(その他の取引拒絶) 2 不当に、ある事業者に対し取引を拒絶し若しくは取引に係る商品若しくは役務 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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(その他の取引拒絶)

2 不当に、ある事業者に対し取引を拒絶し若しくは取引に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限し、又は他の事業者にこれらに該当する行為をさせること。

 

最高裁判昭和36年1月26日民集15巻1号116頁[北海道新聞社事件]

ⅰ 公正取引委員会が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第20条(昭和28年法律第259号による改正前)により不公正な競争方法であるかどうかを認定するにあたっては、単にその行為の外観にのみとらわれることなく、かかる行為の行われた客観的情勢をも勘案し、その行為の意図とするところをも考慮すべきである。

ⅱ 新聞社の新聞販売店に対する見本紙の供給は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和28年法律第259号による改正前)第2条第6項第5号の「経済上の利益の供給」にあたる。

 

東京高判昭和26年9月19日民集8巻5号967頁

一、審決の事実認定が、審決の援用する証拠によって、理性ある人が合理的に考えれば、終局到達するところのものであるときは、その事実は実質的証拠によって立証されたものである。

二、契約書に共同経営という語を用い、また経営の方針は契約当時者甲乙双方の協議決定することとなっていても、甲は経営上の経費一切を負担して直接経営に任じ、その対価として乙に無利息金融をなし、かつ収益の一割五分を与えるという関係にある場合は、営業の賃貸借の一態様とみるべきである。

三、映画館の多数がある地域に近接して存在するときは、おのずからその地域に集合する観客群を生じ、これらの観客群は通常この地域内でそれぞれ映画館を選択して入場することとなり、この地域の興行者はこの観客群を共通の対象とすることになり、そこに一定の取引分野が形成される。

四、競争の実質的制限とは、競争自体が減少して特定の事業者または事業者集団が、その意思で、ある程度自由に、価格、品質、数量、その他各般の条件を左右することによって市場を支配することができる形態が現われているか、または少なくとも現われようとする程度に至っている状態を指すものである。

 

勧告審決昭和30年12月10日[第二次大正製薬事件]

大正製薬が多数の特約店と結んだ排他約款が旧一般指定7項(現行一般指定11項)に該当するとともに、当該約款の強制手段として、違反者に対する取引を中止したことが旧一般指定1項(現行一般指定2項)に該当するとされた。

 

東京高判平成14年12月5日判例タイムズ1139号154頁[ノエビア事件]

連鎖販売取引の販売システムにより化粧品を販売する会社が、その傘下の販売会社との販売業務委託契約を解除したことが、独占禁止法19条あるいはその趣旨に反し、著しく信義則に反するものであって、不法行為を構成するとされた事例

 

審判審決昭和31年7月26日[雪印乳業・農林中金事件]

農林中金が行った取引拒絶は、自己と密接な関係を有している事業者の競争者と取引する者に融資拒絶したこと。これは関係する事業者の独占的地位を違法に維持、強化することを目的としたものであって、不当な目的のためのものである。

 

審判審決昭和42年4月19日[丸亀青果物事件]

丸亀市内における青果物セリ市場取引の大部分を占める青果仲買人を同社のセリ取引から排除したため、青果物の仕入れに支障をきたした事案で、その排除を不当な取引拒絶とした事例。

 

勧告審決昭和56年2月18日[岡山県南生コンクリート協同組合事件]

価格競争を行う可能性のあるアウトサイダーを取引拒絶によって排除することで価格の維持を図った事例

 

公正取引委員会審決平成10年7月24日審決集46巻119頁

間接の取引拒絶によるピアノの並行輸入妨害の事件

 

勧告審決平成12年5月16日[ヤギサカ事件]

量販店向けの自転車用品パックの販売業者(シェア30%)が、量販店が自社の供給するキャラクター製品を強く望んでいるため、その供給がない限り量販店との取引が困難な状況において、販売先卸売業者に対して自社のキャラクター製品を自社の競争業者に提供させないようにしていた事例。

 

勧告審決平成13年7月27日[松下電器産業事件]

有力なメーカーが、廉売を行っている小売店に対しその流通経路を調査し、廉売店に製品を供給していた代理店等に廉売店に製品の供給を行わないように要請したこと

 

東京地判平成23年7月28日判例タイムズ1383号284頁[東京スター銀行事件]

甲銀行を委託者、乙銀行を受託者とする相互に他行の保有するATM等による現金の払出し等に係る業務提携契約について甲銀行が当該契約の解約を前提にした乙銀行に対する業務の提供の拒絶が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律所定の「不当な取引拒絶」に当たるとして乙銀行が甲銀行に対して当該業務の履行の拒絶の差止め等を求めた請求は、当該業務の提供の拒絶に正当な理由があって、これを「不当な取引拒絶」と認めることができない判示の事実関係の下においては、棄却されるべきものである。

 

流通・取引慣行ガイドライン第2部第3の2

独占禁止法上不当な目的として、競争者(自己と密接な関係のある事業者を含む)を排除する目的を例示し、それに該当するケースとして、①市場における有力な原材料製造業者が自己の供給する原材料の一部の品種を取引先完成品製造業者が自ら製造することを阻止するため、当該完成品製造業者に対し従来供給していた主要な原材料を停止すること、②市場における有力な原材料製造業者が、自己の供給する原材料を用いて当該完成品を製造する自己と密接な関係にある事業者の競争者を当該完成品の市場から排除するために、当該競争者に対し従来供給していた原材料の供給を停止することをあげています。

 

二  不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもって、商品又は役務を継続して供給することであって、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの