所有者不明土地法7 第7章 相続登記の登録免許税の免税措置   | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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第7章 相続登記の登録免許税の免税措置

 平成30年11月15日から,今後相続登記が放置されるおそれのある土地に対応するため,一定の資産価値が高くない土地についての相続登記の登録免許税の免税措置も開始されました。

※免税の対象となる土地について,上記の基本的な方針に基づいて法務大臣が指定しています。

1、相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合

相続登記が未了の土地について、さらに相続が発生している場合(数次相続や再転相続などと呼ばれます)に適用があります。

 

個人が相続(相続人に対する遺贈を含む)により、土地を取得した場合において、その個人が相続登記を受ける前に死亡したときは、その死亡した個人名義にする相続登記は免税となります(租税特別措置法第84条の2の3第1項)。

 

政府は国を挙げて「所有者不明土地問題」に取り組んでいます。

 

「所有者不明土地問題」とは、不動産登記簿からは土地所有者が判明せず、または判明しても連絡がつかないために起こる問題を言います。

 

例えば、所有者不明土地が荒廃し近隣に迷惑を掛けていたり、所有者不明土地について震災等復興対策などを施そうとしても、所有者に連絡が付かないために対処ができなくなってしまう問題が増加しています。

 

「所有者不明土地問題」は、2011年の東日本大震災の際に復興の妨げとなりました。

 

そして、不動産登記簿上の所有者は死亡しているのに、その相続登記を放置していることが、この問題を生じさせる大きな原因の1つとされています。そこで、税制としても相続登記を促進するため、長期間相続登記が未了である土地への対策として本制度を設けたと説明されています。

 

2、市街化区域外の土地で法務大臣が指定した土地のうち評価額が10万円以下の場合

「市街化区域外の土地で法務大臣が指定した土地」は、かなり限定されます。さらに固定資産評価額が10万円以下の土地ですから、山林や田、畑などが主となります(租税特別措置法第84条の2の3第2項)。

 

特に評価の安い土地については、登録免許税や司法書士への手数料など手間をかけて相続登記をすることは躊躇されるため、免税措置を設けることにより、相続登記未了の土地を発生させないようにするのが目的と説明されています。

 

3、表題部所有者の相続人名義で土地の所有権保存登記をする場合

「表題部所有者」とは、登記簿(登記事項証明書)の「表題部」に「所有者」として記載されている人のことです。

 

表題部所有者がすでに亡くなっており、その相続人名義に「所有権保存登記」を行う場合で、固定資産税評価額が10万円以下であるときは、その登記にかかる登録免許税は免税となります(租税特別措置法第84条の2の3第2項)。令和3年税制改正で新たに追加されたのがこのパターンです。

 

租税特別措置法第84条の2の3

(相続に係る所有権の移転登記の免税)

第84条の2の3  個人が相続(相続人に対する遺贈を含む。以下この条において同じ。)により土地の所有権を取得した場合において、当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときは、平成30年4月1日から令和4年3月31日までの間に当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税を課さない。

2  個人が、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の施行の日から令和4年3月31日までの間に、土地について相続による所有権の移転の登記を受ける場合において、当該土地が相続による土地の所有権の移転の登記の促進を特に図る必要があるものとして政令で定めるものであり、かつ、当該土地の当該登記に係る登録免許税法第10条第1項の課税標準たる不動産の価額が10万円以下であるときは、当該土地の相続による所有権の移転の登記については、登録免許税を課さない。

 

 

免税措置はいつまでか

上に掲げた根拠条文にあるように、平成30年4月1日から令和4年3月31日までに申請する登記に限られます。

 

免税を受けるにはどうすればよいか

登録免許税の免税措置の適用を受けるためには、免税措置の根拠となる法令の条項を申請書に記載しなければなりません。具体的には、登記申請書の登録免許税を記載する箇所に「租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税」と書きます。