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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

Y社のような国際企業といわゆる一般的な日本企業との雇用形態には差異があることから,Y社主張に係る解雇事由の検討に当たっては,雇用文化の多様性という観点が不可欠であるなど」とのY社が控訴審において追加した主張につき,結局のところ,Y社が主張する雇用文化の多様性は,単なる一般論にすぎず,個別具体的な事件における解雇事由の判断に影響を与えるようなものではないとされた例

 

 

 

              地位確認等請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/平成24年(ネ)第6853号

【判決日付】      平成25年4月24日

【判示事項】      1 控訴人(一審被告)Y社が被控訴人(一審原告)Xを「職務能力の低下」を理由に解雇したことにつき,本件解雇は,Y社主張にかかる各解雇事由を個別に検討しても,客観的合理性があるとはいえないばかりか,これらを総合的に検討しても,客観的合理性があるとはいえないと解するのが相当であり,無効であるとして,Y社の請求が棄却され,一審判断が維持された例

             2 「Y社のような国際企業といわゆる一般的な日本企業との雇用形態には差異があることから,Y社主張に係る解雇事由の検討に当たっては,雇用文化の多様性という観点が不可欠であるなど」とのY社が控訴審において追加した主張につき,わが国において,国際企業がいかなる人事制度を採用しても,法令に反しない限り自由であり,その人事制度がいわゆる一般的な日本企業と異なることが,労働契約法16条に規定する解雇権の濫用の判断に影響しないと直ちにいい切れないが,Y社は,Y社の人事制度,すなわち,その労働者の募集および採用,配置,昇進,降格および教育訓練,賃金制度,退職の勧奨および定年等が,いわゆる一般的な日本企業のそれと異なることについて,何ら具体的に主張していないし,また,Xが採用された経緯,すなわち,Xが採用された際,Y社の人事制度についてどのような説明がされ,それがいわゆる一般的な日本企業の場合とどのように異なっていたのか等についても,何ら具体的に主張していないばかりか,かえって,Y社において,労働者の採用選考上Y社の特色あるビジネスモデル等に応じた格別の基準を設定したりしたことはないと認められることは一審判決の事実および理由の記載のとおりであるから,結局のところ,Y社が主張する雇用文化の多様性は,単なる一般論にすぎず,個別具体的な事件における解雇事由の判断に影響を与えるようなものではないとされた例

【掲載誌】        労働判例1074号75頁

 

 

労働契約法

(解雇)

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

利益誘導的かつ虚偽の約束で得た被告人の供述と密接不可分の関連性を有する覚せい剤や鑑定書等が違法収集証拠であるとして証拠能力を排除するに当たり,取調べ時間の長さや暴行・脅迫の有無を検討要素とする必要がないとされた事例

 

 

覚せい剤取締法違反被告事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/平成25年(う)第783号

【判決日付】      平成25年7月23日

【判示事項】      利益誘導的かつ虚偽の約束で得た被告人の供述と密接不可分の関連性を有する覚せい剤や鑑定書等が違法収集証拠であるとして証拠能力を排除するに当たり,取調べ時間の長さや暴行・脅迫の有無を検討要素とする必要がないとされた事例

【判決要旨】      捜査官の利益誘導的かつ虚偽の約束という違法な取調べにより得られた被告人供述と密接不可分の関連性を有する本件覚せい剤,捜索差押調書,鑑定嘱託書及び鑑定書は,違法収集証拠として排除しなければ,令状主義の精神が没却され,将来における違法捜査抑制の見地からも相当ではない。

             虚偽約束による供述証拠では,その供述が得られた取調べ時間の長さや暴行,脅迫の有無を検討要素とする意味はなく,捜査官が利益誘導的かつ虚偽の約束をしたこと自体,放置できない重大な違法であり,被告人の供述は任意性を欠く違法収集証拠として排除される。

【参照条文】      覚せい剤取締法41の2-1

             刑事訴訟法336

             憲法31

             刑事訴訟法1

             刑事訴訟法317

             刑事訴訟法379

【掲載誌】        高等裁判所刑事裁判速報集平成25年98頁

             東京高等裁判所判決時報刑事64巻169頁

             判例時報2201号141頁

 

 

覚醒剤取締法

第四十一条の二 覚醒剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者(第四十二条第五号に該当する者を除く。)は、十年以下の懲役に処する。

2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、一年以上の有期懲役に処し、又は情状により一年以上の有期懲役及び五百万円以下の罰金に処する。

3 前二項の未遂罪は、罰する。

 

刑事訴訟法

第三百三十六条 被告事件が罪とならないとき、又は被告事件について犯罪の証明がないときは、判決で無罪の言渡をしなければならない。

 

第三百七十九条 前二条の場合を除いて、訴訟手続に法令の違反があつてその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつて明らかに判決に影響を及ぼすべき法令の違反があることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。

 

第三百十七条 事実の認定は、証拠による。

 

 

 

憲法

第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

 

