法律大好きのブログ(弁護士村田英幸) -189ページ目

法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

刑法218条の不保護による保護責任者遺棄罪の実行行為の意義

 

 

保護責任者遺棄致死(予備的訴因重過失致死)被告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/平成28年(あ)第1549号

【判決日付】      平成30年3月19日

【判示事項】      1 刑法218条の不保護による保護責任者遺棄罪の実行行為の意義

             2 子に対する保護責任者遺棄致死被告事件について,被告人の故意を認めず無罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

             3 裁判員の参加する合議体で審理された保護責任者遺棄致死被告事件について,訴因変更を命じ又はこれを積極的に促すべき義務がないとされた事例

【判決要旨】      1 刑法218条の不保護による保護責任者遺棄罪の実行行為は,老年者,幼年者,身体障害者又は病者につきその生存のために特定の保護行為を必要とする状況(要保護状況)が存在することを前提として,その者の生存に必要な保護行為として行うことが刑法上期待される特定の行為をしなかったことを意味する。

             2 低栄養に基づく衰弱により死亡した被告人の子(当時3歳)に対する保護責任者遺棄致死被告事件について,被告人において,乳児重症型先天性ミオパチーにり患している等の子の特性に鑑みると,子が一定の保護行為を必要とする状態にあることを認識していたとするには合理的疑いがあるとして被告人を無罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決は,第1審判決の評価が不合理であるとする説得的な論拠を示しているとはいい難く,第1審判決とは別の見方もあり得ることを示したにとどまっていて,第1審判決が論理則,経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず(判文参照),刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があり,同法411条1号により破棄を免れない。

             3 保護責任者遺棄致死罪として起訴されて公判前整理手続に付され,検察官が,公判前整理手続期日において,公判審理の進行によっては過失致死罪又は重過失致死罪の訴因を追加する可能性があると釈明をするなどした後,裁判員の参加する合議体により審理が行われ,第1審裁判所の裁判長が,証拠調べ終了後の公判期日において,検察官に対して訴因変更の予定の有無につき釈明を求めたところ,検察官がその予定はない旨答えたなどの訴訟経緯,本件事案の性質・内容等(判文参照)に照らすと,第1審裁判所としては,検察官に対して,上記のような求釈明によって事実上訴因変更を促したことによりその訴訟法上の義務を尽くしたものというべきであり,更に進んで,検察官に対し,訴因変更を命じ又はこれを積極的に促すべき義務を有するものではない。

【参照条文】      刑法218

             刑法219

             刑事訴訟法382

             刑事訴訟法411

             刑事訴訟法312

             刑事訴訟規則208

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集72巻1号1頁

 

 

刑法

(保護責任者遺棄等)

第二百十八条 老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。

(遺棄等致死傷)

第二百十九条 前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

 

 

刑事訴訟法

第三百十二条 裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因又は罰条の追加、撤回又は変更を許さなければならない。

② 裁判所は、審理の経過に鑑み適当と認めるときは、訴因又は罰条を追加又は変更すべきことを命ずることができる。

③ 裁判所は、訴因又は罰条の追加、撤回又は変更があつたときは、速やかに追加、撤回又は変更された部分を被告人に通知しなければならない。

④ 裁判所は、訴因又は罰条の追加又は変更により被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞があると認めるときは、被告人又は弁護人の請求により、決定で、被告人に充分な防禦の準備をさせるため必要な期間公判手続を停止しなければならない。

 

第三百八十二条 事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつて明らかに判決に影響を及ぼすべき誤認があることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。

 

第四百十一条 上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる。

一 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。

二 刑の量定が甚しく不当であること。

三 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。

四 再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。

五 判決があつた後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があつたこと。

 

 

 

       主   文

 

 原判決を破棄する。

 本件控訴を棄却する。

 

       理   由

 

 第1 上告趣意に対する判断

 弁護人大橋君平の上告趣意は,判例違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。

 第2 職権判断

 所論に鑑み職権をもって調査すると,原判決は,刑訴法411条1号により破棄を免れない。その理由は,以下のとおりである。

 1 本件公訴事実の要旨及び本件審理の概要

 本件公訴事実(訴因変更後のもの)の要旨は,「被告人は,A(平成22年生)の実母であり,平成25年4月15日に婚姻し,同月24日にAと養子縁組をした夫と共に親権者として自宅でAを監護していたものであるが,夫と共謀の上,平成26年4月頃,自宅等において,幼年者であり,かつ,先天性ミオパチーにより発育が遅れていたAに十分な栄養を与えるとともに,適切な医療措置を受けさせるなどして生存に必要な保護をする責任があったにもかかわらず,その頃までに栄養不良状態に陥っていたAに対して,同年6月中旬頃までの間,十分な栄養を与えることも,適切な医療措置を受けさせるなどのこともせず,もってその生存に必要な保護をせず,よって,同月15日,自宅において,Aを低栄養に基づく衰弱により死亡させた」というものである。

