法律大好きのブログ(弁護士村田英幸) -111ページ目

法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

第25章 寄託の成立要件の見直し

第1節 はじめに

旧法

寄託の合意

改正法

※寄託者は物の交付まで解除可

寄託の合意

※無報酬の受寄者は物の交付まで解除可

 

第2節 当事者の権利・義務

寄託に関する見直し(①当事者の権利・義務

旧法660条は、寄託物について権利を主張する第三者が受寄者に対する訴えの提起

等をした場合に、受寄者は寄託者に通知する義務を負う旨のみを規定。

 → 受寄者は寄託物を誰に返還すればよいのかなどについて明確なルールを定めるべきではないか。

問題の所在(寄託物に関する権利を主張する第三者との関係)

改正法の内容【新§660】

受寄者は、原則として寄託者に対して寄託物を返還しなければならないと規定。

ただし、受寄者が訴えの提起等を受けたことを寄託者に通知した場合等において、寄託物を第三者に引き渡すべき旨を命ずる確定判決等があったときに、その第三者に寄託物を引き渡したときは、例外的に寄託者に対する返還は不要と規定。

問題の所在(損害賠償および費用償還の請求権の期間制限)

寄託物の一部滅失等に関する寄託者の損害賠償請求や受寄者の費用償還請求が寄託物の返還後にされる場合には、一部滅失等が受寄者の保管中に生じたものか否

かについて争いが生ずることがある。

寄託者の保管中に寄託者の損害賠償請求権の消滅時効が完成するのは不合理。

改正法の内容【新§664条の2】

寄託物の一部滅失等による寄託者の損害の賠償および受寄者の費用の償還は、寄託者が返還を受けた時から1年以内に請求しなければならないと規定。

寄託物の一部滅失等による寄託者の損害賠償請求権については、寄託者が返還を受けた時から1年を経過するまでは、時効の完成を猶予。

 

第3節 特殊な類型の寄託

寄託に関する見直し(②特殊な類型の寄託

混合寄託とは、 受寄者が複数の寄託者から保管を委託された同一の種類・品質の物を混合して保管し、後に同じ数量を返還する類型の寄託

改正法の内容【新§665条の2】

混合寄託の要件について、各寄託者の承諾が必要であることを明文化。

寄託物の一部が滅失したときは、各寄託者は、受寄者に対し、総寄託物に対する自己の寄託した物の割合に応じた数量の寄託物の返還を請求できるにとどまると規定。

 ※ 併せて、損害賠償請求は妨げられないことを注意的に規定。

混合寄託 消費寄託

消費寄託とは、 受寄者が保管を委託された物そのものではなく、それと種類・品質・数量の同じ物を返還するという寄託。寄託ではなく、消費貸借のルールによる。

改正法の内容【新§666】

消費寄託についても寄託の規定を適用することを原則とする。

寄託物の担保責任については消費貸借の規定を準用。

預貯金については、更に特例を設けて、受寄者による期限前の返還(新§591条2項)を可能にする。

 

 

 

 

 

第26章 公布日・施行日

公布日・施行日

改正の根拠となる法令名は、「民法の一部を改正する法律」(平成29年法律第44号)です。公布日と施行日は次のとおりです。

公布日・施行日

公布日│2017年6月2日

施行日│2020年4月1日

 

譲渡担保権設定者の目的不動産についての引渡しないし明渡債務の履行の提供と譲渡担保権者の清算金支払債務についての履行遅滞の責任

 

 

              土地所有権移転登記抹消登記手続等請求本訴、建物明渡請求反訴事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/平成11年(受)第663号

【判決日付】      平成15年3月27日

【判示事項】      譲渡担保権設定者の目的不動産についての引渡しないし明渡債務の履行の提供と譲渡担保権者の清算金支払債務についての履行遅滞の責任

【判決要旨】      譲渡担保権の実行に伴って譲渡担保権設定者が取得する清算金請求権と譲渡担保権者の目的不動産についての引渡しないし明渡しの請求権とは同時履行の関係に立ち、譲渡担保権者は、譲渡担保権設定者から上記引渡しないし明渡しの債務の履行の提供を受けるまでは、自己の清算金支払債務の全額についいて履行遅滞による責任を負わない。

【参照条文】      民法369

             民法412

             民法533

【掲載誌】        金融法務事情1702号72頁

【評釈論文】      判例タイムズ1150号100頁

 

民法

(抵当権の内容)

第三百六十九条 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

2 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。

 

(履行期と履行遅滞)

第四百十二条 債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。

2 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。

3 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

 

(同時履行の抗弁)

第五百三十三条 双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。

 

神戸市住民訴訟事件・市がその職員を派遣し又は退職の上在籍させている団体に対し公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律所定の手続によらずに上記職員の給与相当額の補助金又は委託料を支出したことにつき,市長に過失があるとはいえないとされた事例

 

 

神戸市外郭団体派遣職員への人件費違法支出損害賠償等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/平成22年(行ヒ)第102号

【判決日付】      平成24年4月20日

【判示事項】      1 市がその職員を派遣し又は退職の上在籍させている団体に対し公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律所定の手続によらずに上記職員の給与相当額の補助金又は委託料を支出したことにつき,市長に過失があるとはいえないとされた事例

             2 普通地方公共団体が条例により債権の放棄をする場合におけるその長による放棄の意思表示の要否

             3 住民訴訟の対象とされている普通地方公共団体の不当利得返還請求権を放棄する旨の議会の議決の適法性及び当該放棄の有効性に関する判断基準

             4 住民訴訟の係属中にされたその請求に係る市の不当利得返還請求権を放棄する旨の条例の制定に係る市議会の議決が適法であり,当該放棄が有効であるとされた事例

【判決要旨】      1 市がその職員を派遣し又は退職の上在籍させている団体に対し公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律所定の手続によらずに上記職員の給与相当額の補助金又は委託料を支出したことにつき,次の(1)~(4)など判示の事情の下では,市長に過失があるとはいえない。

             (1) 同法は,地方公共団体が上記団体に支出した補助金等が上記職員の給与に充てられることを禁止する旨の明文の規定は置いていない。

             (2) 同法の制定の際の国会審議において,地方公共団体が営利法人に支出した補助金が当該法人に派遣された職員の給与に充てられることの許否は公益上の必要性等に係る当該地方公共団体の判断による旨の自治政務次官の答弁がされていた。

             (3) 同法の制定後,総務省の担当者も,上記団体における上記職員の給与に充てる補助金の支出の適否は同法の適用関係とは別途に判断される旨を上記市や他の地方公共団体の職員に対して説明していた。

