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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

未成年の子がその所有車両を運転中起こした事故につき父に自動車損害賠償保障法3条による運行供用者責任が認められた事例

 

 

損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和48年(オ)第839号

【判決日付】      昭和49年7月16日

【判示事項】      未成年の子がその所有車両を運転中起こした事故につき父に自動車損害賠償保障法3条による運行供用者責任が認められた事例

【判決要旨】      未成年の子がその所有車両を運転中に事故を起こした場合において、父が、右車両を子のために買い与え、保険料その他の経費を負担し、子が、親もとから通勤し、その生活を全面的に父に依存して営んでいたなど原判示の事実関係(原判決理由参照)があるときは、父は、自動車損害賠償保障法3条による運行供用者としての責任を負う。

【参照条文】      自動車損害賠償保障法3

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集28巻5号732頁

 

 

自動車損害賠償保障

(自動車損害賠償責任)

第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

 

 

原告(訴外会社の元従業員)が,訴外会社の代表取締役ないし取締役であった被告らに対し,未払賃金が回収不能の状態に陥ったことによる損害の賠償金等の支払を求めた事案。

 

 

賃金等請求事件

【事件番号】      東京地方裁判所判決/平成21年(ワ)第35230号

【判決日付】      平成22年11月12日

【判示事項】      原告(訴外会社の元従業員)が,訴外会社の代表取締役ないし取締役であった被告らに対し,未払賃金が回収不能の状態に陥ったことによる損害の賠償金等の支払を求めた事案。

裁判所は,被告Y1が,訴外会社の代表取締役として労基法等関係法令の法的義務の違反がなければ,原告には損害は発生しなかったといえ,Y1の重過失による任務懈怠行為と原告の損害との間には相当因果関係が認められる,被告Y2及び同Y3(訴外会社の取締役)がY1の業務執行に対する監視義務を尽くしていたならば,原告は損害を被らなかったといえ,Y2,Y3の任務懈怠との相当因果関係が認められるとし,名目的取締役であって,会社の経営状態など全く認識しておらず,監視義務等を尽くすことは不可能であったなどの被告らの主張を退け,未払賃金相当の損害につき,各請求を一部認容した事例

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

 

 

会社法

(役員等の第三者に対する損害賠償責任)

第四百二十九条1項 役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。

 

(役員等の連帯責任)

第四百三十条 役員等が株式会社又は第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合において、他の役員等も当該損害を賠償する責任を負うときは、これらの者は、連帯債務者とする。

 

 

未決勾留により拘禁されている者の新聞紙、図書等の閲読の自由を監獄内の規律及び秩序維持のため制限する場合における監獄法31条2項、監獄法施行規則186条1項の各規定と憲法13条、19条、21条

 

 

損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所大法廷判決/昭和52年(オ)第927号

【判決日付】      昭和58年6月22日

【判示事項】      1、未決勾留により拘禁されている者の新聞紙、図書等の閲読の自由を監獄内の規律及び秩序維持のため制限する場合における監獄法31条2項、監獄法施行規則186条1項の各規定と憲法13条、19条、21条

             2、拘置所長が未決勾留により拘禁されている者の購読する新聞紙の記事を抹消する措置をとつたことに違法はないとされた事例

【判決要旨】      1、監獄法31条2項、監獄法施行規則86条1項の各規定は、未決勾留により拘禁されている者の新聞紙、図書等の閲読の自由を監獄内の規律及び秩序維持のため制限する場合においては、具体的事情のもとにおいて当該閲読を許すことにより右の規律及び秩序の維持上放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると認められるときに限り、右の障害発生の防止のために必要かつ合理的な範囲においてのみ閲読の自由の制限を許す旨を定めたものとして、憲法13条、19条、21条に違反しない。