 第1審の公判前整理手続において,争点は,①Aが十分な栄養を与えられなかったために低栄養に基づく衰弱により死亡したものであるか,②被告人において,Aが十分な栄養を与えられていない状態,すなわち,Aが生存に必要な保護として,より栄養を与えられるなどの保護を必要とする状態にあることを認識していたか,とされた。

 第1審判決は,争点①につき,Aが低栄養に基づく衰弱により死亡したことを認定した上で,争点②につき,被告人において,Aが生存に必要な保護として,より栄養を与えられるなどの保護を必要とする状態にあることを認識していたというには合理的な疑いが残るとして,無罪を言い渡した。

 これに対し,検察官が控訴し,争点②に関して事実誤認があると主張するとともに,第1審裁判所が検察官に対し重過失致死罪に訴因を変更するよう促し,又はこれを命じることなく無罪判決を言い渡した点で訴訟手続の法令違反があると主張した。原判決は,被告人において,争点②に係る認識があったと認定でき,第1審判決には事実誤認があるとして,訴訟手続の法令違反の点について判断することなく,これを破棄し,本件を大阪地方裁判所に差し戻した。

マンション管理組合が組合員である区分所有者に対して有する管理費及び特別修繕費に係る債権が民法169条所定の債権に当たるとされた事例

 

 

管理費等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/平成14年(受)第248号

【判決日付】      平成16年4月23日

【判示事項】      マンション管理組合が組合員である区分所有者に対して有する管理費及び特別修繕費に係る債権が民法169条所定の債権に当たるとされた事例

【判決要旨】      マンション管理組合が組合員である区分所有者に対して有する管理費及び特別修繕費に係る債権が,管理規約の規定に基づいて,区分所有者に対して発生するものであり,その具体的な額は総合の決議によって確定し,月ごとに支払われるものであるときは,当該債権は民法169条所定(消滅時効5年)の債権に当たる。

             (補足意見がある。)

【参照条文】      民法169

             建物の区分所有等に関する法律19

             建物の区分所有等に関する法律30-1

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集58巻4号959頁

 

 

建物の区分所有等に関する法律

(共用部分の負担及び利益収取)

第十九条 各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。

 

(規約事項)

第三十条 建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。

2 一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。

3 前二項に規定する規約は、専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設(建物の敷地又は附属施設に関する権利を含む。)につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払つた対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない。

4 第一項及び第二項の場合には、区分所有者以外の者の権利を害することができない。

5 規約は、書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)により、これを作成しなければならない。

 

 