             (4) 法人等に派遣された職員の給与に充てる補助金の支出の適法性に関し,同法の施行前に支出された事例については裁判例の判断が分かれており,同法の施行後に支出がされた事例については同法と上記支出の関係について直接判断した裁判例はいまだ現れていなかった。

             2 普通地方公共団体が条例により債権の放棄をする場合には,その長による公布を経た当該条例の施行により放棄の効力が生じ,その長による別途の意思表示を要しない。

             3 住民訴訟の対象とされている普通地方公共団体の不当利得返還請求権を放棄する旨の議会の議決がされた場合において,当該請求権の発生原因である公金の支出等の財務会計行為等の性質,内容,原因,経緯及び影響(その違法事由の性格や当該支出等を受けた者の帰責性等を含む。),当該議決の趣旨及び経緯,当該請求権の放棄又は行使の影響,住民訴訟の係属の有無及び経緯,事後の状況その他の諸般の事情を総合考慮して,これを放棄することが普通地方公共団体の民主的かつ実効的な行政運営の確保を旨とする地方自治法の趣旨等に照らして不合理であってその裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たると認められるときは,その議決は違法となり,当該放棄は無効となる。

             4 市がその職員を派遣し又は退職の上在籍させている団体に対し公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律所定の手続によらずに上記職員の給与相当額の補助金又は委託料を支出したことが違法であるとして提起された住民訴訟の係属中に,その請求に係る市の当該各団体に対する不当利得返還請求権を放棄する旨の条例が制定された場合において,次の(1)~(5)など判示の事情の下では,その制定に係る市議会の議決はその裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるとはいえず適法であり,当該放棄は有効である。

             (1) 当該請求権の発生原因である補助金又は委託料の支出に係る違法事由は,当該各団体における上記職員の給与等に充てる公金の支出の適否に関する同法の解釈に係るものであり,当該各団体においてその支出の当時これが同法の規定又はその趣旨に違反するものであるとの認識に容易に至ることができる状況にはなかった。

             (2) 当該各団体には,不法な利得を図るなどの目的はなく,補助金又は委託料の支出という給与等の支給方法の選択に自ら関与したなどの事情もうかがわれない。

             (3) 当該各団体の活動を通じて医療,福祉,文化,産業振興,防災対策,住宅供給,都市環境整備,高齢者失業対策等の各種サービスの提供という形で住民に相応の利益が還元されており,当該各団体が不法な利益を得たものということはできない。

             (4) 上記条例全体の趣旨は,上記住民訴訟における第1審判決の判断を尊重し,同法の趣旨に沿った透明性の高い給与の支給方法を採択したものといえ,上記条例に係る議会での審議の過程では,上記補助金及び委託料の返還を直ちに余儀なくされることによって当該各団体の財政運営に支障が生ずる事態を回避すべき要請も考慮した議論がされている上,上記補助金及び委託料に係る不当利得返還請求権の放棄によって市の財政に及ぶ影響は限定的なものにとどまる。

             (5) 上記住民訴訟を契機に,市から法人等に派遣される職員への給与の支給に関する条例の改正が行われ,以後,市がその職員を派遣し又は退職の上在籍させている団体において市の補助金又は委託料を上記職員の給与等に充てることがなくなるという是正措置が既に採られている。

             (3,4につき補足意見がある。)

【参照条文】      公益法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律(平18法50号改正前)2-1

             公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律6-1

             公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律6-2

             公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律10-1

           公益的法人等への職員の派遣等に関する条例(平13神戸市条例49号。平21神戸市条例28号改正前)2-1

           公益的法人等への職員の派遣等に関する条例(平13神戸市条例49号。平21神戸市条例28号改正前)4

           公益的法人等への職員の派遣等に関する条例(平13神戸市条例49号。平21神戸市条例28号改正前)10

             地方自治法16-2

             地方自治法96-1

             地方自治法242の2-1

             平21神戸市条例28号附則5

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集66巻6号2583頁

 

 

第1 事案の概要

 1 本件は,普通地方公共団体の長等に対する損害賠償請求や第三者に対する不当利得返還請求の義務付けを求める地方自治法242条の2第1項4号所定のいわゆる4号訴訟の提起後,事実審口頭弁論終結前に,当該請求に係る債権を放棄する旨の議会の議決ないし条例の制定がされた場合(以下単に「放棄議決」という。)のその適法性等が争点となった事案である。本件は,普通地方公共団体が有する不当利得返還請求権等が放棄の対象となったものであり,本判決の直後に言い渡された最二小判平24.4.23民集66巻6号2789頁,判タ1383号137頁(さくら市債権放棄議決事件)は,普通地方公共団体が有する損害賠償請求権が放棄の対象となったものである。

 2 本件は,神戸市の住民である原告(被控訴人,被上告人兼相手方)らが,神戸市が職員を派遣しているいわゆる外郭団体に対する補助金や委託料の支出が派遣職員の人件費に充てられていることが,「公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律」(以下「派遣法」という。)を潜脱するもので違法,無効であるとして,被告(控訴人,上告人兼申立人)を相手として,①当時の市長に対する損害賠償請求と②当該団体に対する不当利得返還請求をすることの義務付けを求める住民訴訟(4号訴訟)である。

 派遣法は,地方公共団体が派遣職員について一定の要件の下で直接給与を支給する方法を定めているが,本件のように地方公共団体が直接給与を支給する形ではなく,地方公共団体が当該団体に補助金や委託料を支給し,当該団体の方でその補助金や委託料を派遣職員の人件費に充当することが違法,無効であるかどうかについては,明らかではなかった。

 第1審(LLI,最高裁HP)は,本件の補助金,委託料の支出を違法,無効とし,市長の過失も認定した上で,原告らの請求を一部認容した。

 これに対し,被告が控訴し,原告らも附帯控訴し,原審がいったん弁論を終結した後,神戸市議会において,本件請求権を含む市長に対する損害賠償請求権及び各団体に対する不当利得返還請求権を放棄する旨の条例を制定し,その条例が公布された。被告が,再開された弁論において上記放棄による債権の消滅を主張したところ,原審(LLI,最高裁HP)は,上記条例の公布施行のみでは放棄の効力は生じないし,さらに,上記条例に係る神戸市議会の議決は,住民訴訟の制度を根底から否定するものであって議決権の濫用に当たり違法,無効であるとし,55億円余りにも上る損害賠償請求及び不当利得返還請求の義務付けを認容した。原判決は,全国紙で新聞報道されるなど大きな社会的反響があった。これに対し,被告が上告及び上告受理申立てをした。