             2、いわゆる公安事件関係の被拘禁者らによる拘置所内の規律及び秩序に対するかなり激しい侵害行為が当時相当頻繁に行われていたなど原判示の事情のもとにおいては、公安事件関係の被告人として未決勾留により拘禁されている者の購読する新聞紙の記事中いわゆる赤軍派学生によつて行われた航空機乗つ取り事件に関する部分について、拘置所長が原判示の期間その全部を抹消する措置をとつたことに違法があるとはいえない。

【参照条文】      監獄法31-2

             監獄法施行規則86-1

             憲法13

             憲法19

             憲法21

             国家賠償法1-1

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集37巻5号793頁

 

 

憲法

第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 

第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

 

第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

② 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

 

 

平成十七年法律第五十号

刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律

第八節 書籍等の閲覧

(自弁の書籍等の閲覧)

第六十九条 被収容者が自弁の書籍等を閲覧することは、この節及び第十二節の規定による場合のほか、これを禁止し、又は制限してはならない。

第七十条 刑事施設の長は、被収容者が自弁の書籍等を閲覧することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、その閲覧を禁止することができる。

一 刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあるとき。

二 被収容者が受刑者である場合において、その矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがあるとき。

三 被収容者が未決拘禁者である場合において、罪証の隠滅の結果を生ずるおそれがあるとき。

2 前項の規定により閲覧を禁止すべき事由の有無を確認するため自弁の書籍等の翻訳が必要であるときは、法務省令で定めるところにより、被収容者にその費用を負担させることができる。この場合において、被収容者が負担すべき費用を負担しないときは、その閲覧を禁止する。

(新聞紙に関する制限)

第七十一条 刑事施設の長は、法務省令で定めるところにより、被収容者が取得することができる新聞紙の範囲及び取得方法について、刑事施設の管理運営上必要な制限をすることができる。

(時事の報道に接する機会の付与等)

第七十二条 刑事施設の長は、被収容者に対し、日刊新聞紙の備付け、報道番組の放送その他の方法により、できる限り、主要な時事の報道に接する機会を与えるように努めなければならない。

2 刑事施設の長は、第三十九条第二項の規定による援助の措置として、刑事施設に書籍等を備え付けるものとする。この場合において、備え付けた書籍等の閲覧の方法は、刑事施設の長が定める。

 

 

救急医療を要請しなかった不作為と被害者の死の結果との間に因果関係が認められた事例

 

 

              覚せい剤取締法違反、保護者遺棄致死被告事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷決定/平成元年(あ)第551号

【判決日付】      平成元年12月15日

【判示事項】      救急医療を要請しなかった不作為と被害者の死の結果との間に因果関係が認められた事例

【判決要旨】      被告人らによって注射された覚せい剤により被害者の女性が錯乱状態に陥った時点において、直ちに被告人が救急医療を要請していれば、同女の救命が合理的な疑いを超える程度に確実であったと認められる本件事案の下では、このような措置をとらなかった被告人の不作為と同女の死亡との間には因果関係がある。

【参照条文】      刑法218-1

             刑法219

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集43巻13号879頁

 

 

刑法

(保護責任者遺棄等)

第二百十八条 老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。

(遺棄等致死傷)

第二百十九条 前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

 

自家用自動車保険契約の更新にあたり保険代理店に保険募集の取締に関する法律16条1項1号所定の告知義務の違反があつたとはいえないとされた事例

 

 

保険金請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/昭和57年(ネ)第885号

【判決日付】      昭和57年11月30日

【判示事項】      自家用自動車保険契約の更新にあたり保険代理店に保険募集の取締に関する法律16条1項1号所定の告知義務の違反があつたとはいえないとされた事例

【判決要旨】      損害保険代理店の使用人が自動車損害保険契約の締結に関し「運転者年齢二六歳未満不担保」の特約を口頭で具体的に告知しなくても、保険募集の段階において二六歳未満不担保の特約が付されることの記載がある「自動車保険ご継続のご案内」と題されたはがきを保険申込者に送付し、右特約の明記された「自動車保険更改申込書」を申込者の閲覧に供し最終的な契約内容の確認を促すなどの手続をとり、右各文書の記載によれば、特約の内容は分かり易く、文字等も単純明確であって、なんらかの誤解を与えるおそれもないなど判示の事情があるときは、保険募集を行う者につき右特約の告知義務違反があったとはいえない。

