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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

アメリカ合衆国国籍を有する外国人男性である原告Aが、日本国籍を有する男性である原告Bと米国において同性婚をしたとして、出入国管理及び難民認定法に基づき、「定住者」への在留資格の変更の申請をしたところ、東京入国管理局長から平成30年8月10日付けで「定住者」への在留資格の変更を許可しない旨の処分(以下「本件不許可処分」という。)を受け、その後、「定住者(又は『特定活動』)」への在留資格の変更の申請をしたところ、東京入管局長から令和元年8月22日付けで「定住者」への在留資格の変更を許可しないこと等を内容とする通知を受けたことから、本件不許可処分が無効であることの確認及び本件通知の取消しを求めるとともに、東京入管局長に対し「定住者」への在留資格の変更の許可の義務付けを求める事案である。

 

 

在留資格変更不許可処分無効確認等請求事件(第1事件)、国家賠償請求事件(第2事件)

【事件番号】      東京地方裁判所判決/令和元年(行ウ)第461号、令和元年(ワ)第24633号

【判決日付】      令和4年9月30日

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      法学教室508号127頁

 

       主   文

 

 1 本件訴えのうち原告Aの第1事件に係る訴えを却下する。

 2 原告らの第2事件に係る請求をいずれも棄却する。

 3 訴訟費用は原告らの負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 請求

 1 第1事件

  (1) 旧東京入国管理局長が平成30年8月10日付けで原告Aに対してした在留資格の変更を許可しない旨の処分が無効であることを確認する。

  (2) 東京出入国在留管理局長が令和元年8月22日付けで原告Aに対してした在留資格の変更を許可しない旨の処分を取り消す。

  (3) 東京出入国在留管理局長は、原告Aに対し、在留資格を「定住者」とする在留資格の変更の許可をせよ。

 2 第2事件

   被告は、原告らに対し、各550万円及びこれに対する令和元年9月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

   第1事件は、アメリカ合衆国(以下「米国」という。)国籍を有する外国人男性である原告Aが、日本国籍を有する男性である原告Bと米国において同性婚(同性間における婚姻をいう。以下同じ。)をしたとして、出入国管理及び難民認定法(以下、平成30年法律第102号による改正の前後にかかわらず「入管法」という。)に基づき、「定住者」への在留資格の変更の申請をしたところ、東京入国管理局長(当時。以下、平成30年法律第102号によりその事務を承継した東京出入国在留管理局長と併せて「東京入管局長」という。)から平成30年8月10日付けで「定住者」への在留資格の変更を許可しない旨の処分(以下「本件不許可処分」という。)を受け、その後、「定住者(又は『特定活動』)」への在留資格の変更の申請をしたところ、東京入管局長から令和元年8月22日付けで「定住者」への在留資格の変更を許可しないこと等を内容とする通知(以下、「本件通知」といい、本件不許可処分と併せて「本件不許可処分等」という。)を受けたことから、本件不許可処分が無効であることの確認(以下、同請求に係る訴えを「本件無効確認の訴え」という。)及び本件通知の取消しを求める(以下、同請求に係る訴えを「本件取消しの訴え」という。)とともに、東京入管局長に対し「定住者」への在留資格の変更の許可の義務付けを求める(以下、同請求に係る訴えを「本件義務付けの訴え」という。)事案である。

   第2事件は、原告らが、被告に対し、本件不許可処分等は東京入管局長が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用して行ったものであり、これにより原告らが本邦において家族を形成維持するという法的利益の侵害を受けたなどと主張して、国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき慰謝料等の損害賠償各550万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和元年9月27日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を求める(以下、同請求を「本件国賠請求」という。)事案である。

 1 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記の証拠(証拠の表記は枝番を含む場合がある。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお、証拠を挙げていない事実は、当事者間に争いがない。)

  (1) 原告らの身分事項

   ア 原告Aは、昭和▲年(▲▲▲▲年)▲月▲日に米国において出生した米国籍を有する外国人男性である。

   イ 原告Bは、昭和▲年▲月▲日に本邦において出生した日本国籍を有する日本人男性である。

   ウ 原告Aと原告Bは、平成27年(2015年)▲月▲日、米国G州において、同州の方式にのっとり婚姻した(以下「本件婚姻」という。)。(甲3~6)

  (2) 原告Aの出入国及び在留の状況

   ア 前回までの出入国状況等

     原告Aの平成26年4月24日以前の出入国及び在留の状況(再入国による出入国は省略する。以下「前回までの出入国状況等」という。)は、以下のとおりである。

    (ア) 原告Aは、平成13年3月29日、新東京国際空港(当時。以下、平成16年4月1日の名称変更後の成田国際空港と併せて「成田空港」という。)に到着し、東京入国管理局(当時。以下、平成30年法律第102号による入管法改正後における東京出入国在留管理局と併せて「東京入管」という。)成田空港支局入国審査官から、在留資格を「短期滞在」、在留期間を「90日」とする上陸許可の証印を受けて本邦に上陸し、平成13年4月22日、本邦から出国した。

    (イ) 原告Aは、平成21年3月25日、成田空港に到着し、東京入管成田空港支局入国審査官から、在留資格を「短期滞在」、在留期間を「90日」とする上陸許可の証印を受けて本邦に上陸し、同年4月22日、本邦から出国した。

    (ウ) 原告Aは、平成22年2月6日、成田空港に到着し、東京入管成田空港支局入国審査官から、在留資格を「短期滞在」、在留期間を「90日」とする上陸許可の証印を受けて本邦に上陸し、同月17日、本邦から出国した。