第2 判決

 最高裁第二小法廷は,上告受理申立ての一部(首長の過失,放棄の有効性)を受理した上で,原判決を破棄し,①市長個人に対する損害賠償請求については,その過失を認めることはできないとしてこれを棄却し,②各団体に対する不当利得返還請求については,それを放棄する条例に係る議決の適法性についての判断枠組みを示した上で,本件事案においてこれを当てはめた上で放棄議決の適法性を認めて請求権が消滅したとしてこれを棄却する判決をした。

 

 

 

公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律

(職員の派遣)

第二条 任命権者(地方公務員法第六条第一項に規定する任命権者及びその委任を受けた者をいう。以下同じ。)は、次に掲げる団体のうち、その業務の全部又は一部が当該地方公共団体の事務又は事業と密接な関連を有するものであり、かつ、当該地方公共団体がその施策の推進を図るため人的援助を行うことが必要であるものとして条例で定めるもの(以下この項及び第三項において「公益的法人等」という。)との間の取決めに基づき、当該公益的法人等の業務にその役職員として専ら従事させるため、条例で定めるところにより、職員(条例で定める職員を除く。)を派遣することができる。

一 一般社団法人又は一般財団法人

二 地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第八条第一項第五号に規定する一般地方独立行政法人

三 特別の法律により設立された法人(前号に掲げるもの及び営利を目的とするものを除く。)で政令で定めるもの

四 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百六十三条の三第一項に規定する連合組織で同項の規定による届出をしたもの

2 任命権者は、前項の規定による職員の派遣(以下「職員派遣」という。)の実施に当たっては、あらかじめ、当該職員に同項の取決めの内容を明示し、その同意を得なければならない。

3 第一項の取決めにおいては、当該職員派遣に係る職員の職員派遣を受ける公益的法人等(以下「派遣先団体」という。)における報酬その他の勤務条件及び当該派遣先団体において従事すべき業務、当該職員の職員派遣の期間、当該職員の職務への復帰に関する事項その他職員派遣に当たって合意しておくべきものとして条例で定める事項を定めるものとする。

4 前項の規定により第一項の取決めで定める職員派遣に係る職員の派遣先団体において従事すべき業務は、当該派遣先団体の主たる業務が地方公共団体の事務又は事業と密接な関連を有すると認められる業務である場合を除き、地方公共団体の事務又は事業と密接な関連を有すると認められる業務を主たる内容とするものでなければならない。

 

(派遣職員の給与)

第六条 派遣職員には、その職員派遣の期間中、給与を支給しない。

2 派遣職員が派遣先団体において従事する業務が地方公共団体の委託を受けて行う業務、地方公共団体と共同して行う業務若しくは地方公共団体の事務若しくは事業を補完し若しくは支援すると認められる業務であってその実施により地方公共団体の事務若しくは事業の効率的若しくは効果的な実施が図られると認められるものである場合又はこれらの業務が派遣先団体の主たる業務である場合には、地方公共団体は、前項の規定にかかわらず、派遣職員に対して、その職員派遣の期間中、条例で定めるところにより、給与を支給することができる。

 

(特定法人の業務に従事するために退職した者の採用)

第十条 任命権者と特定法人(当該地方公共団体が出資している株式会社のうち、その業務の全部又は一部が地域の振興、住民の生活の向上その他公益の増進に寄与するとともに当該地方公共団体の事務又は事業と密接な関連を有するものであり、かつ、当該地方公共団体がその施策の推進を図るため人的援助を行うことが必要であるものとして条例で定めるものをいう。以下同じ。)との間で締結された取決めに定められた内容に従って当該特定法人の業務に従事するよう求める任命権者の要請に応じて職員(条例で定める職員を除く。)が退職し、引き続き当該特定法人の役職員として在職した後、当該取決めで定める当該特定法人において業務に従事すべき期間が満了した場合又はその者が当該特定法人の役職員の地位を失った場合その他の条例で定める場合には、地方公務員法第十六条各号(第二号を除く。)のいずれかに該当する場合(同条の条例で定める場合を除く。)その他条例で定める場合を除き、その者が退職した時就いていた職又はこれに相当する職に係る任命権者は、当該特定法人の役職員としての在職に引き続き、その者を職員として採用するものとする。

2 前項の取決めにおいては、同項の要請に応じて退職し引き続き当該特定法人に在職する者(以下「退職派遣者」という。)の当該特定法人における報酬その他の勤務条件並びに当該特定法人において従事すべき業務及び業務に従事すべき期間、同項の規定による当該退職派遣者の採用に関する事項その他当該退職派遣者が当該特定法人の業務に従事するに当たって合意しておくべきものとして条例で定める事項を定めるものとする。

3 前項の規定により第一項の取決めで定める退職派遣者の特定法人において従事すべき業務は、当該特定法人の主たる業務が地域の振興、住民の生活の向上その他公益の増進に寄与し、かつ、地方公共団体の事務又は事業と密接な関連を有すると認められる業務(以下この項において「公益寄与業務」という。)である場合を除き、公益寄与業務を主たる内容とするものでなければならない。

4 第二項の規定により第一項の取決めで定める退職派遣者の特定法人において業務に従事すべき期間は、同項の要請に応じて退職をする日の翌日から起算して三年を超えない範囲内で定めるものとする。

5 第一項の規定による採用については、地方公務員法第二十二条の規定は、適用しない。

 

 

地方自治法

第十六条 普通地方公共団体の議会の議長は、条例の制定又は改廃の議決があつたときは、その日から三日以内にこれを当該普通地方公共団体の長に送付しなければならない。

② 普通地方公共団体の長は、前項の規定により条例の送付を受けた場合は、その日から二十日以内にこれを公布しなければならない。ただし、再議その他の措置を講じた場合は、この限りでない。

③ 条例は、条例に特別の定があるものを除く外、公布の日から起算して十日を経過した日から、これを施行する。

④ 当該普通地方公共団体の長の署名、施行期日の特例その他条例の公布に関し必要な事項は、条例でこれを定めなければならない。

⑤ 前二項の規定は、普通地方公共団体の規則並びにその機関の定める規則及びその他の規程で公表を要するものにこれを準用する。但し、法令又は条例に特別の定があるときは、この限りでない。

 