野田醬油事件


    審決取消請求事件
【事件番号】    東京高等裁判所判決/昭和31年(行ナ)第1号
【判決日付】    昭和32年12月25日
【判示事項】    1、私的独占となる「他の事業者の事業活動の支配」の事例
          2、個々の組成行為の適法不適法と私的独占の成否
          3、排除措置と被審人の意見弁解聴取の要否
【判決要旨】    1、事業者が、自己の行為はすでに市場に成立している客観的条件にのつて事の当然の経過として他の事業者の事業活動を制約することとなるものであることを知りながら、行為する場合には、他の事業者の事業活動を支配するというべきである。
          2、私的独占を組成する個々の行為が、それ自体違法であるかどうかは、私的独占の成否に影響がない。
          3、公正取引委員会は審決に当つていかなる排除措置を命ずるかについて、あらかじめ被審人の意見弁解を聞く必要はない。
【参照条文】    私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律3
          私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律2-5
【掲載誌】     高等裁判所民事判例集10巻12号743頁
          行政事件裁判例集8巻12号2300頁
          東京高等裁判所判決時報民事9巻1号1頁


独占禁止法
第三条 事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。

第二条 この法律において「事業者」とは、商業、工業、金融業その他の事業を行う者をいう。事業者の利益のためにする行為を行う役員、従業員、代理人その他の者は、次項又は第三章の規定の適用については、これを事業者とみなす。
② この法律において「事業者団体」とは、事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする二以上の事業者の結合体又はその連合体をいい、次に掲げる形態のものを含む。ただし、二以上の事業者の結合体又はその連合体であつて、資本又は構成事業者の出資を有し、営利を目的として商業、工業、金融業その他の事業を営むことを主たる目的とし、かつ、現にその事業を営んでいるものを含まないものとする。
一 二以上の事業者が社員(社員に準ずるものを含む。)である社団法人その他の社団
二 二以上の事業者が理事又は管理人の任免、業務の執行又はその存立を支配している財団法人その他の財団
三 二以上の事業者を組合員とする組合又は契約による二以上の事業者の結合体
③ この法律において「役員」とは、理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役若しくはこれらに準ずる者、支配人又は本店若しくは支店の事業の主任者をいう。
④ この法律において「競争」とは、二以上の事業者がその通常の事業活動の範囲内において、かつ、当該事業活動の施設又は態様に重要な変更を加えることなく次に掲げる行為をし、又はすることができる状態をいう。
一 同一の需要者に同種又は類似の商品又は役務を供給すること
二 同一の供給者から同種又は類似の商品又は役務の供給を受けること
⑤ この法律において「私的独占」とは、事業者が、単独に、又は他の事業者と結合し、若しくは通謀し、その他いかなる方法をもつてするかを問わず、他の事業者の事業活動を排除し、又は支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。
⑥ この法律において「不当な取引制限」とは、事業者が、契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。
⑦ この法律において「独占的状態」とは、同種の商品(当該同種の商品に係る通常の事業活動の施設又は態様に重要な変更を加えることなく供給することができる商品を含む。)(以下この項において「一定の商品」という。)並びにこれとその機能及び効用が著しく類似している他の商品で国内において供給されたもの(輸出されたものを除く。)の価額(当該商品に直接課される租税の額に相当する額を控除した額とする。)又は国内において供給された同種の役務の価額(当該役務の提供を受ける者に当該役務に関して課される租税の額に相当する額を控除した額とする。)の政令で定める最近の一年間における合計額が千億円を超える場合における当該一定の商品又は役務に係る一定の事業分野において、次に掲げる市場構造及び市場における弊害があることをいう。
一 当該一年間において、一の事業者の事業分野占拠率(当該一定の商品並びにこれとその機能及び効用が著しく類似している他の商品で国内において供給されたもの(輸出されたものを除く。)又は国内において供給された当該役務の数量(数量によることが適当でない場合にあつては、これらの価額とする。以下この号において同じ。)のうち当該事業者が供給した当該一定の商品並びにこれとその機能及び効用が著しく類似している他の商品又は役務の数量の占める割合をいう。以下この号において同じ。)が二分の一を超え、又は二の事業者のそれぞれの事業分野占拠率の合計が四分の三を超えていること。
二 他の事業者が当該事業分野に属する事業を新たに営むことを著しく困難にする事情があること。
三 当該事業者の供給する当該一定の商品又は役務につき、相当の期間、需給の変動及びその供給に要する費用の変動に照らして、価格の上昇が著しく、又はその低下がきん少であり、かつ、当該事業者がその期間次のいずれかに該当していること。
イ 当該事業者の属する政令で定める業種における標準的な政令で定める種類の利益率を著しく超える率の利益を得ていること。
ロ 当該事業者の属する事業分野における事業者の標準的な販売費及び一般管理費に比し著しく過大と認められる販売費及び一般管理費を支出していること。
⑧ 経済事情が変化して国内における生産業者の出荷の状況及び卸売物価に著しい変動が生じたときは、これらの事情を考慮して、前項の金額につき政令で別段の定めをするものとする。
⑨ この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
一 正当な理由がないのに、競争者と共同して、次のいずれかに該当する行為をすること。
イ ある事業者に対し、供給を拒絶し、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること。
ロ 他の事業者に、ある事業者に対する供給を拒絶させ、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限させること。
二 不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもつて、商品又は役務を継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの
三 正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの
四 自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次のいずれかに掲げる拘束の条件を付けて、当該商品を供給すること。
イ 相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること。
ロ 相手方の販売する当該商品を購入する事業者の当該商品の販売価格を定めて相手方をして当該事業者にこれを維持させることその他相手方をして当該事業者の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束させること。
五 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。
イ 継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロにおいて同じ。)に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。
ロ 継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。
六 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの
イ 不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。
ロ 不当な対価をもつて取引すること。
ハ 不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること。
ニ 相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもつて取引すること。
ホ 自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。
ヘ 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引を不当に妨害し、又は当該事業者が会社である場合において、その会社の株主若しくは役員をその会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、唆し、若しくは強制すること。