    (エ) 原告Aは、平成22年5月19日、在留資格「就学」(当時。以下同じ。)に係る在留資格認定証明書の交付を受け、同年6月3日、成田空港に到着し、東京入管成田空港支局入国審査官から、在留資格を「就学」、在留期間を「1年」とする上陸許可の証印を受けて本邦に上陸した。原告Aは、平成23年6月27日に在留資格を「留学」(当時。以下同じ。)、在留期間を「1年」とする在留期間の更新の許可を、平成24年6月25日に在留資格を「短期滞在」、在留期間を「90日」とする在留資格の変更の許可をそれぞれ受け、同年9月23日、本邦から出国した。

    (オ) 原告Aは、平成25年7月7日、成田空港に到着し、東京入管成田空港支局入国審査官から、在留資格を「短期滞在」、在留期間を「90日」とする上陸許可の証印を受けて本邦に上陸し、同年9月28日、本邦から出国した。

    (カ) 原告Aは、平成25年10月8日、成田空港に到着し、東京入管成田空港支局入国審査官から、在留資格を「短期滞在」、在留期間を「90日」とする上陸許可の証印を受けて本邦に上陸し、平成26年1月6日、本邦から出国した。

   イ 今回の出入国状況等

     原告Aの平成26年4月25日以降の出入国及び在留の状況(以下「今回の出入国状況等」という。)は、以下のとおりである。

    (ア) 原告Aは、平成26年4月25日、在留資格「投資・経営」(当時。以下同じ。)に係る在留資格認定証明書の交付を受け、同年5月18日、成田空港に到着し、東京入管成田空港支局入国審査官から、在留資格を「投資・経営」、在留期間を「1年」とする上陸許可の証印を受けて本邦に上陸した(以下「今回の入国」という。)。

    (イ) 原告Aは、平成26年9月8日、みなし再入国許可により本邦から出国し、同年11月2日、再入国許可により本邦に上陸した。

    (ウ) 原告Aは、平成27年6月23日、在留期間を「1年」とする在留期間の更新の許可を受けた。

    (エ) 原告Aは、平成27年7月2日、みなし再入国許可により本邦から出国し、同月12日、再入国許可により本邦に上陸した。

    (オ) 原告Aは、平成27年10月4日、みなし再入国許可により本邦から出国した。

    (カ) 原告Aと原告Bは、平成27年11月12日、米国において本件婚姻をした。

    (キ) 原告Aは、平成27年11月30日、再入国許可により本邦に上陸した。

    (ク) 原告Aは、平成27年12月24日、みなし再入国許可により本邦から出国し、平成28年1月7日、再入国許可により本邦に上陸した。

    (ケ) 原告Aは、平成28年6月11日、みなし再入国許可により本邦から出国し、同月20日、再入国許可により本邦に上陸した。

    (コ) 原告Aは、平成28年7月28日、在留期間を「1年」とする在留期間の更新の許可を受けた。

    (サ) 原告Aは、平成28年9月14日、みなし再入国許可により本邦から出国し、同月26日、再入国許可により本邦に上陸した。

    (シ) 原告Aは、平成28年11月7日、みなし再入国許可により本邦から出国し、同年12月1日、再入国許可により本邦に上陸した。

    (ス) 原告Aは、平成29年5月25日、みなし再入国許可により本邦から出国し、同年6月5日、再入国許可により本邦に上陸した。

    (セ) 原告Aは、平成29年9月25日、在留期間を「1年」とする在留期間の更新の許可を受けた。

    (ソ) 原告Aは、平成29年9月26日、みなし再入国許可により本邦から出国し、同年10月6日、再入国許可により本邦に上陸した。

  (3) 本件に係る経緯等

   ア 原告Aは、平成30年7月5日、希望する在留資格を「定住者」とする在留資格の変更の申請をした(以下「本件申請1」という。)。(乙2の1)

   イ 東京入管局長は、原告Aに対し、平成30年8月10日付けで、本件申請1について本件不許可処分をし、同日、その旨通知をした。(甲20、乙3)

   ウ 原告Aは、在留期限であった平成30年9月25日、希望する在留資格を「定住者」とする在留資格の変更の申請をした。

   エ 東京入管局長は、原告Aに対し、平成30年11月22日、上記ウの申請について、申請どおりの内容では許可することができないが、申請内容を「出国準備」を目的とする申請に変更するのであれば、申出書を提出されたい旨を通知した。

   オ 原告Aは、平成30年11月22日、前記ウの申請について、申請内容を「出国準備」に変更する旨の申請内容変更申出書を提出し、これを受けて、東京入管局長は、原告Aに対し、同日、在留資格を「特定活動」・指定活動を「出国準備」(以下、このような在留資格等を単に「出国準備」と表記する。)とし、在留期間を「31日」、在留期限を「平成30年12月23日」とする在留資格の変更の許可をした。

   カ 原告Aは、平成31年1月から令和元年5月までの間に、2度にわたり、在留資格を「出国準備」とする在留期間の更新の許可を受けた。(乙1の1)

   キ 原告Aは、令和元年6月20日、希望する在留資格を「定住者(又は『特定活動』)」とする在留資格の変更の申請をした(以下「本件申請2」という。)。(乙4の1)

