(1/3)からの続き

 

 

 

 

4. 浄法寺類型の主文様

  • 塚本 1997;口頸部文様帯に “S” 字文、単方向の斜行渦巻文、対向斜行渦巻文等の基隆帯を配し、これと同方向に彫 刻的な沈線を沿わせることを特徴と捉えた。
  • 加えて基隆帯による横 “S” 字文や渦巻文の多くが、大小の突起か ら派生することに注目。そこで、浄法寺類型の土器を、突起と主文様を中心に観察する。
 
 

4-1. 三輪仲町遺跡 SK050 出土土器

  • 口縁部の相対する位置に中空のトンボ眼鏡状の突起2個が付く。一方(実測図正面)が頂部に “S” 字状の 隆帯を貼付け、一方はこれを欠く。“S” 字状隆帯が付く方の突起が正面と思われる。
  • これらの突起の下端から、 向かって右下方向に横 “S” 字状の隆帯が伸びる。
  • なお、中空トンボ眼鏡状突起正面には蛇行隆帯を貼付けている。
  • これらの突起の中間の口頸部文様帯には、小さな中空とならないトンボ眼鏡状突起とそこから向かって右下に伸びる横 “S” 字状の隆帯が配される。
  • トンボ眼鏡状突起の上部には、円環状の粘土紐を貼付する。
  • 正面と思われる突起が付く横 “S” 字文を先頭として、隣接する突起付き横 “S” 字文を、順番に横位の隆帯で連繋。
  • 横 “S” 字文に沿うように、口頸部文様帯を沈線で充填し、空白部には渦巻状、重弧状の沈線を充填。
  • 口頸部文様帯下端は、蛇行隆帯で区画し、胴部には2段 LR の縄の縦位施文による単節斜縄文を施す。  

    

  • 主文様;① 中空の大突起+横 “S” 字文、 ② トンボ眼鏡状小突起+横 “S” 字文、③ 中空の中突起+横 “S” 字文、 ④トンボ眼鏡状小突起+横 “S” 字文の4単位構成
 
 
 
4-2. 浄法寺遺跡第 16 号土坑出土土器
  •  口縁部に1個の大形中空の突起が付く。トンボ眼鏡状突起の上部に、正面に円環状の隆帯、裏面に横 “S” 字状の隆帯を貼付けたもの。
  • さらに正面下側には渦巻状の隆帯を貼付。大形中空突起の下端から向かって右方向に横 “S” 字状の隆帯を伸ばす。
  • さらに横 “S” 字状隆帯の左下方向に渦巻状の隆帯を派生させる。
  • 口頸部文様帯には、これ以外に3単位の横 “S” 字状隆帯を配する。
  • 横 “S” 字文と同方向の沈線で充填。
  • 口頸部文様帯の下端は3条の沈線で区画。
  • 胴部には2段 LR の縄の縦位施文による単節斜縄文を施す。  

   ↓

  • 主文様;中空の大突起+横 “S” 字文 1 単位、突起の付かない横 “S” 字文 3 単位の構成
 
 
 
 
4-3. 栃木県域の浄法寺類型
4-3-(1) 那須地方の土器
  • 主文様の種類; 横 “S” 字文、② 単方向の渦巻文、 ③ 対向渦巻文の 3 種類

4-3-(1)-① 横 “S” 字文;

 

 

 

 

 

 

 

 

4-3-(1)-② 単方向 の渦巻文;

 

 

 

4-3-(1)-③ 対向渦巻文もしくは弧文;

 

『とちぎ縄文の夏』展@さくら市ミュージアム

 

 

 

4-3-(2) 栃木県県央部の土器

  • 主文様の種類; 那須地方と同様の ① 横 “S” 字文、② 単方向の渦巻文、 ③ 対向渦巻文の 3 種類。
  • ほとんどの土器に中空の大突起、粘土環を組み合わせた小突起が付き、突起を主文 様の起点とする土器が多い点も那須地方と同様。

 

4-3-(2)-① 横S字文;

 

 

 

4-3-(2)-② 単方向渦巻文;
 
 
 
 
4-3-(2)-③ 対向渦巻文;
 
 
 
 
4-3-(3) 湯西川(栃木県北西部)の土器
  • 栃木県北西部は、火炎系土器が多く出土する会津地方に近く、浄法寺類型の成立を考えるうえで興味深い地域。(しかしながら、湯西川の仲内遺跡以外に良好な調査例無し)。

縄文時代中期(今から約 4,000 〜 5,000 年前)の竪穴住居跡 23 軒、土坑375 基などが発見された。竪穴住居跡には、この時期、 東北地方南部で発達する複式炉と呼ばれる独特の囲炉裏が作られるものが多く、貯蔵用の穴は、入り口が狭く底が広い巾着袋に似た形状のものが流行する。

『とちぎ縄文の夏』展@さくら市ミュージアム

 

 

 

  • 仲内遺跡には安定して浄法寺類型 の土器が存在。主文様は、① 横 “S” 字文、② 単方向の渦巻文、③対向渦巻文の 3 種類。
  • 全ての土器に中空の大突起か粘土環を組み合わせた小突起が付き、突起を主文様の起点とする土器が多い点も那須地方や栃木県中央部と同様。

  • 鶏頭冠風の突起とトンボ眼鏡を基調とする突起の両方を配す SI704 出土土器(↑10a, 10b)は、浄法寺類型の成立を考えるうえで 鍵をにぎる土器と考えられる。

浄法寺類型深鉢(↑6 仲内遺跡 SK-775@湯西川) 大形の中空突起を中心として口縁部に横S字文の基隆線を貼付、またそれに調和した彫刻的な沈線を施す。『とちぎ縄文の夏』展@さくら市ミュージアム

 

 

 

大木8a式深鉢(仲内遺跡 SK-775@湯西川) 4単位の大形中空突起を、またそれぞれの中間に小さ目の橋状突起を配している。胴部に彫刻的沈線で渦巻文を施文。基隆線の貼付はない。(※浄法寺類型との比較として)『とちぎ縄文の夏』展@さくら市ミュージアム

 

 

 

大木8b式深鉢(仲内遺跡 SK-775@湯西川)(※浄法寺類型との比較として)『とちぎ縄文の夏』展@さくら市ミュージアム

 

 

 

 

3/3 福島の浄法寺類型に続く