育児休職中に読書をする時間がなかったので、平均より長めの通勤時間で狂ったように読書しています(笑)
小さい頃から絵本も読書も好きで、小中学校時代は学校の図書館をよく利用していました。
働き始めてからは、時間ができると目的もなく本屋さんをぶらぶら。
好きな作家さんの新刊を目にするとそのままレジへ。
絵本は特に林明子さんの大ファンで
結婚前には1人で兵庫まで原画展を見に行きました(笑)
私にとって小説は、その登場人物になって、見たことのない世界を見せてくれる。
ときには自分の人生や心の中、頭の中を俯瞰するきっかけや気づきを与えてくれるものです。
トリプルケアラーに関連する小説を読んだときには、こうして【読書記録】にしたいと思います
そして今回は…
最近介護メインの小説を選んで読んでいたので少し気分転換がしたくなり
育休中に気になっていた家族モノの小説を読もうと思いました。
それがこれ。
以前から町田そのこさんの小説を読んでいたので、新刊発売後から気になっていたけれど読む時間がなく。
そしたら"本屋大賞"にノミネートされたので、時間ができたら必ず読もうと思っていました
あまり書評や口コミを読まないで読み始めたら…
「あれ?これ、お母さん認知症系?」
・・・介護ネタから離れた小説を読むつもりが、引き寄せてしまったようです(笑)
町田さんのお話しはいつも、描写がとても鮮烈な印象があります。
娘さんがお母さんと離れざるをえない生活になり、その後の離婚、ネグレクト、DV、モラハラ、パワハラ。
痛い、つらい、と思う描写もあったけど、なぜかそれが町田さんの小説ではグロテスクになりすぎない。
(以前から、私は暴力シーンや血などが出る映像は一切見られません(笑))
元夫から逃げるために、思いがけずに再会するはめになった行方不明だった母と暮らすことになった主人公のお話。
つらいのにきれいで、しかも描写がリアルで。
あっという間に読了。
美談に描かれ過ぎてるって言う感想にもなりえるけど、私は前半が重かった分、後半にとても救われました。
映画になりそうな、伏線回収もばっちり、素敵な物語でした。
以下、印象に残った言葉たち
徘徊。これが始まったらもう家は空けられない。
父の徘徊がいつどのタイミングで始まるのか、私不安で仕方なかったです。
「おはよう、千鶴。よく眠れた?」
口角を持ち上げ、明るさを意識して言う。千鶴はわたしに目を向けたまま「おはよう」と返してくれた。
「夜、あんなに歩き回ったのに元気そうだね。よかった」
言われてる意味がわからなかった。
記憶を辿るでもなく、探すでもなく、「掬う」。
さらっと軽やかに、でも必ずそこにある、その表現にとてもしっくりきました。
そして私は"救う"を連想しました。
掬い方も救い方もわかなくなってしまう。認知症は残酷な病だと思います。
「ちゃんと、話したい。伝えたいって、思うの。答えたいものは、ここに、あるのよ」
ここに、記憶の海があるの。思い出したいものはただ掬い上げればいいって、分かってるの。でも、掬えないの。掬い方が、分からないの。
同感、共感しかない。
私も父の豹変していく姿を見て、ただただ怖かった。
自分自身がどんどん追い詰められて、変なことを考えそうになるときもあった。
「病気のこと、舐めてた。ママがこんなにもママじゃなくなるなんて、想像してなかったんだ。あたしのことを見る目が、他人を見る目で嫌だ。あたしの気持ちを全然分かってくれないのが嫌だ。あたしの言葉が通じなくなってるのが嫌だ。何でそんなに分かってくれないの、って、手を振りあげそうになった」
「あの瞬間だけなら、いい。でも、怖いんだ。これから何度も…きっと何度もそういう衝動が来る。そのとき、あたしはママに手をあげずにいられるかな。越えちゃわないかな」
何度も読み返した言葉。
つい数日前、施設にいる父のことへの罪悪感を口にしたら夫に言われました。
「アキはお父さんを助けたんだよ。あのままずっと家で過ごしてたら、全員がダメになってた。お父さんは絶対もっと認知症が進んでた。家族みんなを助けたんだから、むしろ自信をもったっていいと俺は思う」と。
目から鱗でした。嬉しかったけど、いまだに罪悪感は消えないけど、でも夫にありがとう。
誰かを理解できると考えるのは傲慢で、寄り添うことはときに乱暴となる。大事なのは、相手と自分の両方を守ること。相手を傷つける歩み寄りは迷惑でしかないし、自分を傷つけないと近づけない相手からは、離れること。
このシーンで、(状況は全然違うのですが)亡くなる前日の母の姿が浮かんで泣けちゃいました。
電車の中だったけど静かに、それはもうぼろぼろ泣けて。降りてからも歩きながらしばらく涙が止まらなかったです。
母を見る。母は恵真をじっと見ていた。口はぽかんと開いている。感情の読みにくい瞳の端から、ころんと涙が零れた。ころん、ころん。幾粒か零れた涙が、枕にしみていく。
最後には"救い"がある素敵な物語。
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