   ク 東京入管局長は、原告Aに対し、令和元年8月22日、本件申請2について、申請どおりの内容では許可することができないが、申請内容を「出国準備」を目的とする申請に変更するのであれば、申出書を提出されたい旨を通知した(本件通知)。(乙5)

   ケ 原告Aは、令和元年8月22日、本件申請2について、申請内容を「出国準備を目的とする在留期間の更新申請」に変更する旨の申請内容変更申出書(以下、「本件変更申出書」といい、本件変更申出書に係る申出を「本件変更申出」という。)を提出し、これを受けて、東京入管局長は、原告Aに対し、同日、在留資格を「出国準備」、在留期間を「89日」、在留期限を「令和元年9月19日」とする在留期間の更新の許可をした。(乙1の1、6)

   コ 原告Aは、令和元年9月19日、希望する在留資格を「定住者(又は『特定活動』)」とする在留資格の変更の申請をした。

  (4) 本件訴えの提起

    原告Aは、令和元年9月12日、第1事件に係る本件訴えを提起した。(顕著な事実)

 2 争点及び争点に関する当事者の主張の要旨

   本件の争点は、①本件無効確認の訴えの確認の利益の有無、②本件通知の処分性の有無、③本件不許可処分等の違法性、④本件義務付けの訴えの適法性、⑤本件国賠請求の成否、⑥損害額である。

 

 

 

共同住宅の各部屋の雑排水管が共用部分であるとされた事例

 

 

工事代金等請求事件

【事件番号】      東京地方裁判所判決/平成2年(ワ)第9240号

【判決日付】      平成3年11月29日

【判示事項】      1 共同住宅の各部屋の雑排水管が共用部分であるとされた事例

             2 管理組合が右雑排水管工事の費用負担につき行った決議が有効とされた事例

【参照条文】      建物区分所有法4

             建物区分所有法18

【掲載誌】        判例時報1431号138頁

【評釈論文】      判例評論413号33頁

 

 

 

昭和三十七年法律第六十九号

建物の区分所有等に関する法律

(共用部分)

第四条 数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。

2 第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

 

(共用部分の管理)

第十八条 共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。

3 前条第二項の規定は、第一項本文の場合に準用する。

4 共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。

 

最高裁判所裁判官国民審査法が在外国民に最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査に係る審査権の行使を全く認めていないことと憲法15条1項,79条2項,3項

 

 

在外日本人国民審査権確認等,国家賠償請求上告,同附帯上告事件

【事件番号】      最高裁判所大法廷判決/令和2年(行ツ)第255号、令和2年(行ヒ)第290号、令和2年(行ヒ)第291号、令和2年(行ヒ)第292号

【判決日付】      令和4年5月25日

【判示事項】      1 最高裁判所裁判官国民審査法が在外国民に最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査に係る審査権の行使を全く認めていないことと憲法15条1項,79条2項,3項

             2 国が在外国民に対して次回の最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査において審査権の行使をさせないことが違法であることの確認を求める訴えの適否

             3 国会において在外国民に最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査に係る審査権の行使を認める制度を創設する立法措置がとられなかったことが国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるとされた事例

【判決要旨】      1 最高裁判所裁判官国民審査法が在外国民(国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民)に最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査に係る審査権の行使を全く認めていないことは,憲法15条1項,79条2項,3項に違反する。

             2 国が在外国民(国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民)に対して国外に住所を有することをもって次回の最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査において審査権の行使をさせないことが憲法15条1項,79条2項,3項等に違反して違法であることの確認を求める訴えは,公法上の法律関係に関する確認の訴えとして適法である。

             3 国会において在外国民(国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民)に最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査に係る審査権の行使を認める制度を創設する立法措置がとられなかったことは,次の(1)~(3)など判示の事情の下では,平成29年10月22日に施行された上記審査の当時において,国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受ける。

             (1)国会においては,平成10年,在外国民に国政選挙の選挙権の行使を認める制度を創設する法律案に関連して,在外国民に審査権の行使を認める制度についての質疑がされた。

             (2)平成17年,最高裁判所大法廷判決により在外国民に対する選挙権の制約に係る憲法適合性について判断が示され,これを受けて,同18年の法改正により在外国民に国政選挙の選挙権の行使を認める制度の対象が広げられ,同19年,在外国民に憲法改正についての国民の承認に係る投票の投票権の行使を認める法律も制定された。

             (3)在外国民に審査権の行使を認める制度の創設に当たり検討すべき課題があったものの,その課題は運用上の技術的な困難にとどまり,これを解決することが事実上不可能ないし著しく困難であったとまでは考え難い。

             (1,2につき,補足意見がある。)

【参照条文】      憲法79-2

             憲法79-3

             憲法79-4

             最高裁判所裁判官国民審査法

             最高裁判所裁判官国民審査法8

             憲法15-1

             行政事件訴訟法4

             国家賠償法1-1

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集76巻4号711頁

             判例タイムズ1501号52頁

             判例時報2536号44頁

             LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      判例秘書ジャーナルHJ100154

             法学セミナー67巻8号120頁

             法律時報94巻9号4頁

 

 

憲法

第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。

② すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。

③ 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。

④ すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

第十六条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

 

第七十九条 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。

② 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。

③ 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。

④ 審査に関する事項は、法律でこれを定める。

⑤ 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。

⑥ 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

 

 

最高裁判所裁判官国民審査法

第四条(審査権) 衆議院議員の選挙権を有する者は、審査権を有する。

 