 

国税犯則取締法2条により裁判官がする差押等の強制処分の許可の性質とこの許可自体に対する不服申立の許否

 

 

捜索差押許可の裁判の取消ならびに差押処分の取消を求める準抗告棄却決定に対する特別抗告事件

【事件番号】      最高裁判所大法廷決定/昭和42年(し)第78号

【判決日付】      昭和44年12月3日

【判示事項】      1、国税犯則取締法2条により裁判官がする差押等の強制処分の許可の性質とこの許可自体に対する不服申立の許否

             2、国税犯則取締法による国税犯則事件の調査手続の性質と同法2条により収税官史がした差押処分に対する不服申立方法

             3、国税犯則取締法2条により裁判官がした強制処分の許可自体に関する違法の主張方法

【判決要旨】      1、国税犯則取締法2条により裁判官がする臨検、捜索または差押の許可は、裁判所または裁判官が訴訟の当事者に宛てて行う訴訟法上の通常意義における裁判ではなく、職務上の独立を有する裁判官が、公正な立場において、収税官吏の請求に基づき、収税官吏が右の強制処分を実施することが適法であるかどうか等を事前に審査したうえ、これを肯認するときに許可状を交付することによつてその強制処分を適法に行うことを得しめるものであつて、強制処分を受ける者に対して直接に効力を及ぼすものではなく、このような行為については、不服申立に関する明文の規定がないかぎり、独立の不服申立を認めない趣旨と解すべきであり、したがつて、刑訴法429条の準抗告の規定は準用されない。

             2、国税犯取締法による国税犯則事件の調査手続の性質は、現行法制上、一種の行政手続であつて、刑事手続(司法手続)ではなく、同法2条により収税官吏がした差押処分に対する不服申立は、行政事件訴訟の方法によるべきであつて、刑訴法433条の準抗告の規定は準用されない。

             3、国税犯則取締法2条により裁判官がした強制処分の許可に関して法律上の不服の理由を有する者は、行政事件訴訟により、その許可自体の違法を理由として、その許可により実施された強制処分の取消を求めることができる。

【参照条文】      国税犯則取締法2

             刑事訴訟法218

             刑事訴訟法429

             日本国憲法32

             国税犯則取締法

             行政事件訴訟法

             行政不服審査法4-1

             国税通則法76

             国税通則法79

             国税通則法86

             刑事訴訟法430

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集23巻12号1525頁

 

 

国税通則法

第十一章 犯則事件の調査及び処分

第一節 犯則事件の調査

(質問、検査又は領置等)

第百三十一条 国税庁等の当該職員(以下第百五十二条(調書の作成)まで及び第百五十五条(間接国税以外の国税に関する犯則事件等についての告発)において「当該職員」という。)は、国税に関する犯則事件(第百三十五条(現行犯事件の臨検、捜索又は差押え)及び第百五十三条第二項(調査の管轄及び引継ぎ)を除き、以下この節において「犯則事件」という。)を調査するため必要があるときは、犯則嫌疑者若しくは参考人(以下この項及び次条第一項において「犯則嫌疑者等」という。)に対して出頭を求め、犯則嫌疑者等に対して質問し、犯則嫌疑者等が所持し、若しくは置き去つた物件を検査し、又は犯則嫌疑者等が任意に提出し、若しくは置き去つた物件を領置することができる。

2 当該職員は、犯則事件の調査について、官公署又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

(臨検、捜索又は差押え等)

第百三十二条 当該職員は、犯則事件を調査するため必要があるときは、その所属官署の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官があらかじめ発する許可状により、臨検、犯則嫌疑者等の身体、物件若しくは住居その他の場所の捜索、証拠物若しくは没収すべき物件と思料するものの差押え又は記録命令付差押え(電磁的記録を保管する者その他電磁的記録を利用する権限を有する者に命じて必要な電磁的記録を記録媒体に記録させ、又は印刷させた上、当該記録媒体を差し押さえることをいう。以下同じ。)をすることができる。ただし、参考人の身体、物件又は住居その他の場所については、差し押さえるべき物件の存在を認めるに足りる状況のある場合に限り、捜索をすることができる。

2 差し押さえるべき物件が電子計算機であるときは、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、当該電子計算機で作成若しくは変更をした電磁的記録又は当該電子計算機で変更若しくは消去をすることができることとされている電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから、その電磁的記録を当該電子計算機又は他の記録媒体に複写した上、当該電子計算機又は当該他の記録媒体を差し押さえることができる。

