おすすめ本『フェルマーの最終定理』 | 2022中学受験(息子)と2027中学受験(姪) -A stitch in time saves nine-

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2022中学受験を終了した男子を持つ父のブログ
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息子は開成・筑駒をはじめ受験校全てに合格しました。
現在は2027年組の姪っこの中学受験アドバイザーです。

今日は本のご紹介。

 

小学生だと少し背伸びが必要かも知れないが、本好きで、かつ算数・数学に興味のあるお子さんには自信を持ってお勧めできる本である。もちろん大人が読んでも凄く面白いので、未読の方にはおすすめである。

 

 

「フェルマーの最終定理」の証明の歴史を記したノンフィクションである。

 

「フェルマーの最終定理」とは以下のようなものだ。

 

ピタゴラスの定理は上記の式がn=2の時のもので、これが成り立つ自然数x, y, zが無数にあることはご存知のとおり(なお本書でも触れられているが、無数にあることは紀元前にギリシャの数学者エウクレイデスにより証明されている)。ところが、n=3以上となるとこれが成り立つ自然数x, y, zは存在しないというのである。

 

フェルマーは17世紀のフランスの数学者である(本職は裁判官)。数々の業績を残したが、フェルマーが自分の所有する本の走り書きとして、上記の命題に関して残した次の言葉が、それから350年以上に亘り、多くの数学者を悩ませた難題の出発点となる。

 

「この定理に関して、私は真に驚くべき証明を見つけたが、この余白はそれを書くには狭すぎる。」

 

数学の命題は非常に複雑なものになりがちで、しかも証明ができていない命題は、数学研究者レベルにならないと理解できないものが殆どである。しかしながら、このフェルマーの最終定理は、命題を理解するだけなら小学生でもできる。

 

そして、上記の走り書きである。証明できたとだけ言って、それを残さずに亡くなってしまい、それから何百年も証明ができなかったというドラマ性。これだけで舞台設定としては十分である。

 

この本では、この命題に至るまでの数学者の物語や、この命題を何とか証明しようと悪戦苦闘する数学者の物語が紡がれていくのだが、それがまたどれも興味深い。

 

その数学者の物語と関連して、数学的な理論についてのおおまかな説明も記載されており、それを本当の意味で理解するのは小学生はもちろん、大人でも難しいが、「数学ってこういう世界なんだ」ということを垣間見ることはできると思う。本書で引用されている、数学者の厳密さにまつわる以下の小話なんて非常に面白い。

 

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天文学者と物理学者と数学者がスコットランドで休暇を過ごしていたときのこと、列車の窓からふと原っぱを眺めると、一頭の黒い羊が目にとまった。

天文学者がこう言った。

『これはおもしろい。スコットランドの羊は黒いのだ』

物理学者がこう応じた。

『何を言うか。スコットランドの羊のなかには黒いものがいるということじゃないか』

数学者は天を仰ぐと、歌うようにこういった。

『スコットランドには少なくとも一つの原っぱが存在し、その原っぱには少なくとも一頭の羊が含まれ、その羊の少なくとも一方の面は黒いということさ』

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また、日本人数学者も登場する。フェルマーの最終定理の証明に必要不可欠な理論である「谷山=志村予想」や「岩澤理論」が日本人数学者によって提唱されていたというのも、日本人として誇らしい気持ちにさせてくれるのだ。

 

 

ちなみに、数学をテーマにしたノンフィクションというと、ハードルが上がってしまうように感じる方もいるだろう。しかし、この本を楽しむためには数学の知識や理解はほとんど必要ない。筆者も、一般向けに読めるよう、極力数学の専門的な内容は避けて記述している。従って、本好きで、算数・数学に興味がある小学校高学年なら大丈夫である。

 

本書で触れられている数学の理論が理解できなくても、この定理の証明を巡る数学者の物語は圧倒的に面白く、楽しめると思う。また、算数・数学に興味がある小学生なら、この本で言及されている理論をいつか自分も勉強・研究してみたい、と思うようになるかもしれない。

 

 

私は随分昔に読んだのだが、この間本棚を整理していたら出てきて、まだちょっと難しいかも知れないが、ひょっとすると息子は読むかなと思って勧めてみた。そしたら食い入るように読んで、すぐに完読してしまった。こういうのもっと読みたい、というので、同じ作者の以下を勧めて、今はこれを読んでいる。こちらもおすすめである。

 

 

 

 

 

 

 

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