第九十六条 普通地方公共団体の議会は、次に掲げる事件を議決しなければならない。

一 条例を設け又は改廃すること。

二 予算を定めること。

三 決算を認定すること。

四 法律又はこれに基づく政令に規定するものを除くほか、地方税の賦課徴収又は分担金、使用料、加入金若しくは手数料の徴収に関すること。

五 その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める契約を締結すること。

六 条例で定める場合を除くほか、財産を交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けること。

七 不動産を信託すること。

八 前二号に定めるものを除くほか、その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める財産の取得又は処分をすること。

九 負担付きの寄附又は贈与を受けること。

十 法律若しくはこれに基づく政令又は条例に特別の定めがある場合を除くほか、権利を放棄すること。

十一 条例で定める重要な公の施設につき条例で定める長期かつ独占的な利用をさせること。

十二 普通地方公共団体がその当事者である審査請求その他の不服申立て、訴えの提起(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決(行政事件訴訟法第三条第二項に規定する処分又は同条第三項に規定する裁決をいう。以下この号、第百五条の二、第百九十二条及び第百九十九条の三第三項において同じ。)に係る同法第十一条第一項(同法第三十八条第一項(同法第四十三条第二項において準用する場合を含む。)又は同法第四十三条第一項において準用する場合を含む。)の規定による普通地方公共団体を被告とする訴訟(以下この号、第百五条の二、第百九十二条及び第百九十九条の三第三項において「普通地方公共団体を被告とする訴訟」という。)に係るものを除く。)、和解(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決に係る普通地方公共団体を被告とする訴訟に係るものを除く。)、あつせん、調停及び仲裁に関すること。

十三 法律上その義務に属する損害賠償の額を定めること。

十四 普通地方公共団体の区域内の公共的団体等の活動の総合調整に関すること。

十五 その他法律又はこれに基づく政令(これらに基づく条例を含む。)により議会の権限に属する事項

② 前項に定めるものを除くほか、普通地方公共団体は、条例で普通地方公共団体に関する事件(法定受託事務に係るものにあつては、国の安全に関することその他の事由により議会の議決すべきものとすることが適当でないものとして政令で定めるものを除く。)につき議会の議決すべきものを定めることができる。

 

(住民訴訟)

第二百四十二条の二 普通地方公共団体の住民は、前条第一項の規定による請求をした場合において、同条第五項の規定による監査委員の監査の結果若しくは勧告若しくは同条第九項の規定による普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関若しくは職員の措置に不服があるとき、又は監査委員が同条第五項の規定による監査若しくは勧告を同条第六項の期間内に行わないとき、若しくは議会、長その他の執行機関若しくは職員が同条第九項の規定による措置を講じないときは、裁判所に対し、同条第一項の請求に係る違法な行為又は怠る事実につき、訴えをもつて次に掲げる請求をすることができる。

一 当該執行機関又は職員に対する当該行為の全部又は一部の差止めの請求

二 行政処分たる当該行為の取消し又は無効確認の請求

三 当該執行機関又は職員に対する当該怠る事実の違法確認の請求

四 当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める請求。ただし、当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方が第二百四十三条の二の二第三項の規定による賠償の命令の対象となる者である場合には、当該賠償の命令をすることを求める請求

2 前項の規定による訴訟は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める期間内に提起しなければならない。

一 監査委員の監査の結果又は勧告に不服がある場合 当該監査の結果又は当該勧告の内容の通知があつた日から三十日以内

二 監査委員の勧告を受けた議会、長その他の執行機関又は職員の措置に不服がある場合 当該措置に係る監査委員の通知があつた日から三十日以内

三 監査委員が請求をした日から六十日を経過しても監査又は勧告を行わない場合 当該六十日を経過した日から三十日以内

四 監査委員の勧告を受けた議会、長その他の執行機関又は職員が措置を講じない場合 当該勧告に示された期間を経過した日から三十日以内

3 前項の期間は、不変期間とする。

4 第一項の規定による訴訟が係属しているときは、当該普通地方公共団体の他の住民は、別訴をもつて同一の請求をすることができない。

5 第一項の規定による訴訟は、当該普通地方公共団体の事務所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。

6 第一項第一号の規定による請求に基づく差止めは、当該行為を差し止めることによつて人の生命又は身体に対する重大な危害の発生の防止その他公共の福祉を著しく阻害するおそれがあるときは、することができない。

7 第一項第四号の規定による訴訟が提起された場合には、当該職員又は当該行為若しくは怠る事実の相手方に対して、当該普通地方公共団体の執行機関又は職員は、遅滞なく、その訴訟の告知をしなければならない。

8 前項の訴訟告知があつたときは、第一項第四号の規定による訴訟が終了した日から六月を経過するまでの間は、当該訴訟に係る損害賠償又は不当利得返還の請求権の時効は、完成しない。

9 民法第百五十三条第二項の規定は、前項の規定による時効の完成猶予について準用する。

10 第一項に規定する違法な行為又は怠る事実については、民事保全法(平成元年法律第九十一号)に規定する仮処分をすることができない。

11 第二項から前項までに定めるもののほか、第一項の規定による訴訟については、行政事件訴訟法第四十三条の規定の適用があるものとする。

12 第一項の規定による訴訟を提起した者が勝訴(一部勝訴を含む。)した場合において、弁護士、弁護士法人又は弁護士・外国法事務弁護士共同法人に報酬を支払うべきときは、当該普通地方公共団体に対し、その報酬額の範囲内で相当と認められる額の支払を請求することができる。

 

 

YOL読売オンライン見出し事件・控訴人の,主位的主張として,被控訴人が被控訴人ホームページ上にYOL見出しを掲出させるなどした行為は控訴人が有する著作権(複製権及び公衆送信権)侵害を理由とし,予備的主張として,被控訴人の上記行為が不法行為を構成するとして,複製等の差止め等請求について,原判決は,YOL見出しは著作物であるとは認められず,不法行為を構成しないとして,原告(控訴人)請求をいずれも棄却したが,被控訴人のライントピックスサービスとしての一連の行為は,不法行為を構成するとして,控訴人の請求の一部を認容した事例

 

 

              民事訴訟事件

【事件番号】      知的財産高等裁判所/平成17年(ネ)第10049号

【判決日付】      平成17年10月6日

【判示事項】      控訴人の,主位的主張として,被控訴人が被控訴人ホームページ上にYOL見出しを掲出させるなどした行為は控訴人が有する著作権(複製権及び公衆送信権)侵害を理由とし,予備的主張として,被控訴人の上記行為が不法行為を構成するとして,複製等の差止め等請求について,原判決は,YOL見出しは著作物であるとは認められず,不法行為を構成しないとして,原告(控訴人)請求をいずれも棄却したが,被控訴人のライントピックスサービスとしての一連の行為は,不法行為を構成するとして,控訴人の請求の一部を認容した事例