【参照条文】      保険募集取締法律11

             保険募集取締法律16-1

【掲載誌】        判例タイムズ490号152頁

             金融・商事判例671号45頁

 

 

保険業法

(情報の提供)

第二百九十四条 保険会社等若しくは外国保険会社等、これらの役員(保険募集人である者を除く。)、保険募集人又は保険仲立人若しくはその役員若しくは使用人は、保険契約の締結、保険募集又は自らが締結した若しくは保険募集を行った団体保険(団体又はその代表者を保険契約者とし、当該団体に所属する者を被保険者とする保険をいう。次条、第二百九十四条の三第一項及び第三百条第一項において同じ。)に係る保険契約に加入することを勧誘する行為その他の当該保険契約に加入させるための行為(当該団体保険に係る保険契約の保険募集を行った者以外の者が行う当該加入させるための行為を含み、当該団体保険に係る保険契約者又は当該保険契約者と内閣府令で定める特殊の関係のある者が当該加入させるための行為を行う場合であって、当該保険契約者から当該団体保険に係る保険契約に加入する者に対して必要な情報が適切に提供されることが期待できると認められるときとして内閣府令で定めるときにおける当該加入させるための行為を除く。次条及び第三百条第一項において同じ。)に関し、保険契約者等の保護に資するため、内閣府令で定めるところにより、保険契約の内容その他保険契約者等に参考となるべき情報の提供を行わなければならない。ただし、保険契約者等の保護に欠けるおそれがないものとして内閣府令で定める場合は、この限りでない。

2 前項の規定は、第三百条の二に規定する特定保険契約の締結又はその代理若しくは媒介に関しては、適用しない。

3 保険募集人は、保険募集を行おうとするときは、あらかじめ、顧客に対し次に掲げる事項を明らかにしなければならない。

一 所属保険会社等の商号、名称又は氏名

二 自己が所属保険会社等の代理人として保険契約を締結するか、又は保険契約の締結を媒介するかの別

三 その他内閣府令で定める事項

4 保険仲立人は、保険契約の締結の媒介を行おうとするときは、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した書面を顧客に交付しなければならない。

一 保険仲立人の商号、名称又は氏名及び住所

二 保険仲立人の権限に関する事項

三 保険仲立人の損害賠償に関する事項

四 その他内閣府令で定める事項

5 保険仲立人は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該顧客の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって内閣府令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該保険仲立人は、当該書面を交付したものとみなす。

 

(保険契約の締結等に関する禁止行為)

第三百条 保険会社等若しくは外国保険会社等、これらの役員(保険募集人である者を除く。)、保険募集人又は保険仲立人若しくはその役員若しくは使用人は、保険契約の締結、保険募集又は自らが締結した若しくは保険募集を行った団体保険に係る保険契約に加入することを勧誘する行為その他の当該保険契約に加入させるための行為に関して、次に掲げる行為(自らが締結した又は保険募集を行った団体保険に係る保険契約に加入することを勧誘する行為その他の当該保険契約に加入させるための行為に関しては第一号に掲げる行為(被保険者に対するものに限る。)に限り、次条に規定する特定保険契約の締結又はその代理若しくは媒介に関しては同号に規定する保険契約の契約条項のうち保険契約者又は被保険者の判断に影響を及ぼすこととなる重要な事項を告げない行為及び第九号に掲げる行為を除く。)をしてはならない。ただし、第二百九十四条第一項ただし書に規定する保険契約者等の保護に欠けるおそれがないものとして内閣府令で定める場合における第一号に規定する保険契約の契約条項のうち保険契約者又は被保険者の判断に影響を及ぼすこととなる重要な事項を告げない行為については、この限りでない。

一 保険契約者又は被保険者に対して、虚偽のことを告げ、又は保険契約の契約条項のうち保険契約者又は被保険者の判断に影響を及ぼすこととなる重要な事項を告げない行為

二 保険契約者又は被保険者が保険会社等又は外国保険会社等に対して重要な事項につき虚偽のことを告げることを勧める行為

三 保険契約者又は被保険者が保険会社等又は外国保険会社等に対して重要な事実を告げるのを妨げ、又は告げないことを勧める行為

四 保険契約者又は被保険者に対して、不利益となるべき事実を告げずに、既に成立している保険契約を消滅させて新たな保険契約の申込みをさせ、又は新たな保険契約の申込みをさせて既に成立している保険契約を消滅させる行為

五 保険契約者又は被保険者に対して、保険料の割引、割戻しその他特別の利益の提供を約し、又は提供する行為

六 保険契約者若しくは被保険者又は不特定の者に対して、一の保険契約の契約内容につき他の保険契約の契約内容と比較した事項であって誤解させるおそれのあるものを告げ、又は表示する行為

七 保険契約者若しくは被保険者又は不特定の者に対して、将来における契約者配当又は社員に対する剰余金の分配その他将来における金額が不確実な事項として内閣府令で定めるものについて、断定的判断を示し、又は確実であると誤解させるおそれのあることを告げ、若しくは表示する行為

八 保険契約者又は被保険者に対して、当該保険契約者又は被保険者に当該保険会社等又は外国保険会社等の特定関係者(第百条の三(第二百七十二条の十三第二項において準用する場合を含む。第三百一条において同じ。)に規定する特定関係者及び第百九十四条に規定する特殊関係者のうち、当該保険会社等又は外国保険会社等を子会社とする保険持株会社及び少額短期保険持株会社(以下この条及び第三百一条の二において「保険持株会社等」という。)、当該保険持株会社等の子会社(保険会社等及び外国保険会社等を除く。)並びに保険業を行う者以外の者をいう。)が特別の利益の供与を約し、又は提供していることを知りながら、当該保険契約の申込みをさせる行為

九 前各号に定めるもののほか、保険契約者等の保護に欠けるおそれがあるものとして内閣府令で定める行為

2 前項第五号の規定は、保険会社等又は外国保険会社等が第四条第二項各号、第百八十七条第三項各号又は第二百七十二条の二第二項各号に掲げる書類に基づいて行う場合には、適用しない。

 

 

 【判旨】

 控訴人は、被控訴人の損害保険代理店の使用人である訴外直四郎が、本件保険契約の締結に先立ち、控訴人に対し「運転者年齢二六歳未満不担保」の特約を告知すべき義務があるのに、これを怠り、このために控訴人は自己の利益に適合する保険契約を締結すること又は締結した保険契約の内容を事後に自己の利益に適合するものに変更することができなかつた旨主張する。

 そこで訴外直四郎につき右特約の告知義務違反があるかどうかについて次に検討を加える。

(一) 保険募集取締法一六条一項一号が代理店等保険を募集する者に対し保険契約の契約条項のうち重要な事項を告知すべき義務を課するゆえんは、主として、保険契約者の利益の保護にあるものと解される。このような立法の趣旨からすると、本件のように保険期間が一年間である保険契約を毎年更新する場合にも、保険募集を行なう者は原則としてその都度重要事項の告知を保険契約者(となるべき保険申込者)に対してなすべきであり、かつ、その告知は、相手方が実際にそれによつて当該事項の内容を改めて認識することができるような態様で行なわれなければならないものと解される。しかし、その方法としては、文書と口頭とではそれぞれ長短所があるので、専らそのいずれかによるべきものとはいえず、また、必ずしも両者を併用しなければならないものということもできない。