第八条(審査人の名簿) 審査には、公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)に規定する選挙人名簿及び在外選挙人名簿で衆議院議員総選挙について用いられるものを用いる。

 

 

行政事件訴訟法

(当事者訴訟)

第四条 この法律において「当事者訴訟」とは、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの及び公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう。

 

 

国家賠償法

第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

② 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

 

商法違反(特別背任)罪における背任目的の主従と同罪の成否

 

 

商法違反(特別背任)被告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷決定/昭和32年(あ)第2459号

【判決日付】      昭和35年8月12日

【判示事項】      1、商法違反(特別背任)罪における背任目的の主従と同罪の成否

             2、商法違反(特別背任)罪における背任目的の変更と訴因変更手続の要否

【判決要旨】     1、主として第三者に不法に融資して自己の利益を図る目的がある以上、たとえ従として右融資により本人のため事故金を回収してその補填を図る目的があったとしても、なお商法第486条第1項違反(特別背任)罪の成立を免れない。

             2、商法第486条第1項違反(特別背任)罪につき、「第三者の利益を図る目的をもって」という訴因を、判決で「自己の利益を図る目的をもって」と変更して認定するには、訴因変更の手続を必要としない。

【参照条文】      商法486-1

             刑事訴訟法312

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集14巻10号1360頁

 

 

会社法

(取締役等の特別背任罪)

第九百六十条 次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

一 発起人

二 設立時取締役又は設立時監査役

三 取締役、会計参与、監査役又は執行役

四 民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された取締役、監査役又は執行役の職務を代行する者

五 第三百四十六条第二項、第三百五十一条第二項又は第四百一条第三項(第四百三条第三項及び第四百二十条第三項において準用する場合を含む。)の規定により選任された一時取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役)、会計参与、監査役、代表取締役、委員(指名委員会、監査委員会又は報酬委員会の委員をいう。)、執行役又は代表執行役の職務を行うべき者

六 支配人

七 事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人

八 検査役

2 次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は清算株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該清算株式会社に財産上の損害を加えたときも、前項と同様とする。

一 清算株式会社の清算人

二 民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された清算株式会社の清算人の職務を代行する者

三 第四百七十九条第四項において準用する第三百四十六条第二項又は第四百八十三条第六項において準用する第三百五十一条第二項の規定により選任された一時清算人又は代表清算人の職務を行うべき者

四 清算人代理

五 監督委員

六 調査委員

 

 

日通事件・国際海上物品運送契約における運送人の債務不履行責任と不法行為責任の関係

 

 

損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和43年(オ)第58号

【判決日付】      昭和44年10月17日

【判示事項】      国際海上物品運送契約における運送人の債務不履行責任と不法行為責任の関係

【判決要旨】      国際海上物品運送契約における運送人の債務不履行に基づく損害賠償請求権と不法行為に基づく損害賠償請求権とは競合して成立し、後者は、運送品の取扱上通常予想される事態ではなく、契約本来の目的範囲を著しく逸脱する場合にだけ成立するものではない。

【参照条文】      民法415

             民法709

             民法715

             商法766

             商法566

             商法577

             商法578

             商法579

             商法580

             商法581

             国際海上物品運送法14

             国際海上物品運送法20-2

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事97号35頁

             判例タイムズ241号80頁

             金融・商事判例192号2頁

             判例時報575号71頁

 

 

 

民法

(債務不履行による損害賠償)

第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。

一 債務の履行が不能であるとき。

二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

 

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

(使用者等の責任)

第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。

3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

 

 

商法

(高価品の特則)

第五百七十七条 貨幣、有価証券その他の高価品については、荷送人が運送を委託するに当たりその種類及び価額を通知した場合を除き、運送人は、その滅失、損傷又は延着について損害賠償の責任を負わない。

2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。

一 物品運送契約の締結の当時、運送品が高価品であることを運送人が知っていたとき。

二 運送人の故意又は重大な過失によって高価品の滅失、損傷又は延着が生じたとき。

(複合運送人の責任)

第五百七十八条 陸上運送、海上運送又は航空運送のうち二以上の運送を一の契約で引き受けた場合における運送品の滅失等(運送品の滅失、損傷又は延着をいう。以下この節において同じ。)についての運送人の損害賠償の責任は、それぞれの運送においてその運送品の滅失等の原因が生じた場合に当該運送ごとに適用されることとなる我が国の法令又は我が国が締結した条約の規定に従う。

2 前項の規定は、陸上運送であってその区間ごとに異なる二以上の法令が適用されるものを一の契約で引き受けた場合について準用する。

(相次運送人の権利義務)

第五百七十九条 数人の運送人が相次いで陸上運送をするときは、後の運送人は、前の運送人に代わってその権利を行使する義務を負う。

2 前項の場合において、後の運送人が前の運送人に弁済をしたときは、後の運送人は、前の運送人の権利を取得する。

3 ある運送人が引き受けた陸上運送についてその荷送人のために他の運送人が相次いで当該陸上運送の一部を引き受けたときは、各運送人は、運送品の滅失等につき連帯して損害賠償の責任を負う。

4 前三項の規定は、海上運送及び航空運送について準用する。

(荷送人による運送の中止等の請求)

第五百八十条 荷送人は、運送人に対し、運送の中止、荷受人の変更その他の処分を請求することができる。この場合において、運送人は、既にした運送の割合に応じた運送賃、付随の費用、立替金及びその処分によって生じた費用の弁済を請求することができる。

(荷受人の権利義務等)

