大木 4式;

  • 大木4・5式は、関東地方の諸磯b・c式に併行すると考えられるが、後2者に盛行する爪形文を全く欠き、細い粘土紐の貼付けによる文様表現が盛行する点で、全国にも類を見ない。

45・46が大木4式、48~51は大木5式

 

  • 貼付技法・文様構成は、関東・中部地方の同種の土器と比べれば稚拙。
  • 縄文原体は、一般に粗剛な繊維を用いる傾向があり、撚り戻し原体がみられたり、↓114に見るように、斜回転を行ったり、不安定な印象を受ける。
  • 松島湾沿岸では胎土に多量の石英砂をふくみ、いちじるしく脆い例が多い。
  • 口縁装飾が大木 4・5式を区分する良い指標となる。 大木4式/ 部分的にM字・V字・山形などの文様を太い粘土紐で表現し、その間に山形・波状の細い粘土紐を口唇上に貼り付けて繋いでいる(↓112)。これが大木5式になると/ 口唇外角に粘土帯を貼付け、口唇外帯風の凸帯をつくり出し、その上下縁に交互に刻みをくわえて、114に見るような山形の装飾を表現するようになる。また、大木5式後半期、あるいは分布圏の外縁部では、115に見るように上縁の刻みが省略される場合もある。

68 大木 4式(宮城登米郡糖塚貝塚)高25.6cm. 底面が外に突出し、いったんくびれてから口縁に向かって開く。 大木4式のなかでは、めずらしく具体的な文様をもつ例。楕円形の口縁長軸上に山形突起をつくり出し、そこへ翼を広げ右を向いた鳥のようなモティーフを表現している。その中間の口縁の谷にあたる部分には、四股をひろげ上に飛びあがる蛙かと思われる文様が見られる。施文部位の高低と鳥・蛙の文様の属性が対応する点が興味を引く。

 

 

111 大木4式(岩手清水貝塚)高21.6cm. 底面が外に突出し、いったんくびれてから口縁に向かって開く。 口縁に粘土帯を貼付け、2単位の山形突起をつくっている。

 

 

112 大木4式(宮城糖塚貝塚)高31.1cm. 部分的にM字・V字・山形などの文様を太い粘土紐で表現し、その間に山形・波状の細い粘土紐を口唇上に貼り付けて繋いでいる。

113 大木4式(秋田仙道)高38.4cm. 

 

 

 

大木 5式;

  • 大木4式同様、細い粘土紐の貼付けによる文様表現が盛行

奥松島縄文村歴史資料館

 

  • 口唇外角に粘土帯を貼付け、口唇外帯風の凸帯をつくり出し、その上下縁に交互に刻みをくわえて、↓114に見るような山形の装飾を表現するようになる。
  • また、大木5式後半期、あるいは分布圏の外縁部では、115に見るように上縁の刻みが省略される場合もある。

 

 

114 大木5式(宮城糖塚貝塚)高41.0cm. 口縁上、相対する位置に太い粘土紐を垂直に近い角度で貼付けている。大ぶりな連続山形文を構成しているが、わずかに谷の部分に箆調整、表面に指なでがくわえられている。大木4式と大木5式の遺構的な姿といえる。

115 大木5式(福島宮田貝塚)高18.8cm. 口縁部凸帯下縁に刻みをつけ、大木5式の上下縁から交互に刻みをくわえた連続山形文をなす口縁装飾の退化した形態を示す。胴部中央ですぼめる形態とともに大木5式の特徴をとどめるが、口縁直下の半裁竹管による連続山形文帯、さらにその下のボタン状貼付けなどは、大木6式の色彩をおびる。大木6式の最古の段階と見ることもできる。

116 大木6式(岩手滝ノ沢遺跡)高29.7cm. 

