本件は,大阪の中堅総合商社イトマンを舞台とした特別背任等の多数の経済犯罪から成るイトマン事件のうち,イトマンから巨額の融資を受けていた不動産会社のオーナー経営者であり,イトマンの元常務取締役でもあった被告人に係る事件であるが,本決定において採り上げられた論点は,被告人がイトマンに入社してから取締役に就任する前の,理事兼企画監理本部長という立場にあったころにおいても,特別背任罪の主体たる資格要件が認められるかどうかという点である。
商法違反,背任,有価証券偽造,同行使,有印私文書偽造,同行使被告事件
【事件番号】 最高裁判所第3小法廷決定/平成14年(あ)第1431号
【判決日付】 平成17年10月7日
【判示事項】 商社の理事兼企画監理本部長が同社から給与等の支給を受けていなくても商法(平成2年法律第64号による改正前のもの)486条1項にいう「営業ニ関スル或種類若ハ特定ノ事項ノ委任ヲ受ケタル使用人」に当たるとされた事例
【判決要旨】 甲商社から巨額の融資を受けていた不動産会社のオーナー経営者乙が,甲社の不動産開発等の業務を担当する理事兼企画監理本部長に就任し,甲社社長の指揮命令に服しながら,対外的法律行為に関する包括的代理権の行使を含め,甲社の企業活動の一端を継続的かつ従属的に担っていたなど判示の事実関係の下においては,乙は,甲社から給与等の支給を受けていなかったとしても,商法(平成2年法律第64号による改正前のもの)486条1項にいう「営業ニ関スル或種類若ハ特定ノ事項ノ委任ヲ受ケタル使用人」に当たる。
【参照条文】 商法(平成2年法律第64号による改正前のもの)486-1
【掲載誌】 最高裁判所刑事判例集59巻8号1086頁
刑法
(共同正犯)
第六十条 二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
(身分犯の共犯)
第六十五条 犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。
2 身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する。
(背任)
第二百四十七条 他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
会社法
(取締役等の特別背任罪)
第九百六十条 次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 発起人
二 設立時取締役又は設立時監査役
三 取締役、会計参与、監査役又は執行役
四 民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された取締役、監査役又は執行役の職務を代行する者
五 第三百四十六条第二項、第三百五十一条第二項又は第四百一条第三項(第四百三条第三項及び第四百二十条第三項において準用する場合を含む。)の規定により選任された一時取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役)、会計参与、監査役、代表取締役、委員(指名委員会、監査委員会又は報酬委員会の委員をいう。)、執行役又は代表執行役の職務を行うべき者
六 支配人
七 事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人
八 検査役
2 次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は清算株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該清算株式会社に財産上の損害を加えたときも、前項と同様とする。
一 清算株式会社の清算人
二 民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された清算株式会社の清算人の職務を代行する者
三 第四百七十九条第四項において準用する第三百四十六条第二項又は第四百八十三条第六項において準用する第三百五十一条第二項の規定により選任された一時清算人又は代表清算人の職務を行うべき者
四 清算人代理
五 監督委員
六 調査委員