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      コピライト538号51頁

             知財管理56巻7号1063頁

             法学研究(慶応大)79巻1号97頁

             Lexis判例速報2号115頁

             別冊ジュリスト198号10頁

 

       主   文

 

 1 原判決を次のとおり変更する。

 (1)被控訴人は,控訴人に対し,23万7741円及びこれに対する平成16年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 (2)控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。

 2 控訴人が当審で拡張した請求をいずれも棄却する。

 3 訴訟費用は,第一,二審を通じ,訴えの提起及び控訴の提起の申立て手数料のうち1万分の5を被控訴人の負担とし,その余の訴訟費用はすべて控訴人の負担とする。

 4 この判決は,上記1(1)の部分に限り,仮に執行することができる。

 

       事実及び理由

 

第1 控訴人の求めた裁判

 1 原判決を取り消す。

2 被控訴人は,被控訴人の運営する別紙1「被控訴人ホームページ目録」記載のホームページ(以下「被控訴人ホームページ」という。)上において,別紙2の「著作物目録1」記載の記事見出し(以下「YOL見出し」という。)及び別紙2の「著作物目録2」記載の記事本文(以下「YOL記事」という。)を使用してはならない。

3 被控訴人は,YOL見出しのデータを頒布してはならない。

4 被控訴人は,その所有するパソコンのハードディスク内にYOL見出し及びYOL記事のキャッシュデータを保存してはならない。

5 被控訴人は,控訴人に対し,2480万円及びこれに対する平成16年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

6 訴訟費用は,第一,二審を通じ,被控訴人の負担とする。

7 第5項及び第6項につき仮執行宣言。

第2 事案の概要

 本判決においては,原判決と同様の意味において又はこれに準じて,「ヨミウリ・オンライン」,「ライントピックスサービス」,「被控訴人サイト」,「ヤフー」,「ヤフーサイト」,「Yahoo!ニュース」,「登録ユーザ」との略称を用いる。

 1 控訴人は,原審において,次のとおりの裁判を求めた。

 ① 被告(被控訴人)は,被告(被控訴人)の運営する原判決別紙1被告ホームページ目録記載のホームページ上において,原判決別紙2原告ホームページ目録記載のホームページ上に掲出される記事見出し(YOL見出し)及びこれと類似する記事見出しを複製し,使用してはならない。

 ② 被告(被控訴人)は,前項記載の記事見出しを掲出した原判決別紙3タグ目録記載のタグを頒布してはならない。

 ③ 被告(被控訴人)は,原告(控訴人)に対し,6825万円及びこれに対する平成15年1月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 2 控訴人の原審における請求は,主位的主張として,被控訴人が被控訴人ホームページ上にYOL見出しを掲出させるなどして,控訴人が有するYOL見出しについての著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害していることを理由とし,予備的主張として,被控訴人の上記行為が不法行為を構成することを理由として,上記1①ないし③のとおり,YOL見出しの複製等の差止め及び損害賠償(YOL見出しの使用料相当金額6825万円)を求めたものである。

 3 原判決は,YOL見出しは著作物であるとは認められず,著作権侵害となるとはいえないとし,さらに,被告(被控訴人)の上記行為は,不法行為を構成しないとして,原告(控訴人)の請求をいずれも棄却した。

 4 そこで,控訴人は,控訴の上,前記第1記載のとおり,当審において請求を減縮,拡張,追加した。

 控訴人の当審における請求は,(α)著作権侵害(YOL見出しの複製権侵害及び公衆送信権侵害並びにYOL記事の複製権侵害〔後者は当審で追加〕)を理由とする差止請求(前記第1の2ないし4)及び損害賠償請求(使用許諾料相当額480万円),(β)不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為〔当審で追加〕を理由とする差止請求(前記第1の2及び3)及び損害賠償請求(同上の480万円),(γ)不法行為を理由とする差止請求(前記第1の2ないし4)及び損害賠償請求(同上の480万円のほか,無形損害1000万円,弁護士費用1000万円の合計2480万円)をするものである。

 なお,当審における前記第1の2の請求は,原審での上記①のYOL見出しに加え,YOL記事についての差止請求も追加されたものである。当審における前記第1の3の請求と原審における上記②の請求とは,表現が改められているが,実質は同じ請求である。当審における前記第1の4の請求は,当審で追加されたものである。

 以上に対し,被控訴人は,本件控訴の棄却を求めるとともに,当審で追加された請求を棄却することを求めた。

黄色点滅信号で交差点に進入した際、交差道路を暴走してきた車両と衝突し、業務上過失致死傷罪に問われた自動車運転者について、衝突の回避可能性に疑問があるとして無罪が言い渡された事例


    業務上過失致死傷被告事件
【事件番号】    最高裁判所第2小法廷判決/平成14年(あ)第183号
【判決日付】    平成15年1月24日
【判示事項】    黄色点滅信号で交差点に進入した際、交差道路を暴走してきた車両と衝突し、業務上過失致死傷罪に問われた自動車運転者について、衝突の回避可能性に疑問があるとして無罪が言い渡された事例
【参照条文】    刑法211
【掲載誌】     最高裁判所裁判集刑事283号241頁