3 前二項の場合において、急速を要するときは、当該職員は、臨検すべき物件若しくは場所、捜索すべき身体、物件若しくは場所、差し押さえるべき物件又は電磁的記録を記録させ、若しくは印刷させるべき者の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官があらかじめ発する許可状により、前二項の処分をすることができる。

4 当該職員は、第一項又は前項の許可状(第百四十七条(鑑定等の嘱託)を除き、以下「許可状」という。)を請求する場合においては、犯則事件が存在すると認められる資料を提供しなければならない。

5 前項の規定による請求があつた場合においては、地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官は、犯則嫌疑者の氏名(法人については、名称)、罪名並びに臨検すべき物件若しくは場所、捜索すべき身体、物件若しくは場所、差し押さえるべき物件又は記録させ、若しくは印刷させるべき電磁的記録及びこれを記録させ、若しくは印刷させるべき者並びに請求者の官職氏名、有効期間、その期間経過後は執行に着手することができずこれを返還しなければならない旨、交付の年月日及び裁判所名を記載し、自己の記名押印した許可状を当該職員に交付しなければならない。

6 第二項の場合においては、許可状に、前項に規定する事項のほか、差し押さえるべき電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、その電磁的記録を複写すべきものの範囲を記載しなければならない。

7 当該職員は、許可状を他の当該職員に交付して、臨検、捜索、差押え又は記録命令付差押えをさせることができる。

(通信事務を取り扱う者に対する差押え)

第百三十三条 当該職員は、犯則事件を調査するため必要があるときは、許可状の交付を受けて、犯則嫌疑者から発し、又は犯則嫌疑者に対して発した郵便物、信書便物又は電信についての書類で法令の規定に基づき通信事務を取り扱う者が保管し、又は所持するものを差し押さえることができる。

2 当該職員は、前項の規定に該当しない郵便物、信書便物又は電信についての書類で法令の規定に基づき通信事務を取り扱う者が保管し、又は所持するものについては、犯則事件に関係があると認めるに足りる状況があるものに限り、許可状の交付を受けて、これを差し押さえることができる。

3 当該職員は、前二項の規定による処分をした場合においては、その旨を発信人又は受信人に通知しなければならない。ただし、通知によつて犯則事件の調査が妨げられるおそれがある場合は、この限りでない。

 

(適用除外)

第七十六条 次に掲げる処分については、前条の規定は、適用しない。

一 この節又は行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)の規定による処分その他前条の規定による不服申立て(第八十条第三項(行政不服審査法との関係)を除き、以下「不服申立て」という。)についてした処分

二 行政不服審査法第七条第一項第七号(適用除外)に掲げる処分

2 この節の規定による処分その他不服申立てについてする処分に係る不作為については、行政不服審査法第三条(不作為についての審査請求)の規定は、適用しない。

 

 

刑事訴訟法

第二百十八条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証をすることができる。この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。

② 差し押さえるべき物が電子計算機であるときは、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、当該電子計算機で作成若しくは変更をした電磁的記録又は当該電子計算機で変更若しくは消去をすることができることとされている電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから、その電磁的記録を当該電子計算機又は他の記録媒体に複写した上、当該電子計算機又は当該他の記録媒体を差し押さえることができる。

③ 身体の拘束を受けている被疑者の指紋若しくは足型を採取し、身長若しくは体重を測定し、又は写真を撮影するには、被疑者を裸にしない限り、第一項の令状によることを要しない。

④ 第一項の令状は、検察官、検察事務官又は司法警察員の請求により、これを発する。

⑤ 検察官、検察事務官又は司法警察員は、身体検査令状の請求をするには、身体の検査を必要とする理由及び身体の検査を受ける者の性別、健康状態その他裁判所の規則で定める事項を示さなければならない。

⑥ 裁判官は、身体の検査に関し、適当と認める条件を附することができる。

 

第四百二十九条 裁判官が左の裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消又は変更を請求することができる。

一 忌避の申立を却下する裁判

二 勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判

三 鑑定のため留置を命ずる裁判

四 証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判

五 身体の検査を受ける者に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判

② 第四百二十条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。

③ 第一項の請求を受けた地方裁判所又は家庭裁判所は、合議体で決定をしなければならない。

④ 第一項第四号又は第五号の裁判の取消又は変更の請求は、その裁判のあつた日から三日以内にこれをしなければならない。

⑤ 前項の請求期間内及びその請求があつたときは、裁判の執行は、停止される。

 

 

第四百三十条 検察官又は検察事務官のした第三十九条第三項の処分又は押収若しくは押収物の還付に関する処分に不服がある者は、その検察官又は検察事務官が所属する検察庁の対応する裁判所にその処分の取消又は変更を請求することができる。

② 司法警察職員のした前項の処分に不服がある者は、司法警察職員の職務執行地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所にその処分の取消又は変更を請求することができる。

③ 前二項の請求については、行政事件訴訟に関する法令の規定は、これを適用しない。

 

 

行政不服審査法

(審査請求をすべき行政庁)

第四条 審査請求は、法律(条例に基づく処分については、条例)に特別の定めがある場合を除くほか、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める行政庁に対してするものとする。