第五百八十一条 荷受人は、運送品が到達地に到着し、又は運送品の全部が滅失したときは、物品運送契約によって生じた荷送人の権利と同一の権利を取得する。

2 前項の場合において、荷受人が運送品の引渡し又はその損害賠償の請求をしたときは、荷送人は、その権利を行使することができない。

3 荷受人は、運送品を受け取ったときは、運送人に対し、運送賃等を支払う義務を負う。

 

 

ナショナル・ウエストミンスター銀行(三次仮処分)事件(


地位保全等仮処分申立事件
【事件番号】    東京地方裁判所決定/平成11年(ヨ)第21217号
【判決日付】    平成12年1月21日
【判示事項】    一 整理解雇における解雇権濫用の有無の判断は、本来事案ごとの個別的具体的な事情を総合考慮して行うべきものとし、いわゆる「整理解雇の四要件」の充足の有無による判断が退けられた例
          二 本件事業部門の閉鎖に伴う整理解雇が、「雇用契約解消の合理性」、「雇用契約解消後の債権者の生活維持等に対する配慮」、「本件解雇に至る手続」に照らし、解雇権の濫用に当たらないとされた例
          三 債権者の地位保全等の仮処分申立てが却下された例
【掲載誌】     労働判例782号23頁
          労働経済判例速報1755号3頁
【評釈論文】    別冊ジュリスト165号170頁


労働契約法
(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。


 

供託金額の不足が弁済提供および供託の効力に影響を及ぼさない事例

 

 

所有権確認及び損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和33年(オ)第483号

【判決日付】      昭和35年12月15日

【判示事項】      1、供託金額の不足が弁済提供および供託の効力に影響を及ぼさない事例

             2、売渡担保の目的物返還義務不履行による損害額算定の時期

【判決要旨】      1、消費貸借上の債務弁済のため提供供託された元利合計金153,140円が、正当な元利合計額に金1,300余円不足するとしても、この一事により弁済提供および供託の効果を否定することはできない。

             2、債権者が弁済期到来前売渡担保の目的物である山林の立木を伐採したため、弁済により右山林の所有権が債務者に復帰した場合立木の引渡不能によつて債務者の被るべき損害の額は、右不能が確定的となつた伐採時の価格を基準として算定すべきである。

【参照条文】      民法492

             民法494

             民法415

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集14巻14号3060頁

 

 

民法

(弁済の提供の効果)

第四百九十二条 債務者は、弁済の提供の時から、債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる。

 

(供託)

第四百九十四条 弁済者は、次に掲げる場合には、債権者のために弁済の目的物を供託することができる。この場合においては、弁済者が供託をした時に、その債権は、消滅する。

一 弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき。

二 債権者が弁済を受領することができないとき。

2 弁済者が債権者を確知することができないときも、前項と同様とする。ただし、弁済者に過失があるときは、この限りでない。

 

(債務不履行による損害賠償)

第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。

一 債務の履行が不能であるとき。

二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

 

 

再任取締役の現在の任期前に発生・判明した取締役解任の事由は、再任の株主総会で取締役としての適格が認められているから、再任取締役の解任事由とすることはできないとされた事例

 

 

取締役解任請求事件

【事件番号】      宮崎地方裁判所判決/平成21年(ワ)第1031号

【判決日付】      平成22年9月3日

【判示事項】      再任取締役の現在の任期前に発生・判明した取締役解任の事由は、再任の株主総会で取締役としての適格が認められているから、再任取締役の解任事由とすることはできないとされた事例

【参照条文】      会社法854

【掲載誌】        判例時報2094号140頁

 

 

会社法

(株式会社の役員の解任の訴え)

第八百五十四条 役員(第三百二十九条第一項に規定する役員をいう。以下この節において同じ。)の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、当該役員を解任する旨の議案が株主総会において否決されたとき又は当該役員を解任する旨の株主総会の決議が第三百二十三条の規定によりその効力を生じないときは、次に掲げる株主は、当該株主総会の日から三十日以内に、訴えをもって当該役員の解任を請求することができる。

一 総株主(次に掲げる株主を除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主(次に掲げる株主を除く。)

イ 当該役員を解任する旨の議案について議決権を行使することができない株主

ロ 当該請求に係る役員である株主

二 発行済株式(次に掲げる株主の有する株式を除く。)の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主(次に掲げる株主を除く。)

イ 当該株式会社である株主

ロ 当該請求に係る役員である株主

2 公開会社でない株式会社における前項各号の規定の適用については、これらの規定中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。

3 第百八条第一項第九号に掲げる事項(取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役)に関するものに限る。)についての定めがある種類の株式を発行している場合における第一項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「株主総会(第三百四十七条第一項の規定により読み替えて適用する第三百三十九条第一項の種類株主総会を含む。)」とする。

4 第百八条第一項第九号に掲げる事項(監査役に関するものに限る。)についての定めがある種類の株式を発行している場合における第一項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「株主総会(第三百四十七条第二項の規定により読み替えて適用する第三百三十九条第一項の種類株主総会を含む。)」とする。

 

 

甲・乙・丙・丁4名の旅行費用を甲が戊名義で開設した銀行の普通預金口座に積み立てていた預金債権が甲に帰属する場合と当該預金債権を差し押さえてその全額の払戻しを受けた甲の債権者に対する乙・丙・丁3名の積立金に係る各自の不当利得返還請求の可否(消極)

 

 

不当利得返還請求事件(第1事件、第2事件、第4事件)、預金支払請求事件(第3事件)