(二) 運転者年齢二六歳未満不担保の特約は、保険契約の内容として担保範囲を著しく縮小させるものであるから、契約の重要事項にあたり、保険募集を行なう者は募集につきこれを告知しなければならない。

(三) 前記認定の事実によれば、訴外直四郎は本件保険契約につき保険募集の段階において二六歳未満不担保の特約が付されることの記載がある「自動車保険ご継続のご案内」と題されたはがきを控訴人に送付し、次いで電話で「前年通りでいいですか、変つたことはありませんか。」と保険契約の内容全般にわたり確認を行なつた後、右特約の明記された「自動車保険更改申込書」を控訴人の閲覧に供し最終的な契約内容の確認を促すなどの手続をとつている。右口頭でなされたような保険契約の内容に関する抽象的、一般的な言及は、前に送付されたはがきないしは後で渡された申込書と一体となつて始めて特約に関する告知としての意味をもちうるにすぎないというべきであるから、右各文書による告知の明確性、実質性がさらに究明される必要があるところ、〈証拠〉によれば、右はがきの下方の「おすすめの保険料は次の条件で計算しています。」という欄の中の年齢条件欄には「26才未満不担保」と記載があつてその下にタイプにより当該条件によることを示す○印が打刻されていたと認められ、この記載によれば、特約の内容は分り易く、文字等も単純明確であつて、不明瞭な点はなく、なんらかの誤解を与える危険もない。また、〈証拠〉によれば、右自動車保険更改申込書には中央に近い部分に「特約」欄があり、「26才以上担保」の文章の箇所に右同様のタイプによる○印が打刻されてあることが認められ、この記載も同様に単純明確であつて、書面全体の様式から見ても誤解を与える虞れはない。したがつて、文書による右特約の告知は実質的にみても正当な表現、方法によつてなされているものと認められる(なお、〈証拠〉によれば、被控訴人が控訴人に送付した保険証券及び自動車保険ご契約カードにはそれぞれ運転者の年齢条件の記載があることが認められ、また、〈証拠〉によれば、右保険証券と共に送付された「自家用自動車保険普通保険約款および特約条項」と題する小冊子には、右二六歳末満不担保の特約につき大きな文字と見易い文章による説明と注意書きが印刷されていること(同冊子一頁)が認められる。これらは、契約締結後の送付文書であるから、契約締結に対する関係では告知義務の履行としての意味をもつものということはできないが、控訴人主張の契約変更に関する法的利益に対する関係では告知義務の履行たる意味を有するものということができる。)。

(四) 右のような本件保険契約締結の前後の経緯と、前記のように右契約締結当時訴外直四郎が本件自動車を将来運転する者が控訴人でなく三澤一雄であるとの明確な認識を有しなかつた事実とに照らすと、訴外直四郎が前記特約につき更に口頭で具体的に告知しなくても、同人に告知義務違反があつたということはできない。したがつて、右義務違反のあることを前提とする本訴予備的請求も理由がない。

 (倉田卓次 下郡山信夫 加茂紀久男)

 

 

 

【判例番号】      L03720676

             保険金請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/昭和57年(ネ)第885号

【判決日付】      昭和57年11月30日

【出  典】       金融・商事判例671号45頁

 

一、本判決は、第一審判決を大部分引用しているので事案の内容が明らかではないが、推察するところ、自動車損害保険契約を締結したX(原告・控訴人)が保険会社Y(被告・被控訴人)に対し保険金の請求をしたところ、保険会社は「運転者年齢二六歳未満不担保」の特約の適用を主張し、契約者は右特約の効力を争った事案のようである。

二、本件の争点は、保険代理店の使用人が右特約の告知義務違反を行ったかどうかの点にある。ところで、保険募集の取締に関する法律一六条一項一号によれば、損害保険会社の使用人等は、保険契約の締結又は募集に関しては、保険契約者に対して保険契約の契約条項のうち重要な事項を告知すべき義務を課している。これはもちろん、保険契約者の利益の保護を目的として設けられた規定であるから、本件のような特約については、保険契約の内容としての担保範囲を著しく縮小させるものであるから、当然に告知すべき重要な事項といってよかろう。

