人造人間となったキュリーは好奇心の塊であった。彼女は科学の研究のためケンブリッジポリマー研究所に行きたいと言ってきた。戦前はそういう場所があるのは知っていたが行く機会は無かったので、良い機会だと思い行くことにした。
早速行って中に入ると、Ms.ナニーと思われるロボットが受付に現れた。モリ―という名前らしい。彼女は僕達がここで働きたい職員候補と思っているらしく、選考を始めますかと言ってきた。とりあえず受けてみようと思う。
ケンブリッジポリマー研究所 採用試験
最初にポリマー合成を扱った事はあるかと聞いてきた。僕は「ポリマー合成?ナニソレ?」と答えた。それを端から聞いていたキュリーは頭を抱えた。しょうがないじゃないか、僕は頭の良い方ではないんだから...。
その結果、僕の職務は「用務員」となった。モリ―は「床のモップ掛け分野で輝かしい未来を期待します」と言った。何だか日本で言う所の「お祈りメール」感が満載な事を言われた気がする。
僕はオリエンテーションを希望するかモリ―に聞かれたので聞いてみようと思い、了解した。
このケンブリッジポリマー研究所は優秀な大学院生集団の研究所で、ジョン・エルウッド、エリッカ・ウーラム、ウィルフレッド・バーグマンという名前の人物がC.I.T在籍時に出会ったのだという。この研究所の要職に就いているのかもしれない。
次にニュークレオストリクティブと圧電性ポリマーと呼ばれる研究は、2073年にジョージ・ケンプ大佐という名前の人物の興味を引くことになったと言った。その後に2074年に、国防実験プロジェクトで潤沢な助成金を得たと言った。
この研究でアンカレッジで効果的な作戦を果たした「リバティ・プライム作戦」のいくつかの構成要素になったとか。あまりニュースは見なかったからそこの所はよく分からない。
とりあえず、軍と協力関係の機関だとは分かった。この後は調査ラボで仕事を行うことになった。キュリーは科学の仕事が出来るという事で嬉しそうだ。僕にはさっぱりだが頑張ろうと思う。
実験を完成させよ!
僕達は放射能の除染を行うクリーンルームに入ると、モリ―により隔離されてしまった!どうやらディレクターとなったエルウッドの命令により、強制残業命令を執行したようだ。研究として「ピエゾ核ランニングプロジェクト」と呼ばれるものを完遂する必要があるようだ。
完遂したら、エルウッドの妻になったエリッカ・エルウッド・ウーラムに報告するようにと言われた。生き残るためにはやるしかないのだろう。
実験用のターミナルには、必要材料が水素化リチウムと金、アイソトープU-238と書かれており、それ等を入手する必要がある。
机のターミナルには、金と水素化リチウムのポリマーを適切に使用することで、電離放射線から電気エネルギーへの局地的な変化を実現出来る可能性の言及や実験時の過程で苦労したり、約束通りの成果が出ないと援助を打ち切るなどの脅しを受けたりしたこと書かれていた。
それ以外には閉じ込められた研究員の記録が書き綴られていた。
アイソトープを取ろうとしたが格納庫が隔離されたままなので入れなかった事、武器が無いので自動防衛システムに立ち向かえない事、ウィルフレッド・バーグマンはジョン・エルウッドを「処分してやる」と恨み節を書いていた事、エルウッドディレクターが外に出れないことを不安視する職員達に外では「訓練」をしているからプロジェクトに取り組むように説得していた(恐らく最終戦争中のために嘘を吐いたのだろうと思われる)事、または妻のエリッカに対してはエルウッドディレクターは核兵器が落ちたから外に出ないように命令されていたことを打ち明けて、完成すれば救助してもらえると期待していたので急がせていた事等書き綴られていた。
完成しても軍が機能していたかは疑問でしかないが、エルウッドディレクターはそれで助けられると信じていたのだろう。
その後、フェラル・グール化した職員達を返り討ちにして、サンプル3111を発見した。水素化リチウムであると書かれていたので持って行くことにした。
そして、別のターミナルがあったので覗いてみると、再度エルウッドディレクターが職員に説得しており、プロトタイプを作成すれば皆家に帰れると言っていた。それに会社だけでなく国の防衛に貢献するものだと。
更に別のターミナルでは、ウィルフレッド・バーグマンがセキュリティを破ろうとして皆を危険に晒そうとした事をエリッカ・エルウッド・ウーラムが非難し、続いてエルウッドディレクターも同じく非難してプロトタイプ完成を促していた。
そのターミナルを見終わると近くにサンプル611とされる物があることに気付いた。金であると書かれていたのでこれも持って行くことにした。
その後はアイソトープの格納庫の扉をターミナルから開いて光りし者を殺し、アイソトープU‐238を入手した。これで材料は全て揃ったので、それぞれの配置位置に設置した。
そして、僕はターミナルを起動して実験を開始した。実験の工程はしっかり見られるようにガラス張りのベルトコンベヤーで流れるようになっており、コーティングがしっかり出来た事は届いた時に分かった。
プロトタイプは完成した!その名も「ピエゾ核パワーアーマー 胴体」と呼ばれる代物だ。これを持ってモリ―に報告すると、クリーンルームのオーバーライドを解除した。これをエルウッドディレクターに報告に行くことになるらしい。生きているのだろうか?