【事件番号】      東京地方裁判所判決/平成22年(ワ)第21958号、平成22年(ワ)第362号、平成23年(ワ)第12750号、平成24年(ワ)第5503号

【判決日付】      平成24年6月15日

【判示事項】      1 甲・乙・丙・丁4名の旅行費用を甲が戊名義で開設した銀行の普通預金口座に積み立てていた場合と当該預金債権を差し押さえてその全額の払戻しを受けた甲の債権者に対する不当利得返還請求訴訟ないしその払戻しの無効を前提とする当該銀行に対する当該預金債権の払戻請求訴訟における戊の当事者能力の有無(消極)

             2 甲・乙・丙・丁4名の旅行費用を甲が戊名義で開設した銀行の普通預金口座に積み立てていた場合と当該預金債権の帰属主体

             3 甲・乙・丙・丁4名の旅行費用を甲が戊名義で開設した銀行の普通預金口座に積み立てていた預金債権が甲に帰属する場合と当該預金債権のうち、乙・丙・丁3名の積立金の性質

             4 甲・乙・丙・丁4名の旅行費用を甲が戊名義で開設した銀行の普通預金口座に積み立てていた預金債権が甲に帰属する場合と当該預金債権を差し押さえてその全額の払戻しを受けた甲の債権者に対する乙・丙・丁3名の積立金に係る各自の不当利得返還請求の可否(消極)

             5 甲・乙・丙・丁4名の旅行費用を甲が戊名義で開設した銀行の普通預金口座に積み立てていた預金債権が甲に帰属する場合と当該預金債権を差し押さえてその全額の払戻しを受けた甲の債権者に対する乙・丙・丁3名の積立金に係る甲の不当利得返還請求の可否(積極)

【判決要旨】      1 甲・乙・丙・丁4名の旅行費用を甲が戊名義で開設した銀行の普通預金口座に積み立てていた場合において、以下の(1)の事情または(2)の事情が認められるときは、戊は、当該預金債権を差し押さえてその全額の払戻しを受けた甲の債権者に対する不当利得返還請求訴訟ないしその払戻しの無効を前提とする当該銀行に対する当該預金債権の払戻請求訴訟において、(1)民事執行法29条所定の「法人でない社団等」としても、また、(2)民法上の「組合」としても、いずれも当事者能力を有しない。

             (1) 戊が、長年の友人である4名が海外旅行などに行くための資金を当該口座に積み立てることを主たる目的とするものであって、構成員の個性が極めて高く、その変更にかかわらず構成員から独立した社団として存続するものとは認められないとき

             (2) 戊が、形式的には、各構成員が一定の出資を行い、旅行という事業を共同しているものとみえなくもないが、その実質は、海外旅行に行くために、共通の当該口座に個々人の旅行費用を積み立てていくものでしかなく、個人の活動を超えた組合としての「共同の事業」の実体があるとはいい難い上に、当該口座に入金された積立金も、組合財産として各個人の一般財産から区別されて扱われるべき実質を備えたものといえないだけでなく、銀行としても、特定の団体との間で普通預金契約を締結する意思を有しなかったことが明らかであるとき

             2 甲・乙・丙・丁4名の旅行費用を甲が戊名義で開設した銀行の普通預金口座に積み立てていた場合において、戊に「法人でない社団等」ないし「組合」としての実体がなく、銀行との間で、当該口座の開設、その後の継続的な入出金、通帳その他の管理を行ったのが専ら甲であって、口座名義上も「戊代表者甲」として甲のみが表示され、乙・丙・丁3名は一切表示されていないときは、当該預金債権は甲に帰属する。

             3 甲・乙・丙・丁4名の旅行費用を甲が戊名義で開設した銀行の普通預金口座に積み立てていた預金債権が甲に帰属する場合において、乙・丙・丁3名が、甲との間で、専ら当該4名で旅行するための資金として管理し、使用することを目的として甲に金員を支払い、甲をして、当該口座を開設させ、上記目的のために当該金員を当該口座において管理し、または使用させる旨の合意をしていたと認められるときは、乙・丙・丁3名を委託者兼受益者、甲を受託者とする信託契約が成立していたというべきであるから、当該預金債権のうち、乙・丙・丁3名の積立金は、甲に対する信託財産を構成する。

             4 甲・乙・丙・丁4名の旅行費用を甲が戊名義で開設した銀行の普通預金口座に積み立てていた預金債権が甲に帰属する場合において、乙・丙・丁3名の積立金が甲に対する信託財産を構成するときであっても、当該預金債権を差し押さえてその全額の払戻しを受けた甲の債権者に対し、乙・丙・丁は、各自の積立金につき、甲に対する受益権が存在する以上、当該払戻しによってこれが害されることはなく、不当利得として、その返還を請求することはできない。

             5 甲・乙・丙・丁4名の旅行費用を甲が戊名義で開設した銀行の普通預金口座に積み立てていた預金債権が甲に帰属する場合において、乙・丙・丁3名の積立金が甲に対する信託財産を構成するときは、当該預金債権を差し押さえてその全額の払戻しを受けた甲の債権者に対し、甲は、乙・丙・丁3名の積立金につき、当該信託財産の受託者として損失を被り、他方、当該債権者は、これを法律上の原因に基づかないで利得することになる以上、不当利得として、その返還を請求することができる。