一 処分庁等(処分をした行政庁(以下「処分庁」という。)又は不作為に係る行政庁(以下「不作為庁」という。)をいう。以下同じ。)に上級行政庁がない場合又は処分庁等が主任の大臣若しくは宮内庁長官若しくは内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項若しくは第二項若しくは国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定する庁の長である場合 当該処分庁等

二 宮内庁長官又は内閣府設置法第四十九条第一項若しくは第二項若しくは国家行政組織法第三条第二項に規定する庁の長が処分庁等の上級行政庁である場合 宮内庁長官又は当該庁の長

三 主任の大臣が処分庁等の上級行政庁である場合(前二号に掲げる場合を除く。) 当該主任の大臣

四 前三号に掲げる場合以外の場合 当該処分庁等の最上級行政庁

 

 

行政事件訴訟法

(処分の取消しの訴えと審査請求との関係)

第八条 処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。ただし、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、この限りでない。

2 前項ただし書の場合においても、次の各号の一に該当するときは、裁決を経ないで、処分の取消しの訴えを提起することができる。

一 審査請求があつた日から三箇月を経過しても裁決がないとき。

二 処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき。

三 その他裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき。

3 第一項本文の場合において、当該処分につき審査請求がされているときは、裁判所は、その審査請求に対する裁決があるまで(審査請求があつた日から三箇月を経過しても裁決がないときは、その期間を経過するまで)、訴訟手続を中止することができる。

 

刑訴法316条の17と自己に不利益な供述の強要

 

 

              威力業務妨害,建造物不退去被告事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷決定/平成24年(あ)第199号

【判決日付】      平成25年3月18日

【判示事項】      刑訴法316条の17と自己に不利益な供述の強要

【判決要旨】      刑訴法316条の17は,自己に不利益な供述を強要するものとはいえない。

【参照条文】      刑事訴訟法316の17

             憲法38-1

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集67巻3号325頁

 

 

憲法

第三十八条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。

② 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。

③ 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

 

 

刑事訴訟法

第三百十六条の十七 被告人又は弁護人は、第三百十六条の十三第一項の書面の送付を受け、かつ、第三百十六条の十四第一項並びに第三百十六条の十五第一項及び第二項の規定による開示をすべき証拠の開示を受けた場合において、その証明予定事実その他の公判期日においてすることを予定している事実上及び法律上の主張があるときは、裁判所及び検察官に対し、これを明らかにしなければならない。この場合においては、第三百十六条の十三第一項後段の規定を準用する。

② 被告人又は弁護人は、前項の証明予定事実があるときは、これを証明するために用いる証拠の取調べを請求しなければならない。この場合においては、第三百十六条の十三第三項の規定を準用する。

③ 裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いた上で、第一項の主張を明らかにすべき期限及び前項の請求の期限を定めることができる。

 

 

PwCフィナンシャル・アドバイザー・サービス(整理解雇)事件

 

 

              地位確認等請求事件

【事件番号】      東京地方裁判所判決/平成14年(ワ)第21252号

【判決日付】      平成15年9月25日

【判示事項】      解雇された原告の,解雇は,整理解雇の要件,能力不足を理由とした解雇の要件を欠き無効であるとして,労働契約上の権利を有する地位の確認並びに過去及び将来の賃金の支払の各請求について,本件解雇は,解雇回避努力義務及び被解雇者選定の合理性のいずれの点においても,十分な努力及び合理性があるとは認められず,就業規則15条c)に該当する事由はなく,また,客観的で合理的な理由を欠き,解雇権の濫用として無効であるとして,地位確認及び賃金支払請求の一部を認容し,本判決の確定後賃金の支払請求を却下した事例

【掲載誌】        労働判例863号19頁

 

 

労働契約法

(解雇)

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

社外工につきその受入会社が労働組合法7条の使用者にあたるとされた事例

 

 

不当労働行為救済命令取消請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和49年(行ツ)第94号

【判決日付】      昭和51年5月6日

【判示事項】      いわゆる社外工につきその受入会社が労働組合法7条の使用者にあたるとされた事例

【判決要旨】      油圧器の製造販売を目的とする会社が、油圧装置の設計図を作成させるため、社外の設計請負業者から長期にわたりその従業員の派遣を受け、これをいわゆる社外工として会社の作業場内で就労させている場合において、右請負業者が実質的に社外工の単なるグループにすぎないものであつて独立の使用者としての実体を有せず、各社外工はそれぞれ個人の技能、信用によつて会社に受け入られているものであり、その勤務及び作業に関して専ら会社が自己の従業員と同様に指揮監督を行い、また、社外工の賃金額についても会社が実質的いこれを決定しているなど判示のような事情があるときは、会社は、右社外工に対する関係において労働組合法7条の使用者にあたる。

【参照条文】      労働組合法

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集30巻4号409頁

 

 

労働組合法

(不当労働行為)

第七条 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。

一 労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。

二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。

三 労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること。ただし、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、かつ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。

四 労働者が労働委員会に対し使用者がこの条の規定に違反した旨の申立てをしたこと若しくは中央労働委員会に対し第二十七条の十二第一項の規定による命令に対する再審査の申立てをしたこと又は労働委員会がこれらの申立てに係る調査若しくは審問をし、若しくは当事者に和解を勧め、若しくは労働関係調整法(昭和二十一年法律第二十五号)による労働争議の調整をする場合に労働者が証拠を提示し、若しくは発言をしたことを理由として、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること。