 

 

 

 

大木 6式;

  • 主体を占める器形は、口縁が外折し胴部が軽く膨れる深鉢(↓69・123・126)と、胴部中央から口縁に向かって軽く外反する深鉢(121)。ともに平縁と波状縁が同率で存在。
  • 大木6式前半には、大木5式の口縁部削り込みの手法(↓124)、粘土紐貼付け(↓122)の手法が残るが、基調をなすのは半裁竹管による沈線であり、とくに体部にはM字・逆M字・弧文などを組み合わせた人体意匠とも考えられるモティーフ(↓122)が見られる。
  • 沈線の交点、口縁の大突起には、大小のボタン状の貼付文が見られる。
  • 突起には橋状把手が付く場合が多い(↓122)。また、突起の頂点から太目の粘土紐を垂直に貼付け、その両脇に指頭による凹文を配して、人面様の意匠を表現する場合もある(↓126・127)。
  • 70・118・119は、十三菩提系の文様が見られるが、これ以外に、五領ヶ台系の装飾を持つ例も見られる。宮城県長根貝塚の所見では、大木6前半=十三菩提系大木6後半=五領ヶ台前半大木7a=五領ヶ台後半という伴出関係がみとめられた。
 

69 大木6式(山形県吹浦遺跡)高22.5cm. 口縁が外折し胴部が軽く膨れる深鉢。太い粘土紐で頸部と胴部が分けられ、頸部文様帯の上下に連続山形の沈線文様が施され、その間に3本の半裁竹管による平行沈線が引かれている。胴部上部に斜縄文が施され、雑な蛇行垂下文が粘土紐より引かれている。

70 大木6式(山形県吹浦遺跡)高20.0cm.  十三菩提系の文様が見られる。

 

 

117 大木6式(宮城長根貝塚)高18.3cm. この種の深鉢は底部が二次的な加熱を受け原型をとどめぬものが多い。煮沸を目的として考案された特殊な器形であろう。 

118 大木6式(岩手滝ノ沢遺跡)高28.9cm. 十三菩提系の文様が見られる。

119 大木6式(山形吹浦遺跡)高20.2cm. 十三菩提系の文様が見られる。

120 大木6式(山形吹浦遺跡)高29.7cm. 山内清男は、古くから円筒と大木の混血児が存在することをみとめていたが、まとまった資料が欠けていたため、具体的な見解を述べるに至っていない。吹浦遺跡の資料によって、はじめてその姿が明らかになった。しかし、今日の知見からすれば、「吹浦式」には再検討の余地がある。本深鉢は、もっとも「吹浦的」な特徴をそなえている。口縁部(山形)・体部(菱形・三角形・弧線の組み合わせ)のモティーフは、大木6式と共通する。大木6式の半裁竹管による平行線にかわって、縄文原体の側面圧痕による表現となっている点が、円筒的であるといえる。A突起の頂点に刻みを入れる点、地文の施文が粗雑になっている点は、大木6式でも新しい段階に属することを示している。大木7a式に相当すると考えても差し支えない。 

121 大木6式(宮城大木囲貝塚)高19.1cm. 

122 大木6式(宮城川下り貝塚)高27.4cm. 胴部沈線の交点にボタン状の貼付文を施す。突起下には橋状把手が付く。

 

 

123 大木6式(宮城長根貝塚)高25.4cm. 

124 大木6式(宮城長根貝塚)高44.0cm. 

125 大木6式(宮城大木囲貝塚)高18.2cm. 後期以前の松島湾沿岸には珍しい浅鉢。内外綿に箆磨きをくわえ、器面の仕上げは良好。口唇部が丸みをもち、やや内側に突出する点は大木6式的。しかし、π字状をなす突起の形態、さらにその内側が肥厚し、明瞭な段を持つ点などは大木7a式的。 

 

 

 

126 大木6式(宮城長根貝塚)高32.3cm. 大木6式後半に属する。体部に人面意匠、眼は平行沈線による便化された表現となる。

127 大木6式(宮城長根貝塚)高34.4cm. 胴部に箆なでを加え、地文を磨消しており、大木7a式に近い技法を示す。主文様帯は胴部に展開し、半単位ずれる大ぶりな連続山形文を2段重ねて4単位描き、菱形の区画をつくる。いずれも、菱形区画を輪郭に、長点から垂直に走る界線を正中線に見立てた人面意匠が見られる。口にあたる部分は、半裁竹管背縁によるくりこみで表現されている。眼は両側から入り込む長楕円形の沈線文によって表現される。

 

 

 

 

大木6式(大木囲貝塚) 頸部文様帯に平行に引かれた半裁竹管文による押引文。そこから垂下文が斜縄文を地文とした胴部に引かれている。

 

 

 

 

【参考Link】