刑法
(業務上過失致死傷等)
第二百十一条 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。


       主   文

 原判決及び第1審判決を破棄する。
 被告人は無罪。

       理   由

 弁護人椎木緑司の上告趣意のうち,判例違反をいう点は,本件と事案を異にする判例を引用するものであって,前提を欠き,その余は,単なる法令違反の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 しかしながら,所論にかんがみ,本件における業務上過失致死傷罪の成否について,以下,職権をもって検討する。
 第1審判決が認定し,原判決が是認した犯罪事実は,起訴状記載の公訴事実と同旨である。その内容は,「被告人は,平成11年8月28日午前零時30分ころ,業務としてタクシーである普通乗用自動車を運転し,広島市南区宇品東7丁目2番18号先の交通整理の行われていない交差点を宇品御幸4丁目方面から宇品東5丁目方面に向かい直進するに当たり,同交差点は左右の見通しが利かない交差点であったことから,その手前において減速して徐行し,左右道路の交通の安全を確認して進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,漫然時速約30ないし40キロメートルの速度で同交差点に進入した過失により,折から,左方道路より進行してきたA運転の普通乗用自動車の前部に自車左後側部を衝突させて自車を同交差点前方右角にあるブロック塀に衝突させた上,自車後部座席に同乗のB(当時44歳)を車外に放出させ,さらに自車助手席に同乗のC(当時39歳)に対し,加療約60日間を要する頭蓋骨骨折,脳挫傷等の傷害を負わせ,Bをして,同日午前1時24分ころ,同区宇品神田1丁目5番54号県立広島病院において,前記放出に基づく両側血気胸,脳挫傷により死亡するに至らせたものである。」というにある。過失の存否に関する評価の点を除き,本件における客観的な事実関係は,以上のとおりと認められる。
 また,1,2審判決の認定によれば,次の事情が認められる。すなわち,本件事故現場は,被告人運転の車両(以下「被告人車」という。)が進行する幅員約8.7メートルの車道とA運転の車両(以下「A車」という。)が進行する幅員約7.3メートルの車道が交差する交差点であり,各進路には,それぞれ対面信号機が設置されているものの,本件事故当時は,被告人車の対面信号機は,他の交通に注意して進行することができることを意味する黄色灯火の点滅を表示し,A車の対面信号機は,一時停止しなければならないことを意味する赤色灯火の点滅を表示していた。そして,いずれの道路にも,道路標識等による優先道路の指定はなく,それぞれの道路の指定最高速度は時速30キロメートルであり,被告人車の進行方向から見て,左右の交差道路の見通しは困難であった。
 このような状況の下で,左右の見通しが利かない交差点に進入するに当たり,何ら徐行することなく,時速約30ないし40キロメートルの速度で進行を続けた被告人の行為は,道路交通法42条1号所定の徐行義務を怠ったものといわざるを得ず,また,業務上過失致死傷罪の観点からも危険な走行であったとみられるのであって,取り分けタクシーの運転手として乗客の安全を確保すべき立場にある被告人が,上記のような態様で走行した点は,それ自体,非難に値するといわなければならない。
 しかしながら,他方,本件は,被告人車の左後側部にA車の前部が突っ込む形で衝突した事故であり,本件事故の発生については,A車の特異な走行状況に留意する必要がある。すなわち,1,2審判決の認定及び記録によると,Aは,酒気を帯び,指定最高速度である時速30キロメートルを大幅に超える時速約70キロメートルで,足元に落とした携帯電話を拾うため前方を注視せずに走行し,対面信号機が赤色灯火の点滅を表示しているにもかかわらず,そのまま交差点に進入してきたことが認められるのである。このようなA車の走行状況にかんがみると,被告人において,本件事故を回避することが可能であったか否かについては,慎重な検討が必要である。
 この点につき,1,2審判決は,仮に被告人車が本件交差点手前で時速10ないし15キロメートルに減速徐行して交差道路の安全を確認していれば,A車を直接確認することができ,制動の措置を講じてA車との衝突を回避することが可能であったと認定している。上記認定は,司法警察員作成の実況見分調書(第1審検第24号証)に依拠したものである。同実況見分調書は,被告人におけるA車の認識可能性及び事故回避可能性を明らかにするため本件事故現場で実施された実験結果を記録したものであるが,これによれば,①被告人車が時速20キロメートルで走行していた場合については,衝突地点から被告人車が停止するのに必要な距離に相当する6.42メートル手前の地点においては,衝突地点から28.50メートルの地点にいるはずのA車を直接視認することはできなかったこと,②被告人車が時速10キロメートルで走行していた場合については,同じく2.65メートル手前の地点において,衝突地点から22.30メートルの地点にいるはずのA車を直接視認することが可能であったこと,③被告人車が時速15キロメートルで走行していた場合については,同じく4.40メートル手前の地点において,衝突地点から26.24メートルの地点にいるはずのA車を直接視認することが可能であったこと等が示されている。しかし,対面信号機が黄色灯火の点滅を表示している際,交差道路から,一時停止も徐行もせず,時速約70キロメートルという高速で進入してくる車両があり得るとは,通常想定し難いものというべきである。しかも,当時は夜間であったから,たとえ相手方車両を視認したとしても,その速度を一瞬のうちに把握するのは困難であったと考えられる。こうした諸点にかんがみると,被告人車がA車を視認可能な地点に達したとしても,被告人において,現実にA車の存在を確認した上,衝突の危険を察知するまでには,若干の時間を要すると考えられるのであって,急制動の措置を講ずるのが遅れる可能性があることは,否定し難い。そうすると,上記②あるいは③の場合のように,被告人が時速10ないし15キロメートルに減速して交差点内に進入していたとしても,上記の急制動の措置を講ずるまでの時間を考えると,被告人車が衝突地点の手前で停止することができ,衝突を回避することができたものと断定することは,困難であるといわざるを得ない。そして,他に特段の証拠がない本件においては,被告人車が本件交差点手前で時速10ないし15キロメートルに減速して交差道路の安全を確認していれば,A車との衝突を回避することが可能であったという事実については,合理的な疑いを容れる余地があるというべきである。
 以上のとおり,本件においては,公訴事実の証明が十分でないといわざるを得ず,業務上過失致死傷罪の成立を認めて被告人を罰金40万円に処した第1審判決及びこれを維持した原判決は,事実を誤認して法令の解釈適用を誤ったものとして,いずれも破棄を免れない。
 よって,刑訴法411条1号,3号により原判決及び第1審判決を破棄し,本件事案の内容及びその証拠関係等にかんがみ,この際,当審において自判するのを相当と認め,同法413条ただし書,414条,404条,336条により被告人に対し無罪の言渡しをすることとし,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
 

消費者契約法では、事業者の不適切な行為により結ばれた契約は、消費者が取り消せるものとしています。一方、クーリング・オフは商品やサービスの購入後に一定期間内であれば、契約を解除できる権利を指します。

 

 

クーリング・オフ(特定商取引法)

消費者契約法

目的

事業者に対するルール(規制)

消費者と事業者間のルール

内容

契約後、一定の期間内に無条件で契約を解除できる

消費者の権利保護、不公平な取引条件の防止など

適用販売形態

特定の契約形態(訪問販売や電話販売など)に限られる

全ての消費者契約に適用される

適用できる契約・商品など

訪問販売や電話勧誘販売で指定されている商品

エステ・学習塾・保養施設の利権など

消費者と事業者との契約全て(労働契約を除く)及び当該契約に関わる全ての商品

取消権の行使期間

通常は契約書面を受け取ってから

8日以内(内職商法・マルチ商法は20日以内)