 

 

 

平成電電詐欺事件・公判調書中の被告人供述調書に添付されたのみで証拠として取り調べられていない電子メールが独立の証拠又は被告人の供述の一部にならないとされた事例

 

 

              詐欺被告事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷決定/平成22年(あ)第1632号

【判決日付】      平成25年2月26日

【判示事項】      公判調書中の被告人供述調書に添付されたのみで証拠として取り調べられていない電子メールが独立の証拠又は被告人の供述の一部にならないとされた事例

【判決要旨】      被告人質問において被告人に示され,公判調書中の被告人供述調書に添付されたが,これとは別に証拠として取り調べられていない本件の電子メールは,その存在及び記載が記載内容の真実性と離れて証拠価値を有するものであり,被告人に対してこれを示して質問をした手続に違法はなく,被告人がその同一性や真正な成立を確認したとしても,独立の証拠又は被告人の供述の一部となるものではない。

【参照条文】      刑事訴訟法317

             刑事訴訟規則49

             刑事訴訟規則199の10

             刑事訴訟規則199の11

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集67巻2号143頁

 

 

刑事訴訟法

第三百十七条 事実の認定は、証拠による。

 

 

刑事訴訟規則

(調書への引用)

第四十九条 調書には、書面、写真その他裁判所又は裁判官が適当と認めるものを引用し、

訴訟記録に添附して、これを調書の一部とすることができる。

 

(書面又は物の提示・法第三百四条等)

第百九十九条の十 訴訟関係人は、書面又は物に関しその成立、同一性その他これに準ず

る事項について証人を尋問する場合において必要があるときは、その書面又は物を示すこと

ができる。

2 前項の書面又は物が証拠調を終つたものでないときは、あらかじめ、相手方にこれを閲

覧する機会を与えなければならない。ただし、相手方に異議がないときは、この限りでない。

 

(記憶喚起のための書面等の提示・法第三百四条等)

第百九十九条の十一 訴訟関係人は、証人の記憶が明らかでない事項についてその記憶を

喚起するため必要があるときは、裁判長の許可を受けて、書面(供述を録取した書面を除く。)

又は物を示して尋問することができる。

2 前項の規定による尋問については、書面の内容が証人の供述に不当な影響を及ぼすこと

のないように注意しなければならない。

3 第一項の場合には、前条第二項の規定を準用する

 

 

 

       主   文

 

 本件各上告を棄却する。

 

       理   由

 

 被告人甲の弁護人野村創,同清水夏子,同片野田志朗の上告趣意のうち,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でなく,その余は,単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であり,被告人乙の弁護人宮村啓太ほかの上告趣意は,憲法違反,判例違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であって,いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。

 なお,被告人乙の弁護人らの所論に鑑み,公判調書中の被告人乙の被告人供述調書の末尾に添付された書面を事実認定の用に供したことの適否について職権で判断する。

 1 記録によれば,本件の審理経過について,次の事実が認められる。

 第1審第10回公判期日において,被告人乙の被告人質問が行われ,その際,検察官は,被告人乙が送信した平成17年10月30日付け電子メールのうち,同メールにより転送されたオリジナルメッセージ(同年9月21日にBが被告人乙に宛てて送信した電子メール)部分(以下「本件電子メール」という。)を被告人乙に示して質問した。

 本件電子メールは,第1審第10回公判調書中の被告人乙の被告人供述調書の末尾に添付されたが,これとは別に証拠として取り調べられてはいない。

 第1審判決は,本件電子メールの存在及び記載内容を被告人乙の詐欺の故意や共犯者との間の共謀の認定の用に供した。

 2 原判決は,上記第1審判決が本件電子メールを事実認定の用に供したことについて,①本件電子メールは証拠物と同視できる客観的証拠であること,②それを示された被告人乙がその同一性や真正な成立を確認していること,③本件電子メールを被告人乙に示すに当たり刑訴規則199条の10第2項の要請が満たされていたことを根拠として,本件電子メールは被告人乙の供述と一体になったとみることができるとし,訴訟手続の法令違反はないとした。

 3 しかしながら,上記原判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

 (1) 本件電子メールは,刑訴規則199条の10第1項及び199条の11第1項に基づいて被告人乙に示され,その後,同規則49条に基づいて公判調書中の被告人供述調書に添付されたものと解されるが,このような公判調書への書面の添付は,証拠の取調べとして行われるものではなく,これと同視することはできない。したがって,公判調書に添付されたのみで証拠として取り調べられていない書面は,それが証拠能力を有するか否か,それを証人又は被告人に対して示して尋問又は質問をした手続が適法か否か,示された書面につき証人又は被告人がその同一性や真正な成立を確認したか否か,添付につき当事者から異議があったか否かにかかわらず,添付されたことをもって独立の証拠となり,あるいは当然に証言又は供述の一部となるものではないと解するのが相当である。

