アメリカ合衆国国籍を有する外国人男性である原告Aが、日本国籍を有する男性である原告Bと米国において同性婚をしたとして、出入国管理及び難民認定法に基づき、「定住者」への在留資格の変更の申請をしたところ、東京入国管理局長から平成30年8月10日付けで「定住者」への在留資格の変更を許可しない旨の処分(以下「本件不許可処分」という。)を受け、その後、「定住者(又は『特定活動』)」への在留資格の変更の申請をしたところ、東京入管局長から令和元年8月22日付けで「定住者」への在留資格の変更を許可しないこと等を内容とする通知を受けたことから、本件不許可処分が無効であることの確認及び本件通知の取消しを求めるとともに、東京入管局長に対し「定住者」への在留資格の変更の許可の義務付けを求める事案である。
在留資格変更不許可処分無効確認等請求事件(第1事件)、国家賠償請求事件(第2事件)
【事件番号】 東京地方裁判所判決/令和元年(行ウ)第461号、令和元年(ワ)第24633号
【判決日付】 令和4年9月30日
【掲載誌】 LLI/DB 判例秘書登載
【評釈論文】 法学教室508号127頁
主 文
1 本件訴えのうち原告Aの第1事件に係る訴えを却下する。
2 原告らの第2事件に係る請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 第1事件
(1) 旧東京入国管理局長が平成30年8月10日付けで原告Aに対してした在留資格の変更を許可しない旨の処分が無効であることを確認する。
(2) 東京出入国在留管理局長が令和元年8月22日付けで原告Aに対してした在留資格の変更を許可しない旨の処分を取り消す。
(3) 東京出入国在留管理局長は、原告Aに対し、在留資格を「定住者」とする在留資格の変更の許可をせよ。
2 第2事件
被告は、原告らに対し、各550万円及びこれに対する令和元年9月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
第1事件は、アメリカ合衆国(以下「米国」という。)国籍を有する外国人男性である原告Aが、日本国籍を有する男性である原告Bと米国において同性婚(同性間における婚姻をいう。以下同じ。)をしたとして、出入国管理及び難民認定法(以下、平成30年法律第102号による改正の前後にかかわらず「入管法」という。)に基づき、「定住者」への在留資格の変更の申請をしたところ、東京入国管理局長(当時。以下、平成30年法律第102号によりその事務を承継した東京出入国在留管理局長と併せて「東京入管局長」という。)から平成30年8月10日付けで「定住者」への在留資格の変更を許可しない旨の処分(以下「本件不許可処分」という。)を受け、その後、「定住者(又は『特定活動』)」への在留資格の変更の申請をしたところ、東京入管局長から令和元年8月22日付けで「定住者」への在留資格の変更を許可しないこと等を内容とする通知(以下、「本件通知」といい、本件不許可処分と併せて「本件不許可処分等」という。)を受けたことから、本件不許可処分が無効であることの確認(以下、同請求に係る訴えを「本件無効確認の訴え」という。)及び本件通知の取消しを求める(以下、同請求に係る訴えを「本件取消しの訴え」という。)とともに、東京入管局長に対し「定住者」への在留資格の変更の許可の義務付けを求める(以下、同請求に係る訴えを「本件義務付けの訴え」という。)事案である。
第2事件は、原告らが、被告に対し、本件不許可処分等は東京入管局長が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用して行ったものであり、これにより原告らが本邦において家族を形成維持するという法的利益の侵害を受けたなどと主張して、国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき慰謝料等の損害賠償各550万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和元年9月27日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を求める(以下、同請求を「本件国賠請求」という。)事案である。