誤認・困惑の状態が終了してから6ヶ月以内(ただし契約後5年以内)

適用方法

原則として書面により通知

できるだけ書面が望ましい

 

 

クーリング・オフとは、特定取引において「特定商取引法」という別の法律で定められた制度です。一定期間内であれば、契約の申し込み撤回や解除を無条件で行えます。

特定商取引法とは特定商取引法は、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的とする法律です。具体的には、訪問販売や通信販売等の消費者トラブルを生じやすい取引類型を対象に、事業者が守るべきルールと、クーリング・オフ等の消費者を守るルール等を定めています。

 

第24章 請負に関する見直し

第1節 はじめに

請負契約とは

請負とは、当事者の一方(請負人)がある仕事を完成することを約し、相手方(注文者)がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約する契約です(民法632条)。

 

請負契約とは成果物の完成を依頼するものです。何らかの法律行為の実施を依頼される場合は、委任契約です。

 

「業務委託契約」という類型の契約をよく聞きます。「請負契約」とは違うのでしょうか?

「業務委託契約」は、企業活動の様々な分野で使われます。しかし、民法には「業務委託契約」という契約類型が定められているわけではありません。実は、「業務委託契約」の内容によって、民法上のどのような性質の契約かが、異なることがあるのです。

請負契約は「仕事の完成(結果)を目的とする契約」です。 つまり、「業務委託契約」というタイトルの契約書であっても、その内容が「仕事の完成を目的とする契約」であるならば、民法上の「請負契約」と考えられます。

 

たとえば、物の製造やソフトウェアの構築を目的とする場合、「業務委託契約」というタイトルであっても、仕事の完成が目的であれば「請負契約」と扱われます。

 

第2節 請負人の報酬

請負に関する見直し(①報酬

(問題の所在)

請負の報酬は、完成した仕事の結果に支払われるものとされ、中途で契約が解除されるなどした場合については、特にルールを設けていない。

他方で、判例は、請負契約が中途で解除された事案においても、注文者が利益を得られる場合には、中途の結果についても、利益の割合に応じた報酬の請求は可能と判断

⇒ 中途の結果について報酬が請求され、紛争に発展するケースは、実際にも少なくないことから、明確なルールが必要

(改正法の内容)

次のいずれかの場合において、中途の結果のうち可分な部分によって注文者が利益を受けるときは、請負人は、その利益の割合に応じて報酬の請求をすることが可能であることを明文化【新§634】

①仕事を完成することができなくなった場合

②請負が仕事の完成前に解除された場合

(注) 仕事を完成することができなかったことについて注文者に帰責事由がある場合には、報酬の全額を請求することが可能【新§536条2項】

請負とは・・・請負人が仕事を完成することを約し、注文者が完成した仕事の結果に報酬を支払うことを約する契約をいう。

 

請負人に対する割合的報酬のルールが明文化された

【改正の性質】

 ①従来の判例・一般的な解釈を明文化したもの

 

請負契約は仕事の「完成」を目的とする契約です。 では、注文者の帰責性(責任)なく、仕事が途中で完成できなくなったり、解除されたりした場合、注文者は、請負代金を支払わなければならないのでしょうか?

 

旧民法には、これに関する定めはありませんでした。 最高裁判所の判例(昭和56年2月17日集民132号129頁)では、 工事全体が未完成の間に注文者が契約解除をする場合、工事内容が可分で、 注文者が既施工部分の給付に関し利益を有する場合には、特段の事情がない限り、既施工部分については契約解除できない とされました。

 

この判例をうけて、請負人の仕事が未完成であっても、 仕事の結果のうち可分な部分があり、当該部分の給付により注文者が利益を受ける場合には、 注文者は、契約の解除ができず、報酬請求権も失われない、というのが実務上の運用になっていました。

旧民法の時代も、注文者の帰責性(責任)なく、仕事が途中で完成しなかった場合であっても、注文者はまったく請負代金を支払わなくてよい(請負人は一切、請負代金を請求できない)わけではなかったのです。

そこで、改正では、このような従来の判例を明文化し、

①注文者の帰責性(責任)なく仕事を完成することができなくなったとき

②請負が仕事の完成前に解除されたとき

について、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって、注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなすこととされました。 また、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができます(民法634条)。

 

第3節 請負人の担保責任

(改正法の内容)

売買の規定を準用して、次のとおり見直し【§559・562等】

目的物が契約の内容に適合しない場合に、請負人が担保責任を負うと規定

その担保責任として、注文者は、①修補等の履行の追完 ②損害賠償請求 ③契約の解除 ④代金減額請求をすることができると規定

請負に関する見直し(②請負人の担保責任の整理)

担保責任の追及

(旧法・旧法§634・635)

建築請負における建物など仕事の目的物に「瑕疵」があった場合に請負人が担保責任を負うと規定

その担保責任として、注文者は、①修補の請求、②損害賠償請求、③契約の解除をすることができると規定

(問題の所在)

「瑕疵」という用語については、「契約の内容に適合していないこと」を意味するものと解釈されていることを踏まえ、規定を見直すべき。

改正法においては、売買における売主の担保責任について、代金減額請求をすることができることを明記するなど整理。売買と請負とで担保責任の在り方が大きく異なるのは合理性が乏しい。

建物の建築を依頼され、請負人が建物を完成させたが、その建物に不具合が発見された事例

 

目的物に欠陥がある場合における担保責任の内容

 

売 買

請 負

 

旧法

改正法

旧法

改正法

修理・代替物等の請求

×

修理については、○

損害賠償

契約解除

○(建物等に制限あり)

代金減額

×

×

 

請負人の担保責任のルールを見直した(瑕疵担保責任から契約不適合責任へ)

【改正の性質】

 ①従来の判例・一般的な解釈を明文化したもの

 

請負人の担保責任に関する主要改正ポイントは、次の3点です。

 

・「瑕疵担保責任」という概念を廃止し「契約不適合責任」に変更する

・注文者の権利が追加され、履行の追完請求・代金の減額請求・損害賠償請求・解除が認められる

・注文者の権利行使期間が延長される

 

旧民法には、請負人の担保責任(請負人が仕事の完成に対して負う義務の一つ)について、請負契約独自のルールが定められていました(旧民法634条、同635条)。 改正により、このような請負契約独自のルールは廃止され、売買契約の売主の担保責任のルールが準用されることになりました(民法559条)。

 

これにより、旧民法で「瑕疵」「瑕疵担保責任」と呼ばれていた用語は無くなりました。 そして、請負人は、仕事の目的物が「種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しない」(民法562条1項参照)場合に担保責任を負うことになりました。