 (2) 本件電子メールについては,原判決が指摘するとおり,その存在及び記載が記載内容の真実性と離れて証拠価値を有するものであること,被告人乙に対してこれを示して質問をした手続に違法はないこと,被告人乙が本件電子メールの同一性や真正な成立を確認したことは認められるが,これらのことから証拠として取り調べられていない本件電子メールが独立の証拠となり,あるいは被告人乙の供述の一部となるものではないというべきである。本件電子メールは,被告人乙の供述に引用された限度においてその内容が供述の一部となるにとどまる(最高裁平成21年(あ)第1125号同23年9月14日第一小法廷決定・刑集65巻6号949頁参照)。

 したがって,上記の理由により本件電子メールが被告人乙の供述と一体となったとして,これを証拠として取り調べることなく事実認定の用に供することができるとした原判決には違法があるといわざるを得ない。

 4 しかし,被告人乙が本件電子メールについてした供述やその他の関係証拠によれば,被告人乙について第1審判決判示の犯罪事実を認定することができるから,上記の違法は判決に影響を及ぼすことが明らかなものとはいえない。

 よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。

 

 

 

和解調書の解釈

 

 

和解無効確認事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和29年(オ)第62号

【判決日付】      昭和31年3月30日

【判示事項】      和解調書の解釈

【判決要旨】      裁判上の和解の有効無効は、調書の文言のみの拘泥せず、一般法律行為の解釈の基準に従つてこれを判定すべきである。

【参照条文】      民法695

             民事訴訟法203

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集10巻3号242頁

 

 

民法

(和解)

第六百九十五条 和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。

 

 

民事訴訟法

(和解調書等の効力)

第二百六十七条 和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する。

 

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人鍛治利一の上告理由第四点(前の部分)について。

 裁判上の和解は、その効力こそ確定判決と同視されるけれども、その実体は、当事者の私法上の契約であつて契約に存する瑕疵のため当然無効の場合もあるのであるから、その有効無効は、和解調書の文言のみに拘泥せず一般法律行為の解釈の基準に従つてこれを判定すべきものである。本件において、所論(イ)乃至(ト)の点についての上告人の主張は、原審の認めなかつたところであり、従つて所論和解条項中、一の赤斜線の箇所、二の赤斜線の箇所を除いた他の部分及び三の黒斜線の箇所は、いずれも特定することができないばかりでなく、本件和解は、実地についても特定し得ないものであり、又、内容の点においても被上告人には判つていなかつたというのであるから、本件和解の目的物は確定し得ないこととなつて、私法上の和解契約は、これを無効とせざるを得ないものといわなければならない。論旨は、なお、債務名義として強制執行ができるかどうかということは、和解契約の成否とは関係がないというけれども、本件の和解は、執行ができないから無効なのではなく特定し得ないから無効なのであり、その結果執行もできなくなるに過ぎないのである。されば原審の判断は正当であり、論旨は、いずれも採用することができない。

 上告代理人加藤定蔵の上告理由第一点について。

 論旨中、本件和解契約の効力に関する所論の理由ないことは、鍛治利一の上告理由第四点(前の部分)に対して説示したとおりである。

 その他の論旨は「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

     最高裁判所第二小法廷

納税者が平成11年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したことにつき国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとされた事例


各所得税更正処分等取消請求事件
【事件番号】    最高裁判所第3小法廷判決/平成17年(行ヒ)第20号
【判決日付】    平成18年10月24日
【判示事項】    納税者が平成11年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したことにつき国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとされた事例
【判決要旨】    納税者が勤務先の日本法人の親会社である米国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として所得税の申告をしたことにつき,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとされた事例
【参照条文】    国税通則法65-1
          国税通則法65-4
          所得税法28-1
          所得税法34-1
【掲載誌】     最高裁判所民事判例集60巻8号3128頁



