住友生命事件 1 生命保険業を目的として設立された相互会社が、政治資金規正法を遵守してその範囲内 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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住友生命事件

1 生命保険業を目的として設立された相互会社が、政治資金規正法を遵守してその範囲内で同法上の政治団体に金員を寄附することは、公序に違反せず、同社の目的の範囲外の行為にも当たらないとされた事例

2 政治献金をした生命保険会社の代表取締役に、善管注意義務違反が認められないとして、政治献金相当額の損害賠償と将来の政治献金の差止めがいずれも棄却された事例

 

大阪高判平成14年4月11日 判例タイムズ1120号115頁

社員代表訴訟等控訴事件

【判示事項】 1 生命保険業を目的として設立された相互会社が、政治資金規正法を遵守してその範囲内で同法上の政治団体に金員を寄附することは、公序に違反せず、同社の目的の範囲外の行為にも当たらないとされた事例

2 政治献金をした生命保険会社の代表取締役に、善管注意義務違反が認められないとして、政治献金相当額の損害賠償と将来の政治献金の差止めがいずれも棄却された事例

【参照条文】 民法43 、90

       政治資金規正法21 、21の3 、22、22の2

       保険業法51-2

       商法267 、272

       民法644

 

民法

(公序良俗)

第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

 

政治資金規正法

(目的)

第一条       この法律は、議会制民主政治の下における政党その他の政治団体の機能の重要性及び公職の候補者の責務の重要性にかんがみ、政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため、政治団体の届出、政治団体に係る政治資金の収支の公開並びに政治団体及び公職の候補者に係る政治資金の授受の規正その他の措置を講ずることにより、政治活動の公明と公正を確保し、もつて民主政治の健全な発達に寄与することを目的とする。

 

(寄附の総額の制限)

第二十一条の三 政党及び政治資金団体に対してされる政治活動に関する寄附は、各年中において、次の各号の区分に応じ、当該各号に掲げる額を超えることができない。

一 個人のする寄附

 

二千万円

 

二 会社のする寄附

   

次の表の上欄に掲げる会社の資本金の額又は出資の金額の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる額

 

 

 

 

 

 

 

五十億円以上

三千万円

 

十億円以上五十億円未満

千五百万円

 

十億円未満

七百五十万円

 

三 労働組合又は職員団体のする寄附

 

次の表の上欄に掲げる労働組合の組合員又は職員団体の構成員(次項において「組合員等」という。)の数の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる額

 

 

 

 

 

 

 

十万人以上

三千万円

 

五万人以上十万人未満

千五百万円

 

五万人未満

七百五十万円

 

四 前二号の団体以外の団体(政治団体を除く。)のする寄附

 

次の表の上欄に掲げる団体の前年における年間の経費の額の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる額

 

 

 

 

 

 

 

六千万円以上

三千万円

 

二千万円以上六千万円未満

千五百万円

 

二千万円未満

七百五十万円

 

 

 

 

 

 

           

 資本金の額若しくは出資の金額が百億円以上の会社、組合員等の数が十五万人以上の労働組合若しくは職員団体又は前年における年間の経費の額が八千万円以上の前項第四号の団体については、同項第二号から第四号までに掲げる額は、三千万円に、それぞれ資本金の額若しくは出資の金額が五十億円を超える金額五十億円ごと、組合員等の数が十万人を超える数五万人ごと、又は前年における年間の経費の額が六千万円を超える金額二千万円ごとに五百万円(その合計額が三千万円に達した後においては、三百万円)を加算した金額(その加算する金額の合計額が七千万円を超える場合には、七千万円を加算した金額)として、同項の規定を適用する。

 個人のする政治活動に関する寄附で政党及び政治資金団体以外の者に対してされるものは、各年中において、千万円を超えることができない。

 第一項及び前項の規定は、特定寄附及び遺贈によつてする寄附については、適用しない。

 第一項第二号に規定する資本金の額又は出資の金額、同項第三号に規定する組合員等の数及び同項第四号に規定する年間の経費の額の計算その他同項の規定の適用について必要な事項は、政令で定める。

(同一の者に対する寄附の制限)

第二十二条 政党及び政治資金団体以外の政治団体のする政治活動に関する寄附は、各年中において、政党及び政治資金団体以外の同一の政治団体に対しては、五千万円を超えることができない。

 個人のする政治活動に関する寄附は、各年中において、政党及び政治資金団体以外の同一の者に対しては、百五十万円を超えることができない。

 前項の規定は、資金管理団体の届出をした公職の候補者が当該資金管理団体に対してする寄附及び遺贈によつてする寄附については、適用しない。

 

(量的制限等に違反する寄附の受領の禁止)

第二十二条の二 何人も、第二十一条第一項、第二十一条の二第一項、第二十一条の三第一項及び第二項若しくは第三項又は前条第一項若しくは第二項の規定のいずれかに違反してされる寄附を受けてはならない。

 

保険業法

(役員等の相互会社に対する損害賠償責任)

第五十三条の三十三 取締役、執行役、会計参与、監査役又は会計監査人(以下この目において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、相互会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

2 取締役又は執行役が第五十三条の十五において準用する会社法第三百五十六条第一項(前条において準用する同法第四百十九条第二項前段において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定に違反して同法第三百五十六条第一項第一号(競業及び利益相反取引の制限)の取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役又は第三者が得た利益の額は、前項の損害の額と推定する。

3 第五十三条の十五において準用する会社法第三百五十六条第一項第二号又は第三号(これらの規定を前条において準用する同法第四百十九条第二項前段において準用する場合を含む。)の取引によって相互会社に損害が生じたときは、次に掲げる取締役又は執行役は、その任務を怠ったものと推定する。

一 第五十三条の十五において準用する会社法第三百五十六条第一項(前条において準用する同法第四百十九条第二項前段において準用する場合を含む。)の取締役又は執行役

二 相互会社が当該取引をすることを決定した取締役又は執行役

三 当該取引に関する取締役会の承認の決議に賛成した取締役(指名委員会等設置会社においては、当該取引が指名委員会等設置会社と取締役との間の取引又は指名委員会等設置会社と取締役との利益が相反する取引である場合に限る。)

4 前項の規定は、第五十三条の十五において準用する会社法第三百五十六条第一項第二号又は第三号に掲げる場合において、同項の取締役(監査等委員であるものを除く。)が当該取引につき監査等委員会の承認を受けたときは、適用しない。

 

 

 

 1 本件は、住友生命の社員である控訴人らが、同社が政治資金団体に政治献金をしたことについて、(1)政治献金は、国民の参政権を侵害し、社員の政治的信条の自由を侵害するから公序(民法90条)に違反する、(2)政治献金は同社の権利能力の範囲外の行為である、(3)政治献金をした同社の代表取締役には取締役として善管注意義務違反があり、同社に政治献金相当額の損害を生じさせたと主張して、保険業法51条2項で準用する商法267条に基づき現在の代表取締役と前任者である被控訴人らに対し、在任中になした政治献金相当額の損害金と遅延損害金の支払を求めるとともに、今後も政治献金を継続することにより、同社に回復すべからざる損害が生ずるおそれがあり、これを差し止める必要性があると主張して、保険業法51条2項で準用する商法272条に基づき現在の代表取締役である被控訴人に対し、政治献金の差止めを求めた事案である。