【参照条文】      民事訴訟法29

             民法667

             民法666

             信託法

             旧信託法(平成18年法律第109号により「公益信託ニ関スル法律」と改題される前の信託法)1

             民法668

             民法703

             信託法23

             信託法26

             信託法40

             旧信託法(平成18年法律第109号により「公益信託ニ関スル法律」と改題される前の信託法)16

             旧信託法(平成18年法律第109号により「公益信託ニ関スル法律」と改題される前の信託法)20

             旧信託法(平成18年法律第109号により「公益信託ニ関スル法律」と改題される前の信託法)27

【掲載誌】        金融・商事判例1406号47頁

             判例時報2166号73頁

【評釈論文】      信託フォーラム1号136頁

 

 

民事訴訟法

(法人でない社団等の当事者能力)

第二十九条 法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる。

 

 

民法

(消費寄託)

第六百六十六条 受寄者が契約により寄託物を消費することができる場合には、受寄者は、寄託された物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還しなければならない。

2 第五百九十条及び第五百九十二条の規定は、前項に規定する場合について準用する。

3 第五百九十一条第二項及び第三項の規定は、預金又は貯金に係る契約により金銭を寄託した場合について準用する。

 

(組合契約)

第六百六十七条 組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる。

2 出資は、労務をその目的とすることができる。

 

(組合財産の共有)

第六百六十八条 各組合員の出資その他の組合財産は、総組合員の共有に属する。

 

(不当利得の返還義務)

第七百三条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

 

 

信託法

(信託の方法)

第三条 信託は、次に掲げる方法のいずれかによってする。

一 特定の者との間で、当該特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の契約(以下「信託契約」という。)を締結する方法

二 特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の遺言をする方法

三 特定の者が一定の目的に従い自己の有する一定の財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為を自らすべき旨の意思表示を公正証書その他の書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)で当該目的、当該財産の特定に必要な事項その他の法務省令で定める事項を記載し又は記録したものによってする方法

 

(信託財産に属する財産に対する強制執行等の制限等)

第二十三条 信託財産責任負担債務に係る債権(信託財産に属する財産について生じた権利を含む。次項において同じ。)に基づく場合を除き、信託財産に属する財産に対しては、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売(担保権の実行としてのものを除く。以下同じ。)又は国税滞納処分(その例による処分を含む。以下同じ。)をすることができない。

2 第三条第三号に掲げる方法によって信託がされた場合において、委託者がその債権者を害することを知って当該信託をしたときは、前項の規定にかかわらず、信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者のほか、当該委託者(受託者であるものに限る。)に対する債権で信託前に生じたものを有する者は、信託財産に属する財産に対し、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売又は国税滞納処分をすることができる。

3 第十一条第一項ただし書、第七項及び第八項の規定は、前項の規定の適用について準用する。

4 前二項の規定は、第二項の信託がされた時から二年間を経過したときは、適用しない。

5 第一項又は第二項の規定に違反してされた強制執行、仮差押え、仮処分又は担保権の実行若しくは競売に対しては、受託者又は受益者は、異議を主張することができる。この場合においては、民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第三十八条及び民事保全法(平成元年法律第九十一号)第四十五条の規定を準用する。

6 第一項又は第二項の規定に違反してされた国税滞納処分に対しては、受託者又は受益者は、異議を主張することができる。この場合においては、当該異議の主張は、当該国税滞納処分について不服の申立てをする方法でする。

 

(受託者の権限の範囲)

第二十六条 受託者は、信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をする権限を有する。ただし、信託行為によりその権限に制限を加えることを妨げない。

 

(受託者の損失てん補責任等)

第四十条 受託者がその任務を怠ったことによって次の各号に掲げる場合に該当するに至ったときは、受益者は、当該受託者に対し、当該各号に定める措置を請求することができる。ただし、第二号に定める措置にあっては、原状の回復が著しく困難であるとき、原状の回復をするのに過分の費用を要するとき、その他受託者に原状の回復をさせることを不適当とする特別の事情があるときは、この限りでない。

一 信託財産に損失が生じた場合 当該損失のてん補

二 信託財産に変更が生じた場合 原状の回復

2 受託者が第二十八条の規定に違反して信託事務の処理を第三者に委託した場合において、信託財産に損失又は変更を生じたときは、受託者は、第三者に委託をしなかったとしても損失又は変更が生じたことを証明しなければ、前項の責任を免れることができない。

3 受託者が第三十条、第三十一条第一項及び第二項又は第三十二条第一項及び第二項の規定に違反する行為をした場合には、受託者は、当該行為によって受託者又はその利害関係人が得た利益の額と同額の損失を信託財産に生じさせたものと推定する。

4 受託者が第三十四条の規定に違反して信託財産に属する財産を管理した場合において、信託財産に損失又は変更を生じたときは、受託者は、同条の規定に従い分別して管理をしたとしても損失又は変更が生じたことを証明しなければ、第一項の責任を免れることができない。

 

 

 

 

       主   文

 

 1 原告戊の会の訴えをいずれも却下する。

 2 被告アビリオは、原告X5に対し、181万3236円を支払え。

 3 原告X2、同X3及び同X4の被告アビリオに対する請求をいずれも棄却する。

 4 訴訟費用は、原告X5と被告アビリオとの間に生じたものは、被告アビリオの負担とし、その余は、原告らの負担とする。

 5 この判決は、主文第2項に限り、仮に執行することができる。

 

       事実及び理由

 

第1 請求

(第1事件)

 被告アビリオは、原告戊の会に対し、241万7648円を支払え。

(第2事件)