そして、エルウッドディレクターのオフィスに到着した。だが、そこにいたのはフェラル・グール化したエルウッドディレクターだった。返り討ちにした後、モリ―はニュークレオストリクティブブランディングプロジェクトのプロトタイプが完成したと屍となったエルウッドディレクターに報告していた。
様子がおかしいエルウッドディレクターを、モリ―は「社内インフル」と思い込んでいた。違うぞ、モリ―。それはフェラル・グール化という末期状態だ...。
その後、報酬として戦前の紙幣を25枚ほど貰った。昔なら泣いて喜ぶ額だったろうけど、今はキャップが主流なので昔ほど喜べなかった。モリ―は報酬を手渡した後に「余剰人員削減」の名目で僕を職員に採用した後、彼女自身でシャットダウンしてしまい、床に転がってしまった。
何とも無情な...。だが、ある意味これでモリ―はケンブリッジポリマー研究所の呪縛から解放されたとみていいのかもしれない。
最後にエルウッドディレクターのターミナルを見てみた。ウィルフレッド・バーグマンは解放に応じないなら無理矢理脱出してやると書き綴り、エリッカがその際怪我するかもしれないと仄めかしていた。
エリッカは不安になりながらも夫の事を気にかけており、外の事を皆に話した事や、職員達の家族の事も考えるべきではと進言した事が書き綴られていた。
対するエルウッドディレクターの記録も読んでみた。ケンプ大佐から研究の催促とラボから出るなとの奇妙な命令を受けたことが書き綴られており、その後の最終戦争で核攻撃の事を言おうとしていた事を悟ったようだ。直撃は避けられたが、EMPで全ての外部への通信機能をダメにしてしまい、咄嗟の嘘として「訓練」と称して外の出来事を明るみに出ないようにしていたと打ち明けていた。
ケンプ大佐との連絡が取れる手段を見つけて、アマチュア無線から周波数を探そうとしていたようだ。
その後の混沌とした時代で各地で略奪が横行して、無線に必要な物資を確保したが肩に流れ弾を受けてしまった。放射線症にも罹ったらしい。どうにか周波数を見つけて連絡を取ったら、戦争に極めて有用なものがある場合に限り、救出チームを派遣するとのことだった。そのためにプロジェクトの完成を急がせたのだろう。
更に問題が発生したことも書き綴られていた。リアクターの損傷だ。放射能汚染していく中で、ウィルフレッド・バーグマンのハッキングにも対応しなければならなかったが、肩の傷が細菌に感染したらしく、もう長くはもたない事を打ち明けていた。
最期は妻のエリッカに守ろうと手を尽くしたがダメだったことを謝罪し、プロジェクトを完成させ、無線を通じて、救援信号を出すように書き綴った後は、もう限界だったようでその後は何も書かれてはいなかった。
やり方は間違えたがエリッカを愛していたのは分かった。せめてもの救いは僕達がプロジェクトを完成させて、フェラル・グール化した皆を殺すことで苦しみから解放したという事だろうか?それでも救いかどうかは分からないが...。
キュリーの戸惑い
ケンブリッジポリマー研究所を出るとキュリーが話し掛けてきた。彼女は恩知らずと思われたくないが、自分を見失いそうになると言った。僕は大丈夫だと落ち着かせた。人造人間になったことで圧倒されており、歯磨きや両手の使い方、些細な考え方や感情でいっぱいになり、このゴチャゴチャの状態でどうやって他のことが出来るのかと聞いてきたのだ。
僕は頭が良い方ではなかったが、両親からよく言われていたことは優先順位を付けて行動することだった。それを聞いたキュリーは呼吸するみたいに軽々としていると言った後に、集中する事と研究することは大変だと言った。ひらめきも見つからず、世界に貢献出来ないのではと不安がった。
僕は「世界のに貢献するというのはよく分からないけど、キュリーのおかげで、確実に良い影響を受けたよ。それは誇るべき事だよ」と答えた。それを聞いた彼女はまた名もなき感情が増えたと言った。
僕の存在が唯一の救いと言い、相応の感謝と忠誠心はあるとして、今はもっと深い感情があると言い、僕の事を友達だと言った。
僕は「同じように思っているよ」と答えた。キュリーは気持ちがかき立てられ、目が故障してきたと言って会話を中断した。
彼女の気持ちに少しでも応えられているだろうか?重責の決断が出来ぬ臆病者の僕が...。それでもキュリーの期待には応えたいと思いながら僕達はまた旅に出るのだった。