裁判所法52条1号にいう「積極的に政治運動をすること」の意義


    裁判官分限事件に対する決定に対する抗告事件
【事件番号】    最高裁判所大法廷決定/平成10年(分ク)第1号
【判決日付】    平成10年12月1日
【判示事項】    1 裁判所法52条1号にいう「積極的に政治運動をすること」の意義
          2 裁判官が積極的に政治運動をすることを禁止する裁判所法52条1号と憲法21条1項
          3 裁判官が積極的に政治運動をしたとされた事例
          4 裁判官が積極的に政治運動をしたことがその職務上の義務に違反するとして当該裁判官に対し戒告がされた事例
          5 裁判官分限事件への憲法82条1項の適用の有無
          6 民事訴訟又は非訟の手続において期日に立ち会う代理人の数を制限することの可否
【判決要旨】    1 裁判所法52条1号にいう「積極的に政治運動をすること」とは、組織的、計画的又は継続的な政治上の活動を能動的に行う行為であって裁判官の独立及び中立・公正を害するおそれがあるものをいい、具体的行為の該当性を判断するに当たっては、行為の内容、行為の行われるに至った経緯、行われた場所等の客観的な事情のほか、行為をした裁判官の意図等の主観的な事情をも総合的に考慮して決するのが相当である。
          2 裁判官が積極的に政治運動をすることを禁止する裁判所法52条1号の規定は、憲法21条1項に違反しない。
          3 裁判官が、その取扱いが政治的問題となっていた法案を廃案に追い込もうとする党派的な運動の一環として開かれた集会において、会場の一般参加者席から、裁判官であることを明らかにした上で、「当初、この集会において、盗聴法と令状主義というテーマのシンポジウムにパネリストとして参加する予定であったが、事前に所長から集会に参加すれば懲戒処分もあり得るとの警告を受けたことから、パネリストとしての参加は取りやめた。自分としては、仮に法案に反対の立場で発言しても、裁判所法に定める積極的な政治運動に当たるとは考えないが、パネリストとしての発言は辞退する。」との趣旨の発言をした行為は、判示の事実関係の下においては、右集会の参加者に対し、右法案が裁判官の立場からみて令状主義に照らして問題のあるものであり、その廃案を求めることは正当であるという同人の意見を伝えるものというべきであり、右集会の開催を決定し右法案を廃案に追い込むことを目的として共同して行動している諸団体の組織的、計画的、継続的な反対運動を拡大、発展させ、右目的を達成させることを積極的に支援しこれを推進するものであって、裁判所法52条1号が禁止している「積極的に政治運動をすること」に該当する。
          4 裁判官が積極的に政治運動をしたことは、裁判所法49条所定の懲戒事由である職務上の義務違反に該当し、当該行為の内容、その後の態度等判示の事情にかんがみれば、当該裁判官を戒告することが相当である。
          5 裁判官分限事件には、憲法82条1項は適用されない。
          6 民事訴訟又は非訟の手続を主宰する裁判所は、その手続を円滑に進行させるために与えられた指揮権に基づいて、期日を開く場所の収容能力、当該期日に予定されている手続の内容、裁判所の法廷警察権ないし指揮権行使の難易等を考慮して、必要かつ相当な場合には、期日に立ち会う代理人の数を合理的と認められる限度にまで制限することができる。
          (1、3ないし5につき反対意見がある。)
【参照条文】    裁判所法52
          憲法21-1
          裁判所法49
          裁判官分限法2
          憲法82-1
          裁判官の分限事件手続規則7
          民事訴訟法55
          民事訴訟法148
          非訟事件手続法6
          非訟事件手続法13
          刑事訴訟法35
          刑事訴訟規則26
          刑事訴訟規則27
【掲載誌】     最高裁判所民事判例集52巻9号1761頁


憲法
第二十一条1項 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

第八十二条 裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
② 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。


裁判所法」
第四十九条(懲戒) 裁判官は、職務上の義務に違反し、若しくは職務を怠り、又は品位を辱める行状があつたときは、別に法律で定めるところにより裁判によつて懲戒される。

第五十二条(政治運動等の禁止) 裁判官は、在任中、左の行為をすることができない。
一 国会若しくは地方公共団体の議会の議員となり、又は積極的に政治運動をすること。
二 最高裁判所の許可のある場合を除いて、報酬のある他の職務に従事すること。
三 商業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行うこと。


裁判官の分限事件手続規則
第七条 特別の定めのある場合を除いて、分限事件に関しては、その性質に反しない限り、非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)第二編及び非訟事件手続規則(平
成二十四年最高裁判所規則第七号)の規定を準用する。ただし、同法第四十条の規
定は、この限りでない。


 

暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(以下「暴対法」)3条に基づき指定暴力団として指定されている原告が,特定危険指定暴力団等として指定する処分(本件処分・同法30条の8第1項)及び特定危険指定暴力団等の指定の期限を延長する処分1,2(暴対法30条の8第2項)の取消などを求めた事案。

 

 

特定危険指定暴力団指定処分取消請求事件

【事件番号】      福岡地方裁判所判決/平成25年(行ウ)第4号

【判決日付】      平成27年7月15日

【判示事項】      暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(以下「暴対法」)3条に基づき指定暴力団として指定されている原告が,特定危険指定暴力団等として指定する処分(本件処分・同法30条の8第1項)及び特定危険指定暴力団等の指定の期限を延長する処分1,2(暴対法30条の8第2項)の取消などを求めた事案。

本案前の争点は,本件無効確認請求の訴え及び本件延長処分1の取消請求の訴えの利益の有無。

本案の争点は,①本件処分の無効事由の有無,②暴対法及び本件処分等の合憲性,③本件処分の適法性,④暴対法30条の8第2項の合憲性,⑤本件延長処分1,2の適法性。裁判所は,本案前の争点について,いずれも訴えの利益を欠くとして却下し,本案の争点①については有効,②④については憲法13条,14条1項,21条1項,31条等には反しないとし,③⑤についてはいずれも適法であるとして原告の請求を全部棄却した事例

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

 

 

憲法

第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

② 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。

③ 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

 

第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

② 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

 

第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

 

 

暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律

(指定)
第三条 都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)は、暴力団が次の各号のいずれにも該当すると認めるときは、当該暴力団を、その暴力団員が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれが大きい暴力団として指定するものとする。
一 名目上の目的のいかんを問わず、当該暴力団の暴力団員が当該暴力団の威力を利用して生計の維持、財産の形成又は事業の遂行のための資金を得ることができるようにするため、当該暴力団の威力をその暴力団員に利用させ、又は当該暴力団の威力をその暴力団員が利用することを容認することを実質上の目的とするものと認められること。
二 国家公安委員会規則で定めるところにより算定した当該暴力団の幹部(主要な暴力団員として国家公安委員会規則で定める要件に該当する者をいう。)である暴力団員の人数のうちに占める犯罪経歴保有者(次のいずれかに該当する者をいう。以下この条において同じ。)の人数の比率又は当該暴力団の全暴力団員の人数のうちに占める犯罪経歴保有者の人数の比率が、暴力団以外の集団一般におけるその集団の人数のうちに占める犯罪経歴保有者の人数の比率を超えることが確実であるものとして政令で定める集団の人数の区分ごとに政令で定める比率(当該区分ごとに国民の中から任意に抽出したそれぞれの人数の集団において、その集団の人数のうちに占める犯罪経歴保有者の人数の比率が当該政令で定める比率以上となる確率が十万分の一以下となるものに限る。)を超えるものであること。
イ 暴力的不法行為等又は第八章(第五十条(第二号に係る部分に限る。)及び第五十二条を除く。以下この条及び第十二条の五第二項第二号において同じ。)に規定する罪に当たる違法な行為を行い禁錮以上の刑に処せられた者であって、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して十年を経過しないもの
ロ 暴力的不法行為等又は第八章に規定する罪に当たる違法な行為を行い罰金以下の刑に処せられた者であって、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して五年を経過しないもの
ハ 暴力的不法行為等又は第八章に規定する罪に当たる違法な行為を行い禁錮以上の刑の言渡し及びその刑の全部の執行猶予の言渡しを受け、当該執行猶予の言渡しを取り消されることなく当該執行猶予の期間を経過した者であって、当該刑に係る裁判が確定した日から起算して十年を経過しないもの
ニ 暴力的不法行為等又は第八章に規定する罪に当たる違法な行為を行い罰金の刑の言渡し及びその刑の執行猶予の言渡しを受け、当該執行猶予の言渡しを取り消されることなく当該執行猶予の期間を経過した者であって、当該刑に係る裁判が確定した日から起算して五年を経過しないもの
ホ 暴力的不法行為等又は第八章に規定する罪に当たる違法な行為を行い禁錮以上の刑に係る有罪の言渡しを受け、当該言渡しに係る罪について恩赦法(昭和二十二年法律第二十号)第二条の大赦又は同法第四条の特赦を受けた者であって、当該大赦又は特赦のあった日(当該日において当該言渡しに係る刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなっている場合にあっては、当該執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日)から起算して十年を経過しないもの
ヘ 暴力的不法行為等又は第八章に規定する罪に当たる違法な行為を行い罰金以下の刑に係る有罪の言渡しを受け、当該言渡しに係る罪について恩赦法第二条の大赦又は同法第四条の特赦を受けた者であって、当該大赦又は特赦のあった日(当該日において当該言渡しに係る刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなっている場合にあっては、当該執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日)から起算して五年を経過しないもの
三 当該暴力団を代表する者又はその運営を支配する地位にある者(以下「代表者等」という。)の統制の下に階層的に構成されている団体であること。

 

 

(特定危険指定暴力団等の指定)

第三十条の八 公安委員会は、次の各号のいずれかに掲げる行為が行われた場合において、指定暴力団員又はその要求若しくは依頼を受けた者が当該行為に関連して凶器を使用して人の生命又は身体に重大な危害を加える方法による暴力行為を行ったと認められ、かつ、当該指定暴力団員の所属する指定暴力団等の指定暴力団員又はその要求若しくは依頼を受けた者が更に反復して同様の暴力行為を行うおそれがあると認めるときは、一年を超えない範囲内の期間及び当該暴力行為により人の生命又は身体に重大な危害が加えられることを防止するため特に警戒を要する区域(以下この章において「警戒区域」という。)を定めて、当該指定暴力団等を特定危険指定暴力団等として指定するものとする。

一 当該指定暴力団等の指定暴力団員がした暴力的要求行為又は当該指定暴力団等の指定暴力団員がした第十二条の三の規定に違反する行為に係る準暴力的要求行為であって、その相手方が拒絶したもの

二 当該指定暴力団等の指定暴力団員がした第三十条の二の規定に違反する行為

2 公安委員会は、前項の規定による指定をした場合において、当該指定の有効期間が経過した後において更にその指定の必要があると認めるときは、一年を超えない範囲内で期間を定めて、その指定の期限を延長することができる。当該延長に係る期限が経過した後において、これを更に延長しようとするときも、同様とする。

