法人税更正処分等取消請求控訴事件において,札幌国税局長が,管内各税務署に命じて行わせた調査及び比較法人の抽出過程に恣意的な取扱いを窺わせるものは見当たらないとして,更正処分は,結論において正当であり,控訴人が当審において更正処分の違法事由として重ねて主張するところは,控訴人の特殊事情を余りにも強調しすぎるものであり,法36条及び令72条の正当な解釈とは認められないとして排斥し,控訴人の請求を棄却した原判決を相当として,控訴を棄却した事例
法人税更正処分等取消請求控訴事件
【事件番号】 札幌高等裁判所/平成12年(行コ)第1号
【判決日付】 平成12年9月27日
【判示事項】 法人税更正処分等取消請求控訴事件において,札幌国税局長が,管内各税務署に命じて行わせた調査及び比較法人の抽出過程に恣意的な取扱いを窺わせるものは見当たらないとして,更正処分は,結論において正当であり,控訴人が当審において更正処分の違法事由として重ねて主張するところは,控訴人の特殊事情を余りにも強調しすぎるものであり,法36条及び令72条の正当な解釈とは認められないとして排斥し,控訴人の請求を棄却した原判決を相当として,控訴を棄却した事例
【判決要旨】 (1) 納税義務者、課税物件、課税標準、税率等の課税要件及び租税の賦課、徴収の課税手続は法律で定められなければならず(課税要件法律主義)、また、課税要件及び租税の賦課、徴収の手続は、明確に定められなければならない(課税要件明確主義)から、課税要件にかかわる租税法規は、できるだけ明確に定めることが求められるが、他方において、経済事象は、複雑多様にして流動的なものであり、これに対応して損益や所得、資産の実質に応じた公平な課税を実施することが要請されることを考慮すれば、租税法規を常に明確かつ一義的に定めることは、到底困難というほかないから、当該租税法規が不確定概念を用いているという一事だけで、直ちにこれが租税法律主義に反し、違憲であるということはできず、当該租税法規の目的とするところを合理的、客観的に解釈し、その法規が課税の根拠、要件を規定したものとして一般的に是認できる程度に具体的で客観的なものであれば、当該法規は租税法律主義に反せず、違憲ではないというべきである。
(2) 法人税法三六条(過大な役員退職給与の損金不算入)の趣旨は、法人の役員に対する退職給与が、損金として認めるには不相当に高額であるため、実質的には法人の利益処分たる性質を有していると解すべき場合も想定されるところ、このような場合には、その不合理な部分について損金算入を認めないことによって、租税負担を不当に回避することを防止し、適正な課税を実現しようとするものである。
(3) 法人税法施行令七二条(過大な役員退職給与の額)は、法人税法三六条(過大な役員退職給与の損金不算入)を受けて、退職給与の額の相当性について判断基準を定めたものであるところ、退職給与の額はその法人及び退職役員の個別的事情によって異なり得るものであるから、あらゆる場合を想定して相当な退職給与の額を明確かつ一義的に定めることは困難である一方、右の定めは相当な退職給与の額の決定に当たり考慮すべき事情を類型的に列挙しており、その事情を総合すれば相当な退職給与の額を判断することができ、この観点からすれば、法人税法施行令七二条の規定は、退職給与の額の相当性の判断基準について、一般的に是認できる程度に具体的、客観的に定めているということができる。
(4) 平均功績倍率法は、退職役員の法人に対する功績はその退職時の報酬に反映されていると考え、同種類似の法人の役員に対する退職給与の支給の状況を平均功績倍率として把握し、比較法人の平均功績倍率に当該退職役員の最終報酬月額及び勤続年数に乗じて役員退職給与の適正額を算定する方法であり、適正に算出された平均功績倍率を用いる限り、その判断方法は客観的かつ合理的であり、法人税法施行令七二条(過大な役員退職給与の額)の規定に最もよく合致する方法である。
(5)~(9) 省略
【掲載誌】 税務訴訟資料248号850頁
LLI/DB 判例秘書登載