参照；羽状縄文系土器について
1. 関山式；
- 縄文前期前葉（6,700 ~ 6,450年 calBP / 約350年間）の土器型式。
2. 標識遺跡；
- 関山貝塚＠蓮田市。綾瀬川左岸の台地の南西縁、標高15 mの地点に立地、現在の水田面との比高差は8 m。発掘調査によって出土した貝類は、ハイガイが77.4%、ヤマトシジミが15.7%。貝層のなかからは、獣骨、鳥骨、魚骨、クルミなども出土。
- 本貝塚は、明治時代より知られており、1928年（昭和3年）、大山史前学研究所が発掘調査し、出土した土器を「蓮田式」として位置づけ注目された。
3. 関山式土器の特徴；
- 胎土に多量の繊維を含むこの縄文前期特有の繊維土器。焼成によって炭化し、断面は漆黒色を呈する。
- 花積下層式から関山式への過渡的な様相をなす二ツ木式（新段階）の性格上、関山式との区別は不明瞭。
- 器形；
- 浅鉢や椀などの器形もみられるが、やはり深鉢が主体。
- 片口付き、台付き、注口付きなど多様。
- 底部は平底か上げ底。
- 体部は、直線的に立ち上がるものや口縁部が外反し胴部が張り出すものがある。
- 口縁は、波状のものと平縁のものがある。
- 縄文は。普通の斜状縄文のほかにこの時期特有の羽状縄文が特徴的である。関山式の場合、複節や複々節というように、2、3回以上よった縄を転がして施文したり、同時に施文したりしているのが特徴。また、縄目によるループ文や縄文の境界部分にコンパス文という半円の弧状の文様を組み合わせて施文する場合も見られる。 より古い時期の関山 I式では、口縁部に梯子状沈線、瘤状貼付文（貼瘤）がつけられたりするが、II式ではこれが簡略化される。
3-1. 関山式土器型式編年
- 関山 I式とII式に細分される。
3-1-② 関山 II式；
関山 II式（打越遺跡 ＠富士見市 水子貝塚資料館）
特徴；
- 口縁部文様帯への地文の進出、添付文(口縁部文様帯）の減少。
- 片口土器の盛行。
- 縄文原体の組紐文の盛行。
- 横位施文されるのみであったループ文が、斜位縄文され鋸歯状や菱形状に縄文自体で文様構成されるようになり、平行沈線がこれを強調するように施されるものもある。
関山 II式（打越遺跡 ＠富士見市 水子貝塚資料館） 平縁上に4単位の鋸歯状小突起が付けられる。 器面全体に、菱形構成の羽状縄文４列施文され、口縁部、頸部、胴中央および胴下半部に3条ないし2条の重層ループ文が巡らされる。
関山 II式（打越遺跡 ＠富士見市 水子貝塚資料館） 片口土器。器面全体に、菱形構成の羽状縄文４.5列施文され、さらに口縁部と胴部に計５条の3列重層ループ文が巡らされる。
関山 II式（鷲巣貝塚 ＠杉戸町 埼玉歴民） 片口土器。4単位双頭の波状口縁。胴部上半に口縁まで菱形構成の羽状縄文が施文される。
関山 II式（幸田貝塚＠松戸市） 片口縁深鉢。片口上に1単位の波状口縁が付く。上澄みを片口から注ぐ際に中身がこぼれるのを防ぐためか。 口縁部および胴部中央に半裁竹管による3条の沈線が巡らされる。 胴部上半に平行沈線による菱形文が施文され、胴部下半上部に多段ループ文、下半部に斜縄文がそれぞれ施文される。
関山 II式（見立十三塚遺跡 ＠渋川市 渋川市赤城資料館） 片口土器。口縁部、胴部中央および胴部下方に半裁竹管による平行沈線が上から4条、3条、2条と巡らされる。平行沈線間には、同様の半裁竹管による平行沈線が鋸歯状に施文される。斜縄文を地文とする。
関山 II式（打越遺跡 ＠富士見市 水子貝塚資料館） 口縁に向かって挑戦的に開く器形の台付深鉢。器形全体に組紐文の地文を施し、その上に半裁竹管による平行沈線で菱形状文を描く。
関山 II式（打越遺跡＠富士見市 水子貝塚資料館） 左の深鉢の胴部に縦方向の組紐文が、口縁部におよぶまで施文される。右は口縁まで菱形構成の羽状縄文が進出。
関山 II式（打越遺跡 ＠富士見市 水子貝塚資料館） 片口土器。口縁部と胴部中央に半裁竹管によるコンパス文、器面全体に組紐文が施文される。
関山 II式（打越遺跡 ＠富士見市 水子貝塚資料館） 椀形の深鉢。口縁部と胴部中央に半裁竹管によるコンパス文、器面全体に組紐文が施文される。
関山 II式（打越遺跡 ＠富士見市 水子貝塚資料館） 4単位の波状口縁。底部から胴部中央で膨らみ、頸部で括れてから若干内彎しつつ口縁に向かって緩やかに開く器形。器面全体に組紐文が施される。
関山 II式（幸田貝塚 ＠松戸市） 4単位双頭の波状口縁。底部から胴部中央まで膨らみ、軽く括れた後口縁に向けて緩やかに開く器形。組紐文を地文とし、口縁部および胴部胴部下半部に半裁竹管による平行沈線が施文される。