3 公安委員会は、必要があると認めるときは、警戒区域を変更することができる。

4 第五条及び第七条の規定は、第一項の規定による指定について準用する。この場合において、第五条第一項ただし書中「個人の秘密」とあるのは「第三十条の八第一項各号に掲げる行為又は同項の暴力行為の相手方に係る個人の秘密又は事業上の秘密」と、第七条第一項中「その他の」とあるのは「、第三十条の八第一項に規定する警戒区域その他の」と、同条第四項中「事項」とあるのは「事項(第三十条の八第一項に規定する警戒区域を除く。)」と読み替えるものとする。

5 第五条の規定は第三項の規定による警戒区域の変更(当該変更により新たな区域が当該警戒区域に含まれることとなるものに限る。)について、第七条第一項から第三項までの規定は第三項の規定による警戒区域の変更について、それぞれ準用する。この場合において、第五条第一項ただし書中「個人の秘密」とあるのは「第三十条の八第一項各号に掲げる行為又は同項の暴力行為の相手方に係る個人の秘密又は事業上の秘密」と、第七条第一項中「その他の」とあるのは「、第三十条の八第一項に規定する警戒区域その他の」と読み替えるものとする。

6 第一項の規定により特定危険指定暴力団等として指定された指定暴力団連合が第三条の規定により指定暴力団として指定された場合において、当該指定暴力団連合に係る第四条の規定による指定が第八条第三項の規定により取り消されたときは、第一項の規定により当該指定暴力団連合について公安委員会がした指定は、同項の規定により当該指定暴力団について当該公安委員会がした指定とみなす。

7 第一項の規定により特定危険指定暴力団等として指定された指定暴力団等に係る第三条又は第四条の規定による指定(以下この項において「旧指定」という。)の有効期間が経過した場合において、当該指定暴力団等について引き続き第三条又は第四条の規定による指定(以下この項において「新指定」という。)がされたときは、第一項の規定により旧指定に係る指定暴力団等について公安委員会がした指定は、新指定に係る指定暴力団等について引き続きその効力を有する。

 

 

 

 

HIV厚生薬務局生物製剤課長事件

 

 

業務上過失致死被告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷決定/平成17年(あ)第947号

【判決日付】      平成20年3月3日

【判示事項】      HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に汚染された非加熱血液製剤を投与された患者がエイズ(後天性免疫不全症候群)を発症して死亡した薬害事件について,厚生省薬務局生物製剤課長であった者に業務上過失致死罪の成立が認められた事例

【判決要旨】      HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に汚染された非加熱血液製剤を投与された患者がエイズ(後天性免疫不全症候群)を発症して死亡した薬害事件について,当時広範に使用されていた非加熱血液製剤中にはHIVに汚染されていたものが相当量含まれており,これを使用した場合,HIVに感染して有効な治療法のないエイズを発症する者が出現し,多数の者が高度のがい然性をもって死に至ることがほぼ必然的なものとして予測されたなどの判示の状況があった。このような状況の下では,薬務行政上のみならず,刑事法上も,同製剤の製造,使用や安全確保に係る薬務行政を担当する者には,社会生活上,薬品による危害発生の防止の業務に従事する者としての注意義務が生じ,厚生省薬務局生物製剤課長であった被告人は,同省における同製剤に係るエイズ対策に関して中心的な立場にあり,厚生大臣を補佐して薬品による危害防止という薬務行政を一体的に遂行すべき立場にあったから,必要に応じて他の部局等と協議して所要の措置を採ることを促すことを含め,薬務行政上必要かつ十分な対応を図るべき義務があったもので,これを怠って同製剤の販売・投与等を漫然放任した被告人には業務上過失致死罪が成立する。

【参照条文】      刑法(平3法31号改正前)211

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集62巻4号567頁

 

 

刑法

(業務上過失致死傷等)

第二百十一条 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

群中バス事件・一般乗合旅客自動車運送事業の免許に関し運輸審議会の公聴会が開催された場合における陸運局長の聴聞手続の瑕疵と運輸大臣の処分の適法性

 

 

一般乗合旅客自動車運送事業の免許申請却下処分取消請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和42年(行ツ)第84号

【判決日付】      昭和50年5月29日

【判示事項】      一、一般乗合旅客自動車運送事業の免許に関し運輸審議会の公聴会が開催された場合における陸運局長の聴聞手続の瑕疵と運輸大臣の処分の適法性

           二、諮問を経て行政処分がされるべき場合における当該諮問機関の審理、決定(答申)の過程の違法と右行政処分の適法性

             三、一般乗合旅客自動車運送事業の免許に関する運輸審議会の公聴会における審理手続

             四、一般乗合旅客自動車運送事業の免許に関し諮問を受けた運輸審議会の公聴会における審理手続の瑕疵が右諮問を経てされた運輸大臣の免許の拒否処分の取消事由にならないとされた事例

【判決要旨】      一、一般乗合旅客自動車運送事業の免許に関し運輸審議会の公聴会が開催された場合には、陸運局長の聴聞手続の瑕疵は、免許の許否に関する運輸大臣の処分の適法性に影響を与えない。

             二、諮問の経由を必要とする行政処分が諮問を経てされた場合においても、当該諮問機関の審理、決定(答申)の過程に重大な法規違反があることなどによりその決定(答申)自体に法が右諮問機関に対する諮問を経ることを要求した趣旨に反すると認められるような瑕疵があるときは、右行政処分は、違法として取消を免れない。

             三、一般乗合旅客自動車運送事業の免許に関する運輸審議会の公聴会における審理手続は、運輸審議会の客観性のある適正かつ公正な決定(答申)の保障のために公聴会審理を要求する法の趣旨に従い、申請者その他の利害関係人に対し決定(答申)の基礎となる諸事項に関する諸般の証拠その他の資料と意見を十分に提出してこれを運輸審議会の決定(答申)に反映させることを実質的に可能ならしめるようなものでなければならない。

             四、一般乗合旅客自動車運送事業の免許に関し諮問を受けた運輸審議会の公聴会における審理手続に申請計画の問題点につき申請者に主張・立証の機会を十分に与えなかつたという瑕疵がある場合においても、仮に運輸審議会がこのような機会を与えたとしても申請者において運輸審議会の認定判断を左右するに足りる資料及び意見を提出しうる可能性があつたとは認め難い判示のような事情があるときは、右瑕疵は右諮問を経てされた運輸大臣の免許の拒否処分を違法として取り消す事由とはならない。

【参照条文】      道路運送法

             運輸省設置法6-1

             道路運送法122の2

             運輸省設置法16

             運輸審議会一般規則

             運輸審議会一般規則4章

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集29巻5号662頁

 

 

道路運送法

(一般旅客自動車運送事業の許可)

第四条 一般旅客自動車運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を受けなければならない。

2 一般旅客自動車運送事業の許可は、一般旅客自動車運送事業の種別(前条第一号イからハまでに掲げる一般旅客自動車運送事業の別をいう。以下同じ。)について行う。

 

 

国土交通省設置法

第六条1項 本省に、次の審議会等を置く。

国土審議会

社会資本整備審議会

交通政策審議会

運輸審議会

 

第五款 運輸審議会

(所掌事務等)

第十五条 運輸審議会は、鉄道事業法(昭和六十一年法律第九十二号)、軌道法(大正十年法律第七十六号)、都市鉄道等利便増進法(平成十七年法律第四十一号)、流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(平成十七年法律第八十五号)、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律(平成十九年法律第五十九号)、都市の低炭素化の促進に関する法律(平成二十四年法律第八十四号)、道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)、貨物自動車運送事業法(平成元年法律第八十三号)、特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法(平成二十一年法律第六十四号)、海上運送法、内航海運業法(昭和二十七年法律第百五十一号)、内航海運組合法(昭和三十二年法律第百六十二号)、港湾運送事業法(昭和二十六年法律第百六十一号)、港湾法及び航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)の規定により同審議会に諮ることを要する事項のうち国土交通大臣の行う処分等に係るものを処理する。

2 国土交通大臣は、前項に規定する事項に係る国土交通大臣又はその地方支分部局の長の行う処分又はその不作為についての審査請求に対する裁決をする場合には、運輸審議会に諮らなければならない。

3 第一項に規定する事項に係る処分等及び前項に規定する裁決(行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二条第四号に規定する不利益処分(以下「不利益処分」という。)を除く。)のうち、運輸審議会が軽微なものと認めるものについては、国土交通大臣は、運輸審議会に諮らないでこれを行うことができる。

4 運輸審議会は、第一項に規定する事項に係る処分等及び第二項に規定する裁決に関し、職権により、又は利害関係人の申請に基づき、国土交通大臣に対し、必要な勧告をすることができる。

 

 

運輸審議会一般規則

(公聴会主義の原則)

第一条 運輸審議会は、事案に関し、できる限り公聴会を開き、公平且つ合理的な決定をしなければならない。

 

マンションの管理人室が建物の区分所有等に関する法律にいう専有部分に当たらないとされた事例

 

 

              所有権保存登記抹消登記手続等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/平成2年(オ)第1369号