 この告知の方法はもちろん文書でも差支えないのであるが、口頭で明言する場合ならともかく、文書での告知となるととかく形式的に流れ易く明確性に欠けるうらみが生じ問題を生じ易い。本件においては、「自動車保険ご継続のご案内」と題するはがき、「自動車保険更改申込書」と題する書面中の記載によって告知されたが、本判決は、その記載の方法、内容等についてこれを具体的にとりあげ、文書による本件特約の告知は、実質的にみても正当な表現、方法によってなされているものと認められるとして、有効な告知がされたものと判断している。

三、周知のように保険契約の締結にあたっては、保険契約者は保険者に対して告知義務を負うものとされている(損害保険につき商法六四四条、生命保険につき同法六七八条)。この告知義務制度の根拠についてはいろいろの角度から論ぜられてはいるが、つまるところは、保険契約の特質から要請される契約当事者間の衡平の原則を根拠とするものと解されよう(大森・保険法一一八頁)。そうだとすれば、このような告知義務は保険契約者側にのみ課せられるいわれはなく保険者側にも同様な義務を負わせて当然であろう。保険募集の取締に関する法律一六条は、保険者に対し告知義務を負わせた規定である。尤も、同法に違反してした契約であっても、罰則(同法二二条)の適用を受けることは格別、私法上当然に無効となるものではない、との見解もある(大森・前掲書三三一頁。なお、大森教授は右規定を保険者側の告知義務を定めたものとは解しておられないようである。同書一二一頁)。しかし、強行法規違反の行為となるから無効原因ないしは解除事由として構成する余地もあろうかと思われる。

 本判決は有効な告知があったとされたものであるから、右の問題点については触れられるに至らなかった。有効な告知方法の一事例を示したものとして興味のある判決である。

 

甲府市・山梨県(私立学校教諭)事件・パワハラ

 

 

損害賠償請求事件

【事件番号】      甲府地方裁判所判決/平成27年(ワ)第227号

【判決日付】      平成30年11月13日

【判示事項】      1 パワハラの定義に該当する行為があっても,それが直ちに不法行為に該当するものではないと解され,それがいかなる場合に不法行為としての違法性を帯びるかについては,当該行為が業務上の指導等として社会通念上許容される範囲を超えていたか,相手方の人格の尊厳を否定するようなものであったか等を考慮して判断するのが相当であるとされた例

             2 C校長が,犬咬み事故に関して本件児童の父および祖父と面談した際,事故の被害者である原告Xに何ら理由のない謝罪を強いた行為は,Xに対し,職務上の優越性を背景とし,職務上の指導等として社会通念上許容される範囲を明らかに逸脱したものであり,Xの自尊心を傷つけ,多大な精神的苦痛を与えたものといわざるを得ないとされた例

             3 C校長が,うつ病罹患に関する災害状況報告書を作成せずに保留状態にしたことは,本来であれば,Xの公務災害認定請求に協力すべき立場にあるにもかかわらず,正当な理由なく,Xがその請求をするのに必要な災害状況報告書を作成しなかったものであるから,Xの公務災害認定請求をする権利を侵害するものと評価することができるとされた例

             4 C校長が,Xと本件児童の父が口頭でXが損害賠償請求権を放棄する旨の示談をしたといえるかが明確ではないにもかかわらず,Xの了承を得ることなく,Xが上記請求権を放棄した旨の書面を作成して基金支部長宛に提出した行為は,過失によって,Xが補償を受ける権利を侵害するものというべきであるとされた例

             5 Xにはうつ病に親和的な性格があり,平成24年4月以降,担任している6年生のクラスへの対応に追われたことなどから軽度のうつ状態となったが,その後症状は徐々に軽快し,2学期以降通常どおり勤務することが見込まれていたところ,同年8月29日のC校長の不法行為によって急激に症状が増悪してうつ病を発症し,その後のC校長の不法行為も影響して症状が悪化したものと認められるから,C校長の不法行為とXのうつ病罹患との間に相当因果関係があるとされた例

             6 被告Y1市が設置するA1小の校長であるC校長が,その職務を行うについて故意または過失によって違法にXに損害を加えたと認められるから,Y1市はXに対し国家賠償法1条に基づく損害賠償責任を負い,C校長は被告Y2県が給与を負担している県費負担教職員であるから,Y2県は,同法3条1項に基づき,Y1市とともに損害賠償責任を負うとされた例

【掲載誌】        労働判例1202号95頁

             LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      労働基準844号24頁

             季刊公務員関係最新判決と実務問答24号2頁

 

 

民法

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(財産以外の損害の賠償)

第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

 

 

労働契約法

(労働者の安全への配慮)

第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

 

 

 

       主   文

 

 1 被告らは,原告に対し,連帯して295万9251円及びうち268万9251円に対する平成24年8月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。

 3 訴訟費用は,これを5分し,その2を原告の負担とし,その余を被告らの負担とする。

 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

 

       事実及び理由

 

第1 請求

   被告らは,原告に対し,連帯して517万2183円及びうち470万1985円に対する平成24年4月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

 1 事案の要旨

   本件は,小学校教諭である原告が,平成24年度に勤務していた甲府市立□□小学校(以下「□□小」という。)のA校長(以下「A校長」という。)からパワー・ハラスメント(以下「パワハラ」という。)を受けてうつ病に罹患し,休業し,精神的苦痛を受けたなどと主張して,被告甲府市に対しては国家賠償法1条1項に基づき,被告山梨県に対しては同法3条1項に基づき,損害額合計517万2183円及びそのうちの弁護士費用を除いた470万1985円に対するA校長のパワハラが始まった日である平成24年4月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。

 2 前提事実(争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)

  (1) 当事者等

   ア 原告(昭和35年○月○○日生)は,昭和58年4月1日に山梨県公立小学校の教諭に採用され,平成23年4月1日に□□小に赴任し,平成24年4月1日から6学年の学級担任を務めていた者である。

   イ A校長は,平成24年4月1日に校長として採用され,□□小に赴任し,平成26年3月まで同校の校長であった者である。

無権代理人が本人を共同相続した場合における無権代理行為の効力

 

 

貸金請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和63年(オ)第1733号

【判決日付】      平成5年1月21日

【判示事項】      無権代理人が本人を共同相続した場合における無権代理行為の効力

【判決要旨】      無権代理人が本人を共同相続した場合においては、共同相続人全員が共同して無権代理行為を追認しない限り、無権代理行為が有効となるものではない。

             (反対意見がある。)

【参照条文】      民法113

             民法117

             民法896

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集47巻1号265頁

 

 

民法

(無権代理)

第百十三条 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。

2 追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。

 

(無権代理人の責任)

第百十七条 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。

2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。

一 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。

二 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。

三 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。

 

第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

 

 

健康保険組合が被保険者に対して行うその親族等が被扶養者に該当しない旨の通知は、健康保険法(平成26年改正前)189条1項所定の被保険者の資格に関する処分に該当する

 

 

              処分取消等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/令和3年(行ヒ)第120号

【判決日付】      令和4年12月13日

【判示事項】      健康保険組合が被保険者に対して行うその親族等が被扶養者に該当しない旨の通知は、健康保険法(平成26年法律第69号による改正前のもの)189条1項所定の被保険者の資格に関する処分に該当する

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

 

 

健康保険法

(審査請求及び再審査請求)

第百八十九条 被保険者の資格、標準報酬又は保険給付に関する処分に不服がある者は、社会保険審査官に対して審査請求をし、その決定に不服がある者は、社会保険審査会に対して再審査請求をすることができる。