1 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記の証拠(証拠の表記は枝番を含む場合がある。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお、証拠を挙げていない事実は、当事者間に争いがない。)
(1) 原告らの身分事項
ア 原告Aは、昭和▲年(▲▲▲▲年)▲月▲日に米国において出生した米国籍を有する外国人男性である。
イ 原告Bは、昭和▲年▲月▲日に本邦において出生した日本国籍を有する日本人男性である。
ウ 原告Aと原告Bは、平成27年(2015年)▲月▲日、米国G州において、同州の方式にのっとり婚姻した(以下「本件婚姻」という。)。(甲3~6)
(2) 原告Aの出入国及び在留の状況
ア 前回までの出入国状況等
原告Aの平成26年4月24日以前の出入国及び在留の状況(再入国による出入国は省略する。以下「前回までの出入国状況等」という。)は、以下のとおりである。
(ア) 原告Aは、平成13年3月29日、新東京国際空港(当時。以下、平成16年4月1日の名称変更後の成田国際空港と併せて「成田空港」という。)に到着し、東京入国管理局(当時。以下、平成30年法律第102号による入管法改正後における東京出入国在留管理局と併せて「東京入管」という。)成田空港支局入国審査官から、在留資格を「短期滞在」、在留期間を「90日」とする上陸許可の証印を受けて本邦に上陸し、平成13年4月22日、本邦から出国した。
(イ) 原告Aは、平成21年3月25日、成田空港に到着し、東京入管成田空港支局入国審査官から、在留資格を「短期滞在」、在留期間を「90日」とする上陸許可の証印を受けて本邦に上陸し、同年4月22日、本邦から出国した。
(ウ) 原告Aは、平成22年2月6日、成田空港に到着し、東京入管成田空港支局入国審査官から、在留資格を「短期滞在」、在留期間を「90日」とする上陸許可の証印を受けて本邦に上陸し、同月17日、本邦から出国した。
(エ) 原告Aは、平成22年5月19日、在留資格「就学」(当時。以下同じ。)に係る在留資格認定証明書の交付を受け、同年6月3日、成田空港に到着し、東京入管成田空港支局入国審査官から、在留資格を「就学」、在留期間を「1年」とする上陸許可の証印を受けて本邦に上陸した。原告Aは、平成23年6月27日に在留資格を「留学」(当時。以下同じ。)、在留期間を「1年」とする在留期間の更新の許可を、平成24年6月25日に在留資格を「短期滞在」、在留期間を「90日」とする在留資格の変更の許可をそれぞれ受け、同年9月23日、本邦から出国した。
(オ) 原告Aは、平成25年7月7日、成田空港に到着し、東京入管成田空港支局入国審査官から、在留資格を「短期滞在」、在留期間を「90日」とする上陸許可の証印を受けて本邦に上陸し、同年9月28日、本邦から出国した。
(カ) 原告Aは、平成25年10月8日、成田空港に到着し、東京入管成田空港支局入国審査官から、在留資格を「短期滞在」、在留期間を「90日」とする上陸許可の証印を受けて本邦に上陸し、平成26年1月6日、本邦から出国した。
イ 今回の出入国状況等
原告Aの平成26年4月25日以降の出入国及び在留の状況(以下「今回の出入国状況等」という。)は、以下のとおりである。
(ア) 原告Aは、平成26年4月25日、在留資格「投資・経営」(当時。以下同じ。)に係る在留資格認定証明書の交付を受け、同年5月18日、成田空港に到着し、東京入管成田空港支局入国審査官から、在留資格を「投資・経営」、在留期間を「1年」とする上陸許可の証印を受けて本邦に上陸した(以下「今回の入国」という。)。
(イ) 原告Aは、平成26年9月8日、みなし再入国許可により本邦から出国し、同年11月2日、再入国許可により本邦に上陸した。
(ウ) 原告Aは、平成27年6月23日、在留期間を「1年」とする在留期間の更新の許可を受けた。
(エ) 原告Aは、平成27年7月2日、みなし再入国許可により本邦から出国し、同月12日、再入国許可により本邦に上陸した。