 被告アビリオは、原告X2、同X3、同X4に対し、それぞれ60万4412円を支払え。

(第3事件)

 被告銀行は、原告戊の会に対し、241万7648円を支払え。

(第4事件)

 主文第2項同旨

第2 事案の概要

1 本件は、被告アビリオ(旧商号 三洋信販債権回収株式会社)が、原告X5ことX5’(以下「原告X5」という。)に対する債務名義に基づき、被告銀行築地支店における「戊の会 代表者 X5」名義の預金債権を差し押え、被告銀行から同預金債権全額を取り立てたところ、第1事件では、原告戊の会が、同原告は民法上の組合であって、上記預金債権は同組合に帰属するとして、被告アビリオに対し、不当利得返還請求権に基づき、取立相当額の返還を求め、第2事件では、上記預金債権は原告X2、同X3及び同X4(以下「原告X2ら」という。)にそれぞれ4分の1ずつ帰属するものであるとして、あるいは同原告らを委託者兼受益者、原告X5を受託者とする信託財産であるとして、同原告らが被告アビリオに対し、不当利得返還請求権に基づき、それぞれ上記取立相当額の4分の1の返還を求め、第3事件では、原告戊の会が、被告銀行に対し、上記預金債権は依然として民法上の組合である同原告に帰属するとして、普通預金契約に基づく預金返還請求権として、上記取立相当額に相当する預金の支払いを求め、第4事件では、原告X5が、上記預金債権のうち4分の3は原告X2らを委託者兼受益者、原告X5を受託者とする信託財産であるとして、被告アビリオに対し、不当利得返還請求権に基づき、上記取立相当額の4分の3の返還を求めた事案である。

2 前提事実(当事者間に争いがないか、証拠により容易に認定できる事実)

 (1) 原告X2らと原告X5(以下「原告ら4名」という。)は、親しい友人同士であり、定期的に4名で旅行に出かけていたが、平成12年ころ、その費用を積み立てるための銀行預金口座を開設することとして、原告X5が被告銀行(当時の商号は、東京三菱銀行)(当時の月島支店)との間で、口座名義を「戊の会 代表者 X5」(以下「本件口座名義」という。)とする普通預金契約を締結して普通預金口座(口座番号〈略〉)を開設し(以下、同契約を「本件預金契約」といい、これに基づく普通預金債権を「本件預金債権」、同口座を「本件口座」という。)、その普通預金通帳及びカードは、原告X5が保管し、原告ら4名は、毎月各自5000円から1万円を本件口座に入金ないし振込送金して積み立てていた。(甲1の1・2、3、8、11)

 (2) 被告アビリオ(当時の商号は三洋信販債権回収株式会社)は、平成21年8月21日、千葉地方法務局所属公証人間中彦次作成平成元年第3004号債務承認弁済契約公正証書の執行力ある正本に基づき、これに表示された原告X5に対する債権(合計3138万2443円)を請求債権、原告X5の被告銀行(築地支店扱い)普通預金債権等(348万6938円)を差押債権とする債権差押命令(東京地方裁判所平成21年(ル)第7365号。甲2)を得て、本件預金債権を差押え(以下「本件差押え」という。)、同月24日、被告銀行は、本件差押えに基づき、本件口座から241万7648円を払い出し(振替)て被告アビリオに支払い、本件預金債権の残高はゼロとなった。(甲1の2、2)

氏名不詳者によって遺留された自転車を6時間程度乗り回したとする占有離脱物横領の事案。

 

 

占有離脱物横領被告事件

【事件番号】      福岡高等裁判所判決/令和2年(う)第373号

【判決日付】      令和3年3月29日

【判示事項】      氏名不詳者によって遺留された自転車を6時間程度乗り回したとする占有離脱物横領の事案。

原判決は、窃盗罪とは異なり占有離脱物横領罪においては既に権利者が排除されていることから、一時的な無断借用の意思であったとしても直ちに権利者を排除する意思であったとはいえないとした上で、被告人は以前から1時間程度の使用を繰り返しており、犯行当日も1時間程度の使用にとどめるつもりであったとして、不法領得の意思を否定して無罪を言い渡したが、本判決はこれを破棄し、占有離脱物横領罪における不法領得の意思を窃盗罪におけるそれと別異に解すべき理由はなく、本件被告人が限定的な一時使用にとどめる意思はなかったとして、不法領得の意思を認めて占有離脱物横領罪の成立を認めた事例

【参照条文】      刑法254

             刑事訴訟法382

             刑事訴訟法397-1

             刑事訴訟法400ただし書

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

 

 

刑法

(遺失物等横領)

第二百五十四条 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

 

 

刑事訴訟法

第三百八十三条 左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることを疎明する資料を添附しなければならない。

一 再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。

二 判決があつた後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があつたこと。

 

第三百九十七条 第三百七十七条乃至第三百八十二条及び第三百八十三条に規定する事由があるときは、判決で原判決を破棄しなければならない。

② 第三百九十三条第二項の規定による取調の結果、原判決を破棄しなければ明らかに正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる。

 

第四百条 前二条に規定する理由以外の理由によつて原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所に差し戻し、又は原裁判所と同等の他の裁判所に移送しなければならない。但し、控訴裁判所は、訴訟記録並びに原裁判所及び控訴裁判所において取り調べた証拠によつて、直ちに判決をすることができるものと認めるときは、被告事件について更に判決をすることができる。