国税通則法
(過少申告加算税)
第六十五条 期限内申告書(還付請求申告書を含む。第三項において同じ。)が提出された場合(期限後申告書が提出された場合において、次条第一項ただし書又は第七項の規定の適用があるときを含む。)において、修正申告書の提出又は更正があつたときは、当該納税者に対し、その修正申告又は更正に基づき第三十五条第二項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき税額に百分の十の割合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、百分の五の割合)を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。
2 前項の規定に該当する場合(第五項の規定の適用がある場合を除く。)において、前項に規定する納付すべき税額(同項の修正申告又は更正前に当該修正申告又は更正に係る国税について修正申告書の提出又は更正があつたときは、その国税に係る累積増差税額を加算した金額)がその国税に係る期限内申告税額に相当する金額と五十万円とのいずれか多い金額を超えるときは、同項の過少申告加算税の額は、同項の規定にかかわらず、同項の規定により計算した金額に、その超える部分に相当する税額(同項に規定する納付すべき税額が当該超える部分に相当する税額に満たないときは、当該納付すべき税額)に百分の五の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする。
3 前項において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 累積増差税額 第一項の修正申告又は更正前にされたその国税についての修正申告書の提出又は更正に基づき第三十五条第二項の規定により納付すべき税額の合計額(当該国税について、当該納付すべき税額を減少させる更正又は更正に係る不服申立て若しくは訴えについての決定、裁決若しくは判決による原処分の異動があつたときはこれらにより減少した部分の税額に相当する金額を控除した金額とし、次項の規定の適用があつたときは同項の規定により控除すべきであつた金額を控除した金額とする。)
二 期限内申告税額 期限内申告書(次条第一項ただし書又は第七項の規定の適用がある場合には、期限後申告書を含む。次項第二号において同じ。)の提出に基づき第三十五条第一項又は第二項の規定により納付すべき税額(これらの申告書に係る国税について、次に掲げる金額があるときは当該金額を加算した金額とし、所得税、法人税、地方法人税、相続税又は消費税に係るこれらの申告書に記載された還付金の額に相当する税額があるときは当該税額を控除した金額とする。)
イ 所得税法第九十五条(外国税額控除)若しくは第百六十五条の六(非居住者に係る外国税額の控除)の規定による控除をされるべき金額、第一項の修正申告若しくは更正に係る同法第百二十条第一項第四号(確定所得申告)(同法第百六十六条(申告、納付及び還付)において準用する場合を含む。)に規定する源泉徴収税額に相当する金額、同法第百二十条第二項(同法第百六十六条において準用する場合を含む。)に規定する予納税額又は災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律(昭和二十二年法律第百七十五号)第二条(所得税の軽減又は免除)の規定により軽減若しくは免除を受けた所得税の額
ロ 法人税法第二条第三十八号(定義)に規定する中間納付額、同法第六十八条(所得税額の控除)(同法第百四十四条(外国法人に係る所得税額の控除)において準用する場合を含む。)、第六十九条(外国税額の控除)若しくは第百四十四条の二(外国法人に係る外国税額の控除)の規定による控除をされるべき金額又は同法第九十条(退職年金等積立金に係る中間申告による納付)(同法第百四十五条の五(申告及び納付)において準用する場合を含む。)の規定により納付すべき法人税の額(その額につき修正申告書の提出又は更正があつた場合には、その申告又は更正後の法人税の額)
ハ 地方法人税法第二条第十八号(定義)に規定する中間納付額、同法第十二条(外国税額の控除)の規定による控除をされるべき金額又は同法第二十条第二項(中間申告による納付)の規定により納付すべき地方法人税の額(その額につき修正申告書の提出又は更正があつた場合には、その申告又は更正後の地方法人税の額)
ニ 相続税法第二十条の二(在外財産に対する相続税額の控除)、第二十一条の八(在外財産に対する贈与税額の控除)、第二十一条の十五第三項及び第二十一条の十六第四項(相続時精算課税に係る相続税額)の規定による控除をされるべき金額
ホ 消費税法第二条第一項第二十号(定義)に規定する中間納付額
4 次の各号に掲げる場合には、第一項又は第二項に規定する納付すべき税額から当該各号に定める税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除して、これらの項の規定を適用する。
一 第一項又は第二項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となつた事実のうちにその修正申告又は更正前の税額(還付金の額に相当する税額を含む。)の計算の基礎とされていなかつたことについて正当な理由があると認められるものがある場合 その正当な理由があると認められる事実に基づく税額
二 第一項の修正申告又は更正前に当該修正申告又は更正に係る国税について期限内申告書の提出により納付すべき税額を減少させる更正その他これに類するものとして政令で定める更正(更正の請求に基づく更正を除く。)があつた場合 当該期限内申告書に係る税額(還付金の額に相当する税額を含む。)に達するまでの税額
5 第一項の規定は、修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合において、その申告に係る国税についての調査に係る第七十四条の九第一項第四号及び第五号(納税義務者に対する調査の事前通知等)に掲げる事項その他政令で定める事項の通知(次条第六項において「調査通知」という。)がある前に行われたものであるときは、適用しない。


所得税法
(給与所得)
第二十八条 給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。
2 給与所得の金額は、その年中の給与等の収入金額から給与所得控除額を控除した残額とする。
3 前項に規定する給与所得控除額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 前項に規定する収入金額が百八十万円以下である場合 当該収入金額の百分の四十に相当する金額から十万円を控除した残額(当該残額が五十五万円に満たない場合には、五十五万円)
二 前項に規定する収入金額が百八十万円を超え三百六十万円以下である場合 六十二万円と当該収入金額から百八十万円を控除した金額の百分の三十に相当する金額との合計額
三 前項に規定する収入金額が三百六十万円を超え六百六十万円以下である場合 百十六万円と当該収入金額から三百六十万円を控除した金額の百分の二十に相当する金額との合計額
四 前項に規定する収入金額が六百六十万円を超え八百五十万円以下である場合 百七十六万円と当該収入金額から六百六十万円を控除した金額の百分の十に相当する金額との合計額
五 前項に規定する収入金額が八百五十万円を超える場合 百九十五万円
4 その年中の給与等の収入金額が六百六十万円未満である場合には、当該給与等に係る給与所得の金額は、前二項の規定にかかわらず、当該収入金額を別表第五の給与等の金額として、同表により当該金額に応じて求めた同表の給与所得控除後の給与等の金額に相当する金額とする。

(一時所得)
第三十四条 一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう。
2 一時所得の金額は、その年中の一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。)の合計額を控除し、その残額から一時所得の特別控除額を控除した金額とする。
3 前項に規定する一時所得の特別控除額は、五十万円(同項に規定する残額が五十万円に満たない場合には、当該残額)とする。