 

これからは、請負人の責任を「瑕疵担保責任」とは呼ばない。

これからは、請負人の責任を「瑕疵担保責任」とは呼びません。

また、注文者の権利が追加され、履行の追完請求・代金の減額請求・損害賠償請求・解除が認められます。

 

注文者の権利が追加される

さらに、注文者が権利を行使できる期間も延長されました。

 

注文者が権利を行使できる期間も延長

 

第4節 請負に関する見直し(その他)

請負に関する見直し(③その他)

(旧法)

土地工作物(建物等)の建築請負では、深刻な瑕疵があっても注文者は契約解除をすることができない(旧法§635但書)。

←社会経済上の損失の大きさを考慮したものといわれている。

(改正法の内容)

建物等の建築請負における注文者の解除権を制限する規定を削除

建物等の建築請負における

解除権の制限の見直し

注文者の権利の期間制限の見直し

(旧法)

請負人の担保責任の追及には、旧法、以下の期間制限

原則 目的物の引渡し等から1年以内の権利行使が必要

例外 ①建物等の建築請負では引渡しから5年以内、

②その建物等が石造、金属造等の場合は引渡しから10年以内

(改正法の内容)

契約に適合しないことを知ってから1年以内にその旨の通知が必要と改める。建物等の例外的取扱いは廃止。

 

第5節 解除の要件を見直した(全契約類型に共通)

解除の要件を見直した(全契約類型に共通)

【改正の性質】

 ②従来、解釈に争いがあった条項を明文化したもの/従来の条項・判例・一般的な解釈を変更したもの

 

この改正ポイントは、請負契約のみならず、すべての契約類型に共通するものです。 主な改正ポイントは、次の3点です。

 

・解除の要件から「債務者の帰責性」を削除した

・催告解除の要件が明確になった

・無催告解除の要件を整理した

 

第6節 注文者の破産手続の開始による、請負人からの解除を制限した

注文者の破産手続の開始による、請負人からの解除を制限した。

【改正の性質】

 ②従来、解釈に争いがあった条項を明文化したもの/従来の条項・判例・一般的な解釈を変更したもの

 

旧民法の下では、注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人は、仕事が完成したかどうかを問わず、契約を解除することができました(旧民法642条)。 改正により、注文者が破産手続開始の決定を受けた場合における請負人からの契約解除について、「仕事を完成しない間に限り契約の解除をすることができる」という制限が加えられます(民法642条1項ただし書)。

 

譲渡担保権者の目的不動産の明渡請求の許否

 

 

家屋明渡等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和46年(オ)第679号

【判決日付】      昭和51年2月17日

【判示事項】      譲渡担保権者の目的不動産の明渡請求の許否

【判決要旨】      譲渡担保権者は、債務者が弁済期に債務の弁済をしないときは、担保目的実現の手段として債務者に対して目的不動産の明渡を求めることができる。

【参照条文】      民法369(譲渡担保)

             民法482

【掲載誌】        金融法務事情784号32頁

【評釈論文】      ジュリスト増刊〔担保法の判例2〕47頁

 

 

(抵当権の内容)

第三百六十九条 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

2 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。民法

 

(代物弁済)

第四百八十二条 弁済をすることができる者(以下「弁済者」という。)が、債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において、その弁済者が当該他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する。

 

宿直勤務中の従業員が盗賊に殺害された事故につき、会社に安全配慮義務違背に基づく損害賠償責任があるとされた事例

 

 

損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和58年(オ)第152号

【判決日付】      昭和59年4月10日

【判示事項】      宿直勤務中の従業員が盗賊に殺害された事故につき、会社に安全配慮義務違背に基づく損害賠償責任があるとされた事例

【判決要旨】      会社が、夜間においても、その社屋に高価な反物、毛皮等を多数開放的に陳列保管していながら、右社屋の夜間の出入口にのぞき窓やインターホンを設けていないため、宿直員においてくぐり戸を開けてみなければ来訪者が誰であるかを確かめることが困難であり、そのため来訪者が無理に押し入ることができる状態となり、これを利用して盗賊が侵入し宿直員に危害を加えることのあるのを予見しえたにもかかわらず、のぞき窓、インターホン、防犯チェーン等の盗賊防止のための物的設備を施さず、また、宿直員を新入社員1人としないで適宜増員するなどの措置を講じなかつたなど判示のような事実関係がある場合において、1人で宿直を命ぜられた新入社員がその勤務中にくぐり戸から押し入つた盗賊に殺害されたときは、会社は、右事故につき、安全配慮義務に違背したものとして損害賠償責任を負うものというべきである。

【参照条文】      民法415

             民法623

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集38巻6号557頁

 

 

民法

(損害賠償の範囲)

第四百十六条 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。

2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

 

(雇用)

第六百二十三条 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

 

 

労働契約法

(労働者の安全への配慮)

第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

 

「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法の一部を改正する法律(平九法三九号)附則二項及び日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法」一五条と憲法二九条

 

 

 

工作物収去土地明渡等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/平成15年(オ)第129号、平成15年(受)第141号

【判決日付】      平成15年11月27日

【判示事項】      一 「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法の一部を改正する法律(平九法三九号)附則二項及び日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法」一五条と憲法二九条

             二 「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法の一部を改正する法律」(平九法三九号)附則二項及び「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法」一五条と憲法三一条

             三 「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法の一部を改正する法律」(平九法三九号)附則三項に基づく損失の補償の対象

【判決要旨】      一 「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法の一部を改正する法律」(平九法三九号)附則二項及び「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法」一五条は、憲法二九条に違反しない。

             二 「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法の一部を改正する法律」(平九法三九号)附則二項及び「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法」一五条は、憲法三一条の法意に反しない。

             三 「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法の一部を改正する法律」(平九法三九号)附則三項に基づく土地等の暫定使用による損失の補償は、無権原占有による損害(賃料相当損害金等)の賠償を対象とするものである。

【参照条文】      憲法29

             日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法15

             憲法31

             国家賠償法1-1

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集57巻10号1665頁

 

 

憲法

第二十九条 財産権は、これを侵してはならない。

② 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。

③ 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

 

第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

 

 

日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法

(この法律の目的)

第一条 この法律は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定を実施するため、日本国に駐留するアメリカ合衆国の軍隊(以下「駐留軍」という。)の用に供する土地等の使用又は収用に関し規定することを目的とする。

 

 

日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約

第六条

 日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。

 前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定(改正を含む。)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。