(オ) 原告Aは、平成27年10月4日、みなし再入国許可により本邦から出国した。
(カ) 原告Aと原告Bは、平成27年11月12日、米国において本件婚姻をした。
(キ) 原告Aは、平成27年11月30日、再入国許可により本邦に上陸した。
(ク) 原告Aは、平成27年12月24日、みなし再入国許可により本邦から出国し、平成28年1月7日、再入国許可により本邦に上陸した。
(ケ) 原告Aは、平成28年6月11日、みなし再入国許可により本邦から出国し、同月20日、再入国許可により本邦に上陸した。
(コ) 原告Aは、平成28年7月28日、在留期間を「1年」とする在留期間の更新の許可を受けた。
(サ) 原告Aは、平成28年9月14日、みなし再入国許可により本邦から出国し、同月26日、再入国許可により本邦に上陸した。
(シ) 原告Aは、平成28年11月7日、みなし再入国許可により本邦から出国し、同年12月1日、再入国許可により本邦に上陸した。
(ス) 原告Aは、平成29年5月25日、みなし再入国許可により本邦から出国し、同年6月5日、再入国許可により本邦に上陸した。
(セ) 原告Aは、平成29年9月25日、在留期間を「1年」とする在留期間の更新の許可を受けた。
(ソ) 原告Aは、平成29年9月26日、みなし再入国許可により本邦から出国し、同年10月6日、再入国許可により本邦に上陸した。
(3) 本件に係る経緯等
ア 原告Aは、平成30年7月5日、希望する在留資格を「定住者」とする在留資格の変更の申請をした(以下「本件申請1」という。)。(乙2の1)
イ 東京入管局長は、原告Aに対し、平成30年8月10日付けで、本件申請1について本件不許可処分をし、同日、その旨通知をした。(甲20、乙3)
ウ 原告Aは、在留期限であった平成30年9月25日、希望する在留資格を「定住者」とする在留資格の変更の申請をした。
エ 東京入管局長は、原告Aに対し、平成30年11月22日、上記ウの申請について、申請どおりの内容では許可することができないが、申請内容を「出国準備」を目的とする申請に変更するのであれば、申出書を提出されたい旨を通知した。
オ 原告Aは、平成30年11月22日、前記ウの申請について、申請内容を「出国準備」に変更する旨の申請内容変更申出書を提出し、これを受けて、東京入管局長は、原告Aに対し、同日、在留資格を「特定活動」・指定活動を「出国準備」(以下、このような在留資格等を単に「出国準備」と表記する。)とし、在留期間を「31日」、在留期限を「平成30年12月23日」とする在留資格の変更の許可をした。
カ 原告Aは、平成31年1月から令和元年5月までの間に、2度にわたり、在留資格を「出国準備」とする在留期間の更新の許可を受けた。(乙1の1)
キ 原告Aは、令和元年6月20日、希望する在留資格を「定住者(又は『特定活動』)」とする在留資格の変更の申請をした(以下「本件申請2」という。)。(乙4の1)
ク 東京入管局長は、原告Aに対し、令和元年8月22日、本件申請2について、申請どおりの内容では許可することができないが、申請内容を「出国準備」を目的とする申請に変更するのであれば、申出書を提出されたい旨を通知した(本件通知)。(乙5)
ケ 原告Aは、令和元年8月22日、本件申請2について、申請内容を「出国準備を目的とする在留期間の更新申請」に変更する旨の申請内容変更申出書(以下、「本件変更申出書」といい、本件変更申出書に係る申出を「本件変更申出」という。)を提出し、これを受けて、東京入管局長は、原告Aに対し、同日、在留資格を「出国準備」、在留期間を「89日」、在留期限を「令和元年9月19日」とする在留期間の更新の許可をした。(乙1の1、6)
コ 原告Aは、令和元年9月19日、希望する在留資格を「定住者(又は『特定活動』)」とする在留資格の変更の申請をした。
(4) 本件訴えの提起
原告Aは、令和元年9月12日、第1事件に係る本件訴えを提起した。(顕著な事実)
2 争点及び争点に関する当事者の主張の要旨
本件の争点は、①本件無効確認の訴えの確認の利益の有無、②本件通知の処分性の有無、③本件不許可処分等の違法性、④本件義務付けの訴えの適法性、⑤本件国賠請求の成否、⑥損害額である。