【判決日付】      平成5年2月12日

【判示事項】      マンションの管理人室が建物の区分所有等に関する法律にいう専有部分に当たらないとされた事例

【判決要旨】      共用部分である管理事務室とこれに隣接する管理人室があるマンションにおいて、右管理人室に構造上の独立性があるとしても、当該マンションの規模が比較的大きく、区分所有者の居住生活を円滑にし、その環境の維持保全を図るため、その業務に当たる管理人を常駐させ、管理業務の遂行に当たらせる必要があり、前記管理事務室のみでは、管理人を常駐させてその業務を適切かつ円滑に遂行させることが困難である場合には、両室は機能的に分離することができず、右管理人室は、利用上の独立性がなく、建物の区分所有等に関する法律にいう専有部分には当たらない。

【参照条文】      建物の区分所有等に関する法律

             建物の区分所有等に関する法律2-3

             建物の区分所有等に関する法律2-4

             建物の区分所有等に関する法律4-1

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集47巻2号393頁

 

 

建物の区分所有等に関する法律

(建物の区分所有)

第一条 一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。

(定義)

第二条 この法律において「区分所有権」とは、前条に規定する建物の部分(第四条第二項の規定により共用部分とされたものを除く。)を目的とする所有権をいう。

2 この法律において「区分所有者」とは、区分所有権を有する者をいう。

3 この法律において「専有部分」とは、区分所有権の目的たる建物の部分をいう。

4 この法律において「共用部分」とは、専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物をいう。

5 この法律において「建物の敷地」とは、建物が所在する土地及び第五条第一項の規定により建物の敷地とされた土地をいう。

6 この法律において「敷地利用権」とは、専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利をいう。

 

(共用部分)

第四条 数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。

2 第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

 

取得時効と登記

 

 

              所有権確認等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和38年(オ)第516号

【判決日付】      昭和41年11月22日

【判示事項】      取得時効と登記

【判決要旨】      不動産の時効取得者は、取得時効の進行中に原権利者から当該不動産の譲受を受けその旨の移転登記を経由した者に対しては、登記がなくても、時効による所有権の取得を主張することができる。

【参照条文】      民法162

             民法177

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集20巻9号1901頁

 

 

民法

(所有権の取得時効)

第百六十二条 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。

2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

 

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)

第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

 

 

財物を交付させる手段としての暴行と恐喝罪の成立


    恐喝、傷害
【事件番号】    東京高等裁判所判決/昭和30年(う)第2160号
【判決日付】    昭和31年1月14日
【判示事項】    財物を交付させる手段としての暴行と恐喝罪の成立
【参照条文】    刑法249-1
【掲載誌】     高等裁判所刑事裁判特報3巻1~2号8頁
          東京高等裁判所判決時報刑事7巻1号9頁