2 審査請求をした日から二月以内に決定がないときは、審査請求人は、社会保険審査官が審査請求を棄却したものとみなすことができる。

3 第一項の審査請求及び再審査請求は、時効の完成猶予及び更新に関しては、裁判上の請求とみなす。

4 被保険者の資格又は標準報酬に関する処分が確定したときは、その処分についての不服を当該処分に基づく保険給付に関する処分についての不服の理由とすることができない。

第百九十条 保険料等の賦課若しくは徴収の処分又は第百八十条の規定による処分に不服がある者は、社会保険審査会に対して審査請求をすることができる。

 

 

行政事件訴訟法

(抗告訴訟)

第三条 この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。

2 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。

 

(処分の取消しの訴えと審査請求との関係)

第八条 処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。ただし、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、この限りでない。

2 前項ただし書の場合においても、次の各号の一に該当するときは、裁決を経ないで、処分の取消しの訴えを提起することができる。

一 審査請求があつた日から三箇月を経過しても裁決がないとき。

二 処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき。

三 その他裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき。

3 第一項本文の場合において、当該処分につき審査請求がされているときは、裁判所は、その審査請求に対する裁決があるまで(審査請求があつた日から三箇月を経過しても裁決がないときは、その期間を経過するまで)、訴訟手続を中止することができる。

 

鑑定のために必要な処分としてされた死体の解剖の写真に係る情報が記録された電磁的記録媒体が民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当するとされた事例

 

 

              文書提出命令等に対する許可抗告事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷決定/令和元年(許)第11号

【判決日付】      令和2年3月24日

【判示事項】      鑑定のために必要な処分としてされた死体の解剖の写真に係る情報が記録された電磁的記録媒体が民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当するとされた事例

【判決要旨】      文書提出命令の申立人の父の死体について司法警察職員から鑑定の嘱託を受けた者が当該鑑定のために必要な処分として裁判官の許可を受けてした当該死体の解剖の写真に係る情報が記録された電磁的記録媒体であって当該司法警察職員が所属する地方公共団体が所持するものは,当該地方公共団体と当該申立人との間において,民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当する。

【参照条文】      民事訴訟法220

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集74巻3号455頁

 

 

民事訴訟法

(文書提出義務)

第二百二十条 次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない。

一 当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき。

二 挙証者が文書の所持者に対しその引渡し又は閲覧を求めることができるとき。

三 文書が挙証者の利益のために作成され、又は挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき。

四 前三号に掲げる場合のほか、文書が次に掲げるもののいずれにも該当しないとき。

イ 文書の所持者又は文書の所持者と第百九十六条各号に掲げる関係を有する者についての同条に規定する事項が記載されている文書

ロ 公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの

ハ 第百九十七条第一項第二号に規定する事実又は同項第三号に規定する事項で、黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書

ニ 専ら文書の所持者の利用に供するための文書(国又は地方公共団体が所持する文書にあっては、公務員が組織的に用いるものを除く。)

ホ 刑事事件に係る訴訟に関する書類若しくは少年の保護事件の記録又はこれらの事件において押収されている文書

関係者の明確な承諾を得ないでなされた中間省略登記の効力

 

 

登記抹消等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷/昭和44年(オ)第1091号

【判決日付】      昭和46年4月8日

【判示事項】      関係者の明確な承諾を得ないでなされた中間省略登記の効力

【判決要旨】      不動産の所有権が順次甲乙丙と譲渡された場合において、甲が乙に対し所有権移転登記をする意思でそれに必要な印鑑、書類等を交付して事後処理一切を委ねていたときは、甲から他への移転登記はなされるにつき甲に全く登記申請の意思がなかったというをえないから、丙が右印鑑等を利用して甲から丙に直接所有権移転登記をすれば該登記は無効とはいえない。

【参照条文】      民法177

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事102号415頁

             判例時報631号50頁

             金融法務事情614号28頁

 

民法

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)

第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。