掴ませて、宝を探すためにアーケイの司祭の助けが必要だと言いくるめればいいらしい。
俺としては内心それは名案かもと思ったが、彼は悪事を働いた人ではない。そんな事をすれば俺もデイドラ・プリンスと同類になってしまうだろう。アーケイの修道士だろうが司祭だろうがそれは変わらない。気に入らないのは事実だけどな。
マルカルスに戻り、死者の間で仕事をしているヴェルラス修道士に話し掛けた。騙すように言われたが、食材にされると正直に話した。それを聞いた彼は驚いたがあるメモを書いて俺に渡してきた。
その内容は、ヴェルラス修道士そっくりの生きた人形を魔法で作成して逆に向こう側を騙すという作戦だ。そのためには鹿肉を3つ用意して、カカシを用意して特性の魔法を併せて使う必要があるとのこと。
俺はマルカルス近辺の平原を駆けり鹿を3頭仕留めて3つ分の鹿肉を入手した。それをカカシに入れ込み、生きたカカシの創造と呼ばれる特性の変性魔法をカカシに向けて使用すれば偽のヴェルラス修道士が生まれた。
一緒に来るように圧力をかけると簡単に屈した。意志は弱めに設計されているらしい。まぁ人形なら当然だろうが。
食人鬼達の宴
偽のヴェルラス修道士を連れてリーチクリフ洞窟に向かうと、見知った顔ぶれが席についていた。その人物達はホグニさん、バニングさん、リスベットさんだった!
ホグニさんは自身の肉屋の商品に人肉を使用しており、バニングさんは犬用のスパイス入り肉は実は人肉を使用していたり、リスベットさんに至っては夫の遺体を食べたらしい。この晩餐会の参加も初めてではない様子だ。何てことだ、マルカルスには食人鬼達が潜んでいたのだ。
その驚きを他所に偽のヴェルラス修道士はエオラさんの誘導で祭壇に移動していた。何とかバレなきゃいいけど。
祭壇に進むと他にも参加者がいるのに気づいた。サニヨンという名前のハイエルフの男性、二ムパスという名前のウッドエルフの女性で共に死霊術師らしい。死霊術師も魅了される物なのか?そんなに食べたいのか人肉が?
そして、祭壇に到着したら最初に味わう権利を俺に譲るとエオラさんは言った。目の前にいるのは人肉では無くて鹿肉が化けた人形なんだけどな。
それは言っちゃダメなので言わないが、気分は乗らないのでフォースウォーンの剣で斬り殺した。人形なので殺人にはならないだろう。まぁ山賊や死霊術師、略奪者やフォースウォーンを殺し続けているので今更ではあるが。
俺は一口だけ食べることにした。うむ、ちゃんと鹿肉の味だ。生だけど...。すると俺に直接語り掛けてくる女性の声が聞こえた。どうやらこの声の主がナミラのようだ。アーケイを取り込むのは気に入ったとか言っているが鹿肉をかじったに過ぎないのでそんな高評価しなくていいのにと思った。恐らく祠越しだから分からないのだろう。このまま黙っておこう。
気分を良くしたナミラは俺に指輪を報酬としてくれた。彼女の名前を冠したナミラの指輪だ。食人によって高い効能と加護を与えられるのだとか。
最後に指輪以外に剣もくれた。深淵の剣と呼ばれ、暗闇と嫌悪を司るのだとか。しかも2振りもくれた。直剣とアカヴェリ刀かアリクルの戦士達が使う曲刀っぽい見た目の剣だった。
鹿肉なのに気付かない事はないはずだが、どういう風の吹き回しだろうか?まぁ生き延びるためには武器も必要なのでありがたく頂くが、腑に落ちない気持ちは残るのだった。
エオラさんは俺と出会った時から特別な何かを感じており、こうしてナミラの勇者になった事に誇りを持っているようだった。指輪には選ばれたのだと俺に諭すように言った。結社の仲間と交流を深めることを望んでいるようだ。
俺としてはデイドラ・プリンスを信奉するカルト集団に関わるのは止めたいのではあるが、どうしても首を突っ込まずにはいられない。何かに引き寄せられる感覚で関わる形になる。その理由は未だ不明だ。
まぁ挨拶だけして俺達はお暇させていただきますかね。義理は果たしたし彼等を助けたからね。後は好きなだけヴェルラス修道士(に偽装した鹿肉の人形)を食べればいいさ。
結果的にナミラの勇者になった俺を、結社の皆は称賛した。彼等にとって俺は英雄なのだろう。俺は食人趣味はないが吸血鬼である事は事実。食人と吸血にどれ位の違いがあるのだろうか?きっとないだろう。
最初は殺すつもりだったが普段の俺と彼等に違いがないと分かると殺す気にはなれなかった。吸血は良くて食人はダメなのは筋が通らないからだ。多分深淵の剣をくれたのはナミラが同類であると見抜いたからかもしれない。そのため俺は殺すことなくリーチクリフ洞窟を後にした。
マルカルスに戻る最中にドーンガードが襲撃してきた。どうやって俺達の位置を割り出したかは分からないが、応戦する事にした。
この時深淵の剣を試しに使うことにした。この剣は血や生命力を吸収するらしく、斬られたドーンガードの構成員は段々と弱体化し、殺した後はドラウグルのように干からびていた。中々恐ろしい代物だが吸血鬼の俺にぴったりの武器だと思った。これは重宝すると思ったのだ。
俺達はマルカルスに戻り、休んでいるヴェルラス修道士に報告した。ナミラを騙した事に彼は歓喜していた。俺としても上手く事を収められて良かった。
そして、ヴェルラス修道士は俺が持っているナミラの指輪を処分すべきだと忠告してきた。食人をしないのだから持っていてもいらない物なのだが、苦労したし何よりアーケイの修道士にくれてやるのは癪なので、俺は拒否した。それを聞いた彼は渋々諦めるのだった。
あの時は何で意固地になったのかは分からない。どうしても欲しかった訳ではなかったのにだ。仲間達も心配していた。俺はどうかしてしまったのだろうか?