刑法
(恐喝)
第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。




 同第四点について、
(一)原判決が、その判示第一の事実として、「(前略)被告人両名は右平野及び原田を脅迫して金品を喝取しようと互に意思を通じた上同日午後八時半頃、同区銀座西八丁目三番地先道路上において、被告人田谷は右平野に対し俺のいうことが分らないなら考えがあると申し向けて脅迫し被告人両名こもごも手拳にて殴打し、且足蹴りにして顔面より出血せしめ、この暴行の模様を目撃して自分も亦平野同様の暴行を受けるかもしれないと畏怖している原田に対し、被告人田谷が時計を貸せと申し向けて、これに応じなければ危害を加えかねまじき態度を示して原田を脅迫し、因つて同人より即時同所において、価格五千円相当の腕時計を交付せしめてこれを喝取し、次いで前記暴行により地上に蹲つて畏怖している平野に対し、平野お前もだと申し向けてその帯用している腕時計の交付を要求し、これを拒絶すれば更に暴行を加えかねまじき態度を示して脅迫し、同人より即時同所において価格二万円相当の腕時計一個を交付せしめて喝取し、(後略)」との事実を認定判示していることは所論のとおりである。所論は、原判決挙示の関係証拠によつては、被告人中島が原判示のように、原審相被告人田谷泰愛と共に原判示平野快次、同原田敬を脅迫して金品を喝取しようと互に意思を通じていたことや、右田谷が前示平野に対し金の貸借の交渉をしたり、平野、原田両名から腕時計の交付を受けたりするに際して、被告人中島がこれに協力していること等については、全然これを認めることができないのであるから、原判決は、虚無の証拠によつて被告人を原判示第一の恐喝の罪に問うたものであり、採証の法則に違反したものである旨主張するのであるが、しかし、原判決の援用する関係証拠をそう合考かくするときは、所論にかかる金品喝取につき互に意思を通していた点をも含めて、原判示第一事実のすべてを認められない訳ではないから、原判決には、この点につき、所論のような採証の法則に違反して、虚無の証拠によつて事実を認定した違法、ないしは証拠によらずして事実を認定した違法があるものということはできない。論旨は理由がない。
(二)所論は、恐喝罪は、単に脅迫をもつてその手段とするに止まり、暴行はこれが手段たりえないものであるのに、原判決は、被告人と原審相被告人田谷泰愛とが原判示平野快次、同原田敬より原判示腕時計を喝取するのに際し、殴打、足蹴等の暴行をその手段とした旨認定しているのであるから、原判決には、この点につき法令の解釈を誤つた違法があり、この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである旨主張するにより、案ずるに、恐喝罪は、人を恐喝して財物を交付せしめることによつて成立する犯罪であつて、恐喝とは、財物を交付せしめる目的をもつてする脅迫をいい、恐喝罪の手段たる脅迫とは、人をして畏怖の念を生ぜしめるに足りる害悪の通知であつて人の反抗を抑圧する程度に至らない場合をいうものと解すべきであるから、暴行を加えることも、若し財物を交付しないときは、更に暴行が反覆継続せられる旨の黙示の表示と認められる限り、人の反抗を抑圧する程度に至らない場合は、恐喝となり得るものと解すべきところ、原判決の認定したところは、既に論旨第四点の(一)に対する判断の項に掲記したとおりであつて、原判決挙示の関係証拠に徴するときは、被告人らが被害者平野快次に対して加えた原判示暴行は、これを目撃していた被害者原田敬に対しては、同人が若し被告人らの要求に応じないときは、右平野に対すると同様な暴行が加えられるかも知れない旨の黙示の表示とも認められるような状況にあり、また、右平野自身に対しては、同人が若し被告人らの要求に応じなければ、更に暴行が反覆継続せられるかも知れない旨の黙示の表示とも認めえられる状況にあつて、且つ、人の反抗を抑圧する程度に至らないものと認められない訳ではないから、原判示にかかる被告人らの爾余の言語、態度等と相待つて、前示被害者両名に対する各恐喝罪の手段となり得るものといわなければならない。なお、所論は、被告人らの原判示暴行は、相手方に傷害を負わしめる程度のものであつて、人の反抗を抑圧する程度に達しているから、恐喝罪の手段とはならない旨主張するけれども、該主張は、被告人に不利益な事項を内容とする主張であつて、被告人のための控訴理由としては許されないものであるばかりでなく、原判決挙示の関係証拠によれば、前示暴行が、必ずしも、相手方の反抗を抑圧する程度に達していないと認められないこともないことは、前説示のとおりであるから、この点の所論も採用できない。してみれば、原判決がその判示第一の恐喝罪の事実について、所論暴行の事実をも認定判示し、これに対して刑法第二百四十九条第一項を適用したからといつて、原判決に所論のまうな法令の解釈を誤つた違法があるものということはできない。論旨は理由がない。
 

国会議員の選挙権を有する者を日本国民に限っている公職選挙法九条一項と憲法一五条、一四条

 

 

損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/平成4年(オ)第1928号

【判決日付】      平成5年2月26日

【判示事項】      国会議員の選挙権を有する者を日本国民に限っている公職選挙法九条一項と憲法一五条、一四条

【判決要旨】      国会議員の選挙権を有する者を日本国民に限っている公職選挙法九条一項の規定は、憲法一五条、一四条に違反しない。

【参照条文】      憲法14-1

             憲法15-1

             公職選挙法9-1

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事167号下579頁

             最高裁判所裁判集民事167号579頁

             判例タイムズ812号166頁

             判例時報1452号37頁

 

 

憲法

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

② 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。

③ 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。

② すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。

③ 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。

④ すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

 

 

公職選挙法

(選挙権)

第九条 日本国民で年齢満十八年以上の者は、衆議院議員及び参議院議員の選挙権を有する。

2 日本国民たる年齢満十八年以上の者で引き続き三箇月以上市町村の区域内に住所を有する者は、その属する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する。

3 日本国民たる年齢満十八年以上の者でその属する市町村を包括する都道府県の区域内の一の市町村の区域内に引き続き三箇月以上住所を有していたことがあり、かつ、その後も引き続き当該都道府県の区域内に住所を有するものは、前項に規定する住所に関する要件にかかわらず、当該都道府県の議会の議員及び長の選挙権を有する。

4 前二項の市町村には、その区域の全部又は一部が廃置分合により当該市町村の区域の全部又は一部となつた市町村であつて、当該廃置分合により消滅した市町村(この項の規定により当該消滅した市町村に含むものとされた市町村を含む。)を含むものとする。

5 第二項及び第三項の三箇月の期間は、市町村の廃置分合又は境